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  帯に「情熱、極まれり。」
  13歳で三國志に惚れ、四川大学に遊学し、三國志跡を巡り倒した女性、しかも秋田県人の記録である。読まずにいられようか。
  早速手に入れて読んでみると著者の情熱が何より面白かった。馬超廟に辿り着いた彼女の(多分)第一声は「馬超の兄貴!!」なんである。好きだなあ、この人。
  三国志好きとして注目したのは大陸のスケールである。映像だけなら成都も赤壁も五丈原も見たことがある。しかしその距離感はまったくわからなかった。
  漢語もろくに話せないうちから史跡を巡った彼女の旅は、火車とバスと人力車と徒歩によって行われ、ため息の出る移動時間が示される。五丈原に着いたら着いたで本陣跡をも目指し、その広大さに呆然とする様が記される。
  そんなに広かったんだ。
  なにしろわたしの三国志ビジュアルの基本は人形劇である。すべてのスケールが小さい。著者も感歎しているが、広い大陸の情報をどうやって把握して政を行い、戦を行っていたのだろう。孔明さま凄すぎです・・・!。
  旅は無理やりガイドがついてきたり、ぼったくられたり、行き先を間違えたり。出国前も出発後も散々な目に遭っている。それでもくじけずに他者を受け入れ、情熱を失わず、出会いを血肉として生きてきた彼女を応援したい。中国の人の中で生き続けてきた三国志を教えてもらったことも貴重だった。
  それにしても。ほんの数年前まで「茉莉花茶の香りが常に漂っていた」という成都だったのだ。行くべきだった!。

 

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