十七章 石人の王座

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 トエトリアは私室から出ることを、今までにないほど固く禁じられてしまった。部屋の外には近衛騎士らと王衛が控えていたし、部屋の中には侍女達がいて、彼女をしっかり見張っている。今朝起きたときは、侍従長から今日のご予定をずらずらと聞かされた。それが朝食後にはすべて取り消され、いつになく厳しい顔つきの近衛隊長に手を引かれて、部屋に閉じ込められたのだ。
「いったいどうしたの。もしかして、魔物が城の中に入り込んでしまったの?」
 いくら堅牢な石人の城でも、時折大きな魔物が城壁を飛び越えたりして入ってくることはある。けれどもそういった魔物は、兵士達と神官によって、すぐに城から「お祓い」される。魔物をできる限り傷つけず、城の遠くまで追い出すのだ。
 トエトリアは内心ひどく落ち込んでいた。ついこの間も、ブレイヤールが人さらいにあって、危うく死ぬところだった。もし自分が王として王座についていれば、城の中で誰かを危険にさらすことはなかっただろう。魔物だって、王のいる城には怖がって近づかないものだ。
 早く大人になって王位に就きたい。そう思うたびに、彼女はじっとしていられなくなって、城を飛び出してきた。家来の話だけではなく、自分の目で人々の暮らしを見、城を取り巻く山々の峰を歩き、魔法の生き物達がどれくらい危険なのか確かめてみたかったからだ。
「王女様、何も心配はいりませんよ。またいつものように、兵士の皆さんが追い払ってくれますから」
 侍女達はこう答えたが、トエトリアは納得できない。いくら魔物が来たからといって、こんなふうに自分を部屋に閉じ込めるなど、いつものことではない。いつもとは違う敵が城にきたのだと、彼女は考える。
「もしかして、レイゼルトが来たの?」
 尋ねてみると、侍女達は震え上がった。一番年かさの侍女が前に出て、トエトリアと視線を合わせる。
「その名前をこの城で口にしてはいけません。王女様のご先祖は、あの禁呪使いを倒すために犠牲になられたのですから」
「じゃあ、なんで私はここに閉じ込められてなきゃいけないの?」
 トエトリアは頬をふくらます。侍女も嘘を言うわけにはいかなかったのだろう。しぶしぶ、人間が蜂のようにたくさん来ていると言った。
「馬も人と同じくらいいて、ぶんぶん鼻を鳴らして、それはもうひどい騒ぎです」
「人間が? どうして?」
「分かりません。きっと、白城の宝だけでは足りなくなって、この城までやって来たのでしょう」
「ブレイヤールは無事かしら」
「ご無事ですとも。白城はいくらでも隠れるところがございますし、ブレイヤール様は魔術に長けていらっしゃいます。晩までにはこの城も静かになっているでしょう。さあ、お勉強の時間ですよ」
 別の侍女が横から算術の本を差し出す。トエトリアは言われた通り、机の上に計算用の半貴石のおはじきをばら撒いた。丸く平べったい石は、色とりどりの影を落として机上に散らばる。
 彼女の一番のお気に入りは、やはりあの小さな虫が閉じ込められた琥珀のおはじきだった。指でつまんで、テラスから注ぐ銀色の陽光にかざしてみる。四枚の透明な羽も、斑紋の浮かんだ細長い胴も長い針状の尾も、黄緑色に包まれている。針のように細い四本の脚は、凍りついた樹液の中でぴくりともしない。
――このおはじきだけ、目がある。羽根がある。脚がある。知恵もある。おばあ様もお母様も、これで勉強したんだもの。私の代わりに、人間の様子を見に行ってくれないかな。
 トエトリアは小さくくしゃみをした。おはじきが指先から滑り落ちて、膝に、そして石床にこつんとあたる音がした。彼女は椅子を降りて机の下に潜り込む。小さなおはじきが侍女達の足元を縫い、大きな弧を描きながら転がっていくのが見えた。
 おはじきは机の向かいにある、造り付けの本棚の下段に当たって跳ねる。そして本の隙間に飛び込んで見えなくなってしまった。
「いいわ。私がとるから」
 トエトリアは侍女達をとどめ、本棚の前にしゃがむ。下段には古い魔術の本が並んでいた。ほとんどが彼女の祖母が使っていたもので、祖母自身の注釈で埋め尽くされていることも知っている。彼女は一冊を抜き取り、棚を探る。指先に軽いものが当たったが、奥へ押し込んでしまった。さらに一冊を抜き取り、もう一度棚の奥に片腕を突っ込む。羽の唸る音が聞こえ、彼女の指先をくすぐった。
 トエトリアは驚いて、棚の奥を覗きこむ。本に挟まれて向こうに見えるのは、白い粒が無数に輝く夜空のようなものだった。小さな星々はゆっくりと上に向かって立ち昇っている。すぐ手前には、地平線に顔を出した若い月のように、転がり込んだおはじきがぽつんとあった。トエトリアは本棚の向こうの星空へ腕を伸ばす。
――これ、基礎石じゃないのかな。こんなところに、むき出しのままであったっけ。
 肩まで奥に突っ込んでも、手のひらに壁の感触はない。とうとうトエトリアは頭から本棚の奥に突っ込み、奥へ行ってしまった。
 慌てたのは侍女達だ。トエトリアの足首を掴んで引き戻そうとする前に、王女の体がすとんと奥に消えた。侍女が本棚を覗き込むと、奥には星空のような基礎石しかない。手を伸ばせば、すぐに基礎石の独特な感触が返ってくる。
「あなた達、いったい何をしているの!」
 部屋の騒ぎを聞きつけ、侍従長が駆けつける。侍女達はおろおろと振り返った。
「姫様が、この奥に落ちてしまわれたんです!」
 侍従長のすぐ後ろにいた近衛隊長が、侍女の指差す本棚を覗いた。
「このような所に手窓があったのですか」
「ありました。ありましたけど、手窓は壁です! すり抜けて基礎石の向こうに落ちてしまわれるなんて、いままで聞いたことなどございません!」
 度を失いおろおろとするばかりの侍従長達に対し、近衛隊長はずっと冷静に部下達へ指示を出す。
「この直下にある手窓全てを調べ、奥に王女様の姿がないか確認せよ」
 兵士達が部屋を去ると、近衛隊長は王衛のシェドとともに本棚の上段の棚を取り外していく。黙々と作業をする二人の前に現れたのは、本棚の枠いっぱいに広がる基礎石の夜空だ。
「窓にカーテンを。部屋を暗くして」
 近衛隊長の命令に、侍女達があわあわと動く。シェドはその隣で守護の剣をさやから抜き、基礎石の壁に突き立てた。
「王衛殿、無益です」
 近衛隊長は言葉で制止する。しかしシェドは剣の切っ先をわずかに石に突き立てたまま、じっと動かない。
 部屋が暗くなると、星を無数に浮かべる基礎石の窓が四角く浮かび上がった。剣もまた青白い輝きをほのかにまとって、基礎石の表をわずかに染める。そのおぼろな輝きは、石の表から徐々に内部へと染み込んだ。光の色は淡い草色に変わり、細く輝く線となって下りの螺旋を描きながら下へと延びていく。
「石の中に、道がある……」
 近衛隊長は低い声で呟いた。シェドは頷く。
「この道を生身で通れたのは、初代の王達だけでした。まさか王女様にもそれが出来るとは」
 彼は顔をゆがめ、それ以上何も言わず、剣を納めながら足早に部屋から立ち去る。近衛隊長は基礎石の前で、侍従長と顔を見合わせる。剣の光が消えた基礎石の中は、星が立ち昇る無限の夜空に戻っていた。

 上階の騒ぎは、トエトリアの耳には全く届いてこなかった。石の中は恐ろしく静かで、自分自身の鼓動すら聞こえない。薄闇の中、自分が下へ下へと落ちているのは、髪や服が上になびく感覚から分かった。両腕をかけば、袖を通して肌に水の流れのような抵抗を感じる。まるで川の中で泳ぐ感覚だが、体の周りを満たしているものは水よりも頼りない。どんなに必死に泳いでも、ゆっくりと下に落ち続けるばかりだ。時折四角く切り取られた小さな明かりが下から上へ過ぎ去る。あれはきっと、城内に設けられた手窓からの明かりだ。
――どこかで外に出なきゃ。このままだと城の一番下まで落ちちゃうよ。
 ところが光の方向へ泳ごうとしても体の落下に間に合わず、出口となる手窓を上へと見送ることになってしまう。悪夢の中のように、どんなにあがいても焦りが募るばかりで遅々として進まない。体は疲労でだんだん動かなくなってくる。手や足の指もジンジンと痛み出す。彼女は琥珀の中の虫を思い出した。
――あの虫は、私のお願いを聞き入れてくれたのかもね。部屋からこうして出してくれたもの。でも、方法をもう少し考えて欲しかったなぁ。
 幸いと、もがいているうちにだんだん泳ぐコツが見えてくる。そうなると、指の痛みも気にならなくなる。トエトリアは遥か下に見えた手窓の光にめがけ、そろえた両足で、水よりも頼りない基礎石の中身を打つ。何度も失敗しながら、ついに一つの手窓の枠に指をかけると、彼女は出口を塞ぐ化粧石に意識を集中させた。
 手窓を囲う化粧石が崩れ、彼女は基礎石の中から床の上に転がり出る。崩れた石で膝や腰を強く打ちつけながらも、彼女はすぐさま周りをうかがった。人の姿はない。遠くから、荒々しい喧噪が彼女の耳を打っていた。廊下の装飾を見れば、自分が中層下部に来たことが分かる。人間のことを思い出し、彼女はびりびりと胸の奥が緊張するのを感じる。
 立ち上がろうとして、彼女はひどい眩暈に振り回された。頭を押さえ、壁越しに肩を支える。今まで基礎石の中にいたせいだろうか。自分の体と意識が、ちぐはぐになっていた。用心してゆっくり歩かないと、頭のてっぺんから水みたいに心が零れ落ちそうだ。
 それから彼女は、ついさっきまで、自分がずっと息を止めていたことにも気が付いた。口を開けてすっと息を吸うと、いっぺんに体が軽くなった。眩暈もおさまる。はっきりした意識に、焦げ臭い嫌な匂いが鼻の奥をかすめた。
――火事だ。誰が火をつけたんだろう。
 慌ただしい足音が頭の上を右から左へ駆け抜けていく。トエトリアは廊下の窓へにじり寄った。すぐ上階を兵士の一群が通って行ったのだ。じっと窓の外へ耳を澄ますと、一度通り過ぎた足音が、別の場所から聞こえてくる。重たい足音と一緒にガシャガシャとけたたましい金属音が鳴るのは、軽装であるはずの石人の兵士からは考えられない。トエトリアの背筋に、冷たい緊張が走る。
 足音の主達が怒鳴る声を聞いた。その言葉は石人語ではない。「言の葉」でもない。おまけに足音はすぐ近くに来ていた。階段を駆け下りている。
――人間しかいない。どうしよう……。町の人や、城の兵士達は無事なのかな。
 自分の体を探ってみても、武器になりそうなものは一つも見当たらない。彼女は腰飾りを外して左手に巻きつける。銀の細い棒をつなげただけの鎖だが、ないよりましだ。
「誰だ!」
 鋭い男の声が彼女を一瞬射すくめる。彼女の視線の先へ、廊下の角から白銀の鎧姿が八つ現れたのだ。言葉は「言の葉」だった。相手はトエトリアを見ても、油断した様子は少しも見せない。鋭い剣の先をこちらに向けて、彼らは立ち止まった。
「動くな。そこにいろ」
 一人が油断なく剣を構え、トエトリアの方へ歩み寄る。
「いやよ。私、捕まりたくないの」
 トエトリアは困って叫び返した。すると廊下の角で待っている七人の兵隊は、どっと笑った。彼女を捕まえようとしていた一人の兵士は、ここぞとばかりに足を速める。トエトリアは慌てて立ち上がり、銀の鎖を巻いた左腕を突き出した。
 その瞬間、兵士達の笑い声はぴたりとやんだ。彼女に向かっていた兵士もすばやく足を止める。相手が石人の子どもといえど、彼らはトエトリアが魔法を使うと思い、怖がったのだ。真顔でこちらを鋭く見つめる八人の大人の姿に、トエトリアも怯えた。何か考えがあって突き出したわけではない。しかし、ここでもし腕を下してしまえば、銀色の兵士達はその隙を逃さず本気で斬りかかってくるかもしれない。彼らは魔法使いを恐れているのだ。
 トエトリアはじりじりと壁際に動き、右腕を後ろ手に基礎石へ触れた。手のひらに平らで滑らかな感触が当たる。水より軽く、風より重かったはずの基礎石は、強情なまでに固い、ただの石壁に戻っていた。どうすれば再び基礎石の中へ戻れるのだろう。
 立ち止まっていた兵士達が、不意に動いた。彼女は最初の兵士の手を危うく潜り抜ける。ところが逃げ出そうと引いた片足を、兵士に捕まれてしまった。あっという間に彼女は片足でぶら下げられてしまう。自分の長い髪の先が、床を掃くのが見えた。彼女の背中で兵士達の怒鳴り声が聞こえる。何を言っているのか分からない。トエトリアは鎖を巻いた左手と右手を胸の前でギュッと合わせた。魔法を使えば、彼女を捕まえている兵士にちょっとした火傷を負わせられる。しかしそんなささやかな魔法では、彼らから逃げることなど到底無理だ。
 次の瞬間、彼女は乱暴に床の上へ投げ出された。兵士達の怒号が廊下にこだまする。トエトリアは痛みを堪え、床から頭を起こす。白銀の兵士達のほかに、黒い鎧の兵士の姿がいくつか見えた。いくつもの鞘走りの音が耳をくすぐった。
 黒い兵士達の姿を見て、トエトリアは彼らもまた人間だと知る。ところが同じ人間同士なのに、黒い兵士達と白銀の兵士達は剣を交えていた。白銀の兵士が、最初によろめいて床に倒れる。
 一流の騎士達に守られて暮らす彼女には、彼らの練度がよく分かる。黒い兵士達の方が、より熟練された身のこなしと迷いのない意志を持っていた。一方で、身につけている装備は明らかに白銀の兵士達のものの方がよい。しかし白銀の兵士達は、突然襲撃を受けた上、相手の気迫に戦意を飲まれて戸惑っていた。
 トエトリアは床に倒れたまま、目の前の死闘から目を逸らせなかった。彼女もまた、黒い兵士達が発する気迫に圧倒されていた。それは怨念といっていいほどに強く心の奥底から発せられ、正義や大義の衣すら匂わせない丸裸で透明な、誇り高いものに思われた。
「怪我はないか、仲間はどこだ」
 放心していたトエトリアに、低い声がかけられる。彼女は稲妻に打たれたように体を震わせ、鋭く振り向いた。黒い鎧の兵士が一人、彼女の傍に屈んでいる。壮年過ぎの老兵士だ。背は高く、その顔つきには驚くほど力が溢れている。
「敵が来る。いつまでもここにいるわけにはいかん」
 兵士はそう言ってトエトリアの返事も待たず、彼女をひょいと背中におぶう。かと思うと目にもとまらぬ速さで廊下の先へと走り出した。まだ味方が白銀の兵士達と戦っているというのに、彼は一度も振り返らない。
 黒い鎧の兵士は階段を上りはじめる。途中、白銀の兵士達が立ちはだかった。しかし黒い兵士は剣一本で全ての攻撃を見事に流し、彼らをまとめて階段の下へ蹴り落としてしまう。
 トエトリアは黒い兵士の背中に必死にへばりつきながら、不安を募らせた。白銀の兵士達が城のいたるところまで侵入している。城民はどこへ逃げているのだろう。黄緑の城の兵士達はみんな倒されてしまったのだろうか。人間だらけで、石人の姿がどこにもないのだ。
 階段を上りきると町の通りに出た。あちこちに火事が起き、濃い霧のように煙が立ち込めている。銀色の鎧姿が煙の間にいくつも行き交っていた。黒い兵士は立ち込める煙に身を隠し、近くの建物からさらに登り階段を見つけて駆け上がる。煤煙と長い階段のせいで、息はとても苦しそうになっていた。
 通りが火事になっていたのは、石人が人間を足止めしようと火をつけたのかもしれない。だとすれば、皆はもっと上の方へ避難しているのだろうか。それにこの黒い兵士は、白銀の兵士達の群れを潜り抜け、たった一人でこんなところまで来て、大丈夫なのだろうか。トエトリアは黒い兵士の肩を叩き、兜の耳元で声を上げた。
「ありがとう。私、ここから自分で歩ける。あなたはこれ以上登らないほうがいいわ」
「そうか。それは心強い」
 黒い兵士はそう言って階段を登り切り、トエトリアを床に降ろす。彼女は小さく悲鳴を上げた。上階の街も火の手があり、白銀の鎧を着た兵士達がいたのだ。彼らも突然現れた黒い鎧の兵士に驚いていた。黒い兵士はトエトリアの肩に手を添えたまま、彼らに威厳のある声で問いただした。
「この石人の子に手出しをせず、後も追わぬと誓えるか」
 白銀の兵士達の中から、一人、立派な鎧とマントを身に着けた騎士が答える。
「誓おう。子どもを斬るのは我らの道理ではない。それにしても、我らが打ち倒したばかりの亡国の兵と、異人の城で再会するとはな」
 白銀の騎士は腕を上げて、脇の細い通りを指さした。通りの突き当りには石造りのアーチがあり、町の外に広がる褪せた緑色の斜面が覗いている。短い草地の上を冷たい風が吹きおろし、いつもと変わらない風景は、通りの惨状とは別世界だ。
「小娘は行け。ただしお前は剣を捨てなければならない。国を失ったときに、そうすべきだったのだ」
 白銀の騎士が言う。黒い兵士は言われたとおり、手にした剣を床に置こうと上体を傾ける。トエトリアはすばやくその腕にすがった。そして兵士の顔を見上げ、金色の瞳を相手の瞳にしっかりと据える。
「なに、捕まるだけだ。同じ人間同士だから、心配はない」
「石人に見つかったら、どっちも危ないよ! 皆には白銀の鎧も黒い鎧も関係ないもの!」
「そのときはお互い協力して逃げるだろう。私達はあの者達を迎えに来たのだ」
 落ち着いた柔らかな物言いに、トエトリアはおずおずと腕を離した。黒い兵士は剣を置いて体を起こす。白銀の騎士がそばまで来ていた。騎士は剣を拾い上げ、怪訝な様子で黒い兵士の顔をじろじろと眺める。それから騎士はトエトリアに向かって、通りの先をぐいと指差した。
「早く行け。魔術兵達が戻れば、厄介なことになる」
 黒い兵士も無言で頷いて見せる。トエトリアはとうとう駆けだした。黒い兵士の身の上が心配でたまらなく、後ろを振り返りたかったが、できなかった。彼女は石人だった。一刻も早く人間達の元を逃れ、仲間の元へ戻らなければならないのだ。