◇ 荒割材の準備



カミゲンと本黒檀の違い

上:カミゲン
下:本黒檀

荒割してからすでに7年経っています。
伐採後、何年経っているのでしょうか。
解りません(笑)。

この第一段階の荒割で真っ直ぐに切ったつもりの材が、
ひねくれて曲がっています。
これを、第二段階としてさらに細く荒割します。
これ以上はあまり大きく動かないかと思いますが、
でも、削り始めるとほんの僅か動くんですよねー。
やだやだ。

さて、完成間近という形まで削ぎ落とし、さらに半年間寝かせて、
やっとヤスリで整形していく工程に入るのです。
沖縄では長期保存した荒割から一気に仕上げるというのが定説のようですが、
どうせ動くのですから気長にやります。


◇ 心持ち材です

今回選んだカミゲンは、心持ち材と言われる、
樹木の中心が入っていて、
棹にしても心が残るような木取りの材です。
あまりよろしくないのですが、
もとの樹木が若いうちに伐採されてしまったのですから
こればかりは仕方ありません。

心持ち材は放射状にかなり多く割れが発生します。
これらを補修しながらの作業となり、
ちょっと面倒臭いです。
補修というのは、この棹を荒割する時に出る粉をとっておいて、
割れにつっこんで接着剤を染み込ませて固めるという作業です。
補修の接着剤は膠や漆という昔ながらの素材、手法で。
と簡単に言いたいのですが、
実はこの両者の接着剤、
ちょっとくせ者なんです。

何かといいますと、どちらも後日、ヒケるのです。
ヒケとは接着剤が縮む、肉痩せの事で、
接着して硬化してから削って平らに仕上げたのに、
数ヶ月経つと、その部分が凹んでしまって目立つのです。

また、漆や膠を大きな割れに流し込むような事をした場合、
膠は水分が抜けて大きくヒケるというか、ほとんど埋まらず、
漆は厚くすると内部が硬化せずにブヨブヨになります。
数年〜数十年すれば硬化しますが、そこでやはり大きくヒケます。
そういう訳で、膠も漆も厚塗りは出来ない素材です。
それで黒檀の粉を混ぜたりする訳ですが、
やはりヒケますので大きな補修としてはあまりよろしくないのです。

また、大きい割れで、そこが全部粉で埋められていると、
木目が失われて真っ黒な面が出来てしまいます。


ですので、
荒割の際に粉ではなく端材をとっておいて、
なるべく割れの形にあわせた部品を、
なるべく割れている箇所付近の木目と同じ方向に木取りして、
はめ込むように隙間を埋めるのです。

これは、目立たないようにごまかすという目的もありますが、
棹材と同材を使って埋めれば、
棹材の収縮に合わせて同じように動くので、
力のしわ寄せで別の場所が割れたりする事を防ぐという目的があります。
ですので、同じ方向に繊維を走らせた同材を使うのが
いちばんよろしいですね。

当然、接着剤の塊が少ない訳ですから、
数年経った時のヒケを最小限に抑えられる訳です。


◇ とはいえ、

沖縄では、カラクイ製作もチーガ製作も皮張りも、
アメリカ製の合成接着剤が使われる事が普通ですので、
割れ補修も瞬間接着剤で行われるのが一般的だと思います。
仕上げの塗りがウレタンですものね。
天然素材に拘る必要もないのかなぁ、
と最近は感じていますが。
どう思います?

あと、白太でも何でも黒檀の粉で埋めてあったりします。
白っぽい材の割れを黒い粉で埋めても目立ちますし(笑)、
そこだけ黒檀になっても嬉しくないですから、
やっぱり白太は白太の端材で埋めましょうよ。
ね。
で、その場合は漆を使うと黒っぽくなって目立ちますから、
膠の方がよろしいかと思います。
って、色で選んでもいいのかな?


◇ カミゲンと本黒檀の違い


カミゲンと本黒檀の違い

上:カミゲン
下:本黒檀

材の具合が少々違うのが解りますか?


カミゲンは硬い、八重山は非常によく詰まっている、
と言われていますが、本当でしょうか?
本黒檀と比べると、カミゲンや八重山の方が導管はまばらと言いますか、
導管の本数が少ないという意味ではよく詰まっていると言えます。

さて、よ〜く見ると、導管1本の太さは本黒檀よりもカミゲンの方が太いです。
ただ、どちらも導管の中に何か詰まっていて、
空洞という感じではないです。
削って磨けばほぼ平らになります。
これらに比べて縞黒檀は導管が太く、空洞になっていますので、
軽く塗っただけでは埋まらずに細かい凹みだらけになります。


白太の色の違いは 「材種」ページ◇白太の色で、
それぞれの材の特徴は 「黒檀系棹材」ページで、
比べてどっちがいいかは 「材の個体差」ページで、
取り上げていますのでご覧下さい。


よじ登る。。

とりあえず戻ってみる。