オブレートだより クリスマス号

2022年12月 第43号 発行 聖ベネディクト女子修道院

クリスマスイラスト

スーパーマンの故郷で

Sr.カタリナ 小野 廣子

 7月中旬から2週間、コロナ禍で延期されていた連合会総会が4年振りに、旧母院であるミネソタ州セント・ジョセフ修道院で開催されることになり、参加の機会が与えられました。
丁度、政府が出入国制限緩和に踏み切った時期でしたが、渡米準備の書類の煩雑さは想像を越え、私達(Sr.ナオミ田中と私)2人の弥次喜多道中の前途には暗雲が立ち込めているかのように思われました。

 ここで、珍道中の一端を披露してみることにします。
先ず成田で出国手続きを無事済ませ、経由地シアトルを目指し飛び立ちました。
タコマ空港では乗り継ぎ時間に余裕があるので、暢気に荷物を取り出口へ向うと、そこには大蛇の如き列が蜷局(とぐろ)を巻いているではありませんか。
なんと、それは入国審査待ちの人々の列でどこが頭か尻尾か皆目見当が付きません。
指示されるままオロオロと列に並び、前進を待つのみ。
しかし、遅々として進まず、足が棒の様になって1時間半。
流石に不安になり乗り継ぎ便の時間を確認していると、前に並んでいた家族の御主人が「チケットを見せて」と言います。
乗り遅れを懸念し近くの誘導員に掛け合って下さったのです。
結果は兎に角、待ちなさいとのことでしたが、会話の儘ならぬ2人のために配慮して下さったご主人の親切に「サンキュー!」連発の私達でした。
いよいよ審査ゲートが間近に迫り、その家族とも離れ離れ。不安と緊張の「一時(いっとき)」。好意的な審査官の笑顔に送られ通過すると、そこであの家族と再会したのでした。
満面笑みでお礼を一言と近づくなり、突然、ご主人は「走れ。早く走れ!」と身振り手振りで叫ぶのです。
別れの言葉も吹っ飛び、転がるようにチェックゲートに走り込み、ぎりぎりセーフ!ミネアポリス行に無事搭乗できたのでした。
風貌もどこかあのスーパーマンに似ている、名も知らぬご主人に感謝してもし切れない私達。
ミネアポリスから遠い西のシアトルまで、スーパーマンは飛んで来てくれたと思えたほどでした。


祭壇の十字架と墓地の十字架が
重なるように設計された聖堂の外観。

 さて、充実した総会を終え、帰路に就くミネアポリス出発便は早朝4時。
そこで、空港近くのセント・ポール市の同じ連合会に属する修道院に一宿一飯の草鞋を脱ぐことになり、前日に車で移動。
21名のシスター達に歓迎され、祈りや夕食を共に出来ました。
真夜中の1時には2人のシスターが飛行場へと車を走らせ、不安がる私達のために出発ゲートまで付き添って、あれこれと気遣ってくれました。

 ベネディクトの精神の大切な柱として、ホスピタリティーがあります。
東京オリンピックでも日本の「おもてなし」が注目されましたが、心を尽くして客をもてなすホスピタリティーをセント・ポールのシスター達が、ごく自然に実践されていることを目の当たりにし感動すると共に、日本の共同体もこのようでありたいと肝に銘じ、旅の終りに大きな学びができたことを感謝したのでした。

 そして、ここミネアポリスにも確かに頼り甲斐のあるスーパーウーマンが存在したのです。
この旅でアメリカはやはりスーパーマン誕生の国なのだと確信しました。


セント・ポール修道院の庭園にある
聖ベネディクトのご像のかたわらで。
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