血の連鎖

/もくじ/DS・TOP/


14・矜持〜その2・破壊〜

薬によって無理矢理に高められた欲望を、力ずくで堰き止められ、半助は半狂乱だった。
意地も矜持もなく、哀願を繰り返す。
そんな半助の様子を無視し、男は次の遊びを始める。
「先生…散々楽しんだんだから、今度は楽しませろヨ」
それまで、半助が快楽に溺れ、その度にキツク締め上げるのを、必死に耐えていた男の怒張。
それがゆっくりと律動を再開する。
「ヒィ…ヒィ…」
勿論、半助の欲望は封じられたままだ。
さっきまで、苦痛でしかなかった行為が、全て快楽に飲み込まれた。
意地悪く前立腺の辺りを強く擦ってやると、腰を振り、飲み込むような収縮をしてみせる。
「ぁぁ…ひ…っ、ひっ、」
ただの見学者だった筈の部下の男さえも、半助の痴態に煽られたのか、半助の傷だらけの乳首を捻り上げるように弄び始めていた。
しかし、男としての吐露を封じられた半助にとっては、快楽拷問。
先端から、とろり…とろり…と、溢れるのを許された僅かばかりの精液を零すばかりだった。
「先生のいやらしい先っぽが、パクパクしてるぜ」
そんな半助を男達がからかう。
「ここにも、何か食べたいのか?よ〜し」
男の言葉を待たずして、部下の男がアタッシュケースの中から、尿道を刺激・拡張する為の器具を差し出す。
「これを…」
この男を一番側近くに置いているのは、こういう所だと、男は笑った。
自分の気狂いと思える性癖を理解し、共犯になってくれるのは、この男だけだったから。
時に、欲望に振り切れている自分に、冷静なまま付き合ってくれる目の前の男の方が、余程残酷なのではないかとも思う。
「これじゃあ、先生には物足りないな…」
男の目に、部下の男の胸元にあったボールペンに目が行く。
シンプルなノック式のものだが、滑り止めや、グリップ部分は結構な太さがある。
男の視線に気付いた部下の男は皆まで言わず、それを差し出した。
「良い具合に、片側は尖っているから、上手く入るだろ?」
普通なら、何の準備もなく施すのは、到底無理だろう。

こうして、破壊してやりたい…
ここまでの欲望を抱かせた、先生が悪いのだ。
そして…それを甘んじて受け入れるしかない脆弱さ。
それでいて、決して思いのままにならない精神が、それを煽る。

男は、抽挿していたモノを最奥まで押し込み、半助の動きを封じた。
「先生!」
半助は、はぁはぁ…と荒い息を繰り返し、ぼんやりと虚ろな目をしていた。
頭上で交わされた男達の会話も、理解出来てはいないだろう。
元々、丈夫な方ではないのだ……既に薬の大量投与で壊れ掛けている。
男は、忌々しげに舌打ちする。
多少は正気でいてくれないと、詰まらないのだ。
男は、それまで手を掛けなかった半助の顔を、平手打ちした。
「…っ」
ザックリと口の中が切れ、口角から涎に混ざって、血が伝った。
「……ぁ…ぁ」
一瞬、半助の瞳に正気の光りが戻った。
それでも、滴り落ちるものを止める事が出来ないその様の淫らさ。
男は、思わず半助の口元に吸い付いた。
「ぅ…」
「…痛っ!」
声を上げたのは、男の方だった。
半助が、男の舌に噛み付いたのだ。
「痛てぇ…な、先生」
男は、舌先を尖らせて見せびらかすようにする。
小さな傷から、血の玉が浮かんだ。
半助は、小さな反撃に、薄く笑う。
それが何倍にもなって帰ってくるのは覚悟の上だった。
もう…自分は、まともに生きていく事は出来ないだろう。
あの薬を打たれて分かった。
まだその威力は全身で猛威を振るっているが、耐えられなくなる。
…心じゃない。
心臓が…。
鼓動が、幾らでも早まっていく。
耳元がドクドクと痛む程に…完全なオーバーワークだ。
心臓が耐えられなくても、心は負けない。
この男に、助けを…救いを求めたりしない。
恭順したりはしない。
それだけは、自分が決めたことだから…。

男が、半助の抵抗に大義名分を得て、次の非道に及ぶ。
「よくもやってくれたな。…まだ、そんな元気があるんだ?」
男も…もう歯止めは利かなかった。
男の手の中で震える半助の先端を指先で拓いてやると、そこに凶器の先端を近付ける。
「そういう悪い子は、ここをこうしてやる!」
瞬間、獣の様な悲鳴が上がった。
男の力に負け、それは溢れる寸前に熟れた欲望を押しやりながら、ズブズブと凶器を飲み込んでいく。キツク握り締めたままだから、当然、無傷な筈は無く、ずたずたに裂け、凶器を受け入れた部分の内部組織は破壊されていく。
時々、乱暴に抽挿してやると、半助は全身を硬直させ、脂汗が吹き出した。
男の耳に、半助の心地よい悲鳴が響く。
「うぅぅぅ…先生、凄すぎ!」
男は半助の中で、苦痛にのたうつ…断末魔のうねりにも似た、締め付けを味わっているのだ。
凶器を突き当たるまで押し込むと、男は怒張の抽挿に専念した。
「あぁ…先生、先生…」
ずっと我慢していたのだ。
こんな最期の為に…。
男は、自らの快楽の為だけに腰を使った。
部下の男は、自分の仕える主人の、ここまで満足気な顔は見たことがなかった。
ぶるぶると身体を振るわせて、男は果てた。
その頃、半助の全身は冷たく冷え、唇は紫色で、悲鳴さえも上げられなくなっていた。
半助は、男が何時遂情したのかさえ、分からなかった。


死んだかとおもったのに…。
半助が気が付くと、男のモノはまだ穿たれたまま。
ベッドに腰を下ろした男の上で、後ろから膝裏を抱えられる様な姿勢だった。
目の前には、姿見。
男の暴行の成果を、半助自身に見せ付けるような格好だった。
もう、どこが痛くて、苦しいのかも…分からなかった。
…心臓が、かつて無いほど、ゆっくり鼓動を刻んでいるような気がする。
自分の酷く扱われた性器がよく見える。
深々と突き刺されたままで、そこが心臓の様に脈打っていた。
そんな扱いを受けても立ったままのソレが滑稽に見えた。
「先生、ほーら…楽にしてあげるヨ」
男がゆっくりと、ポールペンを抜き出す。
滑り止めの凹凸が、傷付いた内部の組織を引きずり出し、半助は呻いた。
「ほら、抜ける」
それが抜け落ちた瞬間、半助は真っ赤な精液を吐き出した。
何度も、何度も…。
それが、最期に残された雄の本能のようで、半助は静かに身を委ねた。
「一杯出たね。今度は後ろだ…」
何故か男は、半助の後ろにねじ込んだ怒張を、最初からずっと抜こうとはしなかった。
萎えても十分なサイズのモノが、腫れ上がり傷だらけの粘膜を逆撫でながら、ゆっくりと出ていく。
「さぁ、見ててごらん」
意味深な言葉を吐いて、男が半助の視線を促す。
血にまみれた男の大きな先端が、そこから抜け出た瞬間だ。
そこから、ドバーッと血が噴き出した。
「…ぁ……ぁ、ぁぁ」
その後に、どろり男の吐き出したモノが真っ赤に染まって、垂れて来る。
最後の最後に、こうして血を吹き出す所を見せ付けるのが、男の楽しみだった。
自分のモノに破壊された部分を見せ付けられるのは、かなりの精神的苦痛を与えるのだ。
それを男は、経験上知っていた。
そして、その最後の攻めが、半助にとって一番効果的だった。
半助を支えていた何かが…プツリと音を立てて切れた。


大切な…血が…。
【果実】の…
山田先生の為だけの血が…流れる。
半助は、それまでで一番の絶望を感じた。

「や…山田、先生。ごめん…なさい。」


「なに?」
すぐ近くに居た男にも、その声は聞き取れなかった。
半助の首が、ガクリと後ろに落ちた。
慌てて、部下の男が半助の心拍を確認したが、弱々しく確認するのがやっとだった。
心臓マッサージをしようとするのを、男が止めた。
半助を助ける気など、初めから無いのだ。
男は、部下を下がらせると、半助をベッドに横たえる。
ここまで思惑通りに事を進めるのは、難しい。
最高の生贄がいたからこそ…。
破壊されすっかり口を開いたままになった半助の性器に、男は頬ずりする。
視線を落とすと、こちらも弛緩し…血まみれの粘膜を晒す、半助の後ろに指を入れる。
一本、二本…と増やしていっても、粘り気のある血が間欠的に噴き出すばかりで、既に何の反応もなかった。
間違いなく、薬が強すぎたのだ。
もしくは、失血性のショック症状か…。
男は、うっとりと虫の息の半助を見詰めた。

「ここまで頑張るとはね。…最期まで、最高だったヨ。」





/もくじ/DS・TOP/