国体日記。

 私・管理人は、2004年10月、第59回国民体育大会(彩の国まごころ国体)ソフトボール競技の少年女子の部に記録員として参加しました。
 一生に一度、立ち会えるかどうかという地元での国体にかかわり合えたのは、私にとっても本当に貴重な経験でありました。
 このページでは、国体終了後すぐに私が書いた「業務報告」メモをもとに、国体4日間を中心に記録員としてのしごとを振り返ってみたいと思います。
(ページ中の写真は、北本市連盟参与(当時・広報担当副会長)滝瀬喜一・記録部長坂下弥八両氏撮影のものなどを使わせていただきました。写真を撮影されたみなさまにこの場を借りて心よりお礼を申し上げます。)



 選考会を経て、国体記録員候補に委嘱されて以降、研修会を受講し、2003年のリハーサル大会などにも記録員として参加しました。
 国体当年となった2004年は、準備も佳境に入り、日本協会記録副委員長・斉藤正義先生による研修会やパソコンの研修会を受講、同時に、開催地地元のスタッフとして、記録と報道(広報)部門、行政との連携を確実なものにするため、数度にわたっての打ち合わせの機会を持ちました。

 業務の内容が煮詰まってくるにつれ、少しずつ自分のやることが見えてきました。
 国体では、観客やマスメディアに対する情報提供の迅速性が高く要求されるため、記帳・点検・戦評・速報・PC入力の各セクションの分担がきっちりと行なわれます。
 その中で、一応パソコンが扱えるということで、私は、速報発行とPC入力を担当することになりました。

 彩の国まごころ国体のソフトボール競技における競技記録の大きな特徴には次の2点があります。
@速報発行ソフト「彩BALL」の開発と使用
A会場間のデータ送受信に電子メールを使用


 @については、国体での速報性を重視し、必要最低限な情報を的確に提供できるようにするため、スタートリスト(打順表)から、速報までを一括して発行できるようにするwindows「EXCEL」を用いたソフトを製作しました。この製作には、埼玉県協会記録副委員長・釼持幸夫、記録常任委員・関根睦両氏が当たり、試作版から多数の改良が加えられました。(なお、このサイトの「北本市の大会結果」の試合情報は著作権管理者の関根さんの了承を得て、「彩BALL」で作成しています。)
 Aについては、この国体が4種目・6会場での分散開催になるところから、データのやりとりに従来のファクシミリを用いることは、通信容量上不可能と判断、開催地行政の協力を得、インターネット・電子メールを使用できる環境を整えました。なお、この情報の送受信には、情報入力済みの「彩BALL」をそのまま添付するという方法が用いられることになりました。


@10月23日(土)・大会前日
 午前8時に記録本部に入り、パソコンに選手名等を入力済みの「彩BALL」のデータを移しました。
 午前10時ごろ、日本協会から派遣の遠藤正人副記録長が記録本部に来場。本部内の機器の配置や、期間中の作業手順について、報道委員を交え、マニュアルに基いての確認作業など綿密なミーティングが行なわれました。

 この行程は、国体記録業務を成功させる上で、結果として大変有益なものになったと思います。
 余談ですが、もともと、遠藤先生とは、先生のサイト「おおさかソフトボールの公式記録」にリンクを貼らせていただいていたご縁で(先生には「ホームページつながりですから」と言っていただきました)、ご面識はなかったものの、初会のような気がしませんでした。
 遠藤先生は、一旦確認されれば、一切を地元に任せると明快におっしゃって下さいました。おかげで、地元記録員のモチベーションアップにつながりました。
 また、本番初日の業務の繁忙さを考えると、前日にパソコンの事前準備、手順の確認等に時間を割けたことは、大変よかったと思います。

 問題点としては、記録本部のプレハブ建物の広さが狭いということが浮き彫りになったことでした。
実際問題として、当日の業務実施に関しては、本部スタッフに加えて試合が終了した記録員、さらに報道委員が入り、競技役員や地元行政の競技会役員、他県の視察員等々、多数の人間が出入りする状況では、立錐の余地がないほどであり、パソコン入力やスコアカードの点検など、集中を要する作業には、支障が生じなかったとはいえず、机上の準備ではなかなかイメージしがたいだけに、難しいものだと感じました。
 

A10月24日(日)第1日目
 午前7時出勤。パソコンに、審判員・放送員の割り当てを入力し、本番に備えます。
 開会式に出席後、終日、スタートリストの発行、0回・7回・終了速報の発行、メールでの送信作業を実施に当たりました。

 本市会場では、「彩BALL」入力とデータの送信を記録員が担当し、他会場より受信した「彩BALL」データの出力と、イニングスコアデータの受信を報道委員が担当するという職務分担をとりました。パソコンは3台用意され、1台が送受信兼用、2台が送信専用となりましたが、パソコンを機能別に分けたことは、混乱を回避するためには、有益であった。
 プリンターはカラーレーザーの最新版をパソコンに合わせて3台用意していただきました。同時にプリントアウトするケースが生じ得るとはいえ、本部の広さを考えると、プリンターについてはパソコン3台をLAN接続して共用とした方が、空きスペースを有効利用ができたのではないかと思います。
 また、本市会場は、立地条件の都合上、インターネットの接続環境がISDN回線であり、それなりの容量のある「彩BALL」ファイルの送受信には、相当の時間を要しました。止むを得ないこととはいえ、円滑な業務の実施には多少の障害となったようです。
 彩BALLのソフトそのものは、大変使い勝手がよく便利で、不具合は生じませんでした。改良を加えた結果であり、製作者のご苦労には本当に頭が下がります。


 不慣れからくるミスは頻発しました。限りある人員での業務だけに、チェック体制に遺漏が生じたのは止むを得なかったのでしょう。さいわい、トラブルに発するような重大なミスはなく、翌日以降、業務の運営方法を若干修正することで改善されました。

 速報発行にはやや時間がかかりました。試合球場から本部への移動、スコアカードとの対照・確認等に時間をとられて、求められた発行までの「20分の壁」を破ることはなかなかできませんでした。
 
 速報における戦評に関して2点だけ挙げると、
@戦評担当者の一元化による表現の統一の必要性
A戦評の容量・内容に関する問題
を指摘することができます。
 @に関しては、当会場の場合、原則として各球場の記録主任が草稿を作成し、本部においてPC入力をする私が清書を行ないました。この際、スコアカードと対照しつつ表現の統一等を行ないました。
 この結果、大幅に草稿を変更したケースも少なくなかったのですが、本部スタッフ及び草稿を作成した各球場記録主任の理解のもと、円滑に業務を進めることができました。もちろん、私の清書時修正にも不十分さはあり、戦評の書き手の個性を殺してしまったのではないかという懸念はありますが、全15試合の戦評を統一した文体・スタイルのもとに発行できたことは、読み手となるチーム関係者や一般の観客にとっては、好ましかったことと自己評価しています。
 Aについては、各種目各会場により分量がまちまちであり(2〜3行のところもあったようである)、明確な基準もなかったため、混乱した部分が多かったのですが、当球場においては、「負けたチームに持って帰ってもらうからこそ、記念になるように明確に」との考えのもと、若干の余分な時間は要したものの、内容の充実した戦評の作成に努めました。しかしながら、上述の「20分の壁」との関係では、悩ましい問題です。

<この日のブログに書いた自分の感想>
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クタクタになって帰ってきました。
本部でPC入力をやっていたので、
試合は1試合も見ずじまい。
それどころか、外へ出たのはトイレに行った2回だけという引きこもりぶりだった。
2球場分の打順表・開始時・4回終了時・試合終了時、戦評記入済みの完成版の入力と送信。同時並行で4試合×2面の計8試合分を2台のPCをあやつって?の働きぶり。さすがに疲れた。シッチャカメッチャカで、頭の中がゴチャゴチャ、記憶も飛んでしまった。
でも、充実感はある。私がソフトの世界に足を踏み込んだころに決まった北本でのソフト競技の開催。多くの人の苦労と努力の上に築かれた晴れの日である。トップクラスの選手が一堂に会する、その大会を裏で切り回す縁の下の力持ちのひとりとして動く充実感は小さくない。
でも、やっぱり疲れた〜。

 


B10月25日(月)第2日目
 午前8時出勤。前日に引き続き、スタートリストの発行、0回・7回・終了速報の発行、メールでの送信作業を実施。

 審判員等の入力を誤り、指摘を受けて訂正版を発行するというミスをした。
 チェック体制の遺漏によるミスは減少したが、ヒューマンエラーがありました。人間である以上、ミスは止むを得なのだが、国体という場では、通常とは比較にならない精神的・肉体的な疲労が蓄積する。注意力・集中力も低下するのだろう。
 前日に引き続き、視察員への対応あり。メールによる会場間のデータ送受信体制と、「彩BALL」による速報発行システムに興味を持たれたようでした。

 この日は、疲労もあってか、かなり落ち込んでブルーになっていて、ブログにこんなことを書いています。
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国体2日目終了。
天候にも無事恵まれ、日程は滞りなく終了。
ただ、私自身に関するかぎり、とても「無事に」などとは口が裂けてもいえない状況だ。

PC入力にミスが連発している。
元データの誤りもあったが、私の責に帰するところが少なくない。
気が緩んでいる、というより、集中できない。
すでに、自分の能力の限界を超えているような感じ。
アタマの中はゴチャゴチャでアタマが動かない。
ミスを繰り返して防げぬ自分に強烈な自己嫌悪を覚える。

以前国体をやったことがある県の幹部の人が、
「国体後シンドローム」とでもいうべきものがある、と書いた文章をよんだことがある。
国体までには、綿密な準備、周到な研修が何年も前から行なわれる。こんなことは他の全国大会では、ない。
当然、それにスタッフとして携わる人々は、努力を重ねてくる。
国体が終わったとき、そのようにして力を注いできた人々が、
それぞれのセクションに携わることから離れていってしまう、というのだ。
一種の「燃え尽き症候群」ということだろうが、気持ちは分からなくはない。
もっとも、私が「国体後シンドローム」というわけではないが…。
むしろ、裏方の一線のまっただ中にあるがゆえの frontline syndromeと言えるのかも…。 
 

 

C10月26日(火)第3日目
 午前8時出勤。前日に引き続き、スタートリストの発行、0回・7回・終了速報の発行、メールでの送信作業、並びにイニングスコアのデータ送信を実施。
  
 送受信業務を分担してこられた報道委員の岡田さんが仕事のために業務から外れたため、私がイニングスコアのデータ送信作業を兼務することになりました。能力以上の仕事ではあったが、報道委員も人数に限度があり、止むを得なかったと思われます。パソコンメンテナンスのために会場に常駐していた業者さんが、他会場からのデータ受信と情報出力を担当してくれたので、ずいぶん助かった。
 
 この日は天候が悪く、使用球場などが二転三転。結構振り回されたような感じ。
 4連覇&開催地優勝のかかる埼玉県は惜しくも敗退。

 この日のブログでは・・・

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国体3日目終了。
今日は一番心配していた雨になってしまった(>_<)
もっとも、国体クラスの大会ともなると、よほどグラウンド事情が悪くならないかぎり、日程消化の都合上、雨天決行になる。
しかし、実際には大変だ。選手も審判も役員もズブ濡れ。観客も傘をさしての観戦である。
今日もグラウンドの変更、再変更で二転三転。そのたびに、入力データの書き直しなどで振り回される。今日から会場数も減って、記録本部も戦力ダウンしているので、反比例して仕事の範囲は増える。ミスは昨日より減らせたと思うが…。
埼玉県は準決勝で神奈川に敗れ、4連覇&開催地優勝は夢と消えた。でも、ホントによく頑張りました。ご苦労さま!!!
明日の決勝は千葉と神奈川。明日は私も本部詰から現場に出て、この試合の記録をとることになっている。
さあ、明日だ!!

 

D10月25日(水)第4日目
 午前8時出勤。PC入力の下準備後、Jコートにて決勝戦の記帳を担当。試合終了後、7回及び終了速報を送信。

 最終日のみ、現場に出させていただいた。地元の記録員ということで花を持たせていただき感謝。決勝戦の記帳は大変緊張したが、記録部門内及び関係セクションとの円滑な連携のもと、大過なく記帳業務を行なうことができた。
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ついに、ついに国体が終わった。
このブログには、疲労と苦労の思いを多く書き付けてきたが、終わってしまえば、それははるか昔のことのような気がしてならない。
私がソフトボールに携わりはじめてほどなく、国体のソフトボール少年女子競技が北本で行われることに決まった。以来、私も微力ながら、地元連盟のスタッフとして、公式記録員として、準備を重ねてきた。
パソコン業務での自身のしごとに対する不満は残る。しかし、さまざまな悪状況の中、最善を尽くし何とか及第とすることができると思う。
最終日は、決勝戦の記録を担当させていただいた。どんな試合でも記録は記録とは言うものの、やはりこれだけ大きな大会の決勝戦の記録を担当できることは、冥利に尽きる。
こちらの方は大過なく終了。
人の消えたグラウンドに佇む。祭りの終わった会場には冷たい秋の風が吹く。まさに、ツワモノどもが夢のあと。

 


総 括

 いろいろとミスや失敗はあったものの、国体全体を通してみれば、概ね合格と採点して差し支えないと思います。
 その要因としては、
@記録員の不断の研修における成果の結実
A副記録長・遠藤先生の適切かつ丁寧な指導
B適材適所を考慮した人員の配置
C審判・放送・報道等関係セクションとの円滑な連携
D行政実施本部の惜しみない協力
E改良が重ねられ使い勝手のよい速報ソフトの使用

などを挙げることができると思われます。細々した点においては、反省すべき点は少なくないのでが、大会運営の根幹に関わる、あるいは、記録員への信頼を損なうような重大な失策はなかったのでよしとしたいと思います。

 やっぱり、
日頃からの積み重ねがモノをいう、それが正直な感想です。
  
 お世話になりましたすべてのみなさまに、心から感謝!!

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