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  「いのちの食べかた」なら「無駄にしないで食べよう」でいいのでは?。
  それだけでとどまる本ではなかった。
  いのちの中でも「肉」に主眼がおかれ、育てられた牛や豚がどこで、だれによって「肉」になって消費者に届くのかを詳しく教えてくれる。肉は動物にあまり苦痛を与えず、生きたまま血を抜くことによっておいしく食べることができる。この困難な作業を行う人たちの素晴らしい技術と彼らにまとわりついてきた差別、なぜ差別が生まれたのか、なぜ差別がなくならなかったかについてもわかりやすく書かれている。そしてそれは、いつまでたってもなくならない戦争にも繋がってくるのだ。
  「なぜ」に対して、著者は明確に答えている。納得のその答えは誰もが何らかの形で知っていることだと思う。わたしも知っていたことだけれど形にはなっていなかった。ここ数年「自分で考えること」が全く足りていなかったことを切実に感じていたのだが、それでもまだ全然考えていなかった。
  わたしたちはとても忘れっぽいから大事なことも忘れてしまう、置かれた状況に慣れてしまうと著者は言う。まさにその状況である。
  この本でくり返しくり返し語られるのは、いろいろなことを知ること、情報を鵜呑みにしないこと、想像すること、自分で考えること。

  「体験できることならしたほうがいい。なぜなら、誰かが体験した事実は、誰かに伝えられる時点で、すでに事実じゃない。その誰かの目と耳を通した情報だ。(中略)そして興味の持ち方が違えば視点も変わる。」

  「大切なことは『知ること』なんだ。
  知って思うことなんだ。
  人は皆、同じなんだということを。
  いのちはかけがえのない存在だということを。」

  そうだそうだと声をあげよう。そうなんだ。流されないためには知って思うことが大事なんだ。それを忘れないことが必要なんだ。人は皆、同じなんだということを、いのちはかけがえのない存在だということを決して忘れてはいけないんだ。
  「木かげの家の小人たち」を読んだ時、わたしがわたしでいるための答えを求めたけれども考えずに保留とした。でもきっと、これが根底に置くべき答えだ。 未読の方は、ぜひ読んで、自発的に考えることがいかに大切かを思い出してほしい。何が大事なのかをわかりやすく理解できるすごい本だ。何かにひっかかったら放っておかずに突き詰めて考えてほしい。足りないところは想像してほしい。体験してほしい。こんな本が出るってことは、世の中にはいろんな人がいて、全然捨てたもんじゃないってことも感じてほしい。
  貸してくれたアムのお養母さんありがとう!
 
  ※「学校でも家庭でも学べない『いま』を生きていくためのたいせつな知恵の数々について、刺激的な書き手たちが、中学生以上すべての人に向けて、読みやすくコンパクトなかたちで書き下ろします」という理論社の「よりみちパン!セ」シリーズの中の一冊。

 

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