深川界隈を歩く

2021年6月






 
都営地下鉄森下駅 A-1出入口
 森下駅A-1出入口と新大橋通り

 今日散歩をしようと思っているこの深川は、東京都区部の中心よりやや東側に位置する、歴史ある下町であり寺町なのでありますが、狭義には現在の町名、江東区深川(一丁目・二丁目)地区であって、広義にはもっと広い地域、明治の頃の旧東京市深川区の一帯という事になる訳です。そしてちょっとややこしいけど、一般的に「深川」と言った時には後者のエリアを指す事が多い訳でありまして、今日の散歩も後者の「深川」エリアを歩いてみようと思います。

 ・・・と言う事で前置きはさておき、今日はここ都営地下鉄大江戸線・新宿線の森下駅からスタート。取材時にはこの様に、工事中の為に足場が組まれていた駅のA-1出入り口を出て、目の前を走る都道の新大橋通りを左方向へと歩いて行きましょう。





新大橋交差点を左折
 新大橋交差点を左折

 因みにワタクシ事ではありますが、この深川にはご先祖様からお世話になっている我が家の菩提寺があるので、子供のころから親しみのある街なのではありますが、改めてこうやって歩いていると、今まで気づかなかった新しい発見や変化があったりするから、散歩ってとっても楽しい。

 新大橋通りを歩く事200m足らず、万年橋通りと交差する新大橋交差点を左折します。





芭蕉記念館
 芭蕉記念館

 万年橋通りに入り更に200m程歩いて行くと、右手に江東区芭蕉記念館が見えて来ました。名前の通りこの施設は、ここ深川に居を構えていたご当地ゆかりの俳人、松尾芭蕉(1644-1694) の博物館です。観覧料金は一般200円。





芭蕉記念館展示室
 芭蕉記念館展示室

 小さな施設ではありますが、館内では常設展示コーナーや企画コーナーなどで、芭蕉に纏わる多くの貴重な資料や文化財が展示公開されているんです。





日本庭園
 日本庭園がありました

 施設の脇には、小さな日本庭園が設けられていました。有料の記念館の利用が無くても、こちらは出入り自由。





裏木戸を抜けて
 裏木戸を抜けて

 この後は、芭蕉記念館の分館にあたる芭蕉庵史跡展望庭園へと向かいます。今まで歩いてきた万年橋通りをそのまま先へと進んで行っても良いのですが、今日の所はこの日本庭園を眺めながら施設の裏手へと廻り、裏木戸を抜けて敷地外に出たら左方向へ。





隅田川沿いに進む
 右手の堤防の向こうは隅田川

 右手のコンクリート塀の向こう側には、見えないんだけど隅田川が流れていて、川岸の遊歩道隅田川テラスが整備されているんです。





史跡庭園入り口
 史跡庭園入り口

 隅田川の堤防沿いに250mほど歩いて行くと、正面に芭蕉庵史跡展望庭園入り口の門が見えて来ました。





清州橋と墨田川
 清州橋と墨田川

 石段を上って行くと一気に展望が開けます。隅田川上に見えている吊橋は、昭和3年竣工の清州橋。隅田川に架かる橋、いや・・・、東京の橋の中でも、そのデザインの美しさでは一・二を争う程の橋で、国の重要文化財に指定されているんです。





松尾芭蕉像
 松尾芭蕉像

 小さなスペースではありますが、流石は展望庭園。その名に恥じず庭園からの眺めはGoodです。実はこの施設、芭蕉記念館の分館となっている、貸出会議室が入った建物の屋上に造られていたんです。ふと気が付くと主の松尾芭蕉さんを発見。彼もこの場所から、隅田川の長閑な流れを眺めてました。





石段を下りて右折
 石段を下りて右折

 石段を下って展望庭園から下りて来たら、目の前の通りを右方向へと進みましょう。





芭蕉稲荷神社
芭蕉稲荷神社

 50m程歩いた左手に、小さな社がありました。これは芭蕉稲荷神社。松尾芭蕉が愛玩していた石造りの蛙が、大正時代にこの場所で発見された為に、芭蕉が創作の拠点として居住していた草庵が、この近辺にあったのではないかと考えられていることから、地元の人々がここに芭蕉稲荷を祀ったのでした。





右折して万年橋通りへ
 右折して万年橋通りへ

 芭蕉稲荷神社のすぐ先で、歩いて来た通りは万年橋通りと交差します。これを右折して、再び万年橋通りへと入って行きましょう。





万年橋
 万年橋

 間もなく見えて来たこの橋は、通りの名前になっている万年橋。そして橋の下を流れる川は小名木川。隅田川へと繋がる運河です。これを渡って更に先へ。





前方の小さな交差点を左折
 前方の小さな交差点を左折

 途中、清州橋通りとの大きな交差点を越えて、万年橋通りを道なりに歩く事およそ300m余り。前方、通りの左側に緑溢れる大きな公園が見えて来ました。これは清澄公園。そして、公園手前の小さな交差点を左折すると、清澄庭園・中村学園通りと呼ばれる小さな通りに入ります。





公園内の散策路を歩く
 公園内の散策路を歩く

 この通りをそのまま直進しても良いのですが、折角なので今日は清澄公園を歩く事に。すぐに公園内に入って、通りと並行して延びる散策路をおよそ200mほど進んで行きましょう。





清澄庭園 正門
 清澄庭園 正門

 清澄公園内を西から東へ横断したら、公園の外へ。すぐに目前に現れたのが今日の目的地の一つ、清澄庭園の正門です。入園料一般150円。





大泉水
 大泉水

 元々この場所には江戸時代中期の大商人、紀伊國屋文左衛門の屋敷があったと云われ、その後に大名の下屋敷となりました。そして明治11年、三菱財閥の創設者である岩崎弥太郎(1835-1885) がこの地を取得、旧三菱社員の慰安や内外の賓客接待の為の施設として整備・造園し、深川親睦園と名付けられて開園する事になります。





富士山
 庭園の築山 「富士山」

 そしてその後も造園工事は弟の岩崎彌之助、長男の久彌へと、三菱財閥の歴代総帥が引継ぎ、明治24年に泉水・築山・枯山水を主体とした廻遊式林泉庭園が完成したのでした。





伊勢御影石の井戸(組井筒)
 伊勢御影石の井戸(組井筒)

 しかし、その後の大正13年に発生した関東大震災によって、およそ3万坪の庭園のうち、主に西側の半分が大きな被害を受けてしまいます。そして、震災被害の比較的少なかった東側半分が岩崎家から当時の旧東京市に寄付されて、昭和7年に清澄庭園として復旧・開園し現在に至ります。因みに被害の大きかった西半分もその後整備されて、開放公園となったのですが、それが今さっき歩いて来た清澄公園なんです。





摂津御影石の水鉢
 摂津御影石の水鉢

 庭園の見どころの一つは名石の数々。岩崎家が自社の汽船で全国各地の石の産地から沢山の名石を運び込み、それ等数々の名石が庭園内のあらゆる場所に配置されているんです。





正門を抜けたら右へ
 正門を抜けたら右へ

 庭園の正門まで戻ったら、目の前の清澄庭園・中村学園通りを右方向へと、清澄庭園をあとにしてそのまま進んで行きましょう。





清澄通りを右へ
 清澄通りを右へ

 150m程先で交差する大通りは清澄通り。ここを右に折れて清澄通り沿いを歩きます。





清澄通りを渡って、前方の通りへ進入。
 清澄通りを渡って、前方の通りへ進入。

 そして50m程進んだ左手にある、信号機付きの横断歩道で清澄通りを渡り、更にその先へと延びる小さな通りへと入って行きましょう。これは深川資料館通り





深川資料館通り
 深川資料館通り

 交通量の激しい清澄通りを外れて深川資料館通りを歩く事100m足らず、左手に見えて来たお寺は霊巖寺ここには江戸六地蔵の第五番に数えられる、1717年に造立された地蔵菩薩像が鎮座しています。





霊巖寺本堂
 霊巖寺本堂

 江戸六地蔵とは旅の安全を祈念するため、江戸に出入りする主要街道の玄関口となる6箇所に造立されたもので、東海道を守護する品川の品川寺や、中山道を守護する巣鴨の真性寺などがあって、ここ霊巖寺の地蔵菩薩は水戸街道を守護しているんです。





地蔵菩薩坐像
 地蔵菩薩坐像

 とは言え、江戸時代に水戸街道の起点は、この場所から北へ6km余り離れた千住の宿だった訳で、という事になると霊巖寺の地蔵菩薩と、水戸街道の間に相関関係が見つからないんです。色々ワタシなりに調べたんですが、やっぱりこれは不明、謎です。 ごめんなさい・・・ 思うに、当時の関係者が何かの理由で無理やりこじつけたのではないかと。





松平定信の墓所
 松平定信の墓所

 霊巖寺にはこの他境内の一角に、寛政の改革でお馴染み、老中松平定信(1759-1829) の墓所もあります。





深川資料館
 深川江戸資料館

 深川資料館通りに戻って50mほど進むと、通りの名前にもなっている深川江戸資料館がありました。館内展示室の観覧料金は一般400円。





館内展示室
 館内展示室

 展示室のメインテーマは、江戸の町並み再現。それ程広くない屋内のスペースに、よくもまぁこれだけ沢山の建物を再現できたと思うほど、江戸時代の深川の町がそこには在りました。





江戸の町並みを再現
 江戸の町並みを再現

 八百屋や米屋などの商店、長屋、船宿の他、火の見櫓や川岸の船着き場まで再現されています。館内の照明が明るくなったり暗くなったりして、朝から真夜中までの24時間を演出してる所なんか、けっこう芸が細かい。





家の中も覗けます
 家の中も覗けます

 家屋の中も手抜きなく、バッチリ再現。これは長屋に住んでいる三味線の師匠、おしづさんの部屋なんだって。当時の江戸庶民の生活が目に浮かびます。





深川資料館通りを引き返す
 深川資料館通りを引き返す

 深川資料館通りに戻ったらこの道を引き返して、再び清澄通りへ。





再び清澄通り
 再び清澄通り

 これを左折して、寺町深川を清澄通り沿いに、南方向へと進んで行きましょう。





法乗院
 法乗院

 清澄通りを600m余り歩いた左手に見えて来た寺院は、真言宗豊山派の寺、賢臺山法乗院





法乗院 本堂
 法乗院 本堂

 深川ゑんま堂と呼ばれて親しまれて来たこの寺院の創建は古く、江戸時代初期の1629年です。





ハイテク閻魔様
 ハイテク閻魔様

 現在の閻魔座像は平成元年に建立された、座高3.5m、体重1.5tの巨体です。この閻魔像のユニークな所はコンピューター制御のハイテク仕様でありまして、お賽銭を入れると閻魔様のありがたい説教が、色々と聞ける仕組みになっているんです。





深川1丁目交差点
 深川1丁目交差点

 葛西橋通りと交差する深川1丁目交差点を越えて、清澄通りを更に南下する事にしましょう。





門前仲町交差点を左折
 門前仲町交差点を左折

 深川1丁目交差点からおよそ300mほど進んだ先に、永代通りと交わる門前仲町交差点がありました。これを左折して、永代通りへと入ります。





深川不動堂 赤門
 深川不動堂 赤門

 そして永代通りを250m程進むと、左手に大きな赤い門が見えて来ます。これは成田山深川不動堂の山門。地元では「お不動さま」と呼ばれ親しまれている寺院で、千葉県成田市にある、あの成田山新勝寺の東京別院なんです。





旧本堂
 旧本堂

 通称赤門と呼ばれている深川不動堂の山門をくぐって参道を進んで行くと、正面に旧本堂が現れました。これは平成23年まで本堂として使用されていたもので、現在の本堂はこの左手にある、鉄筋コンクリート造りのモダンな建物です。





西側 石造鳥居
 富岡八幡宮西側 石造鳥居

 深川不動堂の東側にほぼ隣接してある大きな神社は、富岡八幡宮。「お不動さま」から「八幡さま」へと移動するのには、神社西側にあるこの石造鳥居をくぐるのが最短。

 ところでこの鳥居、ちょっと気になる事があるんです。と言うのも、笠石と呼ばれる上の横柱に比べて、貫石と呼ばれる下の横柱の方が妙に綺麗に見えるんだよね。そこで色々と調べてみたら、富岡八幡宮のオフィシャルブログにその答えを見つけました。それに依ると元は文化2年(1805年)に奉納されたこの鳥居、平成23年の東日本大震災で貫石が破損したために、その年に新しいものと取り替えたらしい。更に上の笠石も大正12年の関東大震災の時に破損して補修されたらしく、柱の中心を境に左右のパーツの年代が違うらしい。





富岡八幡宮 本殿
 富岡八幡宮 本殿

 富岡八幡宮の創建は1627年。この神社で毎年夏に行われる「深川祭」は、神田明神の「神田祭」、日枝神社の「山王祭」と並んで、江戸三大祭りに数えられているんです。





横綱力士碑
 横綱力士碑

 ここ富岡八幡宮の境内では江戸時代より、勧進相撲と呼ばれる幕府公認の相撲興行が行われていました。そしてこれが、現在の大相撲のルーツとされています。ご覧の石碑は明治33年建立の横綱力士碑





伊能忠敬 銅像
 伊能忠敬 銅像

 この銅像の人物は、江戸時代に測量家として日本全国を歩き廻って測量し、日本最初の測量日本地図を完成させた伊能忠敬(1745-1818)。彼が隠居後の50歳になって、それ迄住んでいた下総国(現・千葉県北部近辺)から江戸に移って居を構えた場所がこの富岡八幡宮の近くだったんです。だから、しばしばこの神社を参拝していたらしい。びっくりするのは、日本全国への測量の旅に出て地図を完成させたのは、なんと隠居して江戸に出て来た後なんだって。当然、当時は現在と比べて平均寿命・余命はグッと短かったでしょうから、相当のパワフル爺さんだったって訳。すばらしいデス。





合末社鳥居
 合末社鳥居

 画像正面に見える社では八つの末社が一緒になっているのですが、その手前の鳥居をよく見たら、なんと2本の柱が建っているだけ。実は昭和12年に建立されたこの合末社の鳥居、昭和20年3月の東京大空襲で被災して、上部が崩壊してしまったのでした。この時の空襲では、他にも神社の大部分が焼失してしまったらしい。





大鳥居と正面参道
 大鳥居と正面参道

 そろそろ今日の深川散歩も、フィナーレが近づいて来ました。朱色の大鳥居を抜けて神社の境内を外れましょう。





門前仲町駅 出入口
 門前仲町駅 出入口

 目の前の永代通りを右方向へ進むと、都営地下鉄大江戸線・東京メトロ東西線の、門前仲町駅出入口に到着です。









★交通 都営地下鉄大江戸線または新宿線 森下駅下車
★歩行距離 約 5.0 km



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