英語I・IIの授業では「タスク消化型」の授業を試みました。これについては、既にこのサイトで触れていますし、公の場でも何度か紹介させてもらっているので詳細は省きますが、根本にある発想は「同じ英文を何度も読んだり聞いたりすることで、基本的な英文の定着を図る」ということです。そのための仕掛けとして、様々なタスクを課して、英文の読み方や聞き方を変えながら、何度も反復するという作戦です。
紆余曲折はありましたが、それなりに機能したのではないかと考えています。ある研究会で「タスク消化型」の授業について発表させてもらった時、ある学校の先生から「このやり方はどんな学校でも使える。この研究会は進学校向けだと思っていたけれど、大学進学希望者のほとんどいないうちの学校でも明日から使える」と声を掛けられたのはありがたかったですね。音声を使ったタスクが多かったせいか、リスニングについては模擬試験やGTECでもそれなりの数字でした。もっとも、それが音声を扱ったタスクのせいなのか、授業で行った他の活動のためなのかは定かではありませんが……。
このスタイルの授業では、タスクの質を維持するということがもっとも重要です。つまり、生徒はタスクを完成させるという目的を持って英文を読む(聞く)ので、しっかり読まなくても(聞かなくても)完成させられるようなタスクであれば、生徒はしっかり読まない(聞かない)ということになってしまいます。
もうひとつ重要なことは、生徒の現状を見極めて、適切なタスクを課すということです。まず教員の側に生徒に身に付けてもらいたいスキルが具体的にあって、それを身に付けさせるために何が必要なのかということを考えた上で、どういうタスクを課すか判断する必要があります。その意味では、GTECは授業で扱っているタスクを検証する良い材料だったと思います。
さて、「タスク消化型」の授業の最後のタスクは音読と和訳を見ながらの英文再生です。コーラス・リーディング、リード&ルックアップ、リピーティング、オーバーラッピング、シャドウイングと数種類の音読を経て、和訳を見ながら紙に英文を書いていくという作業です。当初は、全文の英文再生は意図していなかったのですが、やってみたら意外にできそうだったので、かなり早い時期から全文の英文再生を行ってきました。
和訳を見ながら英文をすべて再生していくというのは、かなりハードルの高い作業なのですが、その前段階で何度も英文を読んだり聞いたりして、数種類の音読をしっかりやれば、英文を書くこともできるようになるという実感を生徒に与えられたのではないかと考えています。
この活動は、基本的な英文の型と語彙を丸ごと定着させてしまおうという意図でした。確かに反復することでかなりの再現率まで持って行くことはできたのですが、それでも短期間での反復に過ぎず、次のレッスンに入ると前のレッスンは忘れてしまうという現象を避けることはできませんでした。3年次後半から始めた「レッスンの締めくくりの音読の時に前のレッスンも音読させてしまう」という方法で、解決の糸口を見つけようとしましたが、効果は……。
また、この活動は負荷が大きく時間のかかる活動でもあり、3年次のリーディングの授業ではできなくなってしまいました。1年次・2年次と順調に伸びてきたGTECのスコアが3年次で伸び悩んだ原因のひとつなのかも知れないと思っています。
なお、教科書は易しい英文を繰り返すという観点から『POWWOW English Course』(文英堂)を使用しました。このスタイルの授業にはピッタリの教科書だと思います。このスタイルの授業には、易しめの教科書の方が向いていると思います。
2年次には授業の冒頭で『フレーズで英単語3000』(浜島書店)を使って、フレーズをコーラスリーディング、センテンスをリード&ルックアップで音読しました。これだけで語彙の定着ができるとは思ってたわけではなく、一度やっておけば同じ語に2度、3度と出会う時に覚えやすいだろうという目論見でした。でも、現実はそれほど甘くはなく、こちらの想定以上に定着度は低かったです。ただ単語帳を渡して小テストで追いかけるよりも効果的かなと思ったのですが、時間をかけた割に効果はなかったと言わざるを得ません。このあたりから、どうやって語彙学習へのモチベーションを高めるかということを考え始めました(が、何か具体的なアイディアがあるわけではないのですが)。
一方、授業で扱った語彙については、毎時間小テストを行いました。この小テストの理念については、このサイトでも何度か触れました。そのレッスンをやっている間は何度も同じ語彙が出題されるので、レッスン終盤にはほとんどの生徒が覚えるのですが、次のレッスンに入ってその語彙に触れる機会がなくなると忘れてしまうという傾向が見られました。何度も反復させる仕掛けが必要でした。この反省から各レッスン終了後の音読の際に前のレッスン(あるいはその前のレッスン)の音読も入れるという方法を思い付きました。
語彙の指導については、手を変え品を変え、いろいろとやってはいるのですが、どうにも上手くいきません。
今度は、一定の法則に基づいたインターバルをおいて3度から4度反復する仕掛けを導入できないだろうかと漠然と考えています。だらだらと続くと嫌になるので、区切りを明確にして、Part 1ならPart 1を反復してからPart 2に入る形がいいかなぁ。区切りがあれば、脱落した生徒もリスタートしやすいだろうし。
さて、文法の扱いについて触れておきたいのですが、いわゆる「文法のテキスト」を使った体系的な文法の指導は行いませんでした。英語Iや英語IIの教科書で扱われる文法事項を英語I・英語IIの授業の中で消化しました。相当無理をして『エイザーの基本英文法・中級編』(ピアソン・エデュケーション)を購入してもらい、教科書で扱った文法事項の該当する部分を『エイザー』で演習という形にしたのですが、如何せん、日本の学校文法の体系と違いすぎて、授業の中では扱いにくかったです。とても良い教材だと思うので、日本の学校文法に沿った形で1冊に再編してくれないものでしょうか。
『エイザー』を使った演習では、例えば受動態であれば、僕が口頭で英文を言い、生徒はそれを口頭で受動態にするなどという口頭練習もしました。これはなかなか面白かったのですが、十分に時間が取れませんでした。演習量が不足した感は否めません。文法の扱い方について、家庭学習に委ねる部分と、授業で扱う部分とをはっきりと分けるなど、もっと明確で現実的な方針を持つべきでした。
文法を体系的に扱わないことへの不安も聞こえてきてはいましたが、例年と比べて特に文法ができないということはありません。たしかに文法の苦手な生徒は多いですが、模擬試験の結果などを見る限りでは、体系的に文法を扱った学年と差があるわけではありません。テキストを使って体系的に文法を扱っても、体系的に文法を扱わなくても、有意な差が見られないということは、「体系的な」文法の扱い方に何らかの問題があるということを示唆しているのかも知れませんね。
入学直後のオーラル・コミュニケーション(以下OC)の授業で、時間をかけて発音の指導をしました。山岡憲史先生の実践に刺激されて、気合いを入れて挑戦したのですが、気合いが空回りするだけでうまくいきませんでした。一括で採択した『グランドセンチュリー英和辞典』(三省堂)の付録を使ったのですが、あまりに詳細なところまで入り込みすぎたせいだと思います。時間をかけすぎて生徒のモチベーションを逆に下げてしまったのかも知れません。先日、阿部一先生が「発音指導は長くて 5分、普通は3分くらい」と言っていましたが、まさにその通りですね。短時間の練習を継続して行うということがポイントなのでしょう。
発音指導に関するノウハウがなさすぎました。もっと勉強して、やり方を工夫しなければなりませんね。また、何年も前から英語の歌を発音の練習として授業に持ち込みたいと思っているのですが、時間が取れずに実現できないでいます(高校生の発音が下手になっていっているのは、洋楽を聴かなくなったことが原因ではないかと密かに考えています)。次年度はどこかでやってみたいのだけれど……。
さて、OCの授業で文法を扱っている学校も多いと聞いていますが、この学年ではOCでは文法を扱わず、かなり丁寧にOCの授業を行いました。
OC の教科書には複雑な英文はほとんどありません。ダイアローグを中心として、短い単純な英文が大部分を占めます。こういう英文を何度も反復することで、英文の基本的な型の定着を図るという視点では、基礎の定着には格好の教材であるとも言えます。研究会などで、「基礎が定着していないので、OCの時間には文法をやっている」と名だたる進学校の教員が言っていましたが、僕はとても違和感を感じました。OCの授業の位置付けを、ちょっと別の角度から捉え直せばいいのに。
さて、OCの授業を通して、音声に対する意識が高まるのは当然と言えば当然なのですが、OCの収穫はむしろライティングに大きな波及効果があったことです。例えば、プレゼンテーションをやるにしても、その原稿は英語で書くわけで、さらに教科書にあるモデルの英文を真似て書くことで、パラグラフの作り方(=パラグラフの型)なども自然と定着してしまったようです。GTECのライティング・セクションでも極端に高い数字が出て驚きましたが、それはOCのプレゼンテーションの活動に負うところが大きいと思います。導入したいパラグラフの型を示し、その型に従って英文を書き、それを原稿を見ずに発表するということをやれば、かなりパラグラフの型の定着度が上がるということがわかりました。
この学年は模擬試験でもGTECでもリスニングの成績が相対的に良かったのですが、それがOCによるものだとは考えていません。OCだけではなくて英語Iや英語IIも含めて、授業で音声を用いた活動が多かったことによるものでしょう。ただ音声を聞かせればリスニングができるようになるという発想はあまりに短絡的に過ぎるでしょう。
2年次にはライティングが3コマ(45分)あったため、文法・語法の小テストやdictoglossをやりながらも、ライティングの授業らしいライティングの授業ができたました。3年次になると2コマになってしまい、思うような活動ができませんでした。この学校では、ライティングの授業はあまり重要視されていないようで、リーディングにコマ数を回す傾向が強いように感じられるのですが、45分2コマのライティングの授業はかなり厳しいものがありました。
教科書はセンテンスレベルのPart 1とパラグラフレベルのPart 2を並行して扱いました。「うちの生徒は簡単な英文も書けないのにパラグラフなんてとんでもない」というのはよく聞く話ですが、そんなことを言いだしたら永久にパラグラフに進むことはできません。四苦八苦しながらも、何となくどういう授業をしていけばいいのかということが見えてきたように思います。今年度は『パラグラフ・ライティング指導入門』という格好の参考書も出版されたので、次にライティングの授業を担当する機会にはさらにつっこんだライティングの授業ができるようになるかも知れません。
ライティングの授業では、教科書の他に和文英訳のプリントも使用しました。これはある問題集を使わせてもらったのですが、なかなか良かったと思います。なるべく教科書のPart 1の内容と重なるようにして、演習量を確保するように心掛けました。
3年次には諸般の事情から『Sonic Reading』をライティングの授業で使用。wpmを算出してそれに設問の正答率を乗じてスコアを出し、年間を通して記録してもらいました。以前も書きましたが、こういうやり方ではそれほど効果はありません。わかってはいたのですが、他にアイディアがなく、結局1年間このやり方で続けてしまいました。
また、2年次のライティングの授業では『Listening Pilot Level 2』(東京書籍)を使ってdictoglossを行いました。様々な試行錯誤を経て何とか自分なりの形にできたのではないかと思っています。dictoglossが機能するようになったことについては、tmrowingさんから貴重なアドバイスを頂いたことが大きかったです。あらためて感謝。
学校採択用として出回っているリスニングの教材の大部分は「5分でテスト、5分で解答」という形式のものが多いのですが、中には必ずしも設問が適切とは言えないものもあります。ちゃんと聞けていなくても、設問には正解できてしまったりするわけです。ただ「リスニングの勉強をしています」とアリバイ工作のように「5分でテスト、5分で解答」をいくら繰り返してもリスニングができるようにはならないだろうと僕は思っています。
その点、dictoglossは、設問に関わる部分だけでなく、音声をすべて聞き取る必要のある活動なので、本当に聞き取れているかどうかが試されます。聞き取った後には書かなければならないので、生徒たちも細部まで正確に聞き取ろうとします。同じ効果はディクテーションでにも期待できるのですが、dictoglossは通常のディクテーションよりも長い英文を扱うので、音声だけでなく内容にも注意が向くという点で優れた活動だと思います。
さらに聞き取った英文の内容を英語で書くという作業を通して、ライティングにつながっていきます。グループでひとつの英文を完成させてもらうのですが、個人レベルのエラーはグループワークの中で処理され、僕の手元にあがってくる段階では、グループ内で処理できなかったエラーが抽出されることになります。つまり、それがそのグループのコモン・エラーということになり、いくつかのグループで共通に見られるエラーは、そのクラスのコモン・エラーということになるでしょう。その点では、ひとりひとりの英文の添削をするよりも、はるかに効率的にフィードバックができるということでもあります。
というわけで、僕にとってはdictoglossというのはとても興味深い活動になっています。詳しくは Grammar Dictation (Ruth Wajnryb, OXFORD)を参照していただきたいのですが、僕の生徒にはこの本に書かれている通りの進め方ではハードルが高すぎました。dictoglossがうまく機能するかどうかは、いかに生徒の現状にあった活動にアレンジできるかということにかかっていると思います。僕の授業でのdictoglossについては「授業実践」のページをご覧下さい。
3年生になってから、dictoglossをやる機会が少なくなってしまったのは残念でした。dictoglossに限らず、教科書の難易度や教材などで欲張りすぎて、1・2年次で核となっていた活動がおろそかになってしまったのではないかと(それが核になっていたことに、後になってから気付く愚かさ!)、秋に実施したGTECの結果を見ながら反省しました。目の前に大学入試をぶらさげられて、振り回されてしまったかな。
先述の通り、文法については英語Iや英語IIの授業の中で扱ってきたのですが、2年生からは『英語頻出740』(桐原書店)を使用して、ライティングの授業の中で、日本語を読み上げて、英文を書いてもらうという小テストを実施しました。この手の問題集は多くの出版社から多くのものが出ていますが、分量が手頃であることからこの教材にしました。でも、こういう小テストをやるには、この教材は英文の質が今ひとつといった印象でした。たぶん、次回は使わないでしょう(笑)。3年次は同じ教材で「朝テスト」を実施しました。10問の出題で半分は『740』とは別の文で出題しました。おかげで1・2年次の「朝テスト」でやってきた『Sonic』の小テストは3年次で姿を消すことになったわけですが、これで良かったのかどうかは再考の余地があると考えています。
このタイプのものは、生徒にとっては、成果が見えやすく、勉強した気になるので、取り組みやすい教材なのだと思うのですが、僕はこの手の教材はあまり好きではありません。好きではないけれど、やればやっただけ、ある意味ではお手軽に、大学入試の得点に結びつくというのが現実なので、やむなく生徒に取り組んでもらっているのが現状です。口に出しては言えないけれど、こんなものは学校で小テストなんかするよりも、自分で勝手にやってもらいたいものだと密かに思っています。
教科書のPart 1、Part 2、プリント、dictogloss、『Sonic』とあっちへ行ったり、こっちへ行ったり、生徒にとっては落ち着かない授業だったかも知れません。
これまで「英語表現」という科目も含めて、書くことを中心にした授業を何度もしてきましたが、この学年のライティングの授業が最もライティングの授業として機能したのではないかと思っています。『Prominence English Writing』(東京書籍)という教科書が僕の考える方向性と合致していたことも大きな要因のひとつだと思います。改訂されてこの教科書の良さが失われてしまったのは残念です。
前期のリーディングの授業についてはこちらにまとめてあるので、具体的な内容については触れませんが、もうちょっと上手くやれたのではないかというのが正直なところ。
当初から予定していた通り、1年次・2年次では易しめの教科書を使って基礎の定着を図り、3年次には難しめの英文に挑戦させるという作戦で、英語I・英語 IIに比べるとかなり難しめの『PRO-VISION English Reading』(桐原書店)を採択したのですが、難易度のギャップが大きすぎた感があります。結果的に、英文再生をやる時間が確保できず、これまで徹底してきた音読も手薄になってしまいました。
また、英語I・英語IIで総合的なスキルアップを図ったのに対して、リーディングでは読むことに特化されてしまったために(更にライティングの1コマ減も相俟って)、トータルとして伸ばしきれなかったという気もします。
とは言え、もう一度リーディングの授業をやれと言われたら、おそらくまた同じような授業をやるのだと思いますが……。
後期からは『Catch Our Times』(桐原書店)を使用。いわゆる大学入試対策の問題集。最初は付属の「論理展開シート」を使って、音声だけで空欄補充。概要を理解した上で、本文を読むという手順で行いました。また、半分苦し紛れではあったけれど、オーバーラッピング・シャドウイングに続いて、できるだけ速く本文を音読するという活動を追加しました。その時に、前のレッスンも(あるいはその前のレッスンも)あわせて音読するという新企画を導入しました。
ある業者の方によると、できるだけ速く音読するという活動が、速度が上がったと言われている今回のセンター試験のリスニングの訓練にもなったのではないかということでしたが、この活動とリスニングとの間に因果関係があるのかどうかはわかりません。でも、実際にこの活動をやってみて良い感触を得ているので、今後も使っていく活動になると思います。
特にリスニングに特化した科目があるわけではないので、いろいろな科目でリスニングの活動を行ってきました。その中から、リスニングの教材を使った活動についてまとめておきます。この学年では3年間でリスニングに特化した教材を3種類使ったのですが、リスニング教材を一通りやればリスニングができるようになるという発想はあまりに安易だと思います。例えば、「リーディングの授業の中で片手間に5分や10分でリスニングの教材をやって終わり」という扱い方では大きな効果は期待できないでしょう。リスニングの教材がどれだけの効果を産み出すかは、その扱い方で決まると思います。
で、僕の授業の中では、リスニングに特化した教材を使う場合には、dictation やdictoglossが行われたり、OverlappingやShadowingが行われたりしています。もちろん、そういう活動をやるためには5分や 10分では足りないので、1コマの授業を丸ごとリスニング教材に充てることになるわけです。
2年次では『Listening Pilot』を使ってdictogloss。3年次には『Perfect Listening』(ベネッセ)を使ってdictation。後半にはdictogloss的な要素も導入しました。また、3年後期からは『TRY 30 minutes』(桐原書店)を使用して、30分間でリスニングのテストを実施して自己採点をした後にoverlappingとdictation。
もちろん、こういうリスニングに特化した教材だけでリスニングのスキルが伸びるわけではありません。英語I・英語II・リーディングの授業などでも、相当量の音声を聞くタスクをこなすことで、最低限のリスニングのスキルを身に付けさせられたのではないかと思っています。
中学校で習った英語を早い時期に定着させたいという意図から、入学前の教科書販売時に『Follow Up 英文法基本ドリル』(数研出版)を購入してもらいました。半分ほどを入学までの課題とし、残りは入学後の週末課題として扱いましたが、結果としては、期待したような成果をあげられませんでした。こういうものを自学自習で取り組ませることの限界を感じました。まず、どういう意図でどのように取り組むかということを、生徒に知らせる必要があったのだと思います。ただ「やれ」と言っただけでは、生徒は本気で取り組んでくれません。それ以前に中学校の既習事項を定着させるのに自学自習の形式でいいのかどうかということを検討する必要があると思います。
扱い方とは別の問題として、中学校での既習事項を定着させるための教材として良いものがあまりないということもわかりました。単に「復習しました」というアリバイ工作にしかならないようなものではなくて、徹底的に反復できるような教材が欲しいなぁ。
朝のSHRの 5分間で小テストを実施しました(通称「朝テスト」)。素材は『Sonic Reading』(桐原書店)です。1年生ではStage 1を2年生ではStage 2を使って、前期はCloze Test、後期は文中からランダムに語句を抜き出しておいて、本来の位置に戻すというテスト。つまり、1冊を2度繰り返したことになります。「タスク消化型」なんてやっているとどうしても授業の進度が遅くなり、読む英文の量を確保できないのですが、結果的にこの「朝テスト」でそれを補うことになったのではないでしょうか。
位置付けとしては、英文を読むための仕掛けなので、5分間英文に真剣に向き合ってくれれば目的は十分果たしたことになります。要するに、テストという形式で英文を読む練習をしているということ。だから、得点が低い生徒を集めて追試などということはしませんでした。真面目に取り組んだ生徒は確実に伸びる。真面目に取り組まなかった生徒もそれなりに伸びる。これで十分でしょう。
週末課題として、いわゆる総合問題集をやってきてもらいました。1年次には中学校の復習からスタートする『Axel Vol.1』と『Axel Vol.2』(いずれも桐原書店)、2年次には『AxelVol.3』と『Crossbeam 2』(エミル出版)を使いました。基本的には週末で2レッスン。1年次・2年次ともに前期で2冊とも終わってしまうので、後期はこの2冊をプリントして再度やってもらいました。3年次には『Crossbeam 4』と『Reading Navi Standard』(啓林館)を使用しましたが、前期のみで2度目はやりませんでした。ブリッジ教材と同様に、自学自習の形でしっかりと動機を維持させていくのが難しいですね。
もっとも、僕の感覚では、週末課題は飽くまでも付録なので、しっかり勉強したい生徒がしっかりとやってくれればいいかなと思っています。だから、そういう生徒の便宜を図って、解答・解説もすべて生徒に渡してしまって、自分で答えをチェックしてから提出するようにしました。
このやり方については反対もありました。解答を写して提出する生徒が出現するのではないかという危惧が主な理由です。もちろん、そういう生徒が現れるのは明らかなのですが、先述の通り、僕の感覚では週末課題は「飽くまでも付録」なので、インチキをする生徒に気を配るよりも、ちゃんと勉強したい生徒の便宜の方を優先させました。だから、英語の得意な生徒はどんどん先に進んで、中には2週間で2冊とも終わらせてしまった生徒もいました。
因みに、『Crossbeam』よりも『Axel』の方が生徒ウケが良かったですね。『Crossbeam』は問題冊子と提出用冊子が別になっていて、課題を提出しても問題冊子が常に生徒の手元に残るという画期的な構成になっているのですが、実際のユーザーである生徒にとっては、机上に2冊の冊子を並べて、左の問題冊子を見て右の提出用冊子に記入するというのが煩わしかったようです。まして、うちの生徒の中には、提出用冊子が返却される前に、手元にある問題冊子を開いてみようという奇特な生徒はいないので、せっかく手間をかけてもその恩恵に被ることはなかったようです。「『Axel』の方が好きだけど、『Crossbeam』の方が為になる」という微妙なことを言う生徒もいました。
(2009.08.10)