発行所:聞光寺発行人:釋温成寺報

第125号 2024/4/1発行

第124号

私の善、あなたの善、同じですか

亡き人を偲ぶ

近年は、キリスト教に関係する行事ばかりが目立ちますが、お家にお仏壇が有るのなら、仏教の事をちょっと気にしてみませんか。夫婦、親子、家族、兄弟・姉妹の間でちょっとしたトラブルがあった時、お内仏(お仏壇)の前に座ったことがありますか。お内仏の中は、本尊様とご先祖様の法名を、荘厳してあるだけで、私達が助かったり、得をしたりするためのものは一つもありませんが、何か気持ちが落ち着いてくるように感じられます。お盆やお彼岸のお墓参りもそうじゃないでしょうか。
先日、私の京都での保証人であった方の「偲ぶ会」がありまして出席した時に、造園師時代の弟子たちで、重森三玲先生の五十年忌のお墓参りをしようということになりまして、3月12日の御祥月御命日に、岡山駅西口に集合という事になりました。
誰が、どれだけ人が集まるのだろうかと楽しみにして、これが最後の出会いだろうと出かけてゆきましたが、急に身体の具合が悪くなった事でのドタキャンもいつくかあって、集まったのは六人でした。しかし懐かしい人とお会いすることができました。最後の弟子が七十歳を超えているのですから、五十年忌のお参りは、ご縁があった方々の消息収集の会でもありました。
お参りをしながら先輩たちが、自分たちの係わった作庭と三玲先生とのかかわりを思い出しながら、聞いていると、考えたり夢にも出てこなかった景色が思い出され、懐かしくよみがえってくるのです。
先輩たちの話が、私の過去を掘り起こし、その時代の私が、今の私を生みだしていることを感じられ、涙が出てきました。私がご縁を頂いていた事を思い出せなかったり、忘れてしまったりしていても、私が今ここに在ることのための原点の一部になっていることと頂かなければならないのでしょう。そのように思う時、知っている人ばかりでなく、忘れてしまった過去のことまでが、私の今このようにあることのために働いているばかりか、私の未来に対して押し出していることに感謝しなければならないのでしょう。
夫婦、親子、家族、兄弟姉妹の間で、ちょっとしたトラブルがあった時、お内仏(お仏壇)の前に座ってみませんか。
お内仏の中には、紙に書かれた阿弥陀如来様と、ご先祖様の法名がかかれたものが入っているだけで、私が得をしたり、私を助けてくれたりする力はないけれど、一寸普通とは違う場所を感じることができるのではないでしょうか。
現代でいう、そこへ行くと元気が出たり、気持ちが落ち着いたりするパワースポットではないでしょうか。
新しく作られたパワースポットは大いに宣伝するけれど、古いものや、長く伝えられているもの、自然に作り上げられた造形など経済の足しにならないものは、新しい輝きに変えてしまうことが多い現在ですが、古いけれども心に残る景色や、感動する形がたくさんあります。
古い時代から人々の心の中で育てられてきた場所を、もう一度見つめなおしてゆくような社会を考えてみたらいかがでしょうか。
そんな場所が、お墓やそれぞれのお家のお内仏の前になるのではないだろうか。

生老病死

当院 井上宗温

この4月から長男が、小学1年生になりました。大きくなったなあ、と思うのと同時に、もうそんなに時がたったのかという思いもあります。
長男が生まれた時はまだ三十代前半だった私が、今はもう四十を過ぎました。
あの頃の自分は、こんなにすぐに歳をとるとは思ってもいませんでした。それだけ、昔に比べて時が経つのを早く感じるようになってきたということでしょう。
歳をとると経験した事が増える分、新しい刺激が少なくなり、時が経つのを早く感じるようになるというのはテレビ等で聞いた事があります。
また、他にも老いを感じる事が先日ありました。それは生まれて初めて入院して手術を受けたという事です。尿路結石ができ、それを手術で取り除いたのですが、所謂生活習慣病というものです。若い内は好き勝手に生活して体に無理をさせても問題なかったのが、段々とそうはいかなくなってきた。入院手術で痛い思いをして、やっとその事にすこーし気が向くようになりました。
仏教では「生老病死」という四つの苦しみが〜 と、これまで分かったような気になっていましたが、「老病」というものが本当に自分自身の問題なのだという事がやっと見えてきたように感じます。どうやっても避けて痛る事ができない事、それが「苦」なのだ、と。
それでも、同じ頃に入院手術されたご門徒さんから「若いと術後の回復が早くていいね」等の言葉を頂き、まだまだこの先があるんだなぁなどと感じています。

本年の同朋会

5月15日(水)の同朋会は、北信濃の井上氏と聞光寺について、昨年の秋に、現地を散策しながら聞いたお話を、今度は柏崎で、四百年ほど前に聞光寺が、北信濃から越後に移住してきた時代を偲び、檀家の皆さんと戦国時代の聞光寺の事を聞こうと思い、長野若穂郷土史研究会の方に来ていただき、お話ししていただく予定です。
また、6月14日(金)の同朋会は、信濃から越後に移ってきた井上氏を名乗る寺院のことについて、上越市頸城区の福浄寺住職からお話をいただく予定です。
そして秋の研修会は、約八百年前、聞光寺開基「宗観」が出家得度した下総国磯部の勝願寺(現上越市田の瑞泉寺)(勝願寺は茨城県古河市に現存)や、親鸞聖人の足跡をたどっての二泊の研修旅行にしたいと思っています。
日程ははっきり決めてはありませんが、9月下旬か10月上旬の予定です。今から時間を作っておいてください。多くの皆さんと出かけられることを楽しみにしております。