ホーム サイトマップ プロフィール 作品紹介 読書ノート 宮沢賢治
ご案内 blog(日記)  街 (山口) リンク

書庫の中のノート

工 房 日 誌 2009年1〜3月

2009年 3月22日

あまりに長くご無沙汰してしまい、「元気なのか」とお問い合わせをいただきました。ええ、ふつうに「元気」です。ちょっと怠け者になっておりますが。

今月中旬は、市立図書館が資料点検のために休館しており、駆け込みで借りておいた限度いっぱいの本をほとんど読み尽くして、心許ない思いをしました。今再び、どっさりと借りてきて、思う存分読みあさっているところです。

過去に、山口市の中原中也記念館と山口市立図書館と、両方の施設に仕事上で関わることがあって、文学館と図書館というのは、似ているようでありながら、使命のかなり異なるものだなあと痛感しています。
図書館の中でもとくに住民に密着した市町村立の図書館は、今の住民の資料に対するニーズに応えることが重要で、文学館は現在から未来に渡って資料を保存し、研究に寄与することが重要になります。図書館でも、国立国会図書館は日本中の出版物を後世の国民のために残すことが重要な使命ですから、自覚や責任能力で劣る(かも知れない)20歳未満の国民の利用を制限しますが、街の公共図書館は幼児が絵本を何度破っても、幼い子どもへのサービスを止めたりはしません。
また、資料の提供のしかた、扱い方に関しても、違いがあります。
文学館にとっては、出版物に付属した帯なども貴重な資料の一部であり、この点は古書店でも同じです。ここに印刷された宣伝文句に、ひょっとしたら文学史上の謎を解く鍵が隠されているかもしれません。それほどでなくても、当時の世情を知る手がかりとなります。
一方、図書館では、帯は書架に並ぶ前に装備する段階で惜しげもなく捨てられます。大勢の人が手に取るにあたって、頑丈で読みやすい状態にすることが何よりであり、帯はむしろ邪魔になります。
50年後の文学者がある小説の初版の帯と文学賞受賞後の帯を見くらべたい、という研究目的を持って図書館を訪れても、得られるものはありません。
文学館では、その情報が保存されているかも知れません。
公共図書館と文学館は、目的の異なる施設だからです。

さて、この20日に、ひこ・田中さんから「緊急アピール」というメールが届きました。個人的なメールではなく児童文学に関心を持つ不特定多数に配られたものですが、「緊急」なのに今まで放っていて、すみません。
話題は例の、大阪の児童文学館廃止にまつわることです。
宮本大人氏(北九州市立大学文学部准教授、日本マンガ学会理事)が議員諸氏に送られたメールが引用されていました。下に宮本氏のブログへのリンクをはっておきます。

http://d.hatena.ne.jp:80/hrhtm1970/20090320/1237487380

私は、財源を無視したバラ色の公約をする政治家には不信感を持つ者ですが、一旦中断することで価値を大幅に失う事業を切り捨てることは、長い目で見て、取り返しの付かない損失を招くものと思います。文学館のような施設は、長く存続することに大きな意味があるものです。損得勘定だけで云うなら、公共団体が運営する文化関連施設は日本中から消えるでしょう。
限られた財源の中で、何を残し、何を諦めるか。
それは現在の地方自治体にとっては、どこでも悩ましく苦しい選択ですが、その判断を経済的な視点だけで行っては、後世の日本人に恨まれることになるでしょう。

2009年 2月24日

『テメレア戦記』の第2巻と『天山の巫女ソニン』の第4巻をまとめて読み上げました。今のところ、シリーズ化されたことを大いに歓迎しているシリーズはこの二つです。

竜が登場するフィクションの中で、『テメレア戦記』はかなり異色です。ナポレオン時代の現実の歴史がベースになっていますが、そこにドラゴンが存在して、ヨーロッパ各国の空軍の戦力として戦っています。一方で、中国では竜はまた違った扱いを受けています。この違いがいかにも西洋のドラゴンと東洋の竜の違いを象徴しているようで興味津々です。ドラゴンが魔力のこもった古代語などをしゃべるのではなく、卵のときに学習して、英語やフランス語や中国語を操るというのもほほえましいです。幼竜から若い竜に成長しつつあるテメレアの今後が楽しみです。

2009年 1月27日

先週末からこの冬一番の雪になり、通勤に一苦労しました。土曜日の朝は苔が生えた程度の厚さに積もっているだけでしたが、帰るころにはどんどん雪の厚さが増していき、1分でも早く帰らなくては、と歯を噛みしめて(転んだときに舌をかまないように)自転車のペダルを踏みました。日曜日は非番だったので、当番の同僚には申し訳ないけれど、ぬくぬくとした朝を過ごさせてもらいました。
その雪もどうやら溶けました。今日は久しぶりの好天です。

このあいだからナオミ・ノヴィクの『テメレア戦記』を読んでいたのですが、期待以上におもしろいです。近ごろ、翻訳物のファンタジーが多すぎて、本物に出会う確率が低くなっているのが残念なのですが、この作品は最初の数ページからこれはおもしろいだろうな、と予想しました。そして、思ったとおり、ユニークで魅力的な作品でした。
ドラゴンが登場する西洋の異世界ファンタジーは、私としてはあんまり好みではないのですが、『テメレア戦記』はひと味違う趣向になっています。

それにしても『〜戦記』といった大同小異の題名のファンタジー群から、ほんとうにおもしろい本を見つけ出すのはなかなか困難になってきました。初めて『ゲド戦記』を読んだころは、翻訳されたファンタジー(つまり、外国語からわざわざ日本語に訳す手間を掛けても紹介したいと思うほど質が高い)であれば、まちがいなく愛読書になったものですが。
もっと個性のある邦題が必要かもしれないと、そんな気もします。とくに原作者が新人などで知名度が低い場合。

2009年 1月13日

「バーティミアス」を第2巻まで読んで、長いことそのままにしていましたが、ようやく最終巻の『プトレマイオスの門』を読みました。最後の巻だけ置き去りになっていたのは、第1巻と第2巻にほどほどの興味を持ちつつも、近ごろ洪水のように翻訳紹介されている異世界ファンタジーの一つだと思って、さほど心に留めることがなかったせいです。

「バーティミアス」は2巻で読むのを止めてしまうのと、最後まで読み終えるのとでは、まるっきり印象が変わってしまう作品でした。思い立って、最後まで読む気になって良かったと思います。

シリーズ物のファンタジーでの中には、第1巻がいちばん面白くて、あとに行くほどつまらなくなるけれども、先のストーリーが気になるために読み続けられてしまうという、だらだらしたエンドレス型シリーズが少なくありませんが、「バーティミアス」のようにこれだけきっちりと完了すると、すっきりします。全3巻の作品として感動しました。

2009年 1月7日

ダイアナ・ウィン・ジョーンズの本を何冊も借りてきて、どれを読もうかと迷っている話を年末に書きましたが、結局、ル=グウィンの「西のはての年代記」の最終巻『パワー』を読みました。先の2巻『ギフト』『ヴォイス』もそれ相応に面白かったけれども、『パワー』は読書の醍醐味を感じさせる作品でした。
派手な事件を並べ立てるような書き方でなく、日常のできごとを丹念に書いて、じっくり読ませ、それをとても面白いと感じさせてしまうのです。といっても、身辺雑記を書いたような作品ではなく、日常の積み重ねの間に、波瀾万丈の日々があるのですが。

読後は、『パワー』の主人公の影響で、無性に本を読みたくなりました。でも、半端な物を読むのはかえって興ざめなので、フィクションの本は図書館に返してしまいました。そんなわけで、永井荷風の訳した『珊瑚集』などを久しぶりに手にとっています。以前よりも言葉が身にしみるような気がしました。

2009年 1月3日

中学校の同窓会に行ってきました。毎年、1月3日に同級生がやっている中華料理店で開いています。今年は先生も4人ほど参加されました。昨年、一昨年は欠席したのですが、今年は出かけてみんなに会ってきました。ほとんどは山口市内かその周辺の住人ですが、東京や大阪から参加した人もいます。
中学校を卒業してすでに30年以上が経つのに、いまだに和気藹々と話が弾むのは、もともと私たちの学年が男女を問わず仲が良かったからでしょう。加えて、毎年会場を提供して、自分はほとんど話に加わる間もなく私たちにおいしい料理を提供してくれる中華料理店経営の同級生と、幹事として消息が知れる限りの人に連絡を取り、熱心に世話を焼いてくれる広島在住の同級生のおかげです。

もしも、山口市立白石中学校を昭和52年に卒業した人(または、その学年で途中まで在籍していたという人)がこれをごらんになっていましたら、トップページの封筒からメールでご連絡ください。その中華料理店主人ことC君が白中同窓会のホームページを作ってくれていますので、返信メールでURLをお知らせします。近いうちに同窓会の模様が写真でアップされると思います。(掲示板の記事も閲覧できます。もちろん書きこみも)

うちわの事務連絡みたいな記事に終始しまして、関係者以外の方には失礼しました。

2009年 1月1日

あけましておめでとうございます。
まだ、年が明けてあまり経っていない真夜中です。
なんと1年ぶりに宮沢賢治のページの「童話の一言」&「心象スケッチの一言」を更新しました。日誌だけはそこそこ書いていますが、それ以外の記事をアップするのはひさしぶりです。
近ごろは、読んだ本の断片的な感想などで記事を埋めてほそぼそと運営している状態ですが、滞ることはあっても閉鎖せずに続けていきますので、これからもどうぞよろしくお願いします。

上に戻る

Copyright (C) 2004-2009 waki hiroko