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  江戸一の美女を娶った御書院番。しかし幸せは束の間、同僚に妬まれ、陰湿な仕打ちに堪りかねて、ついには首謀格を手にかけ逃走してしまう。それを喧嘩屋夫婦や江戸っ子が助け、残りの同僚十七人への復讐を果たしていくという殺伐としたお話。
  時代劇「喧嘩屋右近」の喧嘩屋夫婦のバカップルぶりが好きで読んだ原作本である。小説としては、いまいちひっかかりがなくてなんだかなあと思いつつ、喧嘩と聞けば喜び勇んで飛び出す喧嘩屋夫婦はテレビで馴染んだ通り、強くて情に弱くて粋で、やっぱりいい。
  小説の面白いところのひとつは、良い材料を与えられたが最後、読者はどこまでも世界を広げていけるところだと思う。喧嘩屋の片割れ、お弦の「浮世絵師が夢に見そうないい女で、二十七、八の脂の乗り切った女ざかり、とにかく凄いような美人なのが、生来の侠気が禍して、いつの間にかこうして女遊人に身を持ち崩し、右手の甲に墨黒々と彫り込んだ二行の文身。曰く、御意見無用、いのち不知」。なんて描写にときめき、ちゃきちゃきのちゃき!なお弦の啖呵の切りよう、気風の良さに惚れ惚れした。もちろん旦那もこれまたびっくりの色男、ちなみにドラマでは杉良太郎が演じている。
  作者が自由自在に語ってる地の文も面白かったことをついでに書いておく。

 
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