思い起こせば硬質プラスチック胴を本気で突いていた頃、痛がると「痛いことをやっているんだから痛いのは当たり前だ!引きが遅いから痛いんだ!痛さを向うに置いて来い!」とは当時の師匠に良く言われた言葉である。また技の習得にしても、「このようにやればいい」の一言で、技を掛けさせてもらった記憶があまりない。当時はそんな時代でした。だけど妙に嬉しかったのは事実である。また生前の開祖を目の当たりにして、お話が聞けた時はただただ涙が流れました。しかしながら現代はそんな時代ではないのかも知れませんね。但しどれ程の時が流れても、変わらぬ原理を正しく継承していくことは重要なことなのです。いい加減に覚えたり、技を退化させてしまうことはもっての外ですね。
さて本題に入るが、突くときの基本とは、上段突きも中段突きも肩の高さの延長線上に突きを出すことが重要であり、前足の向きや軸足の向きも忘れてはならないポイントである。では次に、果たしてその攻撃用器たる拳(こぶし)のつくり方を考えたことがあるだろうかということを問いたい。中段突きとは、「下から45度の角度で突く」というような複雑なことを意図しているのではない。大体、下から45度の角度など分からん。要は拳の握り方が重要なのである。腕の外側のラインが手の甲まで一直線になっているかな。そして握った拳の大拳頭が、折り曲げている指より多少なりとも出るように訓練ができているかな。そう、腕から手の甲まで一直線になるようにして大拳頭を出し、大拳頭のみで突くことが重要なのである。ただ単に拳全体で突いていれば良いということではないのである。例えば鉛筆も削っていなければ何ら怪我もしないが、円錐形に削ってあったとしたらどうだろう。芯先一点に力が集中して押し当てた途端に怪我をしますね。そういうことである。
そこで日常の訓練方法としては、大拳頭で腕立て伏せ(拳立て伏せ)をすることが近道かも知れないね。但しくれぐれも薬指と小指側での拳立て伏せをしないことと、開足中段構えの形で拳立て伏せが出来ているか注意することである。またその場合、肘が体側から出ないように心がけることが重要でしょうね。なぜなら、それが突きの練習も兼ねているからなのである。近年、拳立て伏せを薬指と小指側でしている拳士を多く見かけるが、痛いだけで意味がないことに早く気づいてほしいものです。
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