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書庫の中のノート

工 房 日 誌 2004年10月

2004年 10月31日

サトクリフの『夜明けの風』(ほるぷ出版)を読み終えてから、アクイラ家の年表を作りたくなり、手元の本をひっくり返してみました。

ところが、『第九軍団のワシ』と『ともしびをかかげて』(岩波書店)については熟知しているのに、『銀の枝』や『辺境のオオカミ』(同)になると、記憶はかなりあいまいです。『落日の剣』(原書房)に至っては、図書館で借りただけなので、もういっぺん借りてこないと細部がわかりません。(『落日の剣』はアクイラ家の子孫が主役ではありませんが)
本格的に読み直さないとだめだと知りました。

5回も6回も読みこんで(『ワシ』『ともしび』)、本文を書き写し(『ワシ』)、原書にまで手を出した本(『ワシ』)と、1回か2回しか読まず(『銀の枝』『オオカミ』『落日』)、手元に持つこともなかった本(『落日』)の差です。
でも、もしかしたら、読んだときの年齢の差かも知れません。

『夜明けの風』は感慨無量で読み終えました。

2004年 10月29日

お昼休みに、「ドルフィン・エクスプレス」の第3作、『流れ星レース』(竹下文子・著/岩崎書店)を一気に読みました。
このシリーズは、「黒ねこサンゴロウ」シリーズの世界とつながっているのに、同じキャラクターに安易によりかからないところが気に入っています。(出版社が替わったという事情もあるでしょうけれど)

今回のお話の読後感は、味のいいお菓子を気軽にむしゃむしゃ食べて、それで終わりかと思っていたら、あとから口の中においしい味と香りがいっぱいに広がっていくみたいな感じでした。(喩えがとっても食いしん坊)

脇役でちょっとだけ登場する「トッポ」のおじいさん社長、好きです。

2004年 10月28日

天変地異に出会うと(見聞きすると)、今すぐ、自分がほんとうにやりたいことをやるべきではないのか、という思いに駆られます。40代で突然亡くなる人もいるのに、退職したらあれをしよう、これをしようと計画して、それに手をつけるまもなく人生を終えるのでは、あまりに悔しいことです。

学生や定職を持たない若い人たちは、しばしば「自分のほんとうにやりたいことが、まだ見つからない」と口にしますが、私は小学生のときから「ほんとうにやりたいこと」ははっきりしていて、今に至るまで、一度も揺らいだことがありません。
それなのに、どうして専ら邁進することなく、人生の折り返し地点を過ぎて、どんどん年老いているのか。とんでもないまちがいをしているのではないか……と、ぞっとすることがあります。

でも、二通りの生き方はできないのだから……。
夜、勤務先から帰宅して、パソコンに向かっています。

2004年 10月25日

昨日付けで、クイズのページに問題を2題、追加しました。このページを書き換えたのは、開設以来初めてです。
タイトルに「アルジェンタ市立銀色の剣士記念博物館」と掲げているのですが、内容は「アルジェンタ年代記外伝」に限定されていません。
今回の問題は、現在、当「物語工房」に連載中の「物語への旅立ち」に因んだものを作りました。「10」の問題はかなりマイナーな内容ですが、「物語への旅立ち」第4章に答えが出てきます。

クイズのページを作ったのは、遊び心ではありましたが、一つにはこのページの末尾に掲げた「お客様へのお願い」を読んでいただきたかったというのがあります。
これは架空のものですが、現実の博物館にもあてはまります。

私は各地の博物館に行くと、ミュージアム・ショップでお土産物用のレプリカを買い求める趣味があるのですが、そのうち、「銀色の剣士記念博物館」の別館を造って、このサイト上にレプリカ博物館でも開こうかと思います。
宮沢賢治の原稿の複製(宮沢賢治記念館で購入)とか、「漢委奴国王」の金印のレプリカ(福岡市博物館で購入:博物館の監修による精巧品)とか、荒神谷遺跡の銅剣の模型(出雲原郷館で購入)とか、「鳥獣戯画絵巻」のミニチュア(東京国立博物館で購入)とかを写真に撮って、アップして。(物好き)

著作権法に触れなければ……ですけれど。
やっぱり触れるかなあ。

2004年 10月21日

11月の半ばに、県立図書館の資料点検期間があるので、今のうちに本をたっぷり借りておこうと思っています。期間中、新たに本を借りに行けないのは不自由ですが、その代わり、うまい具合に時期を見計らうと、貸出期間がいつもより長くなるので、大長編を読むときや、資料をしばらく手元に置いておきたいときには便利です。

一応、学生時代に司書の資格を取得しているので、この点検期間の意味や意義については教えてもらいましたが(司書コースを取らなければ、これを知らないという訳でもありませんが)、利用者のなかには、図書館の職員が長期休暇を取って遊んでいるみたいに思う人もいるようです。
図書館は閉館していても、職員はせっせと働いているんですけどね。

2004年 10月15日

1274年、1回目の蒙古襲来(文永の役)のときは旧暦の10月、台風シーズンからかなりはずれていました。おまけに、2回目(弘安の役)のときほど明確に嵐が来たと分かる文献資料は残っていません。だから、嵐が来たというのは疑わしいと、指摘されてきました。2回目の台風に引きずられて出てきた伝説ではないか、と。

唐突に歴史の話などしましたが、今年、10月の半ばを過ぎてもまだ台風23号の影が迫ろうとしているのをみると、まれには11月(旧暦10月)になって来る台風もあるのではないかと、考えてしまいました。

だいたい、嵐がすべて台風とは限りません。どんな季節にも大風や大雨はあります。台風シーズンではないからといって、嵐が来たというのはうそだと決めつけるのは、行き過ぎではないかと……。ただ、嵐が来たという根拠も、弱いのですが。

基本的には言い伝えられたことには敬意を払うたちです。反面、編集された記録は疑ってみるたちです。

2004年 10月9日

もう何年も前になりましたが、『草薙列伝・八岐の大蛇』が刊行されて間もない頃、地元の新聞記者の取材を受けたことがありました。
その記者さんはどうしても自分の考えてきたストーリーに沿って話を進めたいようで、何度も私に「創作は趣味だ」と言わせようとしました。

私としては、子どもの頃からのかけがえのない夢であり、生涯の伴侶でもある創作という行為を、ただの「趣味」にしてしまうのには抵抗があったので、
「趣味と言うよりは、もっと大切なものです」
と答えました。すると、記者は
「でも、仕事ではないのですから、趣味ですよね」
と食い下がられました。
「それで生計を立てているわけではないけれども、『趣味』という以上に大切なものです」
「でも、職業ではないから、趣味ですよね」
あんまり粘られるので、とうとう根負けして、こう答えました。
「まあ、それで食べているのではないから、そう言う意味では『趣味』ということになるのかもしれません」
言質を取った記者は、そそくさとこの質問を切り上げました。

記事になったものを読むと、私はこんなふうに言い切ったことにされていました。
「私は作家ではありません。創作はあくまでも趣味。これからも趣味と仕事を両立して頑張っていきたい」
(これは絶対に私の意思ではありません。創作は「もう一つの仕事」です。お金はほとんど稼いでいませんが、本職よりもはるかに自分自身に根ざした仕事です)

ははあ、新聞記事というのはこんな風に作られるものなのだなあ、と感心しました。
もしかしたら、取材に来る前に記事を書いておいて、記事に一致するように強引に誘導していくのでしょうか。

こんな風に書いたからといって、私はいわゆる「マスコミ嫌い」ではありません。記者もいろいろ、取材もいろいろ……。
不本意で不愉快でしたが、なかなか得難い経験でした。

2004年 10月4日

先週の土曜日(10月2日)は山口鷺流狂言保存会の50周年記念公演でした。行ってみようかと思ってたのに、一週間の疲れですっかりばててしまって、当日は家から一歩も出ませんでした。
山口に住んでいれば、また何度でも見る機会はあるでしょうけれど。

現在、保存会には小学生から若い人、中年の人、年配の人と、ほんとうにいろんな年齢層の人が参加しているようです。将来安泰、かつ楽しみです。

十数年前、演劇関係の催し物で、猿回しとそれについての講演がありました。そのときの講師のお話によれば、猿回しを先にやってしまうと、後には何を持っていってももう人を惹きつけない。ただ、狂言だけは、猿回しの後でも観客に見てもらえるようだ。狂言はそういう力を持っているが、これは例外だ……ということでした。
狂言についての話ではなく、猿回しについての話の中でそういう部分がでてきたので、狂言に興味を持っていた私は「へえ」といった感じで聞いておりました。

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