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*パリ*バレエ観劇日記
〜名古屋発成田、ソウル経由パリ行〜
2000年7月3日〜8日
今回の旅は熱烈ルグリファンのあすわさんから、7月にオペラ座で『ジゼル』をやるから一緒に行か ない? と誘われたのが始まりでした。『ジゼル』全幕か〜、いいなあ、ルグリにしろイレールにしろ 日本でパ・ド・ドウを観る機会は結構あったけど、全幕はなかなか観ることができないよなあ、みて みたいなあと、最初はそんな風にぼんやり思っておりました。で、オペラ座のホームページなどを 覗いてみると、7月はシーズンの終わりの時期ということもあるのか、ガルニエ宮とオペラ・バスチ ーユで同時にバレエをやっているじゃありませんか!『ジゼル』と『ライモンダ』を毎日日替わりで 観ることができると知って、俄然私は興奮してしまいました。
パリ・オペラ座は私にとっていつかは行ってみたかった聖地の一つです。誘っていただいている今こ の時期に行ってしまおう! と決心したのでありました。
4月の半ばぐらいにはキャストの詳細も上がっていて、それがまた更に興奮ものでした。『ライモン ダ』のタイトルロールにプラテル、でもってイレールがアブデラフマンをやる日があるなんて。 『ジゼル』の方は産休のゲランに変わってどうやらギエムが来るらしいし…、うーん、さすがはパリ・ オペラ座だよなあと感心至極。
上演日からおのずと旅程も決まり、観劇主体で旅費は切り詰めるという方向で、チケットの予約から 航空券や宿泊の手配全てをあすわさんにしていただきました。その節は本当にありがとうございました。
☆カオル☆
***以下文中1フランは約17円です***

7月3日4日5日6日7日8日

0703 Mon
集合は成田空港第1ターミナルに朝7時半
空港辺りのホテルで前泊する余裕のない私は、夜行電車で行くことに決め、早々に「ムーンライトながら」の指定席を購入する。JRで東京まで行くからには成田までもJRの方が安くなるだろうと、単純に考えて「成田エクスプレス」の券も同時に購入。両方とも初めて乗る電車なので、それだけでもわくわくである。
それにしても成田エクスプレスのホームは本当に遠い。遠くてしかもふかーいのだ。(地下4階)2時間ぐらいの時間の余裕があるから、まあ、いいんですが。
だいたい7時半ぐらいに成田空港駅に到着。地下深くから永遠エスカレーターに乗って、ターミナルの4階まで上がる。初めての成田空港、さすがにひろーい。大韓航空機のカウンターで無事あすわさんと合流。荷物は機内持込にして航空券を確保。円をフランスフランに替えて、いざパリへ。
9時30分、定刻通り大韓航空機にて成田空港出発。大韓航空機は乗った人から、機内食が美味しいと聞いていてひそかに期待。1時間半ほどでソウル着。トランジットして今度はシャルル・ド・ゴール空港へ。さて、問題の機内食ですが(飛行機内の楽しみといったら、これぐらいしかないですよね〜)ランチメニューはなんと(というほどではないのかもしれないけど)ピビンバ〜
いやあ、これがおいしいんでございますよ。ディナーはチャーハン。これもうまかったです。他の航空機に比べると内容的には心なしかチープなような気はしましたが、日本人の私にはこれで十分って感じです。あと、お菓子なんかが全くないのがすごいなあと思いました。つーかちょっと寂しかった…(こどもか?笑)。
18時40分、定刻通りにパリ、シャルル・ド・ゴール空港着。
シャルル・ド・ゴール空港はターミナル1とターミナル2に分かれておりまして、大韓航空機はターミナル2の方に着。ここがなんというか非常に質素でして、噂に聞いていた1とはあまりにも様子が違っておりました。バスターミナルに毛が生えたぐらいの感じなんですよ〜。ちと寂しいものを感じつつもオペラ座行きの直通バスに乗り込み、花の都パリ市内へ。バス代は48フラン。
バスはオペラ座の裏手辺りに到着。おおっ!これがあの、ビデオやLDで自分では勝手にお馴染みのパレ・ガルニエなのね〜〜、と感慨もひとしお。外装の修理も一段落したらしく、オペラ座の上に乗っかっているアポロンや女神様の像が金ピカに輝いておりました。もうちょっと古色がついた方がらしくっていいなあ、とは異邦人の勝手な言い草ですね。
ガルニエ宮を遠巻きに眺めながら、まずはホテルに直行。オペラ座から歩いて5分ほどのヴァンドーム広場そばのオテル・マンサールに到着。部屋は4階(日本では5階)で、部屋もバスルームもゆったりしていていい感じ。洗面台のところの花模様のタイルもかわいいです。ここでこれから5泊するのね〜、よろしくです、というわけで、持っていった服などをクローゼットにかけたり、引出にしまったりして、一段落したらすぐにまた、オペラ座に向う私達。
この日何故が、警察の方々がオペラ座付近にたくさんいて、オペラ座でなにかあったんだったらやだなあ、とちょっと心配になったのですが、これはどうもサッカーのフーリガン関係のせいだということがあすわさんの聞き込みにより判明。ほっとしました。
花模様のタイル
さて、あこがれのオペラ座の中へと記念すべき一歩を踏み入れる私達。正面にはあの豪華な階段が奥へとのびていました。あさってにはあそこを昇れるのね〜(あすわさんは明日でした)と思いつつ、右手奥のお店へ。この日はもう終わっていたので、ウインドウに飾られている商品などを見て回る。ボックスオフィスの場所を確認し、外に出て今度は建物の周りをぐるりと一周してみる。裏口はディアギレフ口というらしく(私は知らなかったです〜、しかし何故ディアギレフの名前がついているんだろう? 誰か教えてくださいませ)ダンサーのみなさんはこちらから入るそうです。
これもビデオ等で(最近ではルグリの写真集でも)お馴染みな丸い窓があるなあと、建物の上の方を見上げつつ、一周し終える。
その後は地理を把握するため、適当に歩きつつ少しお腹もすいたので、お店を物色する。迷った末に『サンドイッチ』とお店の外に英語で書かれていたカフェ・オランピア(だったかな)に入る。
あすわさんはクラブハウスサンド、私はカマンベールチーズのサンドイッチ、飲み物は二人ともカフェを頼む。しばらくしてやってきたクラブハウスサンドは巨大なハムが惜しげも無く入っていて、かなりなボリュームのよう。私の前には扇形に切ってもられたカマンベールとレタスを乗っけた皿がおかれる。あれ? 頼んだのはサンドイッチだったはずだけど…と思っていたら、篭に入ったフランスパンがその後にやってきた。うーむ、自分でサンドイッチにして食べるのか〜、なるほど〜。と納得してフランスパンを割ってせっせとチーズとレタスを詰め込んで食べる。美味しいんだけど量が多くてどうも最後にはあきちゃうし、食べきれないです。カフェはパリ名物濃ーいエスプレッソ。私は普段どっちかというと紅茶党であまりコーヒーは飲まないのですが、これは美味しいと思いました。
それから後で知ったのですが、店中のテーブル席と外の席とカウンターで立ち飲みするのと、料金が違うんですね。どうりでみんな外で食べてるはずだよ。
というわけで、この日はこれでホテルに帰って就寝。

0704 Tue
雨のち曇
この日は、肝心のチケットを入手するのが最大の目的。予約の段階からあすわさんに骨をおっていただいていて、あすわさんはこれを手に入れるまでは心配で、夕べもあまりよく眠れなかったとおっしゃっておりました。
オペラ座ボックスオフィスが開くのは11時なので、朝食を終えた後、近くのヴァンドーム広場まで散歩してから、ボックスオフィスへと向かうことにする。
外は生憎の雨。パリは降水量が少ないと聞いていたのに、この日からほどんと一日一回は雨が降るという天気にみまわれる。ヴァンドーム広場はパリに数箇所ある、広場の真中に塔が立っていて、ロータリーのようになっているという場所で、広場の周りは高級店が建ち並んでいる。こういった広場はだいたいルイ王朝(という言葉があるのかどうかあやしい…)の時代に作られたもののようです。高級アクセサリー屋さんなどのウィンドウを見て、時間をつぶした後ボックスオフィスへ。
ヴァンドーム広場の塔
あすわさんの奮闘により、この日からの4日間のバレエのチケット、合計8枚を無事入手する。
チケット代は、日本でいうところのS席に相当する場所で1枚420フラン。日本で観る場合のほぼ半額である。物価の高いパリでもバレエのチケットは半額なのね〜、うらやましい…。
お宝チケットを大事大事にしまった後は、ガルニエ宮内部見学へ。
事前に仕入れた知識では、地下まで見せてもらえる見学ツアーがあるらしい、というわけでまたしてもあすわさんに奮闘していただく。(すみません、フランス語はおろか英語もできないわたし…。外国にいくたびにもうちょっと英会話勉強しておくんだったと悔やむ進歩のなさ…うう、次回こそは!)しかし、どうも地下まで見せてもらえるツアーはなさそう、とわかりちょっとがっかりしつつ普通にチケットを買って入る。(入場料30フラン)
ガルニエ宮内部見学のチケット
この時はパリ・オペラ座バレエ学校の写真展をやっていて、廊下(でいいのか?)に古い時代のものから新しいものまで、バレエ少年少女の写真がたくさん展示してありました。
あすわさんお気に入りのルグリは、ルグリ自身バレエ学校時代はめだたない生徒だったと言っていたせいがあるのかどうなのか、見つけることができず残念。そのかわりってことはないですがルティステュの少女時代の写真を発見。その頃から主役をやっていたようで、大勢の子の真中に大きく写った写真でした。そう、そしてその頃から美人〜。美少女というよりはもう美人って感じ。すごいっす。写真を見終わった後は、一階後ろのボックス席あたりから劇場の内部を覗く。照明かなにかのテストをやっている模様。上を見上げると有名なシャガールの絵が。明日にはここの中の席に座れるのね〜、ふふふ〜、というわけでその後、オレリーちゃんと「マノン」を踊っていた場所〜、とかルディエールと「椿姫」やっていた階段〜、とかルグリ写真集関係で盛り上がる私達。ペッシュくんとヌードになっていた地下〜、とやれなくて残念でしたが、ガルニエ宮探検(っていうほど見せてもらえないですが)はそれなりに楽しかったです。
照明のテスト?
オペラ座のお店でまずは軽く絵葉書や昔の公演パンフレットを買った後、一旦ホテルに帰る私達。少し休憩したあと昼食兼夕食を買い出しに行く。ガイドブックで見た高級惣菜店フロ(地元丸*&松*屋にも入っている)に行ってみることにする。地図がちゃんと読めなかった私はちょっと迷いつつ到着。色々とおいしそうな惣菜が並んでいる。しかし重さの単位がよくわからなかったので悩んでいるとニコニコ顔のお店のおにいちゃんが、ちょうどよさそうな大きさのカップを取り出してくる。うんうんそれだとうなづくと、さっさとエビのサラダのようなものを入れられてしまう。うーん、ま、いっかというわけで、あと人参サラダとキッシュを二つ買って会計へ。正確な金額は忘れましたが、だいたい日本円で合計3000円ぐらいだったです。(キッシュは確か一つ25フラン)うーん、本当に高級だった。確かエビがかなり高かった覚えが…。カレー風味でおいしいことはおいしかったのですが。
しかしホテルの部屋に帰ってさあ、食べようとしたら箸も(当り前か)フォークもなんにもないことに気がつく。しょうがないから手で食べ、えびも人参サラダも残ったのでまた明日食べよう、ということで冷蔵庫にしまう。
この日はバレエ観劇の第一日。あすわさんはガルニエで『ジゼル』。私はバスチーユで『ライモンダ』である。開演時間は7時30分。実はここによくない噂が一つあったのだった。それは何かというとどうも今日の『ライモンダ』にイレールがアブデラム役で出ないという噂なのだった。あすわさんのお知り合いの方によると、イギリスのパリ・オペラ座ファンサイトにどうもそんなことが書いてあった、ということなのである。次の日にギエムとの『ジゼル』が控えているから、もしかしたらそんなこともあるのかもしれないなあ、と一応の覚悟をしつつ、私は先にひとりオペラ・バスチーユに向う。
地下鉄オペラ駅から8番線でバスチーユまで。切符も事前にカルネ(回数券)を購入。乗り方と方向も事前にしっかりとお勉強ずみ。そのかいあってスムーズにバスチーユ駅まで辿りつく。しかしどの出口から出たら一番オペラ・バスチーユに近いのかよくわからなかったので(しかし後日単に私が文字を見落としていただけということが判明)、とりあえず外に出ればまたあのお馴染みの建物が目に入るだろうと思って適当な出口で外に出てみる。
そして出た所がバスチーユ広場をはさんで、オペラ座とは一番遠い場所だったという…(T_T)。
バスチーユ広場は結構大きな広場なので(例によって塔が真中に建っている)、建物に辿りつくまで信号を幾つも渡り、かなり時間がかかる。劇場の外壁にはイレール・アブデラムのおお〜〜〜きなポスターがかかっている。おおっ、すごい! と感動するのもそこそこに焦って劇場内部へ。
オペラ・バスチーユは新しい劇場なので、入った感じは日本の劇場の感じと大差がなくてちょっと寂しい。切符もぎのおにいさんになにか(多分席への入口の場所)言われたのだが、もちろんよくわからず闇雲に劇場内部に入る私。とりあえずは、パンプレットをゲット(60フラン)。
いざ席へと思ったのだがどこの扉から入っていいのか、さっぱりわからない。チケットをちゃんと見ればBALCONと書いてあったので、ちょっと考えれば日本でいうところの2階以上のバルコニー席だとわかりそうなものなのに、なにもわからないまま一階の扉を開けて入ろうとする。席案内のおじさんに違う4だと言われ、え、4ってどこ? と初めてしっかりチケットを見てみる。もしかしたら階段を上がるんだ、とやっと気がついてようやく席に辿りつく。席は2階バルコニーの舞台に向って左から二つ目のエリアの一番前だった。すごく見晴らしがいい。オーケストラピットで演奏している様子もよく見えるような場所だった。ほっと一安心して、パンフレットを開いてみる。このパンフレットの表紙もポスターと一緒で、イレール・アブデラムである。タイトルロールのライモンダを差し置いて、一体これってどおいうこと? いや、わたし的には嬉しいけどさ、と思いつつ、そういえば今日の配役ってどこでわかるのかな? と思い出していきなり気になる。日本だったらロビーのあたりに今日の配役って紙が貼ってあるけど、そんなのなさそうだったしなあ。うーん…と思って周りを見渡してみると、近くに座っていたご婦人が、細長い紙を取り出してしげしげと眺めている様が目に入る。あれは何だろう? もしかしたら…と思って自分もパンフレットをよく見たら、その紙が入っていた。焦って開くと、やっぱり今日の配役表だ。ライモンダ、オーレリ。ジャン・ド・ブリエンヌ、バール。アブデラム、ロモリ……!ああ〜〜、がっくし……。(ロモリファンの方ごめんなさい、いや、私も決してロモリが嫌いとかいうわけではないのですが、ですが、しかし…)
うう〜、ネットの噂ってバカにできないのね、でもまあ、ちょっと覚悟ができていたからよかったかも、明日のアルブレヒトできっと万全の態勢のイレールを見ることができるのよ…、と自分を慰めつつ気持を切り替えることにする。
そうこうするうちに指揮者が入場し、拍手と共に舞台が始まる!
『ライモンダ』
アレクサンダー・グラズノフ音楽
ルドルフ・ヌレエフ改定振付(マリウス・プティパ原振付)
衣装・装置ニコラス・ジョージアディス
パリ・オペラ座管弦楽団

配役
ライモンダ…オレリー・デュポン
ジャン・ド・ブリエンヌ…ジャン=ギョーム・バール
アブデラム…ウィルフリード・ロモリ
アンリエット…ミュリエル・アレ、クレメンス…ファニー・フィア
べランジェ…ジル・イゾアール、ベルナール…クリストフ・デュケーヌ

ライモンダのチケット
『ライモンダ』というのは、日本にいるとなかなか生の全幕舞台を見ることがかなわない演目の一つだと思われます。それは何故か? 私が考えるに、まず時間が長い、セット等にお金がかかる(中世のお城が舞台)、タイトルロールが出ずっぱりで相当な体力が要求される、今一つ馴染みが薄い、などなどが理由なのかなと勝手に思うのですが、どうでしょうか。
しかし、新国立劇場でならそろそろやれないことはないような気もいたします。(がーんと一つやってくれることを期待)
というわけで、私も生の『ライモンダ』全幕の舞台はまだ一度も見たことがありません。パ・ド・ドウ部分は過去のバレエ・フェス等で見たことがあったのですが、全幕はLDで出ているボリショイ・バレエのグリゴロヴィッチ版を見たのと、あとはやはりLDのシルヴィ・ギエムのドキュメンタリーに少し入っているのを見たきりです。ほとんど初めてといっていい『ライモンダ』体験にわくわくどきどきです。
グラズノフの少し哀愁をおびた音楽が流れる中、幕が上がるとライモンダとジャン・ド・ブリエンヌの結婚式の用意が、今まさにされているといった華やいだ感じ。舞台上に長く裳裾をひいたウェディングドレスがあって女官達がせっせと針を動かしている。ここにアンリエットとクレメンス、べランジェとベルナールの二組のペアが登場。忙しそうにしている女官達の邪魔をしながら、楽しげに踊りだす…。という始まりで、グリゴロヴィッチ版とはかなり様子が違っている(グリゴロヴィッチ版の始まりはジャン・ド・ブリエンヌの出征祝いから。ヌレエフ版はどうやらジャン・ド・ブリエンヌはすでに戦場にあるようだ)。
でこの、べランジェとベルナールという青年二人(ライモンダのお友達)がヌレエフの芸術監督時代に今をときめくイレール、ルグリの為に特別に振付けたという役どころである。なるほど〜、可愛い! でもって元気一杯の振付けである。4人でドレスの裾に隠れたりしておちゃめな踊りを見せてくれたあと、ライモンダの登場。おおっ!オレリーちゃん、キレイだわ〜、と感激したのだがこの登場シーンでは誰も拍手をしない。そんなもんなのかな?と思いつつみる。自分のために床に置かれた花を取りつつ、一回一回アチチュードを美しく決める。考えてみればオレリーの踊りを見るのはほとんど初めての私。彼女の舞台評のようなものはいろいろ読んで、勝手な前知識はあったけど、実際見てみると一つ一つの踊りを丁寧に、しっかり踊っているという印象でなかなかいい感じである。
しばらくするとアブデラムの登場。いろんな贈り物を持ってくるけどライモンダに、あっさり拒否される。この拒否が彼の心にさらに火をつけるのかしらん(笑)? それにしてももう、こんなところで出てきちゃうのね、ヌレエフ版ったら、と思っているとこの場はあっさりと退場。それにしてもアブデラムっておいしい役どころだよなあ。一人異質でコユいんですよ。うう、やっぱりイレールじゃないのが悔やまれる。
さて、ドリス伯爵達の宮廷ダンスも終わり、ライモンダと4人のお友達が残る。ライモンダはジャンを待つ寂しい心を託してマンドリンを奏でる。4人はライモンダを励ますように踊りだす。
そう、そしてここでべランジェとベルナールの見せ場があるのだった。二人だけでかなり長い曲を踊るのだ。ヌレエフの当時の二人への愛情をひしひしと感じたのことです。今日のキャストのイゾアールとデュケーヌも一生懸命やっていて好感がもてる。お客さんの受けもいいみたい。
4人も退場したあと、一人残ったライモンダの前に白の貴婦人が登場する。この人は伯爵家の守護霊のような人でライモンダは彼女に導かれるまま、ジャン・ド・ブリエンヌの絵姿の前でお祈りする。するとなんと、本物のジャンが絵の中から登場して、ライモンダと踊る。というわけで、ジャン=ギョーム・バール君登場。バール君はまだ今年の1月にエトワールになったばかりの、ばりばりの若手。彼をみるのは去年の「第九」以来。非常に均整のとれた肢体はいかにも、パリ・オペラ座のダンサーといった感じ。王子様の白衣装がよくお似合い〜、オレリーとも実にバランスのいい美男美女カップル〜というわけで、美しいパ・ド・ドウを見せてくれました。しかし、ここにまたしてもアブデラム登場。幻影の場(バレエにはありがちですね、笑)にまで、彼が出るのですね〜。ボリショイ版ではここがアブデラムの初登場シーンで、彼のその後の出現をライモンダに事前に教えているということらしいが、前に出てきちゃってるヌレエフ版だと、ライモンダも彼のことを実は気にしている、という解釈も成り立ちそうで、ちょっと楽しい。そう、ジャンは遠い戦場に行ってしまって、手紙だけはくるけど女心は寂しいのよ〜、って感じかしらん(笑)。
ま、それは私の勝手などうでもいい解釈ですが、このアブデラムがまた、さらにコユい子分二人を連れてコユい踊りを繰り広げるという(笑)。なんかこの子分二人にサポートされてリフトされたりとヌレエフったら〜、って踊りがどうも多い(笑)。最後は3人で転がりながら舞台袖に引っ込んでくし。(ってどんな状態かよくわからないでしょうね〜、でも文字通り転がりながらなのよ〜)
さて、一人目が覚めたライモンダはどうやら夢だったようね、とほっとしたところで1幕が終わり。
一幕がだいたい1時間20分ほど。休憩時間は20分。というわけであきもせずに土産物を物色しにいく私。しかしガルニエほど、大きなお店は無く日本みたいに小さなカウンターでちょびっと売っているだけだった。ちょっとがっかりしたが、小太りな中年のおじさまが、その狭いカウンターに1冊置かれていた(多分見本だと思うが)ルグリの写真集を指し示しているのを見て、買うのかしらん?と興味津々な私。おじさまはカウンターの上に堂々と広げて、一枚一枚ページを見ている模様。おおっ!あんなに周りに人がいるところで、あれを広げて見ているなんてさすがね〜と妙に感心しつつ、買うのかどうなのかが気になって、そのおじさまを遠巻きに見ている私(アヤシイ…)。
しかし、結局買わなかったようだ。なーんだ、チッ、と思いつつ(いや、売れた方がルグリの為にもいいと思うの…)席に戻る。
さて2幕のはじまりはじまり〜。この幕はほぼ最初からアブデラムも登場する。こんどは一族郎党引き連れての堂々のおなり。そしてジョージアディスの舞台美術が素晴らしいです。アブデラム一族が紐を持って現れ、その紐がすーっと上に引かれていって、オリエンタルな模様の布の巨大なテントが一瞬にして出現するのである。この時客席から拍手があがる。舞台装置に拍手が出るなんて、すごいなあとしばし感心する。でも本当にステキな舞台である。
それからそのテントの下でのアブデラム一族の背を丸めた独特な踊り、このあたりはグリゴロヴィッチ版と似ている。それからアブデラムとライモンダの今にもさらっていかんとする(笑)踊り。でそこにタイミングよくジャン・ド・ブリエンヌの御帰還〜。ライモンダに接近しているアブデラムを見つけていきなりキレるジャン。このあたりの喧嘩っ早い感じはヌレエフらしいですね〜、ってでもこれと『ロミオとジュリエット』を見ての感想ですが…。つかみかかる二人を止めようとするライモンダとドリス伯爵。しかしキレテるジャンは手袋をアブデラムに投げつけ決闘を宣言。受けて立つアブデラム。というわけで、この後、何が始まったと思います? なんといきなり、4人ぐらいの人にひかれた木馬が2台現れて、それにそれぞれ乗り込んで、槍を持っての決闘シーンなんです〜〜。
ええ〜っ、いきなりそれはないんじゃないの? ちょっと漫画チック〜、と思わずプッと笑ってしまった私。でもでも会場も結構笑ってたよ〜。そして少し槍を交わらせたあと、木馬から降りて今度は太い剣を持っての一対一の闘いが始まる。この剣太いだけあって、華麗な決闘シーンにはなかなかならない。ぶおんと振りまわす感じで、そうこうするうちにアブデラムの額のあたりに剣があたって(そう、刺さってというよりはあたってなんです)倒れるアブデラム。やられた親分をかついで退散する一族郎党。テントもなくなり、晴れやかな舞台上で互いの愛を確認し合うライモンダとジャン、めでたしめでたし〜。というわけで2幕終わり。
いやあ、しかし派手なセットと仕掛けに気を取られて、どうも踊りのほうの感想が今一つでてこないというのが正直なところです。派手なセットに負けないほどの際立つ個性が、主役3人ともに、もうちょっと欲しいかなあという感じです。イレールの木馬決闘シーン見てみたかった…くすん…。
3幕はめでたい結婚式シーン。
お祝いの群舞、アンリエットとベランジェ達の踊り、と続き、ここでのお目当てはなんといってもライモンダの有名なヴァリエーションであります。これはギエムのLDでもお馴染み。少し物悲しい曲にのって手を打ちながらポアントで立ち続ける踊りです。ギエムのスゴい脚が目に焼きついているのでどうしてもそれと、比べてしまうわけですが、どうしてどうして、オレリーもなかなかのものです。ポアントで立って斜めぎりぎりに身体をそらせて、脚を滑らせるところとか、美しいです〜。さすがオペラ座のエトワールだと唸る私。バールのソロもきれいな身体のラインで、のびやかな感じで王子様してて嬉しい。それから二人のパ・ド・ドウですが、オレリーが想像していたよりずっと、しっとりと踊っていてよかったです。勝気だとか、はねっかえりだとかさんざん聞かされていてどうなのかしら、とちょっと心配していたのですが、思ったよりずーっといい感じでした。
最後、輝かしい二人を皆で祝福しておしまい〜。
というわけで全3幕、時間にしてちょうど2時間半ぐらい。見終わった時は11時を少し回っておりました。幕ものバレエを見たぞ〜という満足感で一杯になりながらも、さてこれから一人で地下鉄に乗ってちゃっちゃと帰らなきゃと気を引き締める。しかしまたしても、ちょっと遠い地下入口から入ってしまった私。(何故かすでにオペラ座帰りの人はあまり周りにいなかったという状況、うーん…単に私がトロいのね)地下に降りると少しよたったようなおじさんがうろうろしていたが、8番乗り場をひたすら目指して足早に通りすぎ。ホームにつけば後はもう乗るだけ。ホームも地下鉄内部も全然普通の感じで、無事オペラ駅に到着。
11時半頃、ホテル到着。
開口一番、アブデラムがやっぱりイレールじゃなかったの〜! とあすわさんに報告する私。あすわさんはあすわさんで、自分の席の目の前に逆毛を立てた日本のマダムがいて、舞台の半分ぐらいが見えなかったのよ〜、と二人してそれぞれ嘆きあう。でもルグリはやっぱりステキだったそうです。
さて、明日はギエムとイレールの『ジゼル』よ〜〜!
というわけで、お風呂に入って就寝。二日目が無事終了〜。

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