白い悪魔の恐怖
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■主題歌批評 〜そこだそらゆけウルトラマンの旅路〜

ルトラマン80 He came to us from a star.
1980年代のウルトラマンは、TALIZMANのバンドサウンドで幕を開けた。愛と勇気を教えてくれる「ウルトラマン先生」の頼もしさ、そして青い星を守る防衛隊「UGM」の格好良さが凝縮された2つの主題歌は、内容的に迷走する「ウルトラマン80」の中心で、ブレることなくそのテーマを叫び続けた。

オープニング主題歌「ウルトラマン80」(山上路夫作詞、木村昇作曲)
エンディング主題歌「レッツ・ゴーUGM」(山上路夫作詞、木村昇作曲)

歌詞には冒頭のような英語も盛り込まれ、東京一(円谷一)や阿久悠が手掛けたそれまでのウルトラ主題歌とは一線を画す、クールで燃える特撮ヒーローソングとなった。

■しかし、児童層を意識した路線変更(第31話〜)を受けて、第40話から主題歌も変更となる。作詞、作曲ともに同じ布陣ながら、子供たちに温かく語り掛け、一緒にウルトラマンを応援する歌詞には、「先週までとは全く違う番組になってしまったのか?」と不安になるほどのインパクトがある。

2ndオープニング主題歌「がんばれウルトラマン80」(山上路夫作詞、木村昇作曲)
2ndエンディング主題歌「地球人だよ」(山上路夫作詞、木村昇作曲)

当然、歌詞から英語は消え、平易な言葉が用いられている。ただし、改めて聴き直してみると、東京一作詞の「ウルトラマンA」主題歌などにも通じる王道ソングであることに気付くはずだ。

して、主題歌映像について。「ウルトラマン80」以前、エンディング主題歌がなかった「ウルトラマン」〜「ウルトラマンレオ」の主題歌映像は、2つのパターンに分けられた。ウルトラマンや怪獣の「シルエット映像」(「マン」「セブン」「帰ってきた」「A」)と、防衛隊の「メカニック映像」(「タロウ」「レオ」)。

「80」はオープニングで「シルエット映像」を、エンディングで「メカニック映像」を用いた。両方の魅力を1980年代の技術で描き切ったスタッフに拍手を送りたい。オープニング、影絵のウルトラマンのメリハリある動きは、実際にブルースクリーンの前で演技した映像を切り出したことで生まれた。エンディング、UGMの戦闘機が滑走路から飛び立ち、スペースマミーが雲上をゆったりと進む映像は、円谷アナログ特撮の頂点といっても過言ではないだろう。

■オープニング主題歌映像もまた、路線変更を受けて第33話から変更となる。ウルトラマンの400文キックのシルエットに始まり、走る矢的猛、草花を眺めて微笑む矢的猛の実写映像、そして、津波に飲み込まれる橋や爆発するガスタンク、強風に飛ばされる民家などの特撮映像が続く。出動するUGM隊員、ライザーガンを構える矢的猛…と、それまでの「シルエット」「メカニック」ではフォロー出来なかった部分をまとめた、第3のパターンだ。

主人公はウルトラマンでも防衛隊でもない、矢的猛だということを表現しているようにも見えるが、主題歌の歌詞から考えれば、純粋にウルトラマンの雄姿をまとめた方がスッキリしたのではないか、とった気持ちもある…。

これら、「シルエット」に「メカニック」、登場人物とウルトラマンの雄姿といった、ウルトラシリーズに不可欠な要素の融合は1997年、「ウルトラマンダイナ」主題歌映像で試みられ、1つの理想形を生み出した。結局のところ「80」は、作品内容においても主題歌映像においても、複数の王道を提示しながら、融合や発展まではあと一歩及ばなかった、そんな気がしてならない。

※第50話(最終回)のエンディング主題歌には、「80」唯一の挿入歌「心を燃やすあいつ−矢的猛の歌−」(満田禾斉作詞、冬木透作曲)が用いられた。「第50話研究」でも触れているが、「80」の最後を飾るのにふさわしい名曲であったことを付記する。

(2006/8/13)

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