小倉百人一首一覧【歌番号順/五十音順】

百人一首の中でも一番有名な「小倉百人一首」の一覧表(歌番号順・五十音順)です。

小倉百人一首は、鎌倉時代に藤原定家が古くからの100人の歌人の優れた和歌を一首づつ選んだもので、「小倉山荘」で編纂したことにちなんで後世の人が「小倉百人一首」と名付けたものです。
・・・といったウンチクはネットのあちらこちらにあるのですが、肝心の和歌をシンプルに一覧表にしたものは意外と少なかったので、歌番号順と五十音順に小倉百人一首を一覧表にしてみました

歌番号順は、ひらがなと漢字かなまじり表記の両方を記載しています。
歌番号17番、在原業平朝臣の句は、2016年に映画のタイトルにもなり有名になりましたが、「ちはやふる」ではなく「ちはやぶる」が本来の正しい読み方です。
赤い文字は「決まり字」です。例えば「一字決まり」の場合は、上の句の最初の一文字を読んだだけで下の句の札を見つけることが可能です。

なお、着色した行は「坊主めくり」用です。
「法性寺入道前関白太政大臣」「入道前太政大臣」「蝉丸」の3人はローカルルールによっては坊主札として取り扱われない場合があります。

※読みや表記は出典により若干の差異がありますが、代表的と思われるものを掲載しています。

歌番号ひらがな漢字仮名まじり歌人(詠み人)
1あきのたの
 かりほのいほの
  とまをあらみ
 わがころもでは
  つゆにぬれつつ
秋の田の
 かりほの庵の
  とまをあらみ
 我が衣手は
  露にぬれつつ
天智天皇
2はるすぎて
 なつきにけらし
  しろたへの
 ころもほすてふ
  あまのかぐやま
春過ぎて
 夏来にけらし
  白妙の
 衣干すてふ
  天の香具山
持統天皇
3あしびきの
 やまどりのをの
  しだりをの
 ながながしよを
  ひとりかもねむ
あしびきの
 山鳥の尾の
  しだり尾の
 ながながし夜を
  ひとりかもねむ
柿本人麻呂
4たごのうらに
 うちいでてみれば
  しろたへの
 ふじのたかねに
  ゆきはふりつつ
田子の浦に
 うち出てみれば
  白妙の
 富士のたかねに
  雪は降りつつ
山部赤人
5おくやまに
 もみぢふみわけ
  なくしかの
 こゑきくときぞ
  あきはかなしき
奥山に
 紅葉踏み分け
  鳴く鹿の
 声聞くときぞ
  秋はかなしき
猿丸大夫
6かささぎの
 わたせるはしに
  おくしもの
 しろきをみれば
  よぞふけにける
かささぎの
 渡せる橋に
  おく霜の
 白きを見れば
  夜ぞ更けにける
中納言家持
7あまのはら
 ふりさけみれば
  かすがなる
 みかさのやまに
  いでしつきかも
天の原
 ふりさけみれば
  春日なる
 三笠の山に
  いでし月かも
安倍仲麿
8わがいほは
 みやこのたつみ
  しかぞすむ
 よをうぢやまと
  ひとはいふなり
我が庵は
 都のたつみ
  しかぞ住む
 世をうぢ山と
  人はいふなり
喜撰法師
9はなのいろは
 うつりにけりな
  いたづらに
 わがみよにふる
  ながめせしまに
花の色は
 移りにけりな
  いたづらに
 我が身世にふる
  ながめせしまに
小野小町
10これやこの
 ゆくもかへるも
  わかれては
 しるもしらぬも
  あふさかのせき
これやこの
 行くも帰るも
  別れては
 知るも知らぬも
  逢坂の関
蝉丸
11わたのはら
 や
そしまかけて
  こぎいでぬと
 ひとにはつげよ
  あまのつりぶね
和田の原
 八十島かけて
  漕ぎ出ぬと
 人にはつげよ
  あまのつりぶね
参議篁
12あまつかぜ
 くものかよひぢ
  ふきとぢよ
 をとめのすがた
  しばしとどめむ
あまつ風
 雲の通ひ路
  吹きとぢよ
 乙女の姿
  しばしとどめむ
僧正遍照
13つくばねの
 みねよりおつる
  みなのがは
 こひぞつもりて
  ふちとなりぬる
つくばねの
 峰より落つる
  みなの川
 恋ぞつもりて
  淵となりける
陽成院
14みちのくの
 しのぶもぢずり
  たれゆゑに
 みだれそめにし
  われならなくに
陸奥の
 しのぶもぢずり
  誰ゆゑに
 乱れそめにし
  我ならなくに
河原左大臣
15きみがため
 は
るののにいでて
  わかなつむ
 わがころもでに
  ゆきはふりつつ
君がため
 春の野に出て
  若菜つむ
 我が衣手に
  雪はふりつつ
光孝天皇
16たちわかれ
 いなばのやまの
  みねにおふる
 まつとしきかば
  いまかへりこむ
立ち別れ
 いなばの山の
  峰におふる
 まつとしきかば
  今帰りこむ
中納言行平
17ちはやぶる
 かみよもきかず
  たつたがは
 からくれなゐに
  みづくくるとは
ちはやぶる
 神代もきかず
  龍田川
 からくれなゐに
  水くぐるとは
在原業平朝臣
18みのえの
 きしによるなみ
  よるさへや
 ゆめのかよひぢ
  ひとめよくらむ
住の江の
 岸による波
  よるさへや
 夢の通ひ路
  人めよくらむ
藤原敏行朝臣
19なにはが
 みじかきあしの
  ふしのまも
 あはでこのよを
  すぐしてよとや
難波がた
 短き葦の
  ふしの間も
 逢はでこの世を
  過してよとや
伊勢
20わびぬれば
 いまはたおなじ
  なにはなる
 みをつくしても
  あはむとぞおもふ
わびぬれば
 今はた同じ
  難波なる
 身をつくしても
  逢はむとぞ思ふ
元良親王
21いまこむと
 いひしばかりに
  ながつきの
 ありあけのつきを
  まちいでつるかな
今こむと
 いひしばかりに
  長月の
 有明の月を
  待ちいでつるかな
素性法師
22くからに
 あきのくさきの
  しをるれば
 むべやまかぜを
  あらしといふらむ
吹くからに
 秋の草木の
  しほるれば
 むべ山風を
  嵐といふらむ
文屋康秀
23つきみれば
 ちぢにものこそ
  かなしけれ
 わがみひとつの
  あきにはあらねど
月みれば
 千々に物こそ
  悲しけれ
 我が身ひとつの
  秋にはあらねど
大江千里
24このたびは
 ぬさもとりあへず
  たむけやま
 もみぢのにしき
  かみのまにまに
このたびは
 幣もとりあへず
  手向山
 紅葉の錦
  神のまにまに
菅家
25なにしおはば
 あふさかやまの
  さねかづら
 ひとにしられで
  くるよしもがな
名にしおはば
 逢坂山の
  さねかづら
 人に知られで
  くるよしもがな
三条右大臣
26をぐらやま
 みねのもみぢば
  こころあらば
 いまひとたびの
  みゆきまたなむ
小倉山
 峰の紅葉ば
  心あらば
 今ひとたびの
  みゆきまたなむ
貞信公
27みかのはら
 わきてながるる
  いづみがは
 いつみきとてか
  こひしかるらむ
みかの原
 わきて流るる
  泉河
 いつ見きとてか
  恋しかるらむ
中納言兼輔
28やまざとは
 ふゆぞさびしさ
  まさりける
 ひとめもくさも
  かれぬとおもへば
山里は
 冬ぞ寂しさ
  まさりける
 人めも草も
  かれぬと思へば
源宗于朝臣
29こころあてに
 をらばやをらむ
  はつしもの
 おきまどはせる
  しらぎくのはな
心あてに
 折らばや折らむ
  初霜の
 おきまどはせる
  白菊の花
凡河内躬恒
30ありあけの
 つれなくみえし
  わかれより
 あかつきばかり
  うきものはなし
有明の
 つれなく見えし
  別れより
 暁ばかり
  うきものはなし
壬生忠岑
31あさぼらけ
 あ
りあけのつきと
  みるまでに
 よしののさとに
  ふれるしらゆき
朝ぼらけ
 有明の月と
  見るまでに
 吉野の里に
  降れる白雪
坂上是則
32やまがはに
 かぜのかけたる
  しがらみは
 ながれもあへぬ
  もみぢなりけり
山川に
 風のかけたる
  しがらみは
 流れもあへぬ
  紅葉なりけり
春道列樹
33ひさかたの
 ひかりのどけき
  はるのひに
 しづごころなく
  はなのちるらむ
ひさかたの
 光のどけき
  春の日に
 しづ心なく
  花の散るらむ
紀友則
34たれをかも
 しるひとにせむ
  たかさごの
 まつもむかしの
  ともならなくに
誰をかも
 知る人にせむ
  高砂の
 松も昔の
  友ならなくに
藤原興風
35ひとはいさ
 こころもしらず
  ふるさとは
 はなぞむかしの
  かににほひける
人はいさ
 心も知らず
  故郷は
 花ぞ昔の
  かに匂ひける
紀貫之
36なつのよは
 まだよひながら
  あけぬるを
 くものいづこに
  つきやどるらむ
夏の夜は
 まだ宵ながら
  明けぬるを
 雲のいづこに
  月宿るらむ
清原深養父
37しらつゆに
 かぜのふきしく
  あきののは
 つらぬきとめぬ
  たまぞちりける
白露に
 風の吹きしく
  秋の野は
 つらぬきとめぬ
  玉ぞ散りける
文屋朝康
38わすらるる
 みをばおもはず
  ちかひてし
 ひとのいのちの
  をしくもあるかな
忘らるる
 身をば思はず
  誓ひてし
 人の命の
  惜しくもあるかな
右近
39あさぢふの
 をののしのはら
  しのぶれど
 あまりてなどか
  ひとのこひしき
浅茅生の
 小野の篠原
  忍ぶれど
 あまりてなどか
  人の恋しき
参議等
40しのぶれど
 いろにいでにけり
  わがこひは
 ものやおもふと
  ひとのとふまで
忍ぶれど
 色に出にけり
  わが恋は
 物や思ふと
  人の問ふまで
平兼盛
41こひすてふ
 わがなはまだき
  たちにけり
 ひとしれずこそ
  おもひそめしか
恋すてふ
 我が名はまだき
  立ちにけり
 人知れずこそ
  思ひ初めしか
壬生忠見
42ちぎりき
 かたみにそでを
  しぼりつつ
 すゑのまつやま
  なみこさじとは
契りきな
 かたみに袖を
  しぼりつつ
 末の松山
  波こさじとは
清原元輔
43あひみての
 のちのこころに
  くらぶれば
 むかしはものを
  おもはざりけり
あひ見ての
 後の心に
  くらぶれば
 昔は物も
  思はざりけり
権中納言敦忠
44あふことの
 たえてしなくは
  なかなかに
 ひとをもみをも
  うらみざらまし
逢ふ事の
 絶えてしなくは
  中々に
 人をも身をも
  恨みざらまし
中納言朝忠
45あはれとも
 いふべきひとは
  おもほえで
 みのいたづらに
  なりぬべきかな
あはれとも
 いふべき人は
  思ほえで
 身のいたづらに
  なりぬべきかな
謙徳公
46ゆらのとを
 わたるふなびと
  かぢをたえ
 ゆくへもしらぬ
  こひのみちかな
由良の戸を
 渡る舟人
  かぢを絶え
 行くへも知らぬ
  恋の道かな
曾禰好忠
47やへむぐら
 しげれるやどの
  さびしきに
 ひとこそみえね
  あきはきにけり
八重葎
 しげれる宿の
  寂しきに
 人こそ見えね
  秋は来にけり
恵慶法師
48かぜをいたみ
 いはうつなみの
  おのれのみ
 くだけてものを
  おもふころかな
風をいたみ
 岩うつ波の
  をのれのみ
 くだけて物を
  思ふころかな
源重之
49みかきもり
 ゑじのたくひの
  よるはもえ
 ひるはきえつつ
  ものをこそおもへ
みかきもり
 衛士のたく火の
  夜は燃え
 昼は消えつつ
  物をこそ思へ
大中臣能宣
50きみがため
 を
しからざりし
  いのちさへ
 ながくもがなと
  おもひけるかな
君がため
 惜しからざりし
  命さへ
 長くもがなと
  思ひぬるかな
藤原義孝
51かくとだに
 えやはいぶきの
  さしもぐさ
 さしもしらじな
  もゆるおもひを
かくとだに
 えやはいぶきの
  さしも草
 さしも知らじな
  燃ゆる思ひを
藤原実方朝臣
52あけぬれば
 くるるものとは
  しりながら
 なほうらめしき
  あさぼらけかな
明けぬれば
 くるるものとは
  知りながら
 なほうらめしき
  朝ぼらけかな
藤原道信朝臣
53なげきつつ
 ひとりぬるよの
  あくるまは
 いかにひさしき
  ものとかはしる
嘆きつつ
 ひとりぬる夜の
  明くるま
 いかに久しき
  ものとかはしる
右大将道綱母
54わすれじの
 ゆくすゑまでは
  かたければ
 けふをかぎりの
  いのちともがな
わすれじの
 行末までは
  かたければ
 けふをかぎりの
  命ともがな
儀同三司母
55たきのおとは
 たえてひさしく
  なりぬれど
 なこそながれて
  なほきこえけれ
滝の音は
 絶えて久しく
  なりぬれど
 名こそ流れて
  なほ聞こえけれ
大納言公任
56あらざらむ
 このよのほかの
  おもひでに
 いまひとたびの
  あふこともがな
あらざらむ
 この世のほかの
  思ひ出に
 今ひとたびの
  逢ふ事もがな
和泉式部
57ぐりあひて
 みしやそれとも
  わかぬまに
 くもがくれにし
  よはのつきかな
めぐり逢ひて
 見しやそれとも
  わかぬまに
 雲がくれにし
  夜半の月かな
紫式部
58ありまやま
 ゐなのささはら
  かぜふけば
 いでそよひとを
  わすれやはする
有馬山
 いなのささ原
  風吹けば
 いでそよ人を
  忘れやはする
大弐三位
59やすらはで
 ねなましものを
  さよふけて
 かたぶくまでの
  つきをみしかな
やすらはで
 ねなまし物を
  さよ更けて
 かたぶくまでの
  月を見しかな
赤染衛門
60おほえやま
 いくののみちの
  とほければ
 まだふみもみず
  あまのはしだて
大江山
 いくのの道の
  遠ければ
 まだふみもみず
  天の橋立
小式部内侍
61いにしへの
 ならのみやこの
  やへざくら
 けふここのへに
  にほひぬるかな
いにしへの
 奈良の都の
  八重桜
 けふ九重に
  匂ひぬるかな
伊勢大輔
62よをこめて
 とりのそらねは
  はかるとも
 よにあふさかの
  せきはゆるさじ
夜をこめて
 鳥の空音は
  はかるとも
 よに逢坂の
  関はゆるさじ
清少納言
63いまはただ
 おもひたえなむ
  とばかりを
 ひとづてならで
  いふよしもがな
今はただ
 思ひ絶えなむ
  とばかりを
 人づてならで
  いふよしもがな
左京大夫道雅
64あさぼらけ
 う
ぢのかはぎり
  たえだえに
 あらはれわたる
  せぜのあじろぎ
朝ぼらけ
 宇治の川ぎり
  絶えだえに
 あらはれわたる
  瀬々の網代木
権中納言定頼
65うらみわび
 ほさぬそでだに
  あるものを
 こひにくちなむ
  なこそをしけれ
恨みわび
 ほさぬ袖だに
  ある物を
 恋にくちなむ
  名こそ惜しけれ
相模
66もろともに
 あはれとおもへ
  やまざくら
 はなよりほかに
  しるひともなし
もろともに
 あはれと思へ
  山桜
 花よりほかに
  知る人もなし
前大僧正行尊
67はるのよの
 ゆめばかりなる
  たまくらに
 かひなくたたむ
  なこそをしけれ
春の夜の
 夢ばかりなる
  手枕に
 かひなくたたむ
  名こそ惜しけれ
周防内侍
68こころに
 あらでうきよに
  ながらへば
 こひしかるべき
  よはのつきかな
心にも
 あらでうき世にに
  ながらへば
 恋しかるべき
  夜半の月かな
三条院
69あらしふく
 みむろのやまの
  もみぢばは
 たつたのかはの
  にしきなりけり
嵐吹く
 三室の山の
  紅葉ばは
 龍田の川の
  錦なりけり
能因法師
70びしさに
 やどをたちいでて
  ながむれば
 いづこもおなじ
  あきのゆふぐれ
寂しさに
 宿を立ち出て
  ながむれば
 いづこも同じ
  秋の夕暮れ
良暹法師
71ゆふされば
 かどたのいなば
  おとづれて
 あしのまろやに
  あきかぜぞふく
夕されば
 門田の稲葉
  おとづれて
 あしのまろやに
  秋風ぞ吹く
大納言経信
72おとにきく
 たかしのはまの
  あだなみは
 かけじやそでの
  ぬれもこそすれ
音に聞く
 たかしの浜の
  あだ波は
 かけじや袖の
  ぬれもこそすれ
祐子内親王家紀伊
73たかさごの
 をのへのさくら
  さきにけり
 とやまのかすみ
  たたずもあらなむ
高砂の
 尾上の桜
  咲きにけり
 とやまの霞
  たたずもあらなむ
権中納言匡房
74うかりける
 ひとをはつせの
  やまおろしよ
 はげしかれとは
  いのらぬものを
うかりける
 人をはつせの
  山おろし
 はげしかれとは
  祈らぬものを
源俊頼朝臣
75ちぎりおきし
 させもがつゆを
  いのちにて
 あはれことしの
  あきもいぬめり
契りおきし
 させもが露を
  命にて
 あはれことしの
  秋もいぬめり
藤原基俊
76わたのはら
 こ
ぎいでてみれば
  ひさかたの
 くもゐにまがふ
  おきつしらなみ
和田の原
 漕ぎ出てみれば
  ひさかたの
 雲ゐにまがふ
  沖つ白波
法性寺入道
前関白太政大臣
77をはやみ
 いはにせかるる
  たきがはの
 われてもすゑに
  あはむとぞおもふ
瀬をはやみ
 岩にせかるる
  滝川の
 われてもすゑに
  逢はむとぞ思ふ
崇徳院
78あはぢしま
 かよふちどりの
  なくこゑに
 いくよねざめぬ
  すまのせきもり
淡路島
 かよふ千鳥の
  鳴く声に
 いく夜ねざめぬ
  須磨の関守
源兼昌
79あきかぜに
 たなびくくもの
  たえまより
 もれいづるつきの
  かげのさやけさ
秋風に
 たなびく雲の
  絶え間より
 もれいづる月の
  かげのさやけさ
左京大夫顕輔
80ながからむ
 こころもしらず
  くろかみの
 みだれてけさは
  ものをこそおもへ
長からむ
 心も知らず
  黒髪の
 乱れてけさは
  物をこそ思へ
待賢門院堀河
81ととぎす
 なきつるかたを
  ながむれば
 ただありあけの
  つきぞのこれる
ほととぎす
 鳴きつるかたを
  ながむれば
 ただ有明の
  月ぞ残れる
後徳大寺左大臣
82おもひわび
 さてもいのちは
  あるものを
 うきにたへぬは
  なみだなりけり
思ひわび
 さても命は
  ある物を
 うきにたへぬは
  涙なりけり
道因法師
83よのなかよ
 みちこそなけれ
  おもひいる
 やまのおくにも
  しかぞなくなる
世の中よ
 道こそなけれ
  思ひ入る
 山の奥にも
  鹿ぞ鳴くなる
皇太后宮大夫俊成
84ながらへば
 またこのごろや
  しのばれむ
 うしとみしよぞ
  いまはこひしき
ながらへば
 またこのごろや
  しのばれむ
 うしと見し世ぞ
  いまは恋しき
藤原清輔朝臣
85よもすがら
 ものおもふころは
  あけやらで
 ねやのひまさへ
  つれなかりけり
よもすがら
 物思ふころは
  明けやらぬ
 閨のひまさへ
  つれなかりけり
俊恵法師
86なげけとて
 つきやはものを
  おもはする
 かこちがほなる
  わがなみだかな
嘆けとて
 月やは物を
  思はする
 かこちがほなる
  我が涙かな
西行法師
87らさめの
 つゆもまだひぬ
  まきのはに
 きりたちのぼる
  あきのゆふぐれ
村雨の
 露もまだひぬ
  まきの葉に
 霧立ちのぼる
  秋の夕暮れ
寂蓮法師
88なにはえ
 あしのかりねの
  ひとよゆゑ
 みをつくしてや
  こひわたるべき
難波江の
 葦のかりねの
  ひとよゆゑ
 身をつくしてや
  恋わたるべき
皇嘉門院別当
89たまのをよ
 たえなばたえね
  ながらへば
 しのぶることの
  よわりもぞする
玉の緒よ
 絶えなば絶えね
  ながらへば
 忍ぶることの
  よわりもぞする
式子内親王
90みせばやな
 をじまのあまの
  そでだにも
 ぬれにぞぬれし
  いろはかはらず
見せばやな
 雄島のあまの
  袖だにも
 ぬれにぞぬれし
  色はかはらず
殷富門院大輔
91きりぎりす
 なくやしもよの
  さむしろに
 ころもかたしき
  ひとりかもねむ
きりぎりす
 鳴くや霜夜の
  さむしろに
 衣かたしき
  ひとりかもねむ
後京極摂政前太政大臣
92わがそでは
 しほひにみえぬ
  おきのいしの
 ひとこそしらね
  かわくまもなし
我が袖は
 しほひに見えぬ
  沖の石の
 人こそしらね
  かわくまもなし
二条院讃岐
93よのなかは
 つねにもがもな
  なぎさこぐ
 あまのをぶねの
  つなでかなしも
世の中は
 常にもがもな
  なぎさ漕ぐ
 あまのをぶねの
  綱手かなしも
鎌倉右大臣
94みよしのの
 やまのあきかぜ
  さよふけて
 ふるさとさむく
  ころもうつなり
み吉野の
 山の秋風
  さよ更けて
 故郷寒く
  衣うつなり
参議雅経
95おほけなく
 うきよのたみに
  おほふかな
 わがたつそまに
  すみぞめのそで
おほけなく
 うき世の民に
  おほふかな
 我が立つ杣に
  墨染めの袖
前大僧正慈円
96はなさそふ
 あらしのにはの
  ゆきならで
 ふりゆくものは
  わがみなりけり
花さそふ
 嵐の庭の
  雪ならで
 ふり行くものは
  我が身なりけり
入道前太政大臣
97こぬひとを
 まつほのうらの
  ゆふなぎに
 やくやもしほの
  みもこがれつつ
こぬ人を
 まつほの浦の
  夕なぎに
 焼くやもしほの
  身もこがれつつ
権中納言定家
98かぜそよぐ
 ならのをがはの
  ゆふぐれは
 みそぎぞなつの
  しるしなりける
風そよぐ
 ならの小川の
  夕暮れは
 みそぎぞ夏の
  しるしなりける
従二位家隆
99ひともをし
 ひともうらめし
  あぢきなく
 よをおもふゆゑに
  ものおもふみは
人もをし
 人も恨めし
  あぢきなく
 世を思ふゆゑに
  物思ふ身は
後鳥羽院
100ももしきや
 ふるきのきばの
  しのぶにも
 なほあまりある
  むかしなりけり
百敷や
 古き軒端の
  しのぶにも
 なほあまりある
  昔なりけり
順徳院
歌番号ひらがな漢字仮名まじり歌人(詠み人)
歌番号よみ ひらがな(上の句・下の句)
79あきかぜに たなびくくもの たえまより もれいづるつきの かげのさやけさ
1あきのたの かりほのいほの とまをあらみ わがころもでは つゆにぬれつつ
52あけぬれば くるるものとは しりながら なほうらめしき あさぼらけかな
39あさぢふの をののしのはら しのぶれど あまりてなどか ひとのこひしき
31あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに よしののさとに ふれるしらゆき
64あさぼらけ うぢのかはぎり たえだえに あらはれわたる せぜのあじろぎ
3あしびきの やまどりのをの しだりをの ながながしよを ひとりかもねむ
78あはぢしま かよふちどりの なくこゑに いくよねざめぬ すまのせきもり
45あはれとも いふべきひとは おもほえで みのいたづらに なりぬべきかな
43あひみての のちのこころに くらぶれば むかしはものを おもはざりけり
44あふことの たえてしなくは なかなかに ひとをもみをも うらみざらまし
12あまつかぜ くものかよひぢ ふきとぢよ をとめのすがた しばしとどめむ
7あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも
56あらざらむ このよのほかの おもひでに いまひとたびの あふこともがな
69あらしふく みむろのやまの もみぢばは たつたのかはの にしきなりけり
30ありあけの つれなくみえし わかれより あかつきばかり うきものはなし
58ありまやま ゐなのささはら かぜふけば いでそよひとを わすれやはする
61いにしへの ならのみやこの やへざくら けふここのへに にほひぬるかな
21いまこむと いひしばかりに ながつきの ありあけのつきを まちいでつるかな
63いまはただ おもひたえなむ とばかりを ひとづてならで いふよしもがな
74うかりける ひとをはつせの やまおろしよ はげしかれとは いのらぬものを
65うらみわび ほさぬそでだに あるものを こひにくちなむ なこそをしけれ
5おくやまに もみぢふみわけ なくしかの こゑきくときぞ あきはかなしき
72おとにきく たかしのはまの あだなみは かけじやそでの ぬれもこそすれ
60おほえやま いくののみちの とほければ まだふみもみず あまのはしだて
95おほけなく うきよのたみに おほふかな わがたつそまに すみぞめのそで
82おもひわび さてもいのちは あるものを うきにたへぬは なみだなりけり
51かくとだに えやはいぶきの さしもぐさ さしもしらじな もゆるおもひを
6かささぎの わたせるはしに おくしもの しろきをみれば よぞふけにける
98かぜそよぐ ならのをがはの ゆふぐれは みそぎぞなつの しるしなりける
48かぜをいたみ いはうつなみの おのれのみ くだけてものを おもふころかな
15きみがため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ
50きみがため をしからざりし いのちさへ ながくもがなと おもひけるかな
91きりぎりす なくやしもよの さむしろに ころもかたしき ひとりかもねむ
29こころあてに をらばやをらむ はつしもの おきまどはせる しらぎくのはな
68こころにも あらでうきよに ながらへば こひしかるべき よはのつきかな
97こぬひとを まつほのうらの ゆふなぎに やくやもしほの みもこがれつつ
24このたびは ぬさもとりあへず たむけやま もみぢのにしき かみのまにまに
41こひすてふ わがなはまだき たちにけり ひとしれずこそ おもひそめしか
10これやこの ゆくもかへるも わかれては しるもしらぬも あふさかのせき
70びしさに やどをたちいでて ながむれば いづこもおなじ あきのゆふぐれ
40しのぶれど いろにいでにけり わがこひは ものやおもふと ひとのとふまで
37しらつゆに かぜのふきしく あきののは つらぬきとめぬ たまぞちりける
18みのえの きしによるなみ よるさへや ゆめのかよひぢ ひとめよくらむ
77をはやみ いはにせかるる たきがはの われてもすゑに あはむとぞおもふ
73たかさごの をのへのさくら さきにけり とやまのかすみ たたずもあらなむ
55たきのおとは たえてひさしく なりぬれど なこそながれて なほきこえけれ
4たごのうらに うちいでてみれば しろたへの ふじのたかねに ゆきはふりつつ
16たちわかれ いなばのやまの みねにおふる まつとしきかば いまかへりこむ
89たまのをよ たえなばたえね ながらへば しのぶることの よわりもぞする
34たれをかも しるひとにせむ たかさごの まつもむかしの ともならなくに
75ちぎりおきし させもがつゆを いのちにて あはれことしの あきもいぬめり
42ちぎりきな かたみにそでを しぼりつつ すゑのまつやま なみこさじとは
17ちはやぶる かみよもきかず たつたがは からくれなゐに みづくくるとは
23つきみれば ちぢにものこそ かなしけれ わがみひとつの あきにはあらねど
13つくばねの みねよりおつる みなのがは こひぞつもりて ふちとなりぬる
80ながからむ こころもしらず くろかみの みだれてけさは ものをこそおもへ
84ながらへば またこのごろや しのばれむ うしとみしよぞ いまはこひしき
53なげきつつ ひとりぬるよの あくるまは いかにひさしき ものとかはしる
86なげけとて つきやはものを おもはする かこちがほなる わがなみだかな
36なつのよは まだよひながら あけぬるを くものいづこに つきやどるらむ
25なにしおはば あふさかやまの さねかづら ひとにしられで くるよしもがな
88なにはえの あしのかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや こひわたるべき
19なにはがた みじかきあしの ふしのまも あはでこのよを すぐしてよとや
96はなさそふ あらしのにはの ゆきならで ふりゆくものは わがみなりけり
9はなのいろは うつりにけりな いたづらに わがみよにふる ながめせしまに
2はるすぎて なつきにけらし しろたへの ころもほすてふ あまのかぐやま
67はるのよの ゆめばかりなる たまくらに かひなくたたむ なこそをしけれ
33ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しづごころなく はなのちるらむ
35ひとはいさ こころもしらず ふるさとは はなぞむかしの かににほひける
99ひともをし ひともうらめし あぢきなく よをおもふゆゑに ものおもふみは
22くからに あきのくさきの しをるれば むべやまかぜを あらしといふらむ
81ととぎす なきつるかたを ながむれば ただありあけの つきぞのこれる
49みかきもり ゑじのたくひの よるはもえ ひるはきえつつ ものをこそおもへ
27みかのはら わきてながるる いづみがは いつみきとてか こひしかるらむ
90みせばやな をじまのあまの そでだにも ぬれにぞぬれし いろはかはらず
14みちのくの しのぶもぢずり たれゆゑに みだれそめにし われならなくに
94みよしのの やまのあきかぜ さよふけて ふるさとさむく ころもうつなり
87らさめの つゆもまだひぬ まきのはに きりたちのぼる あきのゆふぐれ
57ぐりあひて みしやそれとも わかぬまに くもがくれにし よはのつきかな
100ももしきや ふるきのきばの しのぶにも なほあまりある むかしなりけり
66もろともに あはれとおもへ やまざくら はなよりほかに しるひともなし
59やすらはで ねなましものを さよふけて かたぶくまでの つきをみしかな
47やへむぐら しげれるやどの さびしきに ひとこそみえね あきはきにけり
32やまがはに かぜのかけたる しがらみは ながれもあへぬ もみぢなりけり
28やまざとは ふゆぞさびしさ まさりける ひとめもくさも かれぬとおもへば
71ゆふされば かどたのいなば おとづれて あしのまろやに あきかぜぞふく
46ゆらのとを わたるふなびと かぢをたえ ゆくへもしらぬ こひのみちかな
93よのなかは つねにもがもな なぎさこぐ あまのをぶねの つなでかなしも
83よのなかよ みちこそなけれ おもひいる やまのおくにも しかぞなくなる
85よもすがら ものおもふころは あけやらで ねやのひまさへ つれなかりけり
62よをこめて とりのそらねは はかるとも よにあふさかの せきはゆるさじ
8わがいほは みやこのたつみ しかぞすむ よをうぢやまと ひとはいふなり
92わがそでは しほひにみえぬ おきのいしの ひとこそしらね かわくまもなし
38わすらるる みをばおもはず ちかひてし ひとのいのちの をしくもあるかな
54わすれじの ゆくすゑまでは かたければ けふをかぎりの いのちともがな
76わたのはら こぎいでてみれば ひさかたの くもゐにまがふ おきつしらなみ
11わたのはら やそしまかけて こぎいでぬと ひとにはつげよ あまのつりぶね
20わびぬれば いまはたおなじ なにはなる みをつくしても あはむとぞおもふ
26をぐらやま みねのもみぢば こころあらば いまひとたびの みゆきまたなむ
歌番号よみ ひらがな(上の句・下の句)