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    ii)  各本のあらすじ
 
  この章では、トールキンの各本のあらすじを紹介します。主眼は、「シルマリルの物語」の紹介です。
とりあえず、指輪物語は、大変有名と言うことで、かなり省略するか、全く書かない可能性もあります。また、ホビットの冒険は、ホントの概略だけ、の積り。、
やっぱり、シルマリルが一番、内容が濃い割に難解だと思うので。
(内容は、なるべく「シルマリルの物語」で確認していますが、独断や記憶違いが入っている場合があります。あしからず、ご了承ください。(間違った点がありましたら、メールでお知らせいただけると幸いです。))
    目次
     T.シルマリルの物語
      -上巻-
      (1) アイヌリンダレ
      (2) ヴァラクェンタ
      (3) クゥエンタ・シルマリルリオン
       (i) 世の始まり
       (ii) ドワーフとエントの誕生
       (iii) エルフ達の到来と虜囚となったメルコオル
      (以下、工事中)

(1) アイヌリンダレ
唯一神エル・イルーヴァタアルによる、世界(Arda)の創造が語られる。 

エルは虚空に一人居て、思いをめぐらす。その思いの中から、アイヌアと呼ばれる者達が生まれる。 
アイヌアはエルと共に音楽を奏する。やがて、アイヌア達が楽奏に慣れて来た頃、エルは主題を与え、アイヌアはその主題から、音楽を創造し、奏でる。 
しかし、アイヌアの中で、虚空を愛し、自分の世界を欲した者(メルコオル)がおり、その者の奏でる不協和音によって、他の者の奏でる主題は邪魔され、楽曲は単調になり、他の者は奏でるのを止め、楽が終焉する。 
再びエルは主題を与え、再度音楽が奏でられ、造られるが、再度、メルコオルの為に、初めと同じく楽が途絶える。 
三度エルは主題を与え、今度はエル自身のみで奏する。メルコオルは邪魔をしようとするが果たせない。やがて”エルご自身の御目の光よりも鋭い和音”で楽は終わる。 
次にエルは、まず、楽曲を映像として現す。虚空に球状の天体、その上に、美しいエルフという種族を初め、様様な生き物が現れる。だが、映像は、楽の終わりまで行かずに終わる。(映像に、人間は現れない。また、エルフと人間は、エルのみが奏でた第三の楽曲によって現れる。) 
エルはアイヌア達の心に問い、彼らが、この映像を実体としたいと望んだので、エルはエアと叫び、アルダ(地球)を創造する。 
アイヌア達の主だった(力ある)者達、また力では劣るが、熱意では劣らない者達の中で、このアルダの形成に力を貸したいと願うもの達が、実体を取り、アルダに下る。 
 

[家主注] 
 ここで注目したいのは、後述の”ヴァラクウェンタ”の章で詳しく語られるが、この世界にはヴァラアルという、ギリシャ・ローマ、或いは北欧神話のような多神教的世界の、力ある者達(神的な存在)が存在するにもかかわらず、それらが神ではなく、位置づけから言えば、喩えるならキリスト教でいう使徒(天使、ミカエル、ガブリエルなど)のような存在であるということである。 
彼らは神ではない。ある種の使徒なのである。神は、あくまでエル・イルーヴァタアルのみ(一神教)である。 
作者 トールキンは、母の影響で、イギリス人には珍しく、カソリック信者であった。 
いずれにせよ、彼に宗教心が強かった(或いは母の影響を強く受けた)らしいことが窺える。熱心なクリスチャン(あくまで堅苦しいものではなく、指輪物語の世界を作り出すような、創造的な精神の持ち主ではあったが)である彼には(というか、全般に、クリスチャンには)、本当の意味での多神教的な世界は、作れなかったのかもしれない。興味深い所である。


(2) ヴァラクゥエンタ 

アルダに下ったアイヌア達の中の力あるもの、ヴァラアルと、より力の弱いマイアアル、及び敵について語られる。 
(i)ヴァラアル(単数形:ヴァラ) 
 ヴァラアルは下の14人である。それぞれに、職能を持つ。 
 (家主注:ギリシアや北欧の神話に類似している部分があると思われる。)
 
名前
別名
性別
職能
婚姻関係
アラタアル*
備考
マンウェ スーリモ
男性
天空
@
 
ヴァルダ エルベレス
女性
@
 
ウルモ  
男性
海・水  
 
アウレ  
男性
大地・鍛冶
A
ドワーフの作り手。ドワーフ達の間での呼び名は、マハル。
ヤヴァンナ ケメンターリ 
(大地の妃)
女性 緑・木・森
A
エント誕生のきっかけを作った。 
マンドス ナーモ(本名)
男性
冥界・運命
B
マンドスは館の所在の名 
ヴァイレ   女性 織女
B
  アルダに存在した全ての事柄を綴れ織りにする
ローリエン イルモ(本名)
男性
夢、幻
C
  ローリエンは居住地の名。マンドスの弟
エステ   女性 癒し
C
   
ニエンナ  
女性
嘆き、悲しみ、憐れみ  
マンドス・ローリエンの妹。
”嘆き”は、自分ではなく、他者の為の嘆き。
トゥルカス   男性 戦い
D
   
ネスサ   女性 俊足・舞踊
D
  オロメの妹 
オロメ  
男性
狩猟・森の王
E
ギリシャ神話のアポロに近い性格? 
(但し太陽神的性格はなし。) 
ヴァーナ  
女性
若さ・花・鳥
E
  ヤヴァンナの妹。”常若の”
    ※婚姻関係 :同じ番号のヴァラアル・ヴァリエア(ヴァラアルの妃)は、婚姻関係にある。 
    *アラタアル:アルダのいと高きものの意。*印の8人。 
               (最初は9人であったが、1人除かれた。(メルコオルのことと思われる。)
 
[家主コメント]
  ここで注意したいのは、ギリシャ神話などには見られない、”嘆き”や”憐れみ”を司るヴァラ(ニエンナ)の存在である。”悲しみ”の神格は、多くの神話体系で見られる(と思う)が、憐れみや、特に他者を思って流す涙、嘆きを司るものというのは、この、トールキンが作った神話体系のみにみられるのではないかと思う。
 マイアアルの項でも述べるが、このニエンナは、マイアのオローリンと親しかった。オローリンは、”マイアの中で最も賢明”であり、”ニエンナから憐れみと忍耐を学んだ”とされる。このオローリンこそ、指輪物語で最も大きな役割を果たす、ガンダルフである。
また、このニエンナの涙は、これも後述するが、2つの光の木の創造と、この2本の木が死を迎える時、ヤヴァンナの詠唱と共に癒しとして施されて、その深い傷から救うことは出来なかったものの、これらが金の果実と銀の花(太陽と月となる)を生み出して死することを果たさせるのである。
 トールキンは、彼の作品(指輪物語など)に寓意を見ることを余り好まなかったと言う。(私にはそれも好ましい。)おそらく、話を作る目的は、話を楽しむ為であるということなのだということだと思う。でも、この、”憐れみ”を司る神格に、重要な位置を与えていることは、トールキンワールドがどのようなものか、何故、こんなにも多くの人に、長年の間慕われ、読み継がれていっているのかの、一つの答えなのではないかと思う。
 競争とか、そういった殺伐としたもの、人間性と相反するような事象、そういうものに対するアンチテーゼ(そんなしち面倒くさく難しいものではない、と怒られそうだけど)、人間性と言うものの本質、他者を温かく見守る心、というようなものが込められている、そんな気がする。
(ii) マイアアル(単数形:マイア)
  ヴァラアルと共に現れた精霊で、同じ御使の位に属し、地位は劣るもの。ヴァラアルの臣下であり助言者。
イルマレ ヴァルダの侍女
エオンウェ マンウェの旗持ち、伝令使い。エアレンディルが西方へ渡った時、一番最初に彼に会った。
オスセ 海のマイア気性が荒い。
ウィネン オスセの妃。”海の妃”。海の生類と海草全てを愛する。オスセを宥める。船乗り達に崇められている。
メリアン ヴァーナとエステに仕えたマイア。女性。エルウェ・シンゴルロ(シンゴル、エルフ、シンダアルの王)の妻、ルシアンの母。
オローリン オロメのマイア。マイアアルの中で最も賢明。ニエンナに憐れみと忍耐を学ぶ。後、東方に渡り、魔法使い(イスタリ)の一人となる。(ガンダルフのこと。)
”今は忘れられた西方での青年時代には、わしはオローリンだった” (”二つの塔”下巻 p141)

 
(iii) 敵
メルコオル
かつてはヴァラアルの一人。後にアルダの形成を妨げ、エルフが到来してからは、これも毒そうとする。後に、フェアノオルにより、モルゴス(世界の暗黒の敵)と呼ばれる。冥王。
サウロン 
アウレのマイアの一人だったが、メルコオルに誘惑されて手下となる。別名、ゴルサウア(酷薄な者?)。
バルログ
 元はマイア(或いはそれより力の弱い精霊)。メルコオルに誘惑され、堕落。

(3) クゥエンタ・シルマリルリオン
  (i) 世の始まり
  (ii) ドワーフとエントの誕生
  (iii) エルフ達の到来と虜囚となったメルコオル
(i) 世界の始まり
  ヴァラアル達がアルダに降り立った当初、アルダは未だ未形成の熱い世界であり、ヴァラアル達はその中で営々と大地や海を形作った。しかし、メルコオルがことごとく邪魔をした。ヴァラアルはメルコオルと戦い、これを退けた。
ヴァラアル達は中つ国を作り、その北と南の端に柱を建て、北にイルルイン、南にオルマルと呼ばれる巨大な灯火を置いた。
メルコオルはイルルインより北にウツムノの砦を築き、力を蓄え、ヴァラアル達を急襲し、イルルインとオルマルを載せた柱を壊し、灯火を破壊した。
柱の倒壊により、中つ国は大きく損なわれた。ヴァラアルはメルコオルと戦ったが、大地を保つことに力を取られ、彼を完全に打ち滅ぼすことは出来なかった。

  ヴァラアルは、全ての陸地の中の最果ての西の地、アマンに赴き、ここに宮居(ヴァリノオル)を築いた。
ヴァラアルが宮居に定めた都、ヴァルマアルの都の西門の前の丘、エゼルロハアル(コロルライレ)の丘の上で、ヤヴァンナは詠唱し、ニエンナは涙で丘を清めた。やがてそこより2本の光の木(テルぺリオン(銀の木)とラウレリン(金の木))が生え出た。
両者は交互に7時間の間光を放ち、一方の光が消える1時間前に他方が光りだした。2つの木は光を放っている間に花を咲かせ、その葉からは光の雫を辺りに降らせ、ヴァリノオルの光と熱の源となった。


(ii) ドワーフとエントの誕生

  アウレは自分の指導する者達が欲しくなり、ドワーフを創造した。これはエルの奏でた楽曲には含まれなかったので、エルはアウレの許へ現れてこれを元に戻すよう告げた。アウレはエルにへりくだり、涙を流しながら槌を振り上げ、ドワーフ達を殺そうとしたが、エルはアウレがへりくだったこと、またドワーフ達が、アウレの槌に怯え、慈悲を乞うたので、心を動かされ”彼らは既に、自分の意志を持っている”と言われ、彼らをそのままで嘉納された(存在を認めた)。
但し、エルの作られた長子、エルフが目覚めるまで、彼らを眠らせておくこととした。
  ヤヴァンナは、アウレにドワーフの件を聞き、ドワーフの斧が、彼女の木々を損なうことを恐れ、マンウェの許に相談に行った。彼女はマンウェに、”創始の楽曲には、森の木々の中で、エルを称えて歌うものがいた”と告げた。
マンウェは彼の内なる心に問い、”森には木の牧者(エント)が歩くであろう”と告げた。

(iii) エルフ達の到来と虜囚となったメルコオル
  中つ国は闇に閉ざされ、オロメとヤヴァンナが気にかけ、時々訪れる以外は、放置された状態であり、メルコオルの手下の跋扈するところとなっていた。
ヴァラアルは、中つ国にエルフが目覚める時に備え、光を灯すこととした。
ヴァルダはテルぺリオンの雫を貯めた大桶から、光の雫を取り、空に蒔いた。テルぺリオンの雫は星となって、夜空を照らした。
ヴァルダが星を創造し終えた時、中つ国の東、クウィヴィエーネンでエルフが目覚めた。エルフたちが初めて見た光は星の光であり、この為に、エルフ達は、ヴァラアルのうちで、星の作り手であるヴァルダを最も敬愛するようになる。
 中つ国、クゥイグゥエーネンに狩をしていたオロメは、森の中でエルフ達の歌声を聞き、エルフ達と出会った。オロメは、しばらく彼らと共に過ごしたが、その後速やかにヴァリノオルに戻り、ヴァラアル達に、エルフ達の到来を告げた。

 ヴァラアル達は、エルフ達をメルコオルの手から守る為、これを攻めて虜囚とし、アウレの作った手枷足枷を嵌めて、三紀の間、マンドスの檻に留め置く。

 その後、ヴァラアル達は会議を開き、エルフをどのようにするか話し合った。その結果、大多数のヴァラ達の意見により、エルフをヴァリノオルに招聘することになった。
エルフ達は当初、召し出しに喜んで応じようとはしなかった。そこで、同族の為に弁じる使節を選び、ヴァリノオルに連れていった。イングウェ、フィンウェ、エルウェである。彼らはヴァラアルの栄光と威厳に打たれ、戻って、同族に西方に移り住むべきであると勧めた。
 この際、イングウェとフィンウェの一族全てと、エルウェの一族の大多数は召し出しに応じたが、その他は召し出しに応じなかった。

 まず、イングヴェの率いるヴァンヤアル族がアマンへと渡り、続いて、フィンウェの率いるノルドオル族が、ウルモの引く島に乗って渡った。彼らはアマンの外側をとりまくペローリ山脈の内側で暮らしたが、光にあふれたアマンにあってもなお、星の光を懐かしみ、ヴァラアルに頼んで、ペローリ山脈に峡谷を穿ち、星の輝く外辺へと出られるようにしてもらった。峡谷から漏れ出た光の許で植物は育ち、アマンの内部以外で初めて、花が咲いた。
テレリはゆっくりと旅を進め、3つの種族のうちで最後となった。

 テレリの王、エルウェは、中つ国の西端の森を一人逍遥していた。すると、小夜鳴鳥のさえずる声が聞こえ、森の開けた空き地にマイアのメリアンがたたずんでいた。
エルウェは霊感に打たれ、メリアンに近づき、その手を取った。かれらは幾星霜もの間、そうしてただ佇んでいた。
その後、彼らは目覚め、共にその地に住まい、夫婦となり、居所を作った。

 エルウェの弟、オルウェとテレリ達は、行方知れずとなったエルウェを探したが、発見できず、それ以後の旅はオルウェが率いていくことになった。
テレリは歩みも遅く、一番遅く西へと渡った。これも、ウルモが中つ国の一部を引き、この島に乗って渡った。
テレリと親しかったオスセは、テレリがアマンへと渡るのを悲しんだ(オスセの職能は、中つ国の海の司であるので)。そこで、テレリの中には、オスセの説得に応じて中つ国に留まった者達もいた。バラアル湾のキアダンを長とする者達である。
 また、島に乗って西方へと向かったテレリ達も、オスセの嘆きを聞き、ウルモに頼んで、アマンの岸を望む西の海中(オスセの領分の範囲内)で、島を止めて貰った。
この為、彼らはアマンへは渡らず、言葉も風習もヴァンヤアルやノルドオルと分離していった。

 ノルドオルの王族には次のような者たちがいた。
  フィンウェの子供達
   ミーリエル(ノルドオル)の息子:
    フェアノオル(本名:クルフィンウェ) 言葉と手の技に優れ、弟達より博識。    
     フェアノオルの息子:マエズロス(丈高き)、マグロオル(伶人)、カランシア(黒髪の)、
               ケレゴルム(金髪の、狩人)、クルフィン(巧みの)
               アムロド、アムラス(そっくりの双子、狩人)

   インディス(ヴァンヤアル)の息子達:
    フィンゴルフィン  強く、不動の心を持ち、剛勇
     その子供達:フィンゴン
           トゥアゴン(妻:エレンウェ(ヴァンヤアル))
           アレゼル(女性、アル・フェイニェル(白い姫))

    フィナルフィン   最も美しく、最も賢明。
              妻;アルクウァロンデ(白鳥港)のエアルウェン(オルウェの娘)
     その子供達;フィンロド(フェラグンド(ドウォーフ語で洞窟宮の王)、信望篤き)
           オロドレス
           アングロド、アイグノオル
           ガラドリエル(フィンウェの一族の中で最も美しい)

 ウルモの引く島(エルダマアル湾に止められた島はトル・エレスセアと呼ばれた)に乗って西へと渡ったテレリ達は、やがて、ペローリ山脈に穿たれた峡谷から漏れ出てくるアマンの光に魅せられ、オスセへの愛着と葛藤したが、やがてアマンへの執着が勝ち、オスセに頼んで、ヴァリノオルへと渡る手段を与えてもらった。彼らは船を作り、オスセは、嘆きつつも、彼らに白鳥を遣わし、白鳥に引かれた船は、アマンへと渡っていった。
 テレリ達は、アマンの外辺、西の海のほとりで暮らし、ここにアルクウァロンデ(白鳥港)を建造した。ノルドオルはあまたの宝石をテレリ達に与え、彼らはそれを岸辺や池に撒き散らした。また、テレリ達はあまたの真珠を海から得て、それも岸や池に撒いた。
アルクウァロンデの館は、真珠で作られた。

(以下継続)

 

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