魚菜王国いわて

GMO(遺伝子組み換え生物)

ヒトの遺伝子が組み込まれるGMOイネ
GMOイネとは、遺伝子組み換えイネのことです。
このGMOイネは、現在、カリフォルニアで試験栽培されることが問題になっています。
その遺伝子操作に、ヒトの遺伝子を使っているということも奇妙であり、ジワジワとくる恐怖感を伴います(私だけの感覚かも?)。
GMOのことは、前に「農業分野でも地球上を危機に陥れるアメリカ」で紹介していて、この時は、殺虫性のトウモロコシのことを取り上げています。
それでは、GMO作物の基本的な問題を、「WORLD・WATCH」誌から少し引用します。

GMOには除草剤耐性と病害虫抵抗性の2つの基本形があるが、多くの場合、除草剤の使用量や農薬成分の環境への放出量は、どちらも在来作物を上回っている。イギリスで最近行われた調査では、除草剤耐性の作物が昆虫の個体数を減少させ、生物の多様性を損ねることが明らかになった。除草剤耐性の作物を栽培すれば、異種交配や自然淘汰(大量の除草剤による)を通して、一種以上の除草剤に耐性を持ついわゆるスーパーウィード[突然変異の雑草]の誕生につながりかねない。また病害虫抵抗性の作物は、益虫に有害なだけでなく、一般的に使われている農薬への耐性を、標的である病害虫に獲得させることになりかねない。
(「WORLD・WATCH」2004年5/6月号p24)

カリフォルニアでの食用穀物は、GMOとは無縁だったのですが、モンサントとアヴェンティス(現バイエル・クロップ・サイエンス)という2つの企業が、除草剤耐性GMOイネを試験栽培するようになり、しかも、鳥や昆虫などの野生動物の出入りも自由な状態です。
モンサントといえば、「世界の飢餓はアグリビジネスの誕生に由来する」にも登場した、あの悪名名高いモンサント社。
昆虫などが自由に出入りできる環境というのは、GMO汚染が広がる可能性が大きい、と言わざるを得ません。
ブラジルでは、除草剤に耐性を持つイネの試験栽培区画には、保護網の設置が義務付けられていて、設置を怠った区画が見つかった場合は、栽培されている作物の破棄が命じられています。
ブラジルではしっかり対応しているのに、さすが優れた知識人のたくさんいるアメリカですね(もちろんバカにしています)。
そのカリフォルニアの中でも、異彩を放っているのが、ヴェントリア・バイオサイエンス社のGMOイネです。
これにヒトの遺伝子を用いていて、ホントに気持ち悪いですよね。
で、なぜこんなことをするのか?ですが、ここでもちょっと引用。

現在、同社はヒトの母乳に含まれるリゾチームとラクトフェリンという2つのタンパク質を作るため、ヒト遺伝子を組み込んだイネで実験を行っている。授乳中の母親は、母乳を通じてこのタンパク質を子どもに与え、バクテリアやウィルス、菌類、その他の微生物に対するより強力な抵抗力をつけさせる。ラクトフェリンは鉄分も補給する。ヴェントリア社は、いくつかのヒト遺伝子で強化したイネの実験を進める一方で、ヒトの母乳成分を取り込んだイネを家禽類の餌に混ぜて抗生物質の代替品にしたり、乳児用粉ミルクに混ぜる栄養補助食品として利用する計画を立てている。
(前掲書p18)

遺伝子組み換え食品が、ついに粉ミルクにまでなるんです。
誰が飲むんですか?
じゃなくて、誰が赤ちゃんに飲ませるんですか?
大人ですら、遺伝子組み換え食品を敬遠しているのに、こんな粉ミルクを飲ませる親なんていませんよね。

カリフォルニアの農民は、すでにGMOイネなんて眼中になく、GMOを拒否しているアジア市場向けの有機栽培で、価格の高いコメを生産しています。
この辺を考えると、アグリビジネスが、未だに農民を食い物にしようとたくらんでいる、としか思えません。
このようなGMOイネを、どうして開発するのか?と、この論文の筆者クレア・ホープ・カミングスさんも不思議がっています。

モンサント社と闘う農民
カナダの一農民パーシー・シュマイザー氏は、自らが在来種の品種改良をしてきたナタネが、モンサント社のGMOナタネに汚染され、被害を被りました。
しかし、1998年、逆に、モンサント社の作物を勝手に栽培した、として、特許侵害で訴えられました。
びっくりしますよね。
GMOに汚染されたと思ったら、勝手に栽培するな、と訴えられるんですから。
どう考えても不可解です。
これじゃ、完全に空間を遮断して栽培しなくちゃ、在来種を防衛できません。
本来なら、GMO作物を栽培する側が、完全に遮断された空間を確保して栽培しなければならない、と思うんですが。
「GMO作物を栽培することが、在来種栽培よりも、絶対的に正しいことだ」というのなら、そりゃわかりますが、そんなことは絶対にありません。

シュマイザー氏の闘いについては「72歳の農民・パーシー・シュマイザーさん カナダからの警告」というページがあり、これは「大地を守る会」というサイトにありました。
で、シュマイザー氏は、カナダ最高裁で敗訴が確定しまして、その内容は、「モンサントがパーシー・シュマイザーの種子保存裁判であっけない勝利」を読めばわかります。。
このページのあるサイト「遺伝子組み換え情報室」がすごくて、論文がたくさんあります。
興味ある方は、ぜひ読んで究めてください。
私は究めません(笑)。

モンサント社は、すでに日本にも進出していまして、Webサイト「日本モンサント」には、GMO作物を正当化する内容が書かれています。
しかし、「日本モンサント」の安全性を主張する理由は、今日紹介した反GMOサイトで、ほとんど覆されています。

恐怖のGMO小麦
コメに次ぐ日本の基本的な消費穀物は小麦です。
考えてみれば、パンからラーメンまで、小麦原料が使用されています。
学校給食法で裏作が崩壊しましたが、その裏作で栽培されていたものの代表的なものが、小麦であり、現在は、90%を輸入に頼っています。
その小麦のGMO化が、アメリカ、カナダで起こりそうな気配です。
小麦の輸入相手国は、アメリカ、カナダで、80%を占めてしまいます。
両国の小麦がGMOに支配されたならば、GMO小麦が日本人のお口に入る確率は、90%×80%=72%となり、私たちは、きっと食べてしまうことになります。
そのGMO化を促進する企業とは、またまた史上最悪のモンサント社。
GMO小麦のことは、「遺伝子組み換え食品いらないホームページ」の70号「GM小麦はいらない!」にあります。
学校給食法からの関連も書いてあり、なかなか勉強になります。

GMO作物を食べた動物の異変
GMOジャガイモをラットに食べさせたら、免疫不全の障害があらわれたそうです。
それを公表したら、公表した教授は、ハイテク産業から圧力をかけられ、言論を封じられました。

http://www.s-coop.or.jp/snew/cyup1.htm#02

先ごろ、岩手と青森の県境産廃投棄場所で、ハタネズミの染色体異常が多くなっている、というニュースが流れました。

http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/photojournal/news/20040626k0000m040049000c.html

ネズミですから、口から入ったものの影響なのでしょう。
つまり、食べ物から染色体異常が起こる、ということです。
GMO作物を食べておかしくなった報告は、すでに「農業分野でも地球上を危機に陥れるアメリカ」で、ブタの繁殖異常が例示されています。
GMO作物の出現は、ごく最近であり、その影響なんて、ほとんど知られていない状況です。
ハタネズミの染色体異常を考えると、遺伝子の組み換えられた未知の食べ物というのは、どうしても恐怖に値します。

アメリカの世界戦略に対抗しよう!
昨日の食糧自給率で引用したあのブッシュの言葉を思い出してください。
「国民を食べさせるに足る食糧を生産できないような国を想像できようか。そんな国は国際的な圧力に従属する国になる」
このGMO作物開発は、もしかして、食糧世界支配ため、実験しているのかもしれません。
農業分野でも地球上を危機に陥れるアメリカ」のように、アメリカ以外の国への転用実験も否定できません。
例えばです。
アメリカの実験場で実らせた花粉を、そのまま他国でばら撒いて、その国の作物をGMO化させるとか。
陰謀論めいてきましたが、アメリカならやりかねませんよ。

ここで日本の農業戦略を、足りない頭で考えてみます。
前回の「食糧自給率」の引用では、日本の農家にとって脅威のカリフォルニア米が、少量ですが販売されるようになりました。
そこで、カリフォルニア米にGMO汚染の疑いをかけるのです。
そして、BSE牛と同じように、疑いが充分に晴れるまでは、禁輸する。
これは、二重の意味で効果を発揮します。
日本にGMO汚染を持ち込ませないこと。
そして、禁輸によって、カリフォルニアでのGMOイネの試験栽培も中止に追い込むことができます。
これは、カリフォルニアの農家にとっても、最終的には利益となります。
GMO汚染から免れるわけですから。
私たちにできることは、GMO作物は絶対不買することです。

「沈黙の春」の示すもの
1962年、レイチェル・カーソンの「沈黙の春」が出版され、動物が化学物質でメス化する現象を告発しました。
すべてがメス化するということは、いずれ世界は動物の声など聞こえなくなり、「沈黙」するということです。
これに対し、各国は強力な環境法で応じました。
しかし、「WORLD・WATCH」誌は、GMOに関しては、次のように書いています。

私たちが歯止めのない広大な遺伝実験に参加しているということだ。
「化学物質汚染が自然界の声を消してしまうのではないか」というカーソンの危惧には十分な根拠があった。遺伝子による汚染が鳥や環境、ひいては人間のどのように作用するのか、今度は私たちが理解しなければならない。しかし、妥協を許す政府の役割や環境規制に対する産業界の反発によって、これらの疑問を解決するであろう調査は行われていない。
(前掲書p26)

ことGMOにおいては、異変が起きてからは遅いような気がします。
GMO作物を摂取し続ければどうなるか?というデータが全くなく、しかし、すでに商品として出回っていて、人間が消費しているからです。

それにしても「遺伝子組み換え情報室」以外の各サイトは、都合の悪い事実は書いてないんですよ。
見比べてみればわかります。
これじゃあ、偏ってしまいます。
何とかならないのかなあ、と思いますが、しかし、よく考えると、自分はいつも偏っていました(笑)。
(2004年7月15日)



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