6.自選20首
野沢菜を抜く手休めて見晴るかす浅間は吹雪くか白く霞めり
大根葉の散らばる畑に陽の射して霜輝かせつつ峡は覚めゆく
山峡は薄墨色に暮れゆきて雪野の果てに町の灯が見ゆ
哀しみに鳴くこともあらむ小綬鶏の鋭き声は雪の越えゆく
さらさらと霧氷を零す落葉松に啄木鳥の赤き頭が動く
雪明りに遊びし獣を眠らせて森はうらうら柔らかき陽を浴ぶ
静かなる午後を一陣の風立ちて雪積む竹を起こしてゆきぬ
ちろちろと雪解けの川の流れ出すこの夜木の芽も動きいるらむ
ひそやかな春の雨音聞く夜は久しく便りの無き子を思ふ
この春はかたくり誰と見に行かむあの谷の径誰と歩まむ
腹這ひてかたくりを撮る男あれば写るはずなき声ひそめ過ぐ
四十雀が郵便受けを覗きいる春の午後なり手紙書かむか
庭巡る流れの音の安らけしこは胎内で聞きし音やも
アカシヤの香にむせ返る道を来て切なきまでに旅を焦がるる
緑色のしずくに濡れて鳴きいむか郭公の棲む森に雨降る
新緑の山路に忙しく啄ばめる黄鶺鴒なかなか道を譲らず
粉雪が舞ってをります信州より届きしはがきに始まりし恋
終電の改札口を駆け戻り君のコートに包まれし街
ひざまづき五輪選手の裾上げの針刺してゆく母の思ひに
金メダルを外して胸に掛けくれぬ母の世代のボランティア吾に
yamatyan画
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