魚菜王国いわて

自由と安定

自由と安定
付録 フランス人権宣言にケチ!」という投稿文は、自由と平等は両立しないという論理を、フランス人権宣言を利用して書いたもので、利用したことは、この人権宣言の起草者には失礼にあたるかもしれません。
しかし、「自由かつ平等」という言葉は、なかなか探すことができず、利用させてもらった次第です。

私は最近、「自由と安定も両立しない」ことについて、考えるようになっています。
自由と安定が両立しないことも論理です。
完全な自由とは、常に競争状態で、上がったり下がったりを繰り返します。
これを安定とは言いません。

協定・大手拒否
安定の方法として、地域内で協定したりしますが、少数で過剰に独占すると、独占禁止法で制限されます。
しかし一方では、国益や地方存続のために、正当化されたりします。
国益を守るために、例えば農産物輸入自由化に反対することなどは、国内を守るため、そして国内を安定させるための協定と言えるでしょう。
それに反対する勢力というのは、当然自由勢力であり、あのWTOという組織がそうであるということは理解できると思います。

地域協定の身近なものは、大手業者の進出拒否。
これに対する非難というのは、もっと大手の企業を地域へ入れて、競争原理を取り入れ、消費者(または生産者)に利益をもたらすようにすべきだという考えが基本になると思います。
しかし、大手グローバル企業というのは、強大な資本力があるために、利益にならなければ簡単に撤退します。
この撤退が、地元の零細企業を追いやってからだと、地域社会にとっては致命的なものとなります。

漁業者としては、大手企業が入ってきて、地元の仲買人よりも高値で魚を買ってくれることは、確かに収入増になります。
高値で落札した大手企業は、どれほどの値段で他所に売るかはわかりませんが、まさか損をするような売り方はしないでしょう。
それで利益を計上したとしても、そのカネは宮古には残ることにはならないのです。
大手企業がその資本力を使って買占めを敢行すれば、地元の零細企業は窮地に追い込まれ、従業員の解雇、最悪の場合は倒産、夜逃げとなります。
旅の人間が地域内を荒らすことに、たいていの人は無関心ではいられないはず。
それがたとえ漁業者の利益となっても、嫌なことには変わりありません。
宮城県志津川で起きたこと」を読めば、大手企業が地域に根付くということを全く念頭においてない、ということがわかるはずです。

宮古魚市場では、大手の業者は入れていません。
このようなことを敢行している魚市場は、県内では宮古だけかもしれません。
しかし、宮古魚市場は、県内でも比較的高い値段で取引され、それを知っている漁業者は遠くからでも陸送で運んできたりします。
それだけ地元の企業が頑張っているということにもなるわけです。
今のところ、このような地域内協定が、宮古魚市場内ではうまく機能しています。
私は、地域の利益というものを考えると、ある程度の地域内協定というのは必要なものだ、と思うようになりました。
安定というものが、このような局面に見出すことができるからです。
もちろん、政治家が介在する利益誘導を排除しての話ですが。

地方の自立
地方の自立は、現状では、グローバリストを排除して初めて確立されると思います。
「方針変更」(←ファイル消失)ですでに書いているように、国から地方へのカネは今後どんどん少なくなりますから、地方からのカネの流失を避けなければならない。
イオンやローソンみたいな、地方からカネを吸い上げる国内グローバル商人(←勝手に私が命名しました。笑)を排除していかないと、地方には本当にカネがなくなります。
グローバリストにいいようにされれば、地方は自立できなくなり、結果的に不自由となります。

グローバリストの不自由は地方の自由。
グローバリストの自由は地方の不自由。

グローバリストの排除を県や市が表立ってやったら、いろいろ非難されるでしょうから、消費者の側が賢くなってモノを買うようになってほしいものです。

いわてフレンドリーレストラン
「いわてフレンドリーレストラン」(←リンク切れ)の指定は今年で2年目です。
と言っても、何のことかわからない人がいるかもしれませんが、これは岩手の食材を使用し岩手をアピールしてくれる店に対して、「いわてフレンドリーレストラン」という名称を指定している県の取り組みです。
うれしいですよね。
「岩手応援団」。

ローソンに先日入ってみました(これを書くためにわざわざ大阪商品にカネを献上した!)。
弁当は仙台で作られたものを販売しています。
酒のつまみ(?)となる漬物は、盛岡市の漬物屋さんのものでした。
宮古で作ったものは?といえば、たった一つだけ目にしまして、それは菱屋さんの「千両男山」の安い一升瓶が置いてあっただけです。
その他のほとんどの製品は、当然のごとくローソンの流通にのったルートで送られ販売されているのでしょう。
コンビニに限らず、独自の流通で販売されるものは、すべて同じだと思います。
ただ、コンビニの場合、値引きなしの販売価格そのままですから、高い。
なぜあんなものを利用するのかは知りません。
「便利だから」という人もいるかもしれませんが、本当に便利なのかしら?

都会の料理人たちが、岩手の食材を使って応援してくれているのに、ローソンなどは岩手に進出しても、ほとんど地元の食材を使用しません。
おにぎりは“新潟コシヒカリ”と書いてありますから、間違っても岩手産米ではないですよね(おにぎりぐらい岩手のを使えよ!)。
あの弁当その他に使われる食材はいったいどこから来たものなのか?
もしかして外国?
ローソンなどは、岩手にとってマイナスの存在でしかないような気がしてなりません。

これぐらいはやっても・・・
自由を武器に、グローバル商人らはどんどん地方を侵食しているのですから、これは地元の不利益です。
ここで岩手に進出する国内グローバル商人らに、地元の食材の利用を国内グローバル商人らに促すべきだと思います。
それぐらいは、公がやったっていい。
県は県内のことを考え、市は市内のことを考え、自由の行き過ぎを制限することは、何も悪いことじゃない。
逆に、このことを理解しないハゲタカ商人など、非難されて当然です。
彼らが、地元のことを考え、地元の食材、製品を利用してくれるならば、それ以前よりは、地方のモノが動き、地方は“安定”します。
自由の制限、特にグローバル商人らの自由の制限は、地方を安定させるためには、必要なことだと私は思います

以上のことより、地元産の取り扱いを義務付ける条例があってもいいですね。
本社が県外にある小売業にはA%の地元産の取り扱いを義務付ける、東北以外にある場合はB%、外国にある場合はC%とうように。
この場合、当然A<B<C。
市で考える場合でも、市外 < 県外 < 東北以外 < 外国 というように。
“カネのない”地方の安定は、このような手法でしか手に入れることができないのではないでしょうか。
(2005年2月20日)



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