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効率の良い光学設計をめざして(4)

実施例(2)

「目標設定」

「4M」の観点や日常業務から光学設計の実状を挙げてみましたが、ほとんどの内容が組織に関連する問題点が多いように思えます。 特に日常の業務管理は、「組織のそれぞれの部門が業務目的を効率的に達成するために必要な活動」と定義されますので、高難易度の仕様の設計に対応するには、負のスパイラルに陥らないように設計部署としての適切な対応が必要であると考えます。 今回は組織的なものではなく設計者個人の目標設定を考察しているので、4Mの観点から挙げられた「設計・評価方法の確立」がテーマに即していると考えます。

「光学設計者として高難易度の光学仕様に対応するには、新たな設計・評価方法を取り入れること」を目標に設定し、どのような項目に重点をおいた方法にするのかを「要因の解析」で調査し、設定します。

「要因の解析」

現状把握の段階でいくつか不具合な点を挙げましたが、「要因の解析」ではもっと詳細で具体的に不具合な点や問題点を挙げます。本来ならブレーンストーミング等を行い、幅広く意見を集めるのがいいと思いますが、ここでは私個人の意見で進めていきます。

不具合点や問題点を書き出し、「日常の業務管理項目」項目別に集計したのが、下記の表とパレート図です。

管理項目解析表

累積比率 パレート図

「光学性能」・「効率」・「コスト」・「時間」の4種類の累積比率が80%以上になりますので、このキーワードの組み合わせから考察します。  「効率」と「時間」は効率改善と時間短縮と類似した項目と考えることが出来ますので、「効率」として考え、「光学性能」・「コスト」・「効率」の3つのキーワードから重点項目を調査します。

ここでレンズ設計の特徴を確認します。光学設計の特徴は、設計者の意図が反映されやすい事と、性能や構成等のバランスを取る設計であるということです。 「設計者の意図」はスキルや経験等が多分に含まれ、且つ一朝一夕に身に付くものではないので、今回は検討から外します。 「性能や構成等のバランスを取る設計」について、コスト低減を含め仕様上特徴的な光学系であっても、結局最優先される項目は解像度(MTF)の向上です。

解像度(MTF)の低いレンズ系の設計は採用されることがありません。

レンズ設計は解像度(MTF)を目標値に近づけ、且つ要求仕様をどれだけ満足させるかという作業になります。 設計値全てが要求仕様を満足すれば何も問題はないのですが、高難易度仕様の光学系の設計は要求仕様値全てを満足することは滅多になく、場合によっては特徴となる箇所をひとつも満足しないこともあります。 その時は要求仕様に達成度の優先順位を設定して、優先順位に合わせて設計を進めていくことになりますが、やはり解像度(MTF)は最優先になりますので、優先順位通りに設計できるとは限りません。 その場合どのような方法をとればよいか、常に疑問がつきまといます。

この疑問を解決するために、達成具合を修正したり、時には優先順位を変更したりして、試行錯誤しながら設計を進めていきますが、この作業が著しく効率を落としているのが現状です。 また仮にバランスが取れているようにみえても、製造誤差感度の緩和や解像度の更なる向上を考えた場合、必要に応じて修正設計を余儀なくされる事も多々あり、作業効率が劣化する要因になります。

要するに問題点は、解像度(MTF)の確保・向上が最優先になっているために、他の「光学性能」や特性と仕様満足度のバランスを取ることに多大の時間を費やして、その結果「コスト」が上がり「効率」が劣化していると言うことができます。