一枚板グライダーの実験

アルソミトラという植物の種をモデルにしたグライダーがある。一枚板グライダーはA4画用紙を短辺方向に切って作った長方形の羽だけのグライダーである。
一枚板グライダー
投げ方が少し難しいがシマシマクリップの位置を調整するとうまくグライドする。たった一枚の紙がグライドすることに驚き、「どうして飛ぶの?」と飛行の科学に関心を持ってもらいたい。クリップをさしこむ長さを変えるとグライダーの重心位置を変えることができる。グライダーの縦安定性(ピッチ安定性)が重心位置によって変わってくることを体験することが実験の目的である。

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参考とした情報

アルソミトラの模型から思いついたもの。開発した時点では参考とした情報は記憶にない。ダイソーで売っているシマシマクリップがA4サイズの画用紙から切り出した一枚板グライダーに丁度いい重さになる。

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実験の進めかた

一枚板グライダーの製作

A4画用紙に型紙を印刷し、横方向に切りはなして作る。プリンターの印刷範囲の関係で両はしが印刷されていないが線の延長上を切って短冊を作る(5枚できる)。シマシマクリップの外側(長いほう)を目盛りがあるほうにして、図のようにはさんで裏側をセロテープで止める。
クリップの先端を20、30、40、50、60(%)の位置に合わせて5種類作る。クリップの位置を変えることによりグライダーの羽の重心位置を変えたことになる。

一枚板グライダーの飛ばし方

一枚板グライダーの後ろ側を親指と人差し指、中指ではさんで手首を曲げないで腕で押し出すようにはなす。
一枚板グライダーをうまく飛ばすためにはちょっとしたコツがある。
グライダーは降下しながら前に進む。位置のエネルギーを前に進む力に変えている。グライダーが滑空しているときの速度は発生する揚力がグライダーの重さと丁度つりあう速さになる。すなわち、グライダーはそれぞれ固有の角度と速度で安定して飛ぶようになっている。
一枚板グライダーが滑空するためには、手からはなすときこの固有の角度と速度になっているように意識して投げる。そのため、
  • グライダーの羽の角度が水平よりやや下向きにする
  • グライダーの速度が適当である
  • グライダーをはなすとき手首を回さない
ように気をつける。
はなした後下向きに円を書いて回る場合は、裏表反対にしてもう一度試す。

飛ばしやすくする工夫

グライダーの羽が曲がっているとき、図のように上に凹になるようにして飛ばさないと安定して飛ばない。尾翼がある紙飛行機では主翼のキャンバー(図のような曲がりをキャンバーと言う)を上に凸につけて揚力を増やすが、上に凸のキャンバーをつけてはいけない。
一枚板グライダーの場合には尾翼による縦安定性を期待できないためである。安定して飛ばすためには後縁の両端をごくわずか上に曲げておくといい。


キャンバーがついた羽は上に凹にして飛ばす

グライダーの重心の測り方

グライダーや飛行機の重心は慣例的に主翼翼弦長の前縁からの距離%で表現する。主な揚力を発生するのは主翼であり、重心を揚力中心の近くに置く必要があるため、ほとんどの場合重心は主翼内にあるためである。重心位置の測定には、ピンセットや2本足のフォークを使うと良い。
  • フォークの上に羽を乗せ丁度バランスする位置を探す(このときフォークの2つの先端を結ぶ線が羽の長軸の方向に合うように置く)
  • フォークの先端位置を印刷した目盛りで読み取り銃身位置とする

羽をフォークトの上に置いて重心位置を測る

一枚板グライダー実験手順

  • 最初に40%の一枚板グライダーを飛ばす。このグライダーはうまく飛ばすときれいにグライドする。
  • 一通り練習してうまく飛ばすことができるようになったら、他の%のものを飛ばしてみる。
  • それぞれがどんな飛び方をしたかまとめる。
  • 飛ばした後にそれぞれのグライダーの重心位置を計る。

重心位置と滑空軌跡

グライダーの軌跡は重心位置によって変わる。
重心位置が適正なときはうまく投げると糸を引いたように真直ぐ飛ぶ。
これに対して重心位置が前過ぎると必要な揚力が得られないため浮くことができず、つっこみ型の軌跡をたどる。
逆に重心が後ろ過ぎると波を打った軌跡をたどる。
重心が後ろにあると、グライダーの重量を支える大きさの揚力で翼の前縁が上を向くように回転させ、そのため迎角が増え、更に揚力が増えるため、上向きに飛ぶ。上向きに飛ぶことにより飛行速度が落ちる。飛行速度が落ちると揚力が減り、下向きに落ちるように進む。軌跡は波頭のように上下し、機体は機首が上下運動を繰り返す。このような機首の上下運動をピッチングと呼ぶが、ピッチングを起こすと機体の軌跡は波を打つことになる。

一枚板グライダーの実験のまとめ

一枚板グライダーをうまく飛ばすためにはある程度練習がいる。少し慣れると3回に1回程度はうまく飛ぶようになる。うまく飛んだグライダーの軌跡を比較して重心位置を変えた時のグライダーの縦安定性を比較するのが本実験の目的である。飛ばしてみると分かるが一枚板グライダーを真直ぐ飛ばすのは更に難しい。多くの場合、うまく滑空しても右や左に旋回する。これは傾いた翼を元に戻す働きが弱いからである。