三章 白の王

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 日が昇り、朝食の時間も過ぎた頃。白城の年取った住民達は、それぞれの仕事につき始めていた。家事に精を出す者、三頭の羊の世話をする者、城内から発掘された骨董品を調べる者、薬草を調合する者――。トエトリアとその二人の家来は、早朝に白城を発っていた。
 キゲイは、手持ち無沙汰この上なかった。城には興味があったが、一人で探検するのは怖い。迷子になりそうだったし、なにより城の巨大さと古さは、キゲイにとって常識はずれだ。何十階建てもの建物を見上げていると、今にもこちらへ向かって倒れてくるような錯覚を覚えたし、廊下の亀裂だらけの柱や天井も、いつ崩れてきてもおかしくない気がした。
 それでキゲイは朝食の後、食堂の前に広がる荒れ果てた中庭を、所在無くうろうろしていた。中庭の一角には、料理に使うらしい野菜や香草が植わっている。庭の中央には、白い石で縁取られた大きな楕円の池。藻の間に、ブチ模様をした細身の魚の背が見え隠れしている。
「キゲイ」
 呼ばれて池から顔を上げると、回廊からブレイヤールが手招きしている。その隣には、彼の目付け役である青髪の石人が立っていた。
「これから、城の見回りに行くんだけど、一緒に来るかい」
 キゲイが駆け寄ると、ブレイヤールは言葉を付け足した。
「日課にしているんだ。それと、アークラントの人達が本当にこの城に来るかどうかも気になってる。だから今日は城の下層、外周部の北側を回るつもり」
 そういうことならば、キゲイもついて行かないわけにはいかない。
 ブレイヤールを先頭に、三人は歩き出す。廊下は相変わらず古びていて、辺りはひっそりとしている。各部屋には木戸がついていたが、廊下を進むに連れて、木戸のない部屋が増えてきた。部屋の中は空っぽで、物置にすら使われていないようだった。
 キゲイの後ろからは、グルザリオが大股のゆっくりとした足取りでついて来ている。彼はいつかの夜のように、腰に剣を下げていた。剣帯の留め金が、彼の歩調に合わせて鳴っていた。腰帯には、魔法の杖らしい細長い銀の棒を挟んでいる。キゲイの前を行くブレイヤールも、よく見れば、帯に似たような木の棒を差していた。
「皆、まだこの城へはたどり着いてないのかなぁ」
 相変わらず人の気配がない城内に、キゲイが呟く。
「城は広いから、この辺りを見ただけじゃ、なんとも言えないな。でも、まだだと思う。城主の勘ではね」
 ブレイヤールは辺りを見回しながら答えた。
 三人が歩いているのは、城内都市跡のひとつだった。石畳の大通りの両側には、十数階建ての館が立ち並んでいる。館は数階ごとに奥へずれ込む、階段状の層構造をしていた。各層の館前は、下階の天井が大通りの並走路となっており、大通りを隔てて対岸に建つ館の並走路と、橋でつながっていた。振り仰げば、さらに城の上部から伸びている巨大な空中回廊が、都市の上空を大胆に横切っている。空は淡い銀色だった。
 館を貫くトンネルへ入る。出口に近づくにつれ、三人の足音以外の物音が混じってくる。キゲイは耳を澄ませる。水の音だ。
 一行は朝の光が存分に降り注ぐ、気持ちの良い庭園へと出た。三方は背の高い建物に囲まれ、前方の石垣に半円の小さな池が築かれている。石垣の後方は段々になった土の地面で、水路が上の方から流れ、水のベールを落とす滝となって水面に注いでいる。池の中央の島には、大樹をかたどった壊れかけの彫刻がひとつ。白い大理石の枝には、黒曜石の葉が埋め込まれていた。
 キゲイは寒風に身をさらしながら、辺りを見渡しそっと溜息をつく。城を形作る石の建造物は何から何まで、人の手によるとは思えないほどに巨大で美しい。なのにどれひとつとして、壊れていないものは無かった。滅ぶとは、こういうことを言うのだろうか。
 ブレイヤールは池の縁石に手をついて、片手で水をすくっていた。水は清らからしかった。
「頂上から麓まで、この城で水の循環が絶えたことはない。不思議なもんだよなぁ。城は滅んでるのに」
 キゲイの隣で、グルザリオが両腕を組む。
「この池の水、雨水とは違うの?」
 キゲイはグルザリオに尋ねる。
「この城は山みたいだけど、あくまで城だからな。山みたいに、降った雨を自然に貯めることできん。溜池はあるが、城の上の方はどうなってることやら。うちの曾爺さんの代に一回見たきりだったかもなぁ」
 そのとき、何かのとどろきが二人の耳に入った。ブレイヤールも水面から顔を上げる。三人は息を潜めて静かな庭園に耳を澄ませ、視線をめぐらせる。先ほどの静けさとは、何かが変わっていた。
 張り詰めた静寂の中で、グルザリオが真っ先に我に返り、キゲイの背を突いてブレイヤールの側へ共に駆け寄る。
「ちょっと違やしませんか、王子。時々聞く、古くなった石壁が崩れた音と」
「うん。何か、来てるみたいだ。あっち」
 ブレイヤールが指を差し、グルザリオも腰帯から杖を引き抜く。二人はキゲイを間に挟み、池を背にして右手の館に注意を向ける。
 右手の館は三階分の高さの奥深い大柱廊が、庭に向かって開いていた。その奥まった暗がりの中から、石畳をカチカチと鳴らして歩み出る。それは王者のように、悠々と姿を現した。不思議な姿に、キゲイは目をこする。
 はじめは、館の奥に広がる暗闇が突然切り取られ、うごめいてこちらに歩き出したように見えた。しかしやがて、その姿ははっきりとしてくる。しなやかな獣の歩み。明り取りの窓から斜めに差し込む弱々しい光のすじを、獣は何度か横切った。その度ごとに、獣の丸い明るい色の瞳が浮かび上がる。獣の周りで舞い上がった砂埃は、光を受けて白く輝く霞になる。それなのに、獣の体はずっと真っ黒なままだった。光を浴びても影に入っても。庭園に頭を突き出すまでに、近づいてきても。
 キゲイは息を呑んで見上げる。なんと大きな闇の塊なのだろうか。
「魔物じゃないか」
 ブレイヤールの、上ずったささやきが聞こえる。彼の構える杖の先が、小刻みに震えていた。
 魔物の目は、傷ひとつない水色の水晶玉のようだ。瞳孔すらない。それはキゲイ達三人に向けられ、闇色の顔の中で鈍く光る。そして一対の目は、三人へ向けられたままゆっくりと下降し、細められた。キゲイは、はっとした。魔物の姿が黒すぎて体勢は良くつかめないが、あれはこちらに飛びかかろうとしているのではないだろうか。
 キゲイの予想したとおり、闇の四肢が地面を蹴った。キゲイは思わず片足を後ろへ引く。
「動くな!」
 抑えた怒鳴り声とともに、キゲイの肩を誰かが強くつかむ。キゲイの視界を闇が覆い、息を詰まらせるほどの密度を持った風が、たたきつけられる。これではまるで、境の森での晩と同じだ。しかも今度の魔物とやらは、あの晩に出会った奴の比ではない。
 肩をつかんでいた手が、キゲイを後ろに振り向かせる。石垣の上に闇色の魔物が立って、見下ろしていた。日の下に出ても、魔物はシルエットそのものだった。ただ、背骨とわき腹にかけて銀色の鱗状の筋がついており、それが黒い体の姿勢を唯一示すものとなっている。頭部は鼻面が存在せずのっぺりとしていた。それにしても、妙な毛並みだ。毛先が炎のようにたぎり、揺れるたびに暗い虹色の残像が重なる。特に長いたてがみがこの上もなく見事だった。まるで幻のような姿なのに、圧倒的なまでの存在感を誇って悠然と立っている。
 キゲイはよろよろと後ずさり、その場に崩れるようにして尻もちをついてしまった。ブレイヤールとグルザリオが、魔物に杖を構えながらこちらへ後退してくる。
「ど、どうしよう」
「殺すしかありません。ほっとくと人を食っちまう。もうすぐたくさんの人間が、この城にやってくるかもしれないんすよ。この城を血で染めるおつもりで? うっ!」
 キゲイが声をかけるより先に、グルザリオがキゲイにつまずいて、息を呑んだまま彼の隣に片手をついて倒れこむ。
 その瞬間、魔物は二人の石人へ狙いを定め、宙へ身を躍らせた。
「来るな!」
 ブレイヤールがかざした杖を、すばやく横へ振る。その動きにあわせて、どこからともなく飛んできた石の塊が魔物の体を横様に直撃し、魔物を吹き飛ばした。重たい音を立てて地面に落ちた石の塊は、どうやら館を飾っていた柱頭らしかった。
 その隙に、グルザリオはキゲイの襟首と帯を両手につかんで走り出す。そして城内都市へと続くトンネルへ駆け戻り、キゲイを床に投げ出した。彼はそのままトンネルの出口の壁に、ぴったりと背を押し付けた。
「ちょ、ちょっと!」
 キゲイはグルザリオに這い寄り、服のすそを引っ張る。
「こんなところに隠れてたら、王様がやられちゃうよ! どうするつもり! 剣は使わないの!」
「こんなものが役に立つか! だいたいあいつは、石人世界の奥深くにしかいないんだ。なんだってこんな所に……」
 グルザリオは庭園の方をうかがったまま、動こうとしない。
 ブレイヤールと魔物は、池を挟んで向き合っていた。柱頭の重い一撃を受けたというのに、魔物は弱った様子もない。ブレイヤールは何かの言葉を声高に繰り返しては杖を何度か突きつけていたが、魔物は彼を見つめ返しているだけだ。尾をゆっくりと左右に振り、頭部をかすかにゆすっている。
――あれは、自分が魔物であることを知っている。
 ふいに、キゲイの左耳の側で、風のようにかすかな声が聞こえた。キゲイは戸惑う。彼の左側には、誰もいない。
――そんな魔物は、存在自体がすでにして魔法。ゆえにあれは直接、魔法にかけることができない。例えば、こんな風に。
 そのささやきが途切れると同時に、グルザリオが胸を押さえてうめき声を上げた。グルザリオの体が重心を失い、目を丸くしたキゲイの上へ倒れてくる。キゲイはあえなく下敷きとなった。何とか這い出てグルザリオの肩をゆするが、顔が真っ青になっている。彼はかたく目を閉じ、杖を胸元で強く握り締めていた。
――あれに唯一効く魔法は、あれを構成する魔法をほどくものだ。かなり難しい魔術なんだが、あの人はさっきから五回も唱えているな。……いい加減気づいてもよさそうなのに。
 キゲイは左手で左耳をふさいでみた。
「あれは、獣の姿ながら言葉を理解するという。しかし、自身は言葉を語る喉を持たない」
 いまや声は、キゲイの耳元ではなく、トンネルの奥から足音と共に響いてきた。はたして暗がりから現れたのは、レイゼルトである。キゲイは困惑とあっけにとられて、相手を注視する。レイゼルトは炎色の瞳を、遠くのブレイヤールの姿へ据えていた。
「口にするのは、言葉に至らぬ言葉。あるいは、言葉を超えた言葉。すなわち……」
 レイゼルトは、左手の人差し指をゆっくりと魔物へ向ける。キゲイの後ろから、巨石のきしむような唸りが聞こえた。そしてそれに続くのは、大地を揺るがす咆哮。
 キゲイは両耳をふさぎ、床にうずくまった。あまりの大音響に、心も魂も何もかも、持っていかれそうだ。魔物の叫びは、館の石積みすら緩ませる。空っぽの館の廊下を満たし、部屋を満たし、人の体の中まで満たして、どこまでも反響していく。
「しょせん、すべて幻だがな」
 脇を通り過ぎていくレイゼルトの気配と声が聞こえ、キゲイは辺りが静けさを取り戻したことに気がついた。それでもまだ耳鳴りは残っていて、頭がぐらぐらする。
「ま、待ってよ! 何でここに?」
「あそこの魔法使いに、会いに来ただけだ。向こうもようやく、あれが幻術だったことに気づいてくれたらしい」
 レイゼルトは半身だけ振り返り、あごでしゃくってみせる。その先にはブレイヤールが立っていた。そして、彼を見下ろすようにして魔物もまた。
 しかしブレイヤールはすでに、魔物の方へは向いてなかった。彼はレイゼルトへ顔を向けたまま、魔物へ杖を突き出す。魔物の姿が揺らぎ、見る間に杖の先へと吸い込まれていく。すべてを杖に吸い込ませると、ブレイヤールは右手で杖をしごき、その手を開く。手から薄青い影が立ち昇り、日の光に溶け消えた。
「誰だ」
 ブレイヤールはレイゼルトに尋ねる。幻で騙されたことを知って、苦々しく不機嫌で、厳しい顔つきだ。
「境の森に幻術をかけたのは、あなたか」
 レイゼルトは相手の問いを無視し、トンネルから庭園へと踏み出る。キゲイはレイゼルトを止めるべきか迷いつつ、後を追った。
「境の森に魔法をかけたのは、確かに僕だ。人間が七百年前の禁を犯し、軍を率いて石人の領内へ踏み入ろうとしている。その試みをくじこうとするのは、当たり前だろう」
「それにしては、ずいぶん気のない幻術だった。あなたは人間を馬鹿にしているのか」
「幻の魔物みたいな、本格的な罠を仕掛けるわけにもいかないだろう。それより君はいったい何者だ。石人なのに、人間の味方をしているような口ぶりだ」
 その言葉にどきりとしたのは、むしろキゲイの方だった。
 レイゼルトは懐から、金属の杖を取り出す。ブレイヤールもレイゼルトへ杖の先を向けたが、気が進まなそうだった。
「確かに」
 レイゼルトは、杖を緩やかに掲げた。
「彼らは人数を削られるような危険な魔法より、限られた時間を削られる方が痛手かもしれない。だが、これ以上の邪魔立ては困る」
 彼は掲げた杖を振り下ろす。見る間に三方を囲う館の輪郭が、淡くなった。そして館の前面が最上階からすべて白砂と変わり、流れ落ちてくる。
 キゲイは頭上から降り注ぐ砂から逃れようと、池へ走る。振り返ると、砂は館の一階部分を埋めるまでに積もっていた。ブレイヤールは杖を構えたまま、歯を食いしばっている。なぜ彼は、むざむざレイゼルトに館を壊させてしまったのだろうか。
「王子、術士を狙え!」
 突然レイゼルトの背後で積もった砂が吹き上がり、レイゼルトに向かって飛ぶ。半分埋まっていた館のトンネルから、グルザリオが走り出てきた。顔色はまだ随分悪い。
 レイゼルトは杖を上げ、難なく飛んできた砂を杖に巻き取る。それはそのまま、杖の先を起点とした砂の竜巻になる。竜巻はやがて周りの砂も巻き上げ、空高く伸びていく。グルザリオはレイゼルトに向かい、杖の先から白い閃光を放った。閃光はレイゼルトの周りに立ち込める砂煙の中で、微塵にはじけて消えてしまった。
 キゲイはどうしていいか分からなかった。レイゼルトはあの砂で、何をするつもりなのだろうか。気がつけば、彼は足元の石をつかみ、レイゼルトに投げつけていた。意外にも石は砂煙を裂いて、レイゼルトの足元に落ちる。キゲイの腕力がもう少しあれば、確実に当たっていたはずだった。レイゼルトはキゲイに炎色の瞳を向ける。
「お前こそ、人間と石人、どちらの味方なんだ」
 瞳に怒りはないが、問いかけは辛らつだった。キゲイは言葉につまる。
「今はそんなこと、関係ないと思うな」
 ブレイヤールがキゲイの代わりに答え、杖を振る。彼の背後で池の水が大きく跳ねたかと思うと、レイゼルトへ向かって襲いかかる。レイゼルトは砂の竜巻で水流を受けた。くすんだ灰色の竜巻は、水を含んで真っ白に変わる。しかしブレイヤールが放った水は、決してレイゼルトの砂竜巻に飲み込まれることはなかった。竜巻の上から沸き立つと同時に、再びレイゼルトめがけて降り注ぐ。
 それから先は、わずかな間に起こった。レイゼルトは頭上を見上げ、杖を振り下ろす。砂竜巻が首をもたげて水を追う。庭園を、すさまじい突風が襲った。水を吸い上げた竜巻が、すそから広がってきたのだ。湿った砂嵐はレイゼルトの姿を呑み、こちらへ迫る。キゲイは全身に叩きつけられる砂に体を縮め、いつの間にか気を失っていた。

「何で池の水なんか! 向こうの砂の方が、ずっと量でまさっていたってのに! 何であんたも館くずして、対抗しなかったんですか!」
「城主が自分の城壊して、どうする!」
 のどかな水音に混じって、そんな口論が聞こえてくる。キゲイは体を起こした。彼は砂の上にいて、すぐ側には彼を掘り起こしたらしい砂の穴が開いていた。体中、湿った砂がこびりついてごわごわだ。
「そんな場合じゃ、なかったでしょうが! 俺なんか、血中に大量の気泡を入れられて、死ぬところだったんすよ!」
「こっちだって、脳髄(のうずい)に水銀入れようとしてた! おかげで、あいつが館を砂に変えるのを、止め損ねた。あいつ、僕らを殺すつもりだったんだろうか」
「もしそうならば、チャンスはいくらでもありました。俺達が、幻術にだまされている間に! しかし、どんだけ悪趣味な魔法を使うんだ、あのクソガキ! 脅しにしても本気すぎる」
 グルザリオが腹立たしげにブレイヤールへ背を向け、見る影もない三方の館を仰ぐ。ブレイヤールは、池の縁石にうなだれて腰掛けていた。池の大理石の木は、なぜか黒曜石の葉をすべて落としている。
「こわかった」
 ブレイヤールは呟くと、目をこすった。
「あの……」
 キゲイは二人に声をかける。キゲイだって、レイゼルトが何者なのか、分かりはしない。でも、目の前の二人よりかは知っている。
「あいつ、レイゼルトって言うんです……。石人だけど人間の味方をするって、言ってました」
 ブレイヤールは目を丸くした。
「知っているのか?」
 キゲイはうなずく。服の上から、懐の銀の鏡をぎゅっと握る。
「レイゼルト……。はて、どこかで聞いた名だな」
 グルザリオが腰に手を当て、考える仕草をする。キゲイは次に言うべき言葉を探し、口の中で舌をかむ。しかし二人の思考は、ブレイヤールのくしゃみで中断させられた。ブレイヤールは池に注ぐ水の下で、体についた砂を洗い落としていた。
「いったん引き上げよう。二人とも、砂は完全に流して。この辺りの廊下に、砂で足跡を残すのはまずい。……水は冷たいけどね」
「洗った後は、ちゃんと乾かす必要もありますよ。凍え死にたくなけりゃ」
 グルザリオが主の言葉に付け加える。それから二人の石人は、再び無残な姿の館を見上げ、大きな溜息をついたのだった。