魚菜王国いわて

遺伝子工学の知的所有権は人でなし?

前回紹介したように、GMO作物は、ほとんどが除草剤耐性と病害虫抵抗性を目的として作られます。
除草剤耐性作物は、その作物が除草剤に耐性がありますから、その分、除草剤をたくさん散布できてしまうわけですが、、その行為によって、目的外の雑草に耐性が生まれてしまいます。
これだと、再び、別の除草剤耐性GMO作物を開発しなければなりません。
これの繰り返しで、耐性との終わりのない闘いが永久に続きます。
病害虫も耐性を持ちますから、病害虫抵抗性の作物も同じ構造です。
これじゃ、農民は、GMOを支配するアグリビジネスに、永遠に生き血を吸われることになります。

農民は、有機農法という農業に目覚め、世界中が取り組み始めています。
いろいろな危険性のあるGMO作物より、在来種作物を有機農法で作るほうが、アグリビジネス以外の地球上の人間にとって、いいに決まっています。
植物の種子は、簡単に空間移動できます。
これを否定している企業もいますが、よく考えれば、太古の昔からさまざまな形で、植物の植生は移動しています。
いったんGMO種子が地球上にばら蒔かれれば、その隔離は不可能に近い。
ということは、GMOに関する知的所有権を主張する側は、閉鎖された空間で育てなければならない。
植物の性質上、この知的所有権は「閉鎖された空間」でのみ、主張できるのではないでしょうか。

もう一つの見方。
知的所有権というのは、その知的財産がコピーされ社会全体にばら撒かれれば、社会全体が得をする性質があると思うんです。
どんどんコピーされ、その対象の性能よくなっていきます(「技術競争物語」を参照)。
ところが、ことGMOに関しては、どんどんコピーされればされるほど、耐性のいたちごっこが永遠に続き、社会全体が被害を被る。
こんな知的所有権は他にないんじゃないでしょうか。

「セルフィッシュ・ジーン」(←ファイル消失)の影響が、私にはものすごくあって、遺伝子工学の遺伝子操作について、考え込んでしまいます。
そもそも生物の進化は、コピーミスの淘汰にあるわけで、それを人為的にコピーミスさせることが遺伝子工学なわけです。
進化におけるコピーミスは、ものすごく長い時間がかかっています。
そして、ゆっくりとあらゆるものが淘汰されてきて、現在に至っているのです。
一方、人為的な遺伝子操作は、非常に短い時間で行われているのであり、地球上の進化に比べれば、ほんの一瞬のことです。
問題は、この一瞬の時間に、他の細胞、ひいては生物本体が影響を受け、淘汰されてしまうことにあります。
遺伝子工学の世界で、短時間にたくさん遺伝子をコピーミスさせれば、それによる影響も短時間のうちに起こります。
この一瞬のうちに起こるコピーミスに対し、コピーミスしていない生物、動物、そして、人間が対応できるものなのでしょうか?
このように、コピーミスの淘汰が、長い時間かけて行われたことを考えれば、「遺伝子操作は神の領域を侵すもの」という言葉が、なんとなく理解できたような気がします。

一方、医学界での遺伝子工学は、コピーミスを修正する分野なら歓迎してもいいのかもしれません。
その代わり、ヒトの遺伝子を管理するわけですから、あまり厳格に管理されれば、進化はしなくなります(笑)。
中には進化させるため、コピーミスを乱発させる研究者も出てくるかも?
こう考えると恐ろしくなってしまい、やはりこれも「神の領域を侵すもの」になってしまします。

遺伝子治療は、知的所有権の主張のしすぎのために、研究が進まないという弊害が起きています。
これは前に書いた「コピー淘汰」と同じ現象で、お互い足の引っ張り合いをして、社会全体でみれば損をしていることになるわけです。
また、遺伝子工学もビジネスの世界と深い関わりがあるので、カネのない第三世界などで、治るべき病気も治らないということになってしまい、結局、金持ちじゃないと治療できない、という現象が、数年前から「地球白書」なんかで指摘されています。

遺伝子工学は、農業にしろ医業にしろ、研究者、そして、使用者、企業の倫理に問題がある、と言えますね。
遺伝子工学の分野の知的所有権というのは、まったくうまくいっていないようです。

前回紹介した「遺伝子組み換え情報室」は本当に素晴らしいサイトでして、知的所有権に関するページ「特許関係」のページも勉強になります。

「日本たばこ」よ!
くたばれ!

と言いたくなるようなことも書かれています。
(2004年7月16日)



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