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効率の良い光学設計をめざして(5)

実施例(3)

「対策の立案」

光学性能・特性の仕様満足度のバランスを取ることに時間がかかっていることがわかったので、どうすれば短時間でバランスが取れるようになるかを検討します。 但し、性能・特性の使用満足度のバランスを取る技術的な作業は、光学系の特徴が大きく依存しますが、一般的な方法を考察する方法を提案することを目的としているため、ここでは割愛します。

「バランスを取る事に多大な時間を費やす」ということは、技術的な面を除くと「バランスが取れているかを見極めることが難しいため多大な時間を費やす」ということも含まれると考えられます。

そこで「見極める方法」に着目し、容易にOK/NG判定ができる方法を考察します。

OK/NG判定が容易な方法のひとつとして、「評価結果を数値化してその値を判定する」という方法がありますが、ここでは「設計完成度を数値化してその値を判定する」という方法を採用します。  各仕様の達成度合いと優先順位ついて係数を設定し、設計完成度を仕様達成度の係数と優先順位の係数(ウエイト)の積の総和として定義します。

都合の良いタイミングで達成度を評価し、全部仕様を満足しない場合は設計完成度を算出して評価します。

達成度が満点、または設計完成度が高いと判断できた場合は設計完了になります。

完成度算出結果と達成度ランクや優先順位(ウエイト)を考慮しながら、仕様を見直しつつ最適化を続けます。

作業を続けるといくつか設計データができますが、あるタイミングでこれらの設計完成度を比較します。

必要に応じて達成度ランクや優先順位(ウエイト)を修正して比較作業を続けますが、達成度ランクやウエイトを修正する必要がなくなった時点での設計完成度の最も高い設計データが、最も仕様を満足した設計と判断することができます。

この段階でも仕様を満足しないと判断できる設計がある場合、コンセプトや企画に無理があるときがありますので、もう一度コンセプトを修正したほうがよいと考えられ、場合によっては企画の中止も検討する必要があります。

 簡単にまとめると、下のようなフローチャートのようになります。

完成度算出準備 完成度の定義

仕様達成度評価

「バランスを取る事に多大な時間を費やす」という問題に対して、「設計完成度を数値化して評価することにより、「バランスのとり方の良否判定を効率的に行う」という方法を対策案として採用し、前述の準備とフローチャートに従いながら作業を進めます。

「対策の実施」

 実際にズームレンズを設計したときにこの方法を採用して作業を進めましたが、その時達成度ランクや優先順位(ウエイト)を設定したものが下記の表です。(一部修正)

評価実施例-1

 達成度ランクは4段階に設定し、「Target」は設計仕様値ですが、許容レベルはコンセプトから著しく外れないように随時修正して設定しました。またウエイトについて、達成度ランクと同様に設計していく過程で、状況に応じて達成度とコンセプトを考慮しながら修正していきました。

 設計完成度が高くなるにつれて得点が小さくなるように設定しましたが、実際に得点を計算したのが下表です。

評価実施例-2

 設計完成度得点の算出では感度計算結果も加算する予定でしたが、設計納期が厳しく感度計算評価に時間がかかったので、この得点の加算は割愛しました。

 設計効率の良さを追求しておきながら、計算効率の悪さで割愛しているのは良くない事ので、今後の改善が必要であると考えます。