■「115系広セキC24編成キットを組み立ててみよう」

今回のキットは、2003年頃に見られた、広島地区特有の凸凹編成の最新バージョンとでも言うべきC24編成を組み立てるために設計・アソートしたものです。
割と短期間で組み換えられてしまったため、この編成に関するデータや解説は、インターネットで探してもあまり出てこないと思います。ここで紹介しようと思います。

※当方で用意しております近郊型電車の側面コンバージョンキットシリーズ全般で、工作方法が応用できます。
※ここに記されている実車の情報は、2005年10月頃のものです。ご覧いただいている時点とは状況が変わっていることをご了承ください。

・クハ115-109
→新造時からの純正初期型クハ115ですが、乗務員室の助士側にホイッスルが増設されているのが特徴です。全国的に見てクハ115の総数を考えても珍しい形状でしょう。模型ではEF63やEF200等に付属のホイッスルパーツを使用するとよいでしょう。またキット設計において大きなポイントとなったのが、車内便所を撤去した上での自販機コーナーの設置です。便所窓部分が固定アクリル板?に自販機コーナーのイラストが掲示されたものに交換され、窓枠もスチール製の太いフチを持つものに変更されています。ちなみにこの109番は自販機もその後撤去されていますので、この車輌では普通の一枚ガラスとなっています。ここが透明ガラスとなっている車輌は特に珍しいものです。他にいないかもしれません。
冷房改造は標準の集中式で施工されています。300番代初期製造分のクハと同じベンチレータ配列となっています。
更新工事は行われていませんが、編成を組むモハ115・114-2024ユニットにあわせて更新車のカラーに変更されています。

↑一般的な自販機設置車の例


・モハ115/114-2024
→2000番台モハユニットで、ごく標準的なN30更新車です。ちなみに当初は広島地区においても関西圏同様に、N40と呼ばれる車輌を40年延命をするための抜本的な更新工事が行われていましたが、コストのかからないよう接客面(座席や内装の変更)を中心とした、いわゆるN30工事に変更されました。外観に関わる部分を中心に工事メニューの削減がなされ、雨どいや窓枠などは更新前のものを再利用しています。外観では半自動スイッチの設置工事とそれに伴う戸袋窓のサイズ変更および支持方式の変更(Hゴム→シール材充填による固定窓化、方向幕も同様)、屋上通風器の撤去が大きな変更点です。
広島地区ではこのC24編成以外は、4両編成単位で更新工事が施工され、更新とともに編成番号もC編成からL編成に変更されておりますが、編成を組むクハ115にあわせて編成番号はC編成のままとなっており、編成単位ではなく車輌単位で更新工事が施工されたのもこの編成のみとなっております。塗装は他の更新車とあわせられています。


・クハ115-654
→国鉄時代末期にモハ114・115から改造された切り継ぎ先頭車です。車体端を切断し、別に新造した1000番台相当の運転台ブロックを接合、電装解除したグループで、550番台とあわせて10両が改造されました。先頭車化改造と電装解除を中心とした550番台に対し、便所設置工事も同時に施工した車輌を650番台として区分しています。650番台は4両のみの改造で、全車広島地区の配属です。
クハ115-654は、冷房化率向上の一環で153系の廃車発生品(といわれる)のAU13を6基設置する改造工事が行われました。
更新工事は行われていませんが、クハ115-109とともに編成を組むモハ115・114-2024ユニットにあわせて更新車のカラーに変更された車輌です。


・オマケ クハ115-XXXX
→クハ115-109の老朽化に伴う廃車により、代わりにC24編成に組み込まれた車輌です。現在は109番に代わりこのC24編成に組み込まれています。
当初は湘南色のまま混成されていましたが、見栄えの観点から更新前にも関わらず更新車のカラーに変更されているそうです。
これを書いている時点で、広島地区では、更新工事未施工ながら更新車カラーに変更されたのは、このC24編成にまつわる先頭車3両のみです。西日本全体で見ても、他に雨どい交換が施工されたクハ115-622が、一時的に更新車のカラー(関西・岡山仕様)に変更されたのみです。
この車輌を塗装変更で製作し、捻出したクハ115-109を通常の自販機設置車として組み立てるのもおもしろいかもしれません。

・実際の組立
→以下は今回のキットの組立の作業途中に撮り貯めた画像を紹介します。あなたのキット組立の進行の足しになれば幸いです。
今回の作業は、トレジャータウンの近郊型電車キットシリーズのどの形式でもあてはまりますし、他社も含めた各種キット製作にも参考になればと思います。
塗装は時間に追われる作業だったため撮影まで及びませんでした。構体の組み立てについて解説していきます。
このページは一通りの作業を掲載したつもりですが、あちこち飛び飛びで書いてあります。

(1)115系の側板を切り取ります。カッターナイフでそ〜と筋を入れていき、それを繰り返しているうちに刃が貫通します。 (2)妻板は縦樋の外側をエッチング板1枚分程度、やすっておきます。エッチングの外板を貼り重ねるので、その分の厚みを削っておくということです。(18)(19)の画像をご覧ください。
天井の板は残しておくほうが、妻板と側板の接合時に直角を出しやすいので、残しました。
(3)クハ115の先頭部はこのようにカッターナイフで少しずつミゾを深く掘っていき、分離します。
(4)どのように切断したかがわかるかと思います。
この画像は一度切り離した前面と車体を撮影用にくっつけています。
(5)先頭車は同様に前頭部と妻板を用意しますが、天井板は構造上残せないので完全に分離させてしまいました。
654は切り継ぎ先頭車で、タイフォンの形状と位置が製品のクハ115と同様のため、そのままでOKです。109はタイフォンがスリット式(113系と同様の形状)のため、一度削り取り、新たに455系完成品付属の部品を使用すべく中心に穴をあけます。画像はその前に画鋲で印をつけた状態です。ちなみに取り付け位置も165系等と同様に、ヘッドライトより若干低い位置です。
GM113系キットや銀河モデル製パーツなどから調達してもよいです。
(6)先頭部はライトユニットをがたつかせないよう、押さえの突起までを一緒に切り取ってしまいます。
(7)続いてエッチング板をから部品を切り取り、所定のアングルを折り曲げます。上は動力車用、下はトレーラー中間車用です。動力車アングルは強度が必要なため2回折り返す構造となっているのがお分かりになると思います。またトレーラーでは、動力車用アングルは邪魔なため折り取ってしまいます。
裾も元の完成品になじむように曲げます。エッチングキットのほうがどうしても直線的な裾絞りになってしまうので、この曲げ方のバランスに特にセンスを使って下さい。曲げすぎると床板がはまらなくなります。
(8)「ゴメンナサイその1」
クハ115-650キットでは、便所窓と内張りが干渉してしまうので、内張り側を画像のように切除してください。
(9)「ゴメンナサイその2」クハ115ではドアコック蓋の取り付けに際し、内張りが干渉するので、同様に削り取ります。ただしC24編成として組む場合は、TTP235-02のドアコック蓋を外側から接着すると実車通りになります。このパーツを用意する場合、加工は不要です。
(10)クハ115の床板留めアングルも折り曲げます。 (11)そして必要なアングル曲げが終わったら、いよいよ外貼りと内張りを接着します。はんだまたは瞬間接着剤を使用しますが、どちらにしてもクリップやテープで仮止めして作業するとよいでしょう。接着の前に外張りと内張りのずれがないか、よくお確かめ下さい。 (12)先頭車の妻板接合部まわりの様子です。先頭車も当然ながら床板とののりしろアングルにぶら下がっていた動力車用のアングルは折り取って下さい。
(13)先頭車はTTP227ランナーより乗務員扉部品を、やっとこで裾Rになじませるように曲げてから接着します。ドアノブが後ろに来るように、間違えないように気をつけて下さい。 (14)モハ114には中央部にダクトが装備されますので、これも裏側から接着します。位置は下写真をご覧下さい。せっかく金属キットなので、こういうパーツをはんだで接着すれば、塗装前に部品が行方不明になることがありません。
(しかしその接合に私は「ズル」をしております。仮止めをプラ用接着剤でやっているのです。全く固着性はないのですが、液体の表面張力のようなものでごく一時的に固定されるのを利用しました。)
(15)同じように、クハ2両にもドアコックを取り付けます。
上は製品オリジナルのパーツを利用して裏から接着した場合で、車輌の標準装備品です。
(16)上からクハ115-109、クハ115-550(単品販売のキットです)、クハ115-654(単品の650番台)です。それぞれ車端部の窓割に差があり、柱の幅が少しずつ異なります。 (17)モハ115・モハ114も組み立てが終わったところです。下2枚がモハ114、上2枚がモハ115です。モハ114にはダクトルーバーが接着されているのがお分かりでしょうか。位置関係の参考にして下さい。 (18)先に切断しておいた妻板と側板を接合します。トミー製品のリニューアル前のロットは妻板に厚みがあります。アングルを少し鋭角気味に曲げておくほうがちょうどよいです。リニューアル後の製品をベースにする場合はちょうど直角に曲げておくとよいでしょう。アングルをのりしろにして瞬間接着剤を流しこみ、固着させます。
(19)固定した状態です。元の完成品と比べて、車体幅に厚みが出たり、逆に削り過ぎないように気をつけて下さい。 (20)実際の接着はGMキットを組む時と同様に、L型に組んでいきます。 (21)その全体の様子です。
(22)L型に組んだ車体をロ字型に接着します。 (23)次に屋根の部品を用意します。AU13冷房装備のクハ115-654は、今回はJ’s製のカトー対応のノーモールド屋根を使用してみました。カトー製品とトミー製品では同じ近郊・急行型でも、屋根Rが全く異なり、かなり削り込んで使用しました。結論としてはトミー製品の屋根の冷房部分を埋めて使用しても労力としてはさほど変わらず、お好みで、といったところでしょうか。長さをクハ115の屋根にあわせて切断し、説明書の指示に従いパーツの取り付け穴をあけておきます。 (24)クハ115-109は、冷房機後ろ側の通風器を1個、9ミリ中央寄りに移動させます。
(25)モハ車2両はN30工事車のため、通風器は不要ですので、穴を埋めて軽く仕上げておきます。完全な仕上げは車体との接着後でよいでしょう。 (26)車体と屋根を接着します。微量の瞬間接着剤を流した後、エバーグリーンの1ミリ角棒を裏側に置き、のりしろ面積を稼ぎました。このようにして構造を強固なものにしないと、完成後に破損しやすい車体になってしまいます。
ちなみに屋根を塗装後に接着するのは強度上の不安はともかくとして、寸法の微調整が出来ないため、あまりおすすめしません。うまくいかないと隙間だらけの車体になってしまいます。
(27)屋根を接着した妻板です。ここまでできたら、屋根板・側板・妻板それぞれの隙間に瞬間接着剤を流し込み、パテ代わりにしてそれぞれの接合部にできた隙間を埋め、ヤスリで削って仕上げます。
雨どいや銘板などの細かいモールドは残すことを考えずに、一緒に平滑になるまで削って仕上げてしまうほうが綺麗に仕上げられると思います。雨どいはエバーグリーンの0.25×0.5の角材を接着して復活させることができます。銘板はお好みによりますがそのまま無視してもよいかもしれません。
(28)先頭部の接合部分の様子です。 (29)クハ115-109はオリジナルの0番台先頭車のため、オデコと屋根の塗装の境界がトミー製品より後ろになります。よって仕上げは丁寧に行う必要があります。
クハ115-654は、切り継ぎ先頭車ですから運転台まわりの構造もトミー製品の1000番台などと同一です。よって接合部によほど大きな隙間がない限り、さほど丁寧に仕上げなくてもよいでしょう。
信号炎管とアンテナ穴は製品のまま、654のホイッスルはクハ115屋根板に準じ、また109の肩ホイッスルは現物あわせで穴を空けます。(35)参照。
(30)接着剤を流して、それぞれの接合部の隙間を埋め、段差が出来た部分もパテを盛ったり、不要部分を削ったりして平滑に仕上げます。特に先頭部は3次曲面となる部分ですので慎重な作業をしてください。
(31)クハ115-109は前述のとおり丸窓一般車の先頭車ですので、タイフォン位置が低めです。今回の作例は低くしたつもりがちょっと高すぎました。一番簡単なのは、トミックス165系シールドビーム車の前面をもってくることです・・・。
なおクハ115-654はクハ115-1000などと同様の前面のため、タイフォン位置などの修正は要りません。
(32)手すりやステップ関係のモールドは、各接合部の仕上げが簡単なように別体化しました。TTP215-01「165・キハ58・40系手すりセット」を使用しました。また今回はワイパーも別付けにしてみました。正面に取り付け穴を空け、ガラス部品もワイパーのモールドを削っておきます。109の助士側はシングルアームタイプのため、取り付け穴の位置も端によります。ワイパーはTTP266-01を利用できます。
なお正面ガラスのワイパーの削り方、仕上げ方については、このページが参考になると思います。
(33)109番の先頭側接合部アップです。
先頭部のエッチング板をオデコのカーブになじませています。信号炎管も穴を広げて奥まで押し込んでいます。
(34)同じく654番です。 (35)109番の肩ホイッスルの取り付け穴の様子です。 (36)塗装前につけられるパーツをつけてしまいます。テールライト横と行灯横の手すり、裾のステップは塗装後の取り付けです。

(37)妻板の縦樋を取り付けた様子です。
側面から伸びる樋は省略してしまいました。
(38)モハ114(左)、モハ115(右)の妻板のダクトと手すりの部品を取り付けました。トミックス旧製品をタネ車にする場合はダクトのモールドが元から存在するため、新たなダクトパーツの取り付けは不要です。ここではTTP205「169系手すりセット」とTTP108「113・115系妻板ダクト」を使用しました。
非パンタ側(写真下)は、モハ114・115とも同型です。
(39)クハ115の様子。左が109、右が654です。109はオリジナルのクハのため、手すり類は不要です。654は元モハ車のため、(38)のモハ車と同様に手すりを設けます。ただしダクトは撤去されているので、不要です。
(40)一通りの組立が完了しました。
どこに手を加えているか、何となくわかると思います。
(41)別の角度からです。
モハ114の屋根はPS23対応化前のロットを使用していますが、モハ164用PS16パンタを取り付けたくて、プラ板で元の穴を塞ぎ、パンタ台に取り付け穴を空けなおしました。塞いだ穴も特に仕上げていません。勿論製品に付属のPS16をそのまま使用する場合はこの加工は不要です。
(42)塗装作業に入ります。塗装については今回は作業時間の関係から途中写真の撮影が出来ませんでしたので、割愛させてください。
写真はマッハのブラスクリーンに漬けて、作業中についた汚れや錆を取り除いているところです。新しいビンならみるみるうちに金属地肌がピカピカになります。何度も使用したビンですと多少時間がかかります。
サンポールで同じ作業をしても構いません。いずれも身体によくない薬品ですから、作業中は薬液をこぼしたりしないように細心の注意を払います。
画像には私の指が映っていますが、これはNGです。ちゃんと手袋をしましょう・・・。
それからプライマーを吹き、下地になるグレー系の色を吹いてから、塗装にうつっていきます。
(43)いきなり完成車の写真で恐縮です。
ここからは各部の完成状態のアップを紹介し、部品の取り付けの様子を見て頂ければと思います。
まずN30工事を受けたモハ車の戸袋窓です。これはキット付属の窓セルパーツを使用し、裏側から貼ります。寸法が変わっただけでなく、ドアのHゴム窓のフチとの表現に差をつける意味もあります。
行先表示窓は、付属の窓セルでもよいですが、今回は鳳車輌のステッカーを使用し、鳳製品の余白が黒いことを利用し、裏から強粘着の両面テープで固定しました。
ドア取っ手はTTL002のインレタを使用、戸袋の半自動スイッチはモールドに銀をさしております。
(44)左が109、右が654です。
オデコの広さが109のほうが広いこと、654と109ではホイッスルの位置、ペンペン草から伸びる屋上ステップの位置が違うことがわかります。654はAU13が載っているため、近郊型らしくないですね。
(45)109の助士側アップです。塗りわけ線や、ホイッスルの取り付け状態がわかります。丸窓車はトミックス製品のガラスの四隅をカッターで削り落としますが、よく見るとこの作例でも、決して丸く削り落としているわけではないことに気づいていただければと思います。本当に「角をそぎ落とす」だけで、らしく見えると思います。 (46)左が109、右が654です。
元々トイレ付きで製作された109は、車端部のサッシがずれていることがわかります。654は元々モハで、トイレがなかったため、サッシが内側によっています。なお654は撮影時仮台車をはいていますが、DT21台車が正当です。
(47)左が654、右が109の様子です。窓配置の違いからくる、塗りわけ線の違いがわかるかと思います。
(48)実車にならい、ワイパーの色を654は未塗装、109は車体の茶色に塗りました。ワイパーの別体化をしていなくても、色さしをすると表情に活気がでてくるでしょう。 (49)109の自販機スペースは、実車は自販機が撤去されて透明ガラスになっています。窓セルを貼っておきます。
(50)完成しました。インレタはこの後に転写していますが、本来はクリアーを吹く前に転写を済ませておきましょう。

2014年7月17日更新

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