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書庫の中のノート

工 房 日 誌 2009年4〜6月

2009年 6月30日

今日で2009年の上半期が終了したわけですが、6月にして読書冊数が100冊を突破しました。読書量だけは完全に復活できたようです。

今年になって読んだ本のうち、これは掘り出し物だと思ったのはナオミ・ノヴィクの『テメレア戦記』。すでに本国で大人気となっている作品に「掘り出し物」は失礼かも知れませんが、予備知識がないまま、それほど大きな期待を抱かずに読み始めたので、満足感は『パワー』(「西のはての年代記」3/ル=グウィン)のようにあらかじめある程度の期待感を持っていた作品以上となりました。

ライトノベルで面白かったのが、毛利志生子著『風の王国』シリーズと支倉凍砂著『狼と香辛料』シリーズ。目を通してみた大抵のライトノベルは、だいたいが第1巻で読むのをやめましたが、この2作品は新刊が出るのを楽しみに待つほどになりました。読書好きのティーンズ向けであると同時に、大人向けでもあります。
チベットの古代史を扱った『風の王国』は、いかにも私が好みそうな舞台設定なので、好きになっても意外ではありませんでしたが、『狼と香辛料』に夢中になるとは思ってもみませんでした。背景には経済の法則、前面には商人同士の駆け引きがあり、このあたりでもう縁のない世界の話だと思いそうなものなのに、しっかり掴まれてしまいましたね。登場人物(狼、神?)についていえば、『風の王国』が想定内に魅力的であるのに対して、『狼と香辛料』は想定外に魅力的でした。
でも、『風の王国』の方は、物語が至るべき所に到達したら、作品の幕をさっと閉じて撤退するだろうと安心していられるのですが、『狼と香辛料』はずるずると旅の経路を引っ張って、作品全体を損なってしまうのではないかと、それが心配です。
人気絶頂の作品を、人気が衰える前に自発的に終わらせることが、「経済の法則」「商人の駆け引き」として、この分野でできるものかどうか……。

2009年 6月28日

しばらく注意を払わないでいたうちに、リブリオ出版の作曲家の物語シリーズが20巻まで出ていました。まだ『バーンスタイン』と『ショパン』と、最近出たばかりの『メンデルスゾーン』を読んでいません。(『ビゼー』は19巻目ですが、3月に読みました。)
1巻毎に出るのを楽しみに待っていたのに、こんなに溜めてしまうとは。
さっそく『ショパン』を読んでいますが、一番楽しみなのは『メンデルスゾーン』です。バーンスタインは個人的に指揮者のイメージの方が強くて。

このシリーズは私にとって創作意欲をかき立てる特効薬のようなものです。主人公である作曲家が曲づくりに心血を注ぐ様子に、自分自身も何か書きたいという思いに駆られるのでした。
ずっと『メンデルスゾーン』を書いて欲しいと願っていましたが、次は『シューマン』をリクエストしたいです。
まだ読んでいない巻を読み終えたら、『チャイコフスキー』『ブラームス』『シューベルト』を再読したいと思います。
しかし、一人でここまで多くの作曲家を手掛けられるとは、ほんとうに大変なお仕事ですね(20巻中、『ドヴォルジャーク』だけは、黒沼ユリ子著)。
著者のひのまどかさんは、どう考えても私より年上でいらっしゃるはず(初期の著書の刊行年から察して)なのに、よくこれだけのエネルギーを持続できるものだと驚嘆します。私くらいの年齢で、老けたとか衰えたとか疲れたとか言うのは、横着というものかもしれません。

2009年 6月21日

「ヒルクレストの娘たち」の再読は着々と進んでいます。もうじき『海を渡るジュリア』が終わりそうです。次の『グウェンの旅だち』も、今日、借りてきました。

おもしろいと言える本はあっても、何度も読み返したいような本には、なかなか出会えません。このシリーズはかなり当たりだったのだな、と思います。
気に入った巻だけ買う、というようなケチなことをしなくてよかったです。4巻揃ってこそ、また味わえる醍醐味がありますから。今回は、図書館で4巻まで読み返すことになりそうですが、買うのなら既刊を全部買うことになるでしょう。今のうちに買っておかないと、絶版になったりしたら、かなり後悔するでしょう。

2009年 6月7日

『丘の家のセーラ』を読み終え、予定どおり『フランセスの青春』に取りかかりました。思えば、ほぼ20年ぶりの読み返しになります。当時私はすでに子どもではなかったけれども、主人公たちに自分を重ね合わせ、若い人の感じ方で読んでいたのだと、読み返して思いました。
『丘の家のセーラ』は全編に渡って再発見だらけでした。『フランセスの青春』は4巻のなかで一番好きだったけれども、今はどう感じるでしょうか。

幻の5、6巻については、前回の記事をアップしたあと調べてくださった方があって、結局、はっきりしたことはわからないようでした。4人姉妹が主役を一巡して終わるという現在の形でも、完結しているようにも受け取れますが。

2009年 5月31日

『ホームレス中学生』に引き続いて(直後ではありませんが)、『ホームレス大学生』を読みました。弟の視点から語られたのと同じできごとを、改めて兄の視点から語られるという試みがおもしろく、「ヒルクレストの娘たち」を思い出しました。
つまり末っ子セーラのあとに長女フランセスの話が続いたという趣向です。これでお姉さんが『ホームレス高校生』という本でも出したら、次はジュリアの話ということになります。そこまで悪のりはしないでしょうけれど。

田村兄弟に触発されて、ほんとうに久しぶりに『丘の家のセーラ』を読み返しています。読み終えたら、ほんとうに『フランセスの青春』も読んでみるつもりです。このシリーズは全6巻になるはずだったのに、あとの2巻はどうしたのでしょうか。私が知らないだけで、打ち止め宣言とか、何かまずい事情ができたとか、作者に何かあったとか……。このまま続きを待っていて報われる日は来るのでしょうか。

2009年 5月17日

中川なをみさんの新刊『龍の腹』が図書館に入ってきました。今、誰かが借りているようです。予約を付けようかな、と思ったのですが、他にも予約した本が数冊、同じタイミングで貸出可能になっているので、自然に返ってくるのを待つことにしました。
『水底の棺』を思い出します。期待大。

2009年 5月10日

雑誌「山と渓谷」の2008年12月号に、あさのあつこさんのエッセイが載っていました。何で今頃12月号を読んでいるかというと、図書館の雑誌コーナーで偶然に見つけたものです。もう全く違う分野の人たちにも、名前だけで通用する人になってしまいましたね。

2009年 5月9日

誉田龍一『なにわ春風堂』全3巻を読み上げました。
それぞれのサブタイトルになっている「なぞの金まき男」とか「首だけのお化けが笑う」などは、その短編のタイトルとしてはよくても、本全体の雰囲気には合っていないように感じました。子どもの好奇心をくすぐるために、わざとそれを選んだみたいで。
一気に楽しく読める本なのは確かですが、怪奇もののような楽しさを期待するとあてがはずれます。良い意味でまじめな、歴史好きには心惹かれる時代読み物だと思います。
大阪出身の作者が愛情をこめて「大坂」(当時)を語った作品だとも読めます。
歴史上の有名人があちこちにさりげなく「仕込まれて」いるので、子どもの読者が大きくなったとき、どこかで(例えば歴史の授業などで)「あっ、この人知ってる!」と思い当たることになるのではないでしょうか?
少し前に『月のえくぼを見た男 麻田剛立』を読んだところだったので、そのつながりでにんまりするところもありました。

2009年 5月3日

児童文学、とは言えないかもしれませんが、佐藤多佳子さんの『夏から夏へ』を読んでいます。実在の陸上選手たちを物語るもので、『一瞬の風になれ』の創作の楽屋を見せてもらっているような気がします。

ゴールデン・ウィークは、本を読んで過ごすくらいです。うちの職場はあまりたいした連休にはならないので。本を借りられるだけ借りて帰ります。

2009年 4月28日

小中学生の頃、読書感想文の課題図書というのには見向きもしませんでした。私にとって、年に一度の読書感想文コンクールは、その1年間に読んだ中で最も感動した本を公に紹介する機会でした。だから、前の年の秋でも、冬でも、とっても感動した本に出会えば「よし。来年の感想文はこれでいこう」などと、ほんとうに考えていたものです。そして、その通り実行していました。宿題としていやいや取り組むのではなく、本好きの人がブログで気に入った本の紹介をしているみたいに、楽しんでやっていました。どの本を選ぶか、いかに上手く書くかは、楽しみの一つでした。

中年になった今では、課題図書にも手を伸ばすようになりました。夏休みが近づいてくると子どもたちの宿題に考慮して遠慮しますが、発表されたばかりの頃や、忘れられた頃には、どんな作品なのか読んでみたくなります。
意外と課題図書には面白いものが多いです。さすがに選ばれた本だけのことはある、というべきでしょうか。好みの問題もあって、すべてが気に入るわけではありませんが。また、すべてを読むわけでもありませんけれど。

幸いなことに、今の私には読書感想文を書く義務がありません。気に入ったときだけ、気が向いたときだけ、この「工房日誌」などに感想をつづっています。

2009年 4月22日

『縞模様のパジャマの少年』は高校生の読書感想文課題図書になっていました。先日書いた「小学校高学年以上」というのは、かなり無理があったようです。
これは主人公と同化するのではなく、主人公と読者の視点に距離があるからこそ、おもしろいのだと思います。
結末は、読むのが苦しくなるのではないかと恐れていましたが、そんな不快な場面はなくて、それだけに、あとからじわじわ滲みてきます。

2009年 4月20日

『縞模様のパジャマの少年』を読了。
題名と表紙からは重苦しい作品のような印象を受けていたのですが、書かれていることは重いけれどもおもしろい作品でした。内容を考えれば「おもしろい」というのは不謹慎かも知れませんが、表現のしかたとして、おもしろかったです。
主人公は坊ちゃん育ちの9歳で、ナチス政権下の社会の動きが全くわかっておらず、その幼さと無頓着さにはらはらしたり、いらいらしたりさせられました。この本の対象となる読者は中学生以上、少なくとも小学校高学年以上になると思われますから、作品の社会的背景をある程度わかっている読者と、全く理解していない当事者のギャップが興味深く、こんな描き方もあるのかと思いました。

2009年 4月12日

昨日は午前中、病院に行き、午後からは美容院に行き……、待っている間にかなり読書がはかどりました。
こういうとき持ち込む本の第一条件は、小さくて軽いことです。待合室に長時間座ることになりそうなときは、前の日のうちに文庫か新書を用意しておきます。
子ども向けの本を多読しておりますので、ちょっと人に見られるには恥ずかしい表紙もあります。ふだんは別にかまわないのですが、見ず知らずの人たちといっしょに待つ場所では、「いや、じつは私は児童文学に興味があり、ヤングアダルトも読んでおりまして……」などと説明はできません。漫画風のかわいすぎるイラストが派手に表紙を飾っていたら、そっとブックカバーを掛けておきます。

2009年 4月8日

夜も遅くなっての更新ですが、今日で物語工房は5周年を迎えました。
40過ぎてからの5年間でも、5年というのは人間にとってやっぱり長いです。5年前は元気だったなあ、と情けない感慨に耽っています。
もう長いこと作品を書いていませんが、意外なところで佳い作品に出会うと、ここまでやらなければだめなんだ、中途半端な作品を書いて仕上げたつもりになっていてはいけないんだと、顧みるゆとりが出来ました。
ここ1〜2年、脳みそは確実に老化しつつあり、どこまで柔軟さを保っていけるものか、どれだけ経験や蓄積で補えるものかわかりませんが、なんか自分は「終わっちゃった」のかな、と思うときもありますが、まだ現役であることを諦めまいと思います。

5周年の祝賀のメールをくださった方、ありがとうございました。

2009年 4月7日

しばらく思いっきり楽しめる本に出会えずにいましたが、竹下文子さんの『そいつの名前はエメラルド』を読んで、ようやくさっぱりしました。私の読書傾向からすると低学年向きで、あっというまに読み終えてしまいましたが、作者の名前に期待して読み始め、満足して終わることが出来ました。
以前から図書館の書架で背表紙を見かけ、なんとなく目について、気になってはいたのです。

あすはいよいよ、物語工房の開設5周年です。

2009年 4月1日

いろんな本を読みかけては、あまり興味を持てずに途中で閉じてしまうということを繰り返しています。
選んだ本がつまらなかったのか、私の集中力が散漫になっているのか?
おもしろいとわかっている本を繰り返し味わいたくなりました。

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