現在、3年生で行っているリーディングの授業について、まとめてみることにしました。2005年にもリーディングの授業についてまとめていますが、読み返してみるとあまり変わっていないことに気が付いて、自分でもちょっと驚いていますが(笑)、ともかく2008年版ということで、まとめておきます。なお、この内容は平成20年6月10日から同6月22日までの「授業日誌」のエントリーを基にしています。
僕の授業では基本的には予習は求めません。予習を否定しているわけではありません。現在の僕の授業のやり方に予習は馴染まないと思うからです。ひとつは授業で扱っているタスクが予習を前提としていないためであり、ひとつは予習よりも復習に時間を割いて欲しいためです。何度も繰り返しているように、うちの生徒のテーマは「基礎の定着」なので、授業で扱った英文を何度も読んだり、授業で扱った文法事項を何度も反復することが大事ではないかと思っています。
では、授業で何をしているかというと、いわゆる「タスク消化型」というスタイルで授業をしています。現在のハンドアウトではタスクは7つ。具体的なタスクの内容について説明する前に、授業の中で常にやっていることを先に説明しておきます。
まず、始業のチャイムと同時に単語の小テストが始まります。僕が語句を読み上げて、生徒が綴りと意味を書くというのが基本パターンです。そこから派生語を書かせたり、ターゲットの語句を使った文を書かせたりと、授業が進むにつれて要求度も高くなっていきます。この小テストは隣同士で交換して採点してもらっています。B6版の紙を縦に使い、てっぺんにクラス、番号、氏名を記入。得点はその氏名の右側に書き、採点者の名前を右下に書くという約束事を作っています。僕が得点を転記しやすいように、こういうフォーマットにしたと生徒に明言しているのですが、実はそれはただのポーズで、回収はしていますがチェックはしていません(笑)。この小テストの結果を成績に反映させるつもりもありませんし、出来が悪いからと言って追試をやったりペナルティを課したりするつもりもありません。小テストという形式ではあるけれど、単語を覚えてもらうための、あるいは表現を使えるようになってもらうための「仕掛け」としてやっていることなので、その点が機能しているのなら、他の部分に時間や手間をかけたくないと思っています。毎回、ほぼ同じような語句が出題されるので、何度かやっているうちに生徒は覚えてしまうようです。僕は5分ほど前から教室で小テスト用の用紙を配布したりしていますが、生徒の様子を見ていると始業前の数分で単語の練習をしている生徒が多いようです。因みに以前はコンテクストを与えてCloze Test形式でやっていたのですが、毎時間短時間でやるようにしてからは現在の形になりました。
単語の小テストの他に毎時間やっていることは、テキストを見ながら音声を聞くという作業です。「テキストを見ながら音声を聞く」というよりも「音声に合わせてテキストを読む」と言った方が実態に近いかも知れません。これも授業の進み具合によって、テキストを見ながら、あるいはテキストなしでmumblingさせてみたりしています。リーディングの授業では、ページ毎あるいはパート毎に区切らずに、1レッスン丸ごと扱っているので、長いレッスンになると音声を通して聞くだけで8分近くかかります。生徒が飽きるかなとも思ったのですが、意外に飽きずに聞いているようです。あらぬ方向を向いているのは、クラスに1名いるかいないかという程度。もっとも視線はハンドアウトや教科書に向いているものの、頭の中では別のことを考えているという生徒もいると思いますが……。毎時間やっている活動なので、授業が進むほどに理解できる部分も多くなっていくというイメージですね。どこまで実現できているかは別の話です(笑)。ともかく7分〜8分くらいの音声を聞くということには慣れてきたようです。上述の小テストをやって音声を聞きながら読むと、それだけで15分ほどかかってしまうというのが最大の問題点でしょうか。
Task 1は概要理解ということで音声を聞きながら行うタスク。基本的にはリーディングの授業ではレッスンを分割しないで丸ごと扱っていますが、このタスクだけは二分割しています。前後半をそれぞれ4〜5文程度に要約して、それをランダムに提示しておきます。生徒は音声を聞いて、正しい順に並べ替えるというタスクです。これは音声をBGMのように聞き流すことを避けるための仕掛けなので、正解が導き出せるかどうかはあまり問題ではありません。大事なのは、一所懸命に音声を聞くということです。もちろん、このタスクで概要を理解してくれれば、という淡い期待はあるのですが(笑)。正答率は割と高いのですが、内容を聞き取って正解に辿り着いているわけではなくて、選択肢にあるキーワードが聞き取れた生徒が正解に辿り着いているのが実態のようです。
ポイントは文字を見る前に音声を聞くということでしょうか。特に深い意図があるわけではなくて、緊張感を持って音声を聞いてもらいたいということです。さらにこのタスクの選択肢を読むことで、概要を理解してもらえるのなら、内容理解の第一歩にはなるだろうという位置付けです。オーラル・イントロダクションの代わりと言ってもいいかも知れません。
Task 2は、僕が語句を2度読み上げて、生徒は本文中からその語句を見つけてマークするというタスク。ちょっとした語彙レベルでのスキャニングという感じでしょうか。リーディングの授業では、あえてピックアップする語句の数を減らしています。もちろん、ピックアップされなかった語句の中にも、生徒の知らない語句はたくさんあるのですが、それくらいは自分で辞書を引いて調べろよということですね。必要最低限の語句だけピックアップしています。ともかく本文に素早く目を走らせる練習にはなっているようです。マークした後は、ピックアップした語句について意味や語法、派生語などを確認しています。生徒に聞く場合もあるし、僕が一方的に説明する場合もります。一通り、意味などの確認が終わったら、コーラス・リーディングで発音の確認。因みに、毎時間行っている単語の小テストは、ここで拾った語句から出題するのが基本です。もっとも、本文の内容理解が進むと、ピックアップされていない語句が出題されたり、ターゲットの語句を使って英文を書いてもらったりしていますが……。
語彙の導入という観点では、もっと効率の良いやり方があるのでしょう。でも、この活動のおかげで英文に目を走らせる速度は確実に速くなりました。音声と綴りとの関係なども何となく掴んできたように思います。この活動をいつまで続けていくかということに迷いがないわけではないのですが、もうしばらくは続けていこうと思っています。
Task 3は、文の構造上読み取るのが難しいと思われる文をいくつかピックアップして、それを「解析」しています。「これが主語でこれが動詞で、ここからここまでが修飾語句で……」なんてやっているわけです。やはり、スラスラ読めないような文は、「雰囲気でなんとなく」ではなくて、構造を理解しながら読まなければ理解できません。文によって読み方を変えるというのも、英語に限らず文章を読むときの基本的な「戦略」でしょう。授業の時間内である程度の時間をとっていますが、構造上難しい文ばかりをピックアップしているので、時間のかかるタスクですね。こういう文を読む時の英語の苦手な生徒の頭の中を推測するに、知っている単語を日本語に置き換えて、その日本語を適当に並べ替えて話をでっちあげているのではないかと思われます。構造上難しい文に出会ったときにどう対処するかを学ぶためにも、こういう活動はどこかでしっかりとやっておくべきだと思います。因みに、このタスクは、1年生の時にはシンプルに主語に○、動詞に□をつけるというタスクでした。おそらく、脳味噌の中の処理はそれほど違わないと思いますが(笑)。
Task 4は英問英答です。教科書の英問英答をそのまま使っていますが、実際には「英答」ではなくて、本文の該当する箇所にアンダーラインを引かせて時間を短縮しています。教科書では該当する文章の横に質問がありますが、すべてハンドアウトに書き出して、ハンドアウトに載せた本文から該当する箇所を探し出すようにしています。簡易的なスキャニングといったところでしょうか。
1年生の頃も同様のタスクをやっていたのですが、そのときには英作文の基礎練習という意味もあって完全な文で書かせていました。かなりできるようになってきた感じがあったので、2年生からはアンダーラインのみにしています(もちろん、時間短縮のためという部分が大きいのですが)。
このタスクを、音声を聞きながらテキストを読み、英問の答えに該当する箇所が出てきたらアンダーラインを引くという処理の仕方もやっていたことがあります。しつこく音声を聞かせるという意図があったのですが、リーディングの授業では専らスキャニングの練習ということで上記の方法でやっています。
Task 5はチャンク毎に英文を改行してセンタリングしたものにチャンク毎の和訳をつけたハンドアウトを使用しています。以下のようなレイアウトです。
英 文 1
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英 文 2
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日本語 2
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日本語 1
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英文だけ必要な時には左半分だけ見れば良いし、日本語だけ必要な時には右半分だけ見れば良いわけです(右から左になってしまいますが)。真ん中で谷折りにして、右1/4を山折りにすると「英文 1」と「日本語 1」が隣合わせになり、広げると「英文 2」と「日本語 2」が中央で隣合わせになるという小細工をしてみました(笑)。
チャンク訳はできるだけ英語の語順になるように作っているのですが、これがなかなか難しい(笑)。生徒と一緒に音声を聞きながらチャンク訳を追いかけていると、「くどすぎるなぁ」とか「あっさりしすぎてるなぁ」とか必ず後悔する部分があります(笑)。なかなかうまくいかないものです。
ずっと音声を聞きながらチャンク訳を読んでもらっていましたが、最近はやめました。その代わりに、このハンドアウトを使って、文法や構文なども含めて必要に応じて説明しながら全文を通読しています。この作業は次のTask 6で行っていたのですが、チャンクのハンドアウトを利用してやってみています。必要なら和訳もやっていますし、抽象的な内容の部分で具体的な例をあげて説明したり、ここまでのタスクで抜けた文法事項や語法などを補足したりしています。このやり方のまずいところは、段落の構成など全体像が見えにくいことです。なるべく、全体の中での位置付けを確認しながら読むようにしています。
ちなみに、授業の冒頭で音声を聞きながらテキストを読む時には、このハンドアウトを利用することが多いです。進度によってTask 2の語句の意味の書き込んであるテキストを見させたり、何も書き込まれていない教科書を見させたりしていますが、自分の理解度に応じてどれを見ても良いということにすると、英語の苦手な生徒はチャンクのハンドアウトを見ることが多いようです。
Task 6は本文に関して用意したいくつか設問に答える形式です。文法的なものも内容的なものもごちゃまぜになって、出来の悪い「総合問題」のようになっているのですが(笑)。以前は、ここで全文を通読していたのですが、先述の通り、最近はチャンクのハンドアウトで行っているので、ここは設問の解答だけを確認するようになっています。どちらがいいのかはよくわかりません。一長一短といったところでしょうか。ともかく、どこで行うにしろ、適宜説明を加えながら全文を通読するという作業が、僕の授業の流れの中では最も重たい部分です。
Task 7は本文の要約のCloze Testです。素材は指導書に載っているサマリー。センテンスレベルでの「この関係詞の節は何を修飾していて、主語はこれで動詞がこれで……」という読み方ではなくて、レッスン全体として筆者がいいたいのは何かということを読み取るような読み方を常に意識させていたいので、こういうタスクを放り込んでいます。
自分で作っておいてこう言うのも何ですが、意外に難しいタスクです。自分でやってみて「あれっ?」ということもあります(笑)。もともとの素材文にも多少の無理があるのかも知れません。そういうわけで、英語の得意な生徒でも正答率はそれほど高くはありません。そのせいか生徒の食い付きもあまり良くないタスクです。英語も日本語も含めて「読解力」に問題のある生徒が多いので、生徒の苦手とするタスクということになるのでしょう。同じようなスキルを求める別のタスクに入れ替えようかなとも思っています。でも、考えを深化させる余裕がありません。素材の要約をもうちょっとシンプルな英文にするか、あるいはレッスンの内容によってはチャート化するか、あるいは教科書の課末のサマリーを音読に利用しているので、指導書のサマリーを使ったこのタスクは思い切って切り捨ててしまうという手もあるかなぁと漠然と考えています。
ここまででハンドアウトのタスクは終了です。何度か英文を聞き、何度か英文に目を通したことになります。
このあたりまでくると、「このレッスンもいよいよ終わり」という雰囲気になってきます。僕の方も「次のレッスンのハンドアウトを作り始めなくちゃ」というプレッシャーを感じ始める時期です(笑)。
レッスンによっては、ここで話の展開をまとめてもらったりすることもあります。リーディングの教科書は、いわゆる説明文が多いのですが、注目すべきディスコース・マーカーなどをチェックしながら、筆者の主張や要点をまとめていくという作業です。これが次のサマリーにつながっていくことになります。物語文など説明文ではないものや、説明文であっても「何が言いたいの?」という出来の悪い文章では、この作業はやりません。
ここからは教科書の Comprehensionのサマリーを使用します。空欄補充形式の問題になっているので、とりあえずは空欄補充をして、音声CDを聞いて答え合わせをします。その後、このサマリーの音読に入ります。2年生までは本文で音読をしていましたが、さすがにリーディングでフルコースの音読をすると何時間もかかるので、サマリーで音読することにしました。Chorus Reading、Read & Look up、Overlapping、Shadowingというメニューです。時間があれば、ひとり1文ずつの音読リレーで締めくくります。音読についての詳細はこのウェブページの「授業実践」にある「音読」をご参照下さい。
本文の音読は、授業の冒頭で音声CDを聞いてもらう時に、それぞれの理解度に合わせてテキストあり、あるいはテキストなしでmumblingしてもらう程度しかやっていません。
また、2年生までと同様に、その後英文を再生していく活動もやりたいのですが、時間の関係でそこまでは辿り着くことはできないでいます。ちなみに、この活動はしつこく音読した後で、日本語訳(チャンク訳も含めて)を見ながら、テキストを再生していくというものです。1年生では1パート毎、2年生では2パート毎にやっていました。
これで1レッスン終了です。
最近の生徒の様子を見ていると、3年生になってからちょっとインプットが不足しているのかなという気もします。表面だけをサラっと読んで終わりになっているような気もしています。思い返せば、3年前に3年生を担当したときにも同じような悩みを抱えていたわけで、あまり進歩していないのかも知れません(笑)。
(2008.08.06)