
■サイトのリニュアルについて!
・趣味サイトのサーバー容量が限界に達したため(文字数はこのページだけで16万4千字)、2018年夏より編集作業が中断しています。現在、スマホでも閲覧しやすいよう、ページを分割し、RWD(レスポンシブ・ウェブ・デザイン)で改編中ですが、各コンテンツの記事が膨大で、作業時間もほとんどとれていません。2022年(令和4年)夏までにはリニュアルを完了させる予定です。大変ご迷惑をお掛けいたします。
■重要! 必ずお読みください!
~ビーターロッドを必ず加工してください!
・本サイトでは『Ludwig Speed King(ラディック・スピードキング)』と『Premier(プレミア) 250S』を中心に紹介していますが、いずれのフットペダルも『蝶ボルト』を指で締め込んでビーターを固定する方式が採られており、数十年来、演奏中にビーターが脱落するアクシデントがつきものでした。そこで、蝶ボルトの固定を強めるため、ビーターロッドの側面で、蝶ボルトが押圧されるポイントを金属ヤスリで加工する必要があります。
■ビーターロッドの研削①
・本来は蝶ボルト末端がロッドの「曲面上の一点」でしか支持されなかったものが、研削により「平面上の二点」で支持されるようになります。
・作業時間は3か所の加工で計10分程度です。
・蝶ボルトの固定力向上策として、ビーターロッドの側面を「平坦に加工する方法」や「複数の細い切り込みを入れる方法」等を試しましたが、ビーターの打撃による衝撃や振動が継続すると、やはりビーターロッドが脱落することがあり、十分な効果を得られませんでした。しかし、上記の研削法(平面二点固定式)により、ビーターロッドの固定力が格段に向上する結果を得られ、比較的簡単な作業で相当な効果を期待していただけます。
①片方の手でビーターを固定し、金属ヤスリをロッドの真横から押すようにして切り込みをいれます。
②ロッドの真横から見て「お椀形」になるように切り込みます。幅は3mm程度になるようにしてください。
※一度ビーターを固定したら、その角度のまま動かさないでください。
※はじめは力を入れず、スジを付けるつもりでゆっくりと切り込みを入れてください。
※あまり深く研削しないでください。『プレミア250S』の蝶ボルトの場合、深くねじ込まれると蝶ボルトのウイングが駆動部に接触し、それ以上蝶ボルトをねじ込めなくなります。
※金属ヤスリは押すときに研削ができるようにヤスリの目が形成されています。
※金属ヤスリはダイソーの『ホビー工作ヤスリ・二本組(丸・三角)』の「丸型」を使用しました。
※ビーターのセッティング時には、蝶ボルト末端が「座りの良いポイント」に当ててから強く締め込んでください。
■ビーターロッドの研削②
■『スピードキング』、『プレミア250S』のロッド抜けの原因
(1)蝶ボルトの末端もロッド側面も曲面であるため、両者が「ほぼ点での接触」となり、固定力が低い。
(2)蝶ボルトを指で締め付けるだけなので、締め込みが甘くなりがち。
(3)ドラムヘッドへの打撃時に、ビーターロッドを通して衝撃が伝わり、蝶ボルトが緩みやすい。特にロッカー(駆動部)側のロッド穴の径に比べてロッド径の細いビーターを使用すると、打撃の際にロッドがぶれ、そのブレによって蝶ボルトの緩みが進みやすい。
※『スピードキング』、『プレミア250S』のいずれも蝶ボルトは45度の角度でロッドに押圧されます。
■重要! 必ずお読みください!
~TAMAの角頭ボルト(MS612SH)を使用しないで!
・ネット上でスピードキングの蝶ボルトの緩み対策として『TAMA 角頭ボルト(MS612SH)』の代替使用を推奨する案件が流布していますが、両者はそもそもインチサイズとミリサイズで規格が完全に異なります。スピードキングの純正蝶ボルトは「1/4インチ径(約6.35mm径)」で、『TAMA 角頭ボルト(MS612SH)』は「M6(6.0mm径)」です。また、ピッチ(pitch=ネジ山の間隔)については、純正蝶ボルトが「0.9mm」に対し、『TAMA 角頭ボルト』が「1.0mm」、ネジ山の数は、純正蝶ボルトが「10mm当たり11」に対し、『角頭ボルト』は「10mm当たり10」です。
・『角頭ボルト(スティール製)』のほうが径が小さい分わずかに遊びがあるので、ネジ山3つほど奥までは指でもねじ込めますが、行き止まったその先をさらにチューニングキーを使用して強引にねじ込むと、ロッカー(駆動部=アルミ製)側のネジ山を崩してしまいます。角頭ボルトのほうがわずかに径が小さいため、多少ネジ山が崩れた状態のままでも当面はペダルを使用できるようですが、いずれネジ山の完全破壊が起きてボルトがズル抜け状態となり、ねじ溝の切り直し加工、もしくはロッカー(駆動部)の交換修理が必要となります。
・特にビンテージ品としての価値の高い70年代以前に製造されたスピードキングの個体数減少を防ぐため、『TAMA 角頭ボルト(MS612SH)』の代替使用を絶対に避けてください。また、現在ネット上に上記代替措置を記事として掲載されている方は、記事内容の訂正、および注意喚起を行っていただくようお願いいたします。
・『TAMAの角頭ボルト(MS612SH)』を使用したスピードキングを中古市場に出品する際には、少しでも高く売りたいという出品者としての心理は理解できますが、事実をありのままに申告し、購買する側の立場に立って出品対応していただくようお願いします。
※『スピードキングの純正蝶ボルト』の規格は『1/4‐28(4分の1インチ径=6.35mm径・1インチ当たり山数28=ピッチ0.9mm=10mmm当たり山数11)』、『TAMA角頭ボルト(MS612SH)』は、『M6‐1.0(6.0mm径・ピッチ1.0mm=10mm当たり山数10』です。
※尚、2020年に6年ぶりに再発された『リニュアル版 L203 スピードキング』のロッカー(駆動部)に使用されている「角頭ボルト」のサイズは「M6(6.0mm径)」であり、ロッカー側のねじ溝も「6mm」サイズに切られているため、このモデルには「TAMAの角頭ボルト(MS612SH)」を代替使用することができます。逆に2014年以前に製造された「旧型スピードキング」に使用されている「蝶ボルト(1//4インチ=6.35mm径)」をリニュアル版スピードキングに代替使用することができなくなりました。
(記:2022年1月9日)
■重要! 必ずお読みください!
~スピードキングは太腿(ふともも)の裏で踏む!?
・2012年よりスピードキングと格闘してきて、漸く9年半経った2021年後半になって、スピードキングを制御するコツらしきポイントの一つに気づきました。
・16分拍などで速く踏む必要がある際、無理にでも正確に打撃しようとするため次第に力みが強くなり、脚の筋肉も硬直してきます。同時に膝も上がってきて、尚更制御が乱れます。この悪循環を断つため、膝が上がらないよう太腿の裏でストゥール(ドラム椅子)の縁(へり)を打ち付ける要領で打撃してみると、かなり制御性が向上することに気づきました。無駄な力みも減ります。是非お試しください!
・スピードキングはその独特のアクションやクセのある操作性から、現代においては自由にこのペダルを使いこなせるドラマーが世界的にも極めて少数となりました。今後もスピードキングという歴史的名機の使い手、文化の継承者が増え広がればと願っています。
※『スピードキングがものにできない・・・!!』の記事も是非ご参照ください。スイベル系フットワークの導入によっても制御性が高まります。
■重要! 必ずお読みください!
~推定年代の変更!
・以下年表は「2017年5月2日現在」のものです。スピードキングの年代による仕様の違いを調査している段階で、1970年前後の仕様が当初の推定より1年程度繰り上がる可能性が出て来ています。サイトのリニュアル後に訂正を含め、詳細を反映させます。(追記:2019年10月23日)
■仕様年表(2017年5月現在)
※中古品の中にはフレーム本体とフットボードとが年代の異なるもの同士「組み替え」られていたり、あるいは「組み違い」が起きていたりする場合があり、明らかにそのように判断できるものは参考から除外しています。
※コネクティング・リンクやロッカーシャフト等において「部品交換」が行われたと推測される個体も参考から除外しています。
※’drummechanix’等のカスタムショップにより改造されたと思われる個体についても参考から除外しています。
※ラディック社の発行したカタログ、当方の所有する実機、中古市場に出品されている個体の画像等をもとに、当方の個人的な推測を交えて年表を作成しているため、事実と必ずしも一致しない場合があります。その点、予めご了承ください。
■Drummers who usud Speed King Pedal(スピードキングを使用したドラマー)
※検証:81名(2021年11月5日現在)
・John Bonham:Led Zeppelin ~ジョン・ボーナム:レッド・ツェッペリン
・Bill Bruford:Yes/King Crimson ~ビル・ブルーフォード:イエス/キング・クリムゾン
・Roger Taylor:Queen ~ロジャー・テイラー:クイーン
・Ringo Starr:The Beatles ~リンゴ・スター:ビートルズ
・Don Brewer:Grand Funk Railroad ~ドン・ブリューワー:グランド・ファンク・レイルロード
・Carmine Appice ~カーマイン・アピス:ベック・ボガート&アピス
・Mick Tucker :Sweet ~ミック・タッカー:スウィート
・Levon Helm :The Band ~リィヴォン・ヘルム:ザ・バンド
・Richard Manuel:The Band ~リチャード・マヌウェル:ザ・バンド
・Bill Ward :Black Sabbath ~ビル・ウォード:ブラック・サバス
・Derek Longmuir:Bay City Rolles ~デレク・ロングミュア:ベイ・シティ・ローラーズ
・Charlie Watts:The Rolling Stones ~チャーリー・ワッツ:ローリング・ストーンズ
・Art Tripp:Frank Zappa & The Mothers ~アート・トリップ:フランク・ザッパ & ザ・マザーズ
・Robert Wyatt:Softmachine ~ロバート・ワイアット:ソフト・マシーン
・Neil Peart:Rush ~ニール・ピアート:ラッシュ
・Nick Mason:Pink Floyd ~ニック・メイスン:ピンク・フロイド
・Guy Evans:Van der Graaf Generator ~ガイ・エヴァンス:ヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレイター
・Bill Kreutzmann:Grateful Dead ~ビル・クロイツマン:グレイトフル・デッド
・Mel Taylor:The Ventures ~メル・テイラー:ザ・ベンチャーズ
・John Hartman:The Doobie Brothers ~ジョン・ハートマン:ザ・ドゥービー・ブラザーズ
・Michael Hossack:The Doobie Brothers ~マイケル・ホサック:ザ・ドゥービー・ブラザーズ
・Dennis Thompson:MC5 ~デニス・トンプスン:MC5
・Simon Kirke:Free/Bad Copmany ~サイモン・カーク:フリー/バッド・カンパニー
・John Densmore:The Doors ~ジョン・デンスモア:ザ・ドアーズ
・Michael Shrieve:Santana ~マイケル・シュリーヴ:サンタナ
・Butch Trucks:The Allman Brothers Band ~ブッチ・トラックス:オールマン・ブラザーズ・バンド
・Mick Avory:The Kinks ~ミック・エイヴォリィ:ザ・キンクス
・Jerry Edmonton:Steppenwolf ~ジェリー・エドモントン:ステッペンウルフ
・Peter Criss:KISS ~ピーター・クリス:キッス
・Eric Carr:KISS ~エリック・カー:キッス
・Rick Parnell:Atomic Rooster ~リック・パーネル:アトミック・ルースター
・Clive Bunker:Jethro Tull ~クライヴ・バンカー:ジェスロ・タル
・Des Dyer:Jigsaw ~デス・ダイヤー:ジグソー
・John Martin:Dr. Feelgood ~ジョン・マーティン:ドクター・フィールグッド
・Florian Pilkington-Miksa:Curved Air ~フローリアン・ピルキントン・ミクサ:カーヴド・エア
・Nicko McBrain:Iron Maiden ~ニコゥ・マクブレイン:アイアン・メイデン
・Clive Burr:Iron Maden ~クライヴ・バー:アイアン・メイデン
・Don Powell:Slade ~ドン・パウエル:スレイド
・Dave Holland:Judas Priest ~デイヴ・ホランド:ジューダス・プリースト
・Rudy Lenners:Scorpions ~ルディー・レナーズ:スコーピオンズ
・Floyd Sneed:Three Dog Night ~フロイド・スニード:スリー・ドッグ・ナイト
・Scott Asheton:Iggy & The Stooges ~スコット・アシュトン:イギー & ザ・ストゥージス
・Jerry Nolan:New York Dolls ~ジェリー・ノゥラン:ニュー・ヨーク・ドールズ
・Phil Rudd:AC/DC ~フィル・ラッド:AC/DC
・Tommy Ramone:Ramones ~トミー・ラモーン:ラモーンズ
・Joey Covington:Jefferson Airplane ~ジョーイ・コヴィントン:ジェファーソン・エアプレイン
・Joe Vitale:Joe Walsh/Barnstorm ~ジョー・ヴィターレ:ジョー・ウォルシュ/バーンストーム
・Don Henley:The Eagles ~ドン・ヘンリー:イーグルス
・Bun E. Carlos:Cheap Trick ~バン・E・カルロス:チープ・トリック
・Ric Lee:Ten Years After ~リック・リー:テン・イヤーズ・アフター
・Steve Smith:Journey ~スティーヴ・スミス:ジャーニー
・Phil Collins:Genesis ~フィル・コリンズ:ジェネシス
・Michael Giles:King Crimson ~マイケル・ジャイルズ:キング・クリムゾン
・Jaki Liebezeit:Can ~ヤキ・リーベツァイト:カン
・John Richardson:Rubettes ~ジョン・リチャードソン:ルベッツ
・David Getz:Janis Joplin ~デイヴィッド・ゲッツ:ジャニス・ジョプリン(B.B.&H.C)
・Jamie Oldaker:Eric Clapton's band ~ジェイミー・オールデイカー:エリック・クラプトン・バンド
・Micky Dolenz:The Monkees ~ミッキー・ドレンツ:ザ・モンキーズ
・Mick Fleetwood:Fleetwood Mack ~ミック・フリートウッド:フリートウッドマック
・PIETER VOOGT:Ekseption ~ピーター・フォークト:エクセプション
・Joey Kramer:Aerosmith ~ジョーイ・クレイマー:エアロスミス
・Bobby Torello:Johnny Winter ~ボビー・トレロ:ジョニー・ウィンター
・Denny Seiwell:Paul McCartney & Wings ~デニー・サイウェル:ポール・マッカートニー&ウイングス
・Pierre Van Der Linden:Trace ~ピエール・ファン・デル・リンデン:トレース
・Charlie Hall:The War on Drugs ~チャーリー・ホール:ザ・ウォ-・オン・ドラッグス
・Phil Taylor:Motörhead ~フィル・テイラー:モーターヘッド
・Twink:The Pikn Fairies ~トゥインク:ザ・ピンク・フェアリーズ
・Pete Phipps:The Glitter Band ~ピート・フィップス:ザ・グリッター・バンド
・Warren Can:Ultravox ~ウォーレン・カン:ウルトラヴォックス
・Alan White:YES ~アラン・ホワイト:イエス
・Graeme Edge:The Moody Blues ~グレアム・エッジ:ザ・ムーディー・ブルーズ
・Loukas Sideras:Aphrodite's Child ~ルカス・シデラス:アフロダイティーズ・チャイルド
・Buddy Rich:Jazz drummer ~バディー・リッチ:ジャズ・ドラマー
・Andrew Cyrill:Jazz drummer ~アンドリュー・シリル:ジャズ・ドラマー
・Dannie Richmond:Jazz drummer ~ダニー・リッチモンド:ジャズ・ドラマー
・Eddie Gladden:Dexter Gordon Quartet ~エディー・グラッデン:デクスター・ゴードン・カルテット
・Mickey Roker:Jazz drummer ~ミッキー・ロゥカー:ジャズ・ドラマー
・”Papa” Jo Jones:Jazz drummer ~”パパ” ジョー・ジョーンズ:ジャズ・ドラマー
・Rufus ”Speedy” Jones:Jazz drummer ~ルーファス ”スピーディー” ジョーンズ:ジャズ・ドラマー
・Joe Morello:Jazz drummer ~ジョー・モレロ:デイヴ・ブルーベック・カルテット
・Roy Haynes:Jazz drummer ~ロイ・ヘインズ:ジャズドラマー
■Artists / Premier 250S Pedal(プレミア250Sを使用したアーティスト)
・Ian Paice: Deep Purple ~イアン・ペイス:ディープ・パープル
・Cozy Powell: Rainbow ~コージー・パウエル:レインボー
・Keith Moon:The Who ~キース・ムーン:ザ・フー
・Rickey Medlocke ~ リッキー・メドロック:レーナード・スキナード
・Bob Burns:Lynyrd Skynyrd ~ボブ・バーンズ:レーナード・スキナード
・Herman Rarebell:Scorpions ~ハーマン・アーベル:スコーピオンズ
・Jack DeJohnette:Miles Davis Group ~ジャック・ディジョネット:マイルス・デイヴィス・グループ
・Elvin Jones:Jazz drummer ~エルヴィン・ジョーンズ:ジャズ・ドラマー
■Artists / Premier 250 Pedal(プレミア250を使用したアーティスト)
・Mitch Mitchell:The Jimi Hendrix Experience ~ミッチ・ミッチェル:ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス
・Mel Taylor:The Ventures ~メル・テイラー:ザ・ベンチャーズ
・Ringo Starr:The Beatles ~リンゴ・スター:ザ・ビートルズ
・Ben Rieley:Jazz Drummer ~ベン・ライリー:ジャズ・ドラマー
■Premier 250S ~プレミア 250S
■Ludwig/W.F.L. SPEED KING PEDAL
■CONTENTS
■Beater Rod ~ビーターロッドの研削
■Chronological table ~仕様年表
■Ludwig History ~ラディック略年表
■『スピードキングがものにできない!』
■Squeak King(キコキコキング) ~ BONZOの「キコキコ」・「キコキコ」を楽しもう
■Name of each part ~各部名称
■Action and Feeling ~操作感
■Usability(使い勝手)
・Hoop spacers ~フープスペーサーの作成
・Sealing caps ~シーリングキャップの脱落防止措置
■Specification(仕様関連)
・Logo on footboard ~「WFL ロゴ」から「Ludwig ロゴ」への変更は1968年か
・2 ribs or 4 ribs ~「2本リブ」から「4本リブ」への増設は1969年か
・Long or Short type Fin ~「ロングフィン」から「ショートフィン」への仕様変更は1974年か
・Non-skid pad ~「滑り止めパッド」の装着は1960年頃~1979年頃までか
・Connecting link ~ 「薄・長リンク」から「厚・短リンク」への仕様変更は1980年頃か
・Irregular type ~イレギュラーな文字タイプは1970年代初期以降、不定期的に製造か
・Black Chicago ~ ブラック仕様:最初期モデル
・Specification ~年代別 各部仕様比較
・Chronological table ~仕様年表
・Disassembly ~分解測定
■その他 ~Pearl #810・Pearl P-3000D Demon Drive
■ラディック略年表(暫定作成)
※「Ludwig」の米国での発音は「ラドゥウィグ」に近い。
※「Ludwig Drums 100th Anniversary」(100周年記念簡略版/3分15秒)
■1900-1940年代
・1909年:『Ludwig & Ludwig Drum Company』、ウィリアム・F・ラディック(兄)とテオボルド・ラディック(弟)の二人により設立(明治42年)。同年、同社初のベィスドラム用ペダルを製造。
・1918年:弟のテオボルド、スペイン風邪(当時全世界的に流行し、死者4000万人以上と言われるインフルエンザ)に罹患し28歳で逝去。
・1930年:ウィリアム、自社『Ludwig & Ludwig』を『CG Conn(CGコーン)』社に売却。
・1937年:ウィリアム、新会社、『WFL Drum Company』をイリノイ州シカゴに設立。シカゴのデイメンアヴェニュー(Damen Avenue)にて製造開始。『WFL』社の製品が『CGコーン』製の『Ludwig』ブランド製品と競合する状況に。
・1938年:息子のウィリアム・F・ラディック・Jrが『WFL社』に入社。同年、スピードキングペダルが誕生(昭和13年)。
・1947年:大戦後初のカタログ表紙にバディー・リッチをフィーチャー。
■1950年代
・1951年:『CGコーン』傘下において、『Ludwig & Ludwig』と『Leedy』が『Leedy & Ludwig』として合併。
・1955年:ウイリアム(初代)、『CGコーン』社より『Ludwig』の名称を買い戻し、『The Ludwig Drum Company』を設立(昭和30年)。
■1960年代
・1964年:ビートルズのリンゴ・スターがエド・サリバン・ショーにてラディック製ドラムを使用し、ラディック社にとって大きな飛躍のための転機となる。同年、スープラフォニックLM400を発表。
・1966年:ラディック社、『Musser Mallet Percussion(マッサー・マレット・パーカッション)』を買収。
・1968年:社名を『Ludwig Industries』に変更。
■1970年代
・1972年:ビスタライトを発表。
・1973年:ウィリアム(初代)、逝去。息子のウィリアム・F・ラディック・Jrが新社長に就任。
■1980年代
・1981年:ウィリアム・F・ラディック・Jr、社長を退任。同年、『Ludwig』社を『Selmer(セルマー)』社に売却。
・1984年:『Ludwig』、設立75周年を迎え、拠点をシカゴからノースカロライナ州のモンローへ移転。
■1990年代
・1999年:設立90周年。同年、『セルマー』社の一員として、『Steinway Pianos(スタインウェイピアノ)』と合併し、ニューヨーク証券取引所に上場。
■2000年代
・2002年:ラディック、『CGコーン』社、および『セルマー』社と合併し再編。
・2008年:ウィリアム・F・ラディック・Jr、逝去。
・2009年:ラディック、設立100周年。
・2014年:スピードキングの生産が終了。
・2019年:ラディック、設立110周年。
・2020年:スピードキングが新型式(L-203)として6年ぶりに復活。
■スピードキングのアルミ部品供給メーカーについて
~「K.D.C.」ロゴと「C.W.M.」ロゴ
・WFL時代から2000年代まで長らくスピードキングの本体フレーム、フットボード、ロッカー等のアルミ製パーツに刻印されてきた「K.D.C.」のロゴマークについて、新たに判明した情報として、これはかつてイリノイ州シカゴにあった1919年に創業した「Krone Die Casting(クロゥン・ダイ・キャスティング)」社のものであるようだ。
・また、1970年頃より十数年間、補充的に製造されていたスピードキングの同アルミパーツに見られる「C.W.M.」のロゴマークについては、1937年に創業後、現在もシカゴ近郊で操業を続けている「Chicago White Metal Casting」(シカゴ・ホワイト・メタル・キャスティング)」社のものであるようだ。現在の企業ロゴを見てわかるとおり、かつての刻印とアルファベットの構成デザインが完全に一致している。
・いずれの社もラディックの下請け企業として、ドラムのラグやスタンド類の各種アルミパーツ、また、各種楽器に使用されるアルミパーツ類の鋳造等を請け負っていたと考えられる。しかしながら、「K.D.C.」社は2000年代半ばについに廃業したようだ。また、「C.W.M.」社については、1984年にノースカロライナ州モンローに拠点を移したラディックとの現在の契約状況は不明である。
(記:2019年10月23日)
■ラディック・スピードキング
・スピードキングは1938年(昭和13年)に産声を上げ、その後、1950年頃に大幅なデザインの変更と改良を受け、基本設計を同じままに2014年までの70余年にわたり製造が継続されてきました。レッド・ツェッペリンのジョン・ボーナムやビートルズのリンゴ・スター、ローリング・ストーンズのチャーリー・ワッツ(2019年現在も使用中)、ザ・バンドのリィヴォン・ヘルム(亡くなる2012年まで使用)、キング・クリムゾンのビル・ブルーフォード、ピンク・フロイドのニック・メイスン、クイーンのロジャー・テイラー、ブラック・サバスのビル・ウォード、イーグルスのドン・ヘンリー、ジェネシスのフィル・コリンズ、ベック・ボガート&アピスのカーマイン・アピス、ジェフ・ベック・グループのコージー・パウエル、スコーピオンズのルディー・レナーズ、AC/DCのフィル・ラッド、アイアン・メイデンのクライヴ・バーとニコ・マクブレイン、さらに、ジャズ界ではドラムの神様、バディー・リッチ、名曲『Take Five』で知られるジョー・モレロをはじめ、ロイ・ヘインズ(2019年現在も使用中)、パパ・ジョー・ジョーンズ、ミッキー・ローカー、エディー・グラッデン等、検証により判明している分では2021年11月5日現在で総勢81名と、特に60年代から70年代にかけて、スピードキングを愛用したロック界やジャズ界における伝説的ドラマー達により歴史的作品や名演が多数生み出されてきました。
■伝説的ドラマーのファンやマニアでいらっしゃる方々、60年代ロックや、深化と多様化を極め、ロック黄金期と呼ばれる70年代ロックに深い思い入れのある方々だけでなく、名機と謳われるスピードキングについて興味を抱かれた方には、本サイトをご覧になって、時代を担ったスピードキングという歴史的なペダルの魅力や味わいの一端に触れていただけたら幸いです。
■スピードキングはダイレクトドライブであるだけでなく、クセのある独特なアクションを特徴とするため、現代では世界的に見てもこのキックペダルを使いこなせるドラマーは極めて少数となりました。入手されてもその制御のしづらさに困惑し、即戦力にもならず、そのため、よほどの覚悟と忍耐、研究と練習の積み重ねとが必要となります。スピードキングを使用した伝説的ドラマー達や70年代ロックに強い思い入れがあって、彼らの担った時代や演奏フィーリングを共有、あるいは追体験したいといった、このペダルに対する深い思い入れを抱ける方、スピードキングの歴史的価値とロマンに共鳴できる方、ヴィンテージ楽器に深い関心を抱いている方でなければ、このペダルと付き合い続けること、使いこなしていくことは大変困難です。中古品の入手を検討されている方は、「名機」という謳い文句に幻惑されることなく、一時の興味や衝動でスピードキングを入手されるのはお控えいただくのが賢明かもしれません。
■尚、使いこなせないという理由でスピードキングを手放そうと現在検討中の方は、一度当サイトの『スピードキングがものにできない!』の記事をご参照ください。スイヴェル(系)奏法の導入により問題が解決する可能性があります。是非お試しください。
■プレミア250S
・また、本サイトにはディープ・パープルのイアン・ペイスやレインボーのコージー・パウエル、ザ・フーのキース・ムーン、レーナード・スキナードのリッキー・メドロック(のちギター)、同じくレーナード・スキナードのボブ・バーンズ、ジャズ界ではジャック・ディジョネットやエルヴィン・ジョーンズらが60~70年代に使用していた「プレミア250S」についても検証記事がございますので、スピードキングや「ロジャース・スウィヴ・オゥ・マティック(Swiv-O-Matic)」とともに「キックペダル御三家」を為したこの歴史的ペダルについても是非ご参照ください。
■補足:画像、動画等により「ロジャース・スウィヴ・オゥ・マティック」を使用したアーティストが何名か判明しています(※現時点で記事化できる時期の見込みは立っていません)。バディー・リッチ、カレン・カーペンター(カーペンターズ)・ミッキー・ドレンツ(モンキーズ)等が「スウィヴ・オゥ・マティック」を使用している時期の画像、もしくは動画が見つかりました。
■2020年1月20日(月)追記
・速報:2020年、ラディックのスピードキングが6年ぶりに復活!
・2014年に生産終了となったラディックのスピードキング(201・L-201)が、その誕生から82年の今年、2020年、従来機の外観と仕様をそのまま踏襲したうえで全面的に改良が加えられ、新型式(L-203)として、ついに復活します!
現地アメリカでの流通は初夏以降となるようで、順次、海外での販売も再開される見込みです。
・60年代、70年代にスピードキングを愛用した多くの伝説的ドラマー達に続き、新たな伝説とロマンを作り上げていくのは、今、この時代と未来を担う新たな世代のドラマー達となることでしょう!
■2016年5月15日追記:スピードキングがものにできない…… !!
・スピードキングが好きで、スピードキングにこだわり続け、何とかこれをものにしようと4年以上使用し続けてきましたが、ダブルストロークの際にどうしてもヒットするタイミングがずれ、これだけ努力してもものにできないのだから、と言っても、もともとレンタルスタジオで週に1回程度しか練習する機会を持てず(仕事の繁忙期には約2か月間練習を休止するので、スタジオでの練習は年間40回程度)、初級ドラマーに毛が生えた程度で中途半端な水準をいつまでも抜け出せないでいる無理もあるわけですが、さすがにもうダメかもしれない、諦めてしまおうか、スピードキングを使用するのはもうやめようかと思うようになりはじめていました。そして、別の機種のペダルを探し始めました。
・ところが、そう思い始めた最近(2016年春)、新たな発見がありました。一つは、純正ビーターの’L-1286’の場合ですが、ビーターのセッティングを最大長にすることで却ってビーターが振りやすくなると感じることです。その後改めてBONZOのビーターのセッティングを調べてみると、別項に検証したとおり、彼もまたビーターを最大長にセッティングしていたことが確認できました。さらに、ビル・ブルーフォードやクイーンのロジャー・テイラーもまたスピードキングのビーター(L1286)を最大長にセッティングしていたことが確認できました。BONZOやロジャー・テイラーの場合、ビッグサイズのバスドラムなのでなるべくヘッドの中央付近にビーターのヒットポイントを近づけるためにそうしているという見方もできますが、それとはまた別に、これまで長くスピードキングと格闘してきて感じられるのは、スピードキング独特の機構や動作と深く関連したビーターのセッティングポイントがこの長さ付近にあるのではないかということです。
※Bruford本人が「ブラフォード」と呼ぶのをやめてほしいと要望しているため、近年は原音に近い表記、「ブルーフォード」が定着しつつある。
■スピードキングの制御練習に「スイヴェル奏法?」を導入。
・新たな発見のもう一つは、スピードキングの機構や動作上、スライド奏法が向かないのではないかということです。スライド奏法と言っても、当方の場合、二打目を大げさに前へスライドさせるような高度なことはできません。ほんのわずか力点(踏み込むポイント)を前方に移動させて連打する程度のものですが、練習不足のせいもあるにせよ、この程度の力点の移動だとテンポが速くなると、どうしても二打目のタイミングが遅れてしまいます。エキスパートドラマーの人たちには奏法の違いはあまり関係無いことだとは思うのですが、ある時、ダブルストロークの際に、二打目の足の力点を前方ではなく、何気なくほんのわずか横にずらす踏み方を試してみたところ、ヒットする際のタイミングのズレがかなり減少するとわかりました。 毎回練習時には、その終盤、PCMレコーダーで録音し、音楽編集ソフト(Soundengine Free)を利用して復習をするのですが、明らかに連打時のズレが減少しています。
・例えば、一打目は通常のヒールアップで踏み込み、二打目はつま先をその位置のまま力点だけを心持ち外側、あるいは内側、つまり左右どちらかにわずかにずらすような踏み方をすると、それだけで踵が横方向に5cm程度回転します。二打目のパワーも減衰しません。キックペダルを使わずとも、今その場で足の動きを確認することができますので、是非試してみてください。この足の動きを現象的に見ると、どうやらこの奏法は「Swivel(スウィヴェル)奏法」のようですが、厳密には何と呼ぶ奏法なのかはわかりません。プロのドラマーに直接尋ねてみる機会も無いことから、当項目では便宜上「スイヴェル奏法」と呼んでおくことにします。
■Swivel technique ~ スィヴェル奏法のわかりやすい基本練習用の動画
・’Ludwig Speed King Pedal’の制御練習に「Swivel 奏法」を試してみることをお勧めします!
・それはさておき、この奏法では「つま先の位置をほとんど変えずに済み」、「踵をレディーポジションに戻す時間も短縮し」、「足裏の力点が踵の回転軸となるため連打がしやすく」、「打撃時の力点の移動が前後ではなく左右であるためペダルのスプリングの強さがほぼ一定となり、高速での連打もしやすく」なります。また、「膝の角度を変えずに足裏の力点と膝とを結ぶ縦軸を固定しやすいため、ペダルの操作が安定」します。さらに、「脚や腰への負担も軽減」され、「演奏時の姿勢も安定する」ため、「逆側の脚でハイハットペダルやバスドラムのペダルを操作しやすい」ようです。連打での安定した操作や打撃タイミングの制御性というのはドラム演奏にとって大きなポイントであり、そうした意味で「Swivel奏法」は非常に合理的な奏法なのではないかと自分には思えます。特にスピードキングには相性の良い奏法なのではないでしょうか。
・まだ練習の途上で奏法が確立していませんが、二打目を「swivel」させながらヒールダウンしたり、二打目を「swivel」させながらわずかに「斜め前方」に力点を移動させたり、あるいは、レディーポジションをフットボーの中心線上に置いたり、左右のどちらかに置いたりする等、奏法のバリエーションも種々あるようです。バスドラムで練習する際には、打面上方にミラーシート等を貼り付けると自分の足の動きを観察しながら練習できるので、一度試してみてください。
■自己流
・「スイヴェル奏法」は上の動画で提示されているとおり、基本練習に関してはある一定の型があるようですが、まだ体系的に確立していない奏法であるためか、2016年現在、ネット記事にも動画サイトにもまともな教則情報が一切存在せず、基本以上の技術については自分で試行錯誤しながら体得していかねばならない難点があります。当方の場合は課題曲『Expresso(GONG
1976年・テンポ125)』に対応するために数種の「基本型」を想定し、それに重点を置いて練習しています。
・例えば、フットペダルの中心線より左側に力点を置く場合を「1」、センターを「2」、右を「3」というように便宜上数字で力点の位置を表すとして、「ドドドッ・ドドドッ」とキックする場合は「1-2-3・1-2-3」、「1-2-3・3-2-1」、「ドッドコ・ドッドコ」というパターンをキックする場合も「1-2-3・1-2-3」、「1-2-3・3-2-1」等、「ドコドッ・ドッドッ」なら、「1-2-3・1-3」、「1-2-3・2-1」、「ドドッド・ドドッド」の場合は「2-3-2・2-3-2」等というように「力点の移し方のパターン」を自分で考えて決め、それに沿って練習しなければなりません。つまり、基本の先はどうしても自己流になってしまうのです。スイヴェル奏法で自在にキックすることを目標としている方は、さまざまな踏み方のパターンを自身で「考案」し、対応力の向上を図るとよいでしょう。
■急がば回れ
・現在、例の「Swivel奏法(?)」で応用力をつける練習に取り組んでいますが、基本練習に限ってもまだまだいろいろと研究する余地がありそうです。スピードキングのスプリングの強さについてもこれまでいろいろ試してきましたが、「Swivel奏法(?)」ではスプリングテンションを「最弱付近」にすると最も踏みやすく感じており(ビーターはもちろん最大長に)、このセッティングで連打の練習に取り組んでいます。この奏法をスピードキングで練習し、応用できるようになれば、いずれビーター長やスプリングテンションもそれにふさわしいセッティングが新たに見えてくるのではないかと考えています。スピードキングを所有してはいるが、ものにできないからそろそろ手放そうかと考えている方は、その前に、以上の観点からもう一度スピードキングの操作、制御について研究に取り組んでみてはいかがでしょう。
・ちなみにBONZOやビル・ブルーフォードが動画の中でスピードキングを踏んでいるシーンを観察すると、通常のスライド奏法で難無くスピードキングを操作していることが確認できます。もしスピードキングのオーナーの方々がスライド奏法で上手く踏めない場合は、一度遠回りをしてスイヴェル奏法に慣れてから再度スライド奏法に立ち戻ることで、スピードキングを操作するうえで今まで気づかなかったポイントについて新たな発見があるはずです。
・私自身の夢は、スピードキングを使用して、いつか課題曲であるGONGの「Expresso(エクスプレッソ)」(♪=125)を叩きこなすことです(練習開始:2010年)。このサイトを通してスピードキングが名機たるに値するキックペダルとして多くの人に再評価してもらえるよう願いつつ、自分自身ももう少しスピードキングと向き合っていきたいと思います。
(この項、記2016年5月15日)
■課題曲:’Expresso’ by GONG(1976)~ロートタムサウンドの魅力が炸裂する名曲
■Gongのアルバム、’Gazeuse!’(1976年)に収録されているジャズロックナンバー、’Expresso(エクスプレッソ)’。この曲を作曲したドラマーのピエール・モーレンは12台のロートタムをそれぞれ音程の低いほうから「Lower
C、Lower F、Lower G、C、G、A♭、B♭、Uppwe C、Upper E♭、Upper F、Upper G、Upper A♭」で音階チューニングを行い、意図されたフレーズ構成によって鮮烈かつダイナミックなロートタムサウンドを炸裂させている。6インチから10インチサイズのロートタムはオープンリムショットによるため、金属的かつ破壊的なサウンドとなっている。ギターは当時GONGのメンバーだったアラン・ホールズワースによる演奏である。
■ドラム&ロートタム:ピエール・モーレン(2005年5月3日逝去)
■ギター:アラン・ホールズワース(2017年4月16日逝去)
■練習セット
・’EXPRESSO’ 仕様。
2018年2月6日(火)撮影。
・REMO ROTOTOM のページ
・LUDWIG LM400 のページ
■BONZOの「キコキコ」
・「(ジョン・ボーナムは)スピード・キング・フットペダルは何か特別に改良していましたか?」「いや、特に何もなかったと思うよ。あのセットは今でも買うことができる。彼はカスタム・メイドでも何でもない、普通の在庫品を叩いていた。」「『イン・スルー・ジ・アウト・ドアー(1979年)』のレコーディングのとき、ペダルがキコキコ音を出すんでスタジオのテクニシャンが油をさそうとしたんだ。するとジョンは、”ダメダメ、そのままにしといてくれ”って言って、キコキコのままレコーディングしたんだよ(笑)。」
※「ウィリアム・F・ラディックⅢ氏へのインタビュー」より~『リズム&ドラム・マガジン』No.28 1989年 秋号 リットーミュージック
※「In Through the Out Door」… 1979年発表。
※Ludwigのスピードキングは2014年春に生産終了となった。
■BONZOのキコキコ~ Squeaking from the pedal
”Led Zeppelin-Since I've Been Loving You" (1970)
・ヘッドフォンの使用を推奨。「Led Zeppelin Ⅲ」(1970年)より。
・スピードキングの「キコキコ」が楽曲に枯れた味わいや渋みを加味し、黒板の表面を爪で引っかいた時に覚える、ぞっわ~と来るあの戦慄に似た快感が静かに心の奥深くにまで染みわたってくるではないか。往年よりスピードキングは別名をして「Squeak King(スクイーク・キング)=キコキコキング」と呼ばれ、多くのドラマー達に親しまれ、愛されてきた。。。。。。(嫌がられてきた?)
・さて、このケースでは実際には「キコキコ」というよりは、むしろ「チューチュー」に近い音に聞こえているが、これはスピードキングから発生している高周波のノイズである。フットボード先端に打ち込まれたスプリングピン(ロールピン)と、それを受けるコネクティングリンクが摩擦し、このノイズを発生する。
・BONZOのこの「キコキコ」はストゥールから発生しているという説もあるが、ストゥールの場合は奏者の体重による金属への強度の圧迫により、むしろ「ギシギシ」に近い、低く重めの硬い音になるのが一般である。また、BONZOのスピードキングの発生しているノイズの音質は、スピードキング実機が発生するノイズと同質の高周波音である。さらに、ドラマーの方であれば実感できると思うが、よく注意して聴くと、リズムを刻むペダルの動作に沿ったパターン的なノイズの発生の仕方をしているのがわかるだろう。
・フットボード先端に打ち込まれたスプリングピン(ロールピン)とコネクティング・リンク(連結バー)が接触する部分の摩擦により高周波のノイズが発生し、それが「チューチュー(キコキコ)」と聞こえる。
・BONZOのスピードキングと同じ「キコキコ」をスピードキングで再現して楽しみたい場合は、まずシルバー塗装されたタイプのスピードキングを入手する。シルバー塗装のスピードキングといっても、50年代製以降のWFLモデルから90年代終盤頃まで続いたLudwigモデルまで幅があるので、当ページの検証記事を参考に目星を付けて入手するとよいだろう。BONZOの場合は一説によればツェッペリン時代にリンゴ・スターが使用したタイプと同じ「W.F.L. ロゴ」のスピードキングも使用していたらしく、熱烈なBONZOファンを自認する諸氏はこの「W.F.L スピードキング」と併せて「Ludwig ロゴ」に変更となった60年代終盤製や70年代初期製等の仕様の異なる複数のスピードキングを買いそろえていく楽しみもある。
・スピードキングを入手したら、コネクティングリンクとフットボードのスプリングピンとが接触する部分の油分をしっかりと除去する。処置はただそれだけだ。踏み始めは「キコキコ」と鳴かなくても暫く踏んでいるうちに自然に鳴くようになるはずだ。その原因については明確ではないが、摩擦による金属部位での高温の発生と膨張、また、スティールの極微細な粉塵が生じること等が関係しているようだ。BONZOがペダルへの注油を拒否した理由、あるいはツェッペリン時代を通して一貫してスピードキングの「キコキコ」を消そうとしなかった理由をあれこれと想像しながら、40年の歳月を超えて蘇る、スピードキングが発生するあの特徴的な「キコキコ」を、BONZOの思いや感性に馳せつつ心豊かに楽しみたい。
※前掲『ウィリアム・F・ラディックⅢ氏へのインタビュー』では、BONZOはラディックと契約する以前からラディック製を使用していたとのことなので、「WFL
スピードキング」も当然所有していたと思われる。
※シルバーに塗装された年代のスピードキングは、当方の所有するものに限っては全て「キコキコ」を発生しますが、コネクティング・リンクの歪み等の理由により個体によっては発生しない場合があるかもしれないので、その点、予めご了承ください。
※「最終型(ブラック塗装)」のスピードキングの場合はフットボード先端のスプリングピンにプラスチック製のブッシュ(bush)が装着されているため、コネクティング・リンク下端から「キコキコ」そのものが発生しません。
※コネクティング・リンクの下端ではなく上端については、「WFLモデル」と60年代終盤に製造されたと推定される「Ludwig ロゴ」のスピードキングついては金属製のブッシュが内部に装着され、さらに製造時よりそこにオイルが注入されているようで、この部位からノイズは発生しないようだ。また、80年代以降の製品に関しては、コネクティングリンク上端内部にプラスチック製のブッシュが装着されているため、やはりこの部分からは「キコキコ」は発生しない。70年代製のスピードキングについては入手後に確認して当記事に反映させる予定。
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■BONZOのウサギちゃん
・『リズム&ドラム・マガジン』No.28(リットー・ミュージック)には、BONZOについてのロバート・プラントのインタビュー記事も掲載されており、彼の次のような発言がある。
「俺(プラント)はツーバスもツインペダルも好きじゃない。ジミ・ヘン(JIimi Hendrix)は、ボンゾの右足はウサギみたいに敏捷だって言ったよ。もし片足でできるのなら、ペダルは2つ要らない。片足でやれることで十分だよ。」「彼がほんとうにノッてプレイしているとき、彼のヘッドフォンには、ドラムの音がとてもよい音でかえってきていて、彼は『キャノン(大砲)!』と叫んでいたものだったよ。あまりに音がよくて素晴らしいキットだったんで、彼にはそれがわかってたのさ。彼はどうキットを扱い、どうチューニングするか、椅子の位置はどうしたらいいか、どの種のバスドラ・ペダルを使うかなど、彼独特の素晴らしい感覚でわかっていたんだ。それらはすべて、彼のなかでバランスがとれていなければならなくて、彼自身がドラム・キットの一部だった。」
※「ボンゾの右足はウサギみたいに敏捷だ」… ジミ・ヘンドリックスがジョン・ボーナムに言った、"Boy, you've got a right foot like a rabbit.(どっひゃ! おめえの右足、ウサギちゃんみたいにぴょんぴょんと軽やかじゃねぇかぁ!)"を指すと思われる。BONZOの敏捷な足さばきと、BONZOに自在にコントロールされるスピードキングの嬉々とした躍動がありありと目に浮かぶ。
■BONZOのウサギちゃん(白ウサギ)
※画像:’Dazed and Confused’ live at MSG,1973’より切り出した。
・動画(28分35秒後)では「BONZOのウサギちゃん(白ウサギ)」とともに、スピードキングのフットボードの一部がほんの一瞬だけ見られる。
■画像の重ね合わせ
・当方の所有するスピードキングをほぼ同じ角度から撮影し、二枚の画像を重ね合わせた。
■スピードキングにしか出せない音色とニュアンスがある。BONZOを慕い、その幻影を追う者は、スピードキングを通して轟いて来るBONZOの叫びに激しく魂を打ち震わす。STARRを慕う者は、花々を自由に、気ままに飛び巡る蝶の、その華麗な羽模様が放つ魔法の輝きに陶然とする。RICHを慕う者は、崇高な次元に存在する何者かのささやきを耳にし、静かに涙する。時代の使命を担ったスピードキングこそが現出でき、スピードキングを操る者にしか感受できない、超人たちそれぞれの特別な世界と魂のバイブレーションである。
※記:2015年12月10日
■主要各部の名称
・1:ロッカーシャフト(Rocker shaft)=弓形回転軸
・2:フットボード(Footboard)
・3:ヒールクランプ(Heel Clamp)
・4:フロアープレート(Floor Plate)
・5:シーリングキャップ(Sealing Cap):P-1227
・6:トウクランプ(Toe Clamp)=フープ固定用クランプ
・7:トウクランプ用蝶ネジ(Toe Clamp Wing Screw):P-1287-A
・8:コネクティングリンク(Connecting Link)=連結バー
・9:ビーター固定用蝶ネジ(Wing Screw):P-2791 ※旧式:P-278
■その他の構成部品
・アジャストメント・スクリュー(adjustment screw):P-1260 ※スプリング調整用ネジ
・コンプレッション・スプリング(Compression Spring):P-1305 ※押しバネ
・プランジャー(Plunger):P-1352-A1 ※棒ピストン。
・ロッカー・カム(Rocker Cam):P-1351-L/P-1351-R ※カム。左右用が別々に有り。
・ボール・ベアリング(Ball Bearing):P-1207
・ヒールクランプ固定用ネジ & ワッシャー(Heel Clamp Assembly):P-1241-A
・ロッカー構成部品一式(Rocker Assembly Complete:P-1203-B ※ロッカー、蝶ネジ、カム、ベアリング、連結バー、スプリングピン等の構成部品一式
・連結バー構成部品一式(Connecting Link & Pin & Bushing):P-1210-A ※連結バー・スプリングピン・プラスチック製円筒管のセット
・トウクランプ構成部品一式(Toe Clamp Assembly Complete with Tension Screw & Pin):P-1206-B
※トウクランプ・蝶ネジ・スプリングピンのセット
・フットボード構成部品一式(Footboard Assembly Complete):P-1204-A ※フットボード・ヒールクランプ・フロアープレートのセット
・ボールベアリング・カム・スプリングピン・シーリングキャップのセット(Bearing Cam Set with Pin and Sealing
Cap for Left and Right Side):PS-1228
※仕様変更によりパーツの型番が異なっている場合があります。
(記:2013年6月18日)
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■ビーターの重量
・Ludwig L1286(フェルト)が約80g、L1287(ウッド)が約90g、Pearl B300F(フェルト)が、ロッド(シャフト)を5mmカットして約79g、B300W(ウッド)が、やはりロッドを5mmカットして約88g。
※同じ重量でもビーターヘッドの形状や質量、重心等が異なれば、ビーターの加速度や返り速度、踏み込み具合もそれぞれ変わってくる。上記重量は実測にもとづくものであり、また、製品ごとの個体差があります。
(この項:記2014年6月13日)
※追記:2015年9月18日
・その後入手した中古スピードキング数台に付属していた’L1286’の重量を計測したところ、ビンテージ品(シカゴ製)2本がそれぞれ83.5g、80.0g、現行品(モンロー製=販売中)3本がそれぞれ83.5g、81.3g、80.0gだった。また、年代による仕様の違いか、ビーターヘッド(フェルト部分)の直径はそれぞれほぼ同じだが、ビンテージ品に現行品との高さが最大で5mmほど高いものがあった。
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■スプリング調整
■スプリング調整
・スピードキングのスプリングの強さの表し方については、当方の場合、スプリングの強さを調整する「止めネジ」が支柱にどれだけねじ込まれているかを、ネジ山が約何本見えるかによって「ヤマ1」「ヤマ2」「ヤマ5」等と呼んでいる。ただし、螺旋なので、厳密な表現は難しい。画像はおよそ「ヤマ4」の位置。
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■フットボードの切削
・フットボードの自重が若干重いためか、レスポンスの鈍さを感じていたため、2014年1月頃、フットボードを若干でも軽量化したら操作性がどうなるかを試してみた。しかしながら、フットボード本体の重量は操作性には関係無いらしく、その違いをはっきりと感じ取ることはできなかった。「ヒールクランプ」をリリースすると、多少フットボードの踏み込みが軽くなるので、初めからこの方法をとるほうが簡便だ。ただ、リリースしたヒールクランプが遊んでと新たなノイズを発生するため、ノイズを消す必要のある場合にはガムテープなどでクランプを固定するなどの措置が別途必要になる。
※ビーターシャフトの切削にも使用した電動ドリル(マキタ MDB-10)に「ディスク砥石」を装着し、中央部を浅くえぐるようにして削り落とした。
※追記:2015年にビンテージ品を入手し、各部を「最終型」と比較したところ、両者の操作性の違いはフットボードの重量そのものによるのではなく、「コンプレッション・スプリング」の特性の違いや「コネクティング・リンク」の長さの違い、フットボード先端の仕様の違い(プラスチックブッシュの有無)等による機構的な特性の違いからくるらしいことがわかった。
(記:2014年4月18日)
■Vintage Ludwig Speed King pedal (Dan Zalac)
★なめらかな操作で無駄な動きがなく、軽快で安定したとてもいい音を出しています。スピードキングの特性を利用して自在に使いこなしています。画像を拡大して観察したところでは、スピードキングは「ショート・フィン仕様(長さは半インチ=12.7mm)」、コネクティングリンクが薄く長めのタイプで、フロアープレート裏面に「Non-skid
pad」が装着されているようにも見えるので、1970年代中・後期(1974~79年製)の仕様である可能性があります。ビーターは純正の’L1286’ではありません。
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■操作性
スピードキングの駆動方式はダイレクトドライブであり、その構造上、遊びが一切無く、操作性にしなやかさがほとんど無い。他の駆動方式が一般の自動車のステアリング感覚とすれば、スピードキングの場合はさしずめレーシングカートのステアリング感覚であり、アシストの不十分なその原初的機構により、ポテンシャルの発揮は奏者の技量に全て委ねられる。一般のペダルを使い慣れている人には、スピードキングの操作感の違い、もっと言うならその使いづらさに困惑し、まるで別次元の道具のように思えてしまうに違いない。ペダルの制御力や奏法、また、スプリングの調整やビーターの長さの調整、打面へのビーターのヒット距離、ストゥールの高さや位置等のセッティング条件を含め、総合的な観点でバランスを計りつつ、自由に制御できるようになるまでに種々の工夫と努力が必要で、そのため、熟練するまでに少なからぬ時間を要してしまうようだ。
踏み心地については、どなたかがネット記事で書かれているように、「ぬるっ…!」とした独特の感触であり、この表現はかなり的確である。「ギッコンバッタン」ならぬ、「ぬるっ(キコ)、どんっ(カチャ)、ぬるっ(キコ)、どんっ(カチャ)」のオールド・ファッションド・アメリカン・レジェンダリー・ベイスドラム・ペダル、なのである(そんなんかい)。線径の太く硬い「押しバネ(コンプレッション・スプリング:P-1305)」や内蔵カム(P-1351-L/R)等による構造的特性にもよるのだろう、軽い、と言えば確かに軽くなめらかな踏み心地ではある。そして、ビーターの返りについては、「どぴゅん(カチャ)、びよよよ~ん」と、やけに速く力強い。ペダルの構造に起因するこのような独特の動作が、他のペダルとは異質な操作性、特徴的な打音などといった点にも現れてくるのだろう。別の見方をすれば、この返り速度を利用した踏み込み方を意識して操作することで、スピードキングのポテンシャルが引き出され、より大きく発揮させることができるようになるのではないか。(ほんまかいな、そうかいな)
ペダル本体を床に固定するための措置を講じないと、奏者によっては操作の安定性が問題になるだろう。「キコキコ、カチャカチャ」といった使用中のノイズも甚だしく、海外では’Squeak
King’(スクゥィーク・キング)、即ち別名を「きこきこキング」とも呼ばれ、大いに愛着を持たれている(ちゃうやろ)。さらに、演奏中にビーターを固定するための蝶ネジが緩んでビーターがずり落ちたり、すっぽ抜けて吹っ飛んだりすることもままある。踏み方が激しい場合に限らず、ビーターのこの「ずり落ち」や「ビータージャンプ」はスピードキングの名物であるがゆえ(要らんわ)、何らかの対策は必要だろう。メモリーロックを利用したり、ビーターシャフトにテープなどを巻いて噛ませたり、あるいはビーターを強力な接着剤で半永久的に固定してしまうという荒技もあるように聞くが(笑かしよるな)、いずれも適切かつ十分な対処とは言えない。さらにまた、ペダルの使用中に円形のシーリングキャップがしばしば脱落し、ついでに紛失してしまう恐れもある。(どんなんやねん)
「こっっの、クソペダル!」という怒声と、「 ガッキャイ~ン(キコ)!」という絶望的な破壊音(投げつけられたスピードキングの悲鳴)が聞こえてきそうだが、かのジミ・ヘンドリックスはボンゾにこう言った。「"Boy,
you've got a right foot like a rabbit."(どっひゃ、おめぇの右足、ウサギちゃんみたいにピョンピョンと軽やかじゃねえかぁ)」。BONZOの敏捷で鮮やかな足さばき、そして、スピードキングが軽やかに歌い、あるいは踊り狂う様がありありと目に浮かぶではないか。BONZOの足もとから伝わったこのスピードキングのフィーリングを別のペダルで味わうことは絶対に不可能なのだ。STARRにしても、TAYLOR、BRUFORDの演奏フィーリングにしても然り。スピードキングが思いのままにならぬのなら、別のペダルを使って譜面どおりのそれっぽい真似事で満足していればよいことだ。スピードキングに真摯な気持ちで向き合おうとしない限り、スピードキングがその歌を聞かせてくれることはないのだから。
昨今普及する高機能を備えたペダル群とは対照的な、キコキコ、カチャカチャとした華奢でシンプルな作り、そして、レトロな趣を醸し出すデザインの素朴な美しさと、独特の打撃音。ビーターの角度は固定され、調整らしいことと言えばスプリングの強さとビーターの長さを変えることくらいしかできないが、それだけに奏者の制御力、技量をシビアに反映してしまう。素朴かつ原初的であるがゆえの美しさと、それに秘められた不変の価値というものがある。古き良き時代において数々の名演と伝説を生み、その幻影を抱きつつ、今もなお美しい輝きを放ち続ける、名機にして不器用なこの不滅のペダルは、これからも多くのドラマー達を魅了し、その心を豊かに彩り続けてゆくに違いない。(ということにしておこう)
■ビーターの脱落防止措置はこちら
■シーリングキャップの脱落防止措置はこちら
※テンションスプリングの強弱調整、ビーターの長さ調整といった一般調整以外に、「ショート・フィン仕様(※後述)」のスピードキングの場合には「フープスペーサー」によるヘッド面との距離調整が推奨される。また、バスドラムのヘッドのテンションを変えることでビーターのリバウンド速度をある程度調整することができる。
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・上画像:先に掲載した’Dan Zalac’’氏が使用しているスピードキングの映像を拡大しました。「ショート・フィン仕様(長さは半インチ=12.7mm)」であり、ラディック製のドラムに装着されているため、ペダルのロッカー末端とヘッド面との距離が「スレスレ」の状態でスピードキングをセッティングすることが可能なようです(’koucrisp’さんの動画と比較してみてください)。ペダルとヘッド面との距離が近く、ビーターの振り角度も狭まり、「ロング・フィン仕様(長さ1インチ=25.4mm)」に比べてペダルの踏み込みがやや浅めになります。
■以上からわかるように、「ロング・フィン仕様」のスピードキングは、フープの幅によっては他社の一般的なペダルより「踏みしろ」がかなり深くなってしまう分、自由で安定した操作が困難になる可能性も考えられる。当然のことながらクローズ奏法もまた困難になる。バスドラムのフロントを高めに持ち上げることである程度ビーターとヘッド面との距離を縮めることが可能だが、ヘッド面とペダルとの適正な距離を考慮せずに、「わざわざフープスペーサーなんか作らなくていいし、こっち買っとけばいいじゃん!」という発想だけで「ロングフィン」タイプのモデルを選択するのは早計かもしれない。ペダルとヘッド面との距離によって当然ビーターの振り角度(踏みこみの深さ)や踏み込み時の力の入れ具合も変わり、つまり操作性や操作感、打音までも変わってくるため、スピードキングの入手を予定している方は、まず二者のフィンの長さの違いをよく踏まえたうえで検討する必要がある。
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■フープスペーサー
「ショート・フィン(実測で約12.5mm)」を仕様としたスピードキングの場合、当方が平常利用しているスタジオのバスドラム(PEARL MCX:22インチ・ウッドフープ:幅40mm)では、フープスペーサーを装着しないとロッカー末端がヘッド表面に接触し、そのまま使用していると幅約1cmの縦スジが数センチにわたって付く。ヘッドを傷めるだけでなく、そのまま使用していればいずれ破れてしまうだろう。また、ヘッドとの摩擦抵抗によって踏み込み操作も不安定になる。操作性や演奏技術の向上のためのみならず、心豊かな音楽生活の中で、愛用する楽器のためのスペーサーの自作という楽しみが一つ増えることになる。大変喜ばしいことだ。(※スペーサーの作成が面倒な場合は、割り箸一本をスペーサー代わりに挟んで調子を見てみてください)
■フープスペーサーの作成方法はこちら
フープの幅はメーカーやモデルによって若干異なり、フープスペーサーの作り出すスペースによってペダルの踏みしろが変わり、踏み心地や打音も変わってくるうえ、スペーサーのタイプによってもペダルの安定性や操作性に大きな違いが出てくる。そのため、スペーサーのサイズを適当に決めるとか、辺りに転がっているものを適当に挟んでスペーサーに代用してしまうとか、そのようなぞんざいな処置で済ませるわけにはいかない。別な見方をすると、スピードキングのオーナーの中には、打面とペダルとの適正な距離を考慮せず、「非実用的な使いづらいセッティング」のまま使用しながらそれに気づかず、それが「スピードキングって、使いづらくってダメじゃ~ん」と敬遠してしまう大きな理由の一つになってしまっているケースが相当あるようだ。
■実用のためにはこうしたいくつかの障害を、自身の努力と工夫によって一つひとつクリアしてゆかねばならない。「買ってすぐに使えま~す!」。。。。。。というわけにはいかないため、スピードキングのこうした「非実用性」には如何とも耐え難いというプレイヤーは少なくないだろう。それでもいつしかスピードキングを踏んで、偉大なプレイヤー達の名演の記憶を呼び覚まし感受したい、あるいは追体験したいと考えるドラマーは少なくないので、スピードキングを新たに入手するうえにおいては、以上の注意点をしっかりと踏まえて検討し、いよいよ入手した暁には、まずバスドラムのヘッド面とペダル本体との距離が適正となるよう調整し、そのうえでスプリングやビーター、ストゥールの高さや位置等の各種セッティング条件やバランスを総合的に見直し、詰めてゆくとよいだろう。スピードキングの実用に向けての工夫、技術的に熟達する努力、そして、スピードキングに真摯に向き合い、忍耐を持って付き合っていく心の余裕と心の豊かさを持ち続けたいものだ。
(記:2014年5月2日)
■スピードキングで超絶片足連打 by 洲合洋一氏
■摩耗の効用
スピードキングは新品時当初はアクションが多少硬く感じられるが、使い込んでいくうちにカムの軸とそこに接触するプランジャー(棒ピストン)の上端部がともに摩耗し、奏者のクセや奏法に徐々にスピードキングの側が馴染んで、そのアクションも徐々に滑らかになってくる。そうしたスピードキングの特性を踏まえ、時間をかけ、気長に付き合っていく心構えが必要だろう。2015年夏に初めて入手したビンテージ・スピードキングは、かなり使い込まれてヒンジ穴がキーホールのように2mmばかり広がってしまっていて、ジャンクに近い外見ではあるのだが、後に入手した程度の良いビンテージ品数台、および最終型とを踏み比べてみて、実はこのボロボロ・スピードキングが最も素直に動作し、操作感が軽快かつ滑らかで、自然とメインで使用するようになってしまっている。
■高機能を備え、高級感と重厚感を漂わせたペダルは各種市販されているが、もう手を広げるのはよそうと思う。デーモンドライブ(P-3000D)ですっかり懲りた。そのせいもあって、その後購入したこのスピードキングには、いっそう思い入れを深くしている。スーパードラマー達への憧憬とその名演の記憶を背負い込んで、常に夢に輝いている、名機スピードキング。練習不足もあって、まだペダルを踏みこなせてはいないが、
「俺の歌を聞かせてやるから、もっともっと俺を踏み込んでくれよ」と言っているように思えて、とにかく踏んでいて楽しい。時間はかかりそうだが、自分の体の一部になり、自分にとっての名機となってくれるまで、このスピードキングを使い続けていきたい。
■「名機」という言葉だけが一人歩きをし、実際に使用してみると、そのクセ、そして制御の難しさのために、実用に耐えない感を抱いたままスピードキングをお役ご免としてしまうケースが、内外を問わず、そして年代を問わず数多あるようだ。スピードキングの名機たる所以となる操作性の優秀さ、制御上のコツ等について具体的に記載した記事がネット上でほとんど見当たらないのもその証左かもしれない。つまり、言い方を変えると、スピードキングを使いこなせるドラマーが、実は現実としてそう多くはいないのではないか、ということだ。使いこなせてこそ「名機」たりうるわけで、そうでなければただのジャンク(がらくた)に過ぎない。
※記:2012年2月
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
■ BONZOが少なくとも1970年代中期までは「ロングフィン仕様のスピードキング」を使用していたことは事実であるが、その細かな仕様となると、「フットボード裏面のリブが2本タイプ」なのか「4本タイプ」なのかまでは判明していない。60年代末にツインバスドラムにセットアップしていた時期があり、予備機も所有していたであろうから、年代、仕様の異なるスピードキングを複数所有していた可能性は高い。
■スピードキングの年代別区分
※1949年頃以前の『旧型スピードキング』については本サイトでの考証から除外している。
①『新型 W.F.L.モデル』(1950年頃~1967年頃):
・ リンゴ・スターが使用したことで知られるモデル。ロングフィン、フットボード裏面にリブが2本、フレーム本体底面に「中空孔」無し、プラットフォーム(フープ受けの台座)裏面にリブ無し、1960年頃よりフロアープレート裏面に「ノンスキッドパッド」装着、ロッカーヘッドの「くびれ」が「直角」、コネクティング・リンクは「薄く長い」タイプで先端は「半円形」、ヒールのヒンジ部に挿通されたロッド末端の直径が約5.3mmと小さい。
②『1968年型=Ludwig CHICAGO ロゴ・最初期型=2本リブ』(1968年頃):
・ロングフィン、フットボード裏面にリブが2本、フレーム本体底面に「中空孔」無し、プラットフォーム(フープ受けの台座)裏面のリブ無し、フロアープレート裏面に「ノンスキッドパッド」装着、ロッカーヘッドの「くびれ」が「ほぼ直角」、コネクティング・リンクは「薄く長い」タイプで先端は「半円形」、ヒールのヒンジ部に挿通されたロッド末端の直径が約5.5mmで小さめ。
※以上の2種は「フットボード裏面のリブが2本」で、かつ「ロングフィン」を仕様的特徴とする。
③『1969年型=4本リブ最初期型』(1969年頃):
・ラディックのカタログで、1971年版(Copyright 1970 by Ludwig Industries)から82年版(Copyright 1982 Ludwig Industries, Inc.)にかけて掲載され続けたスピードキングの商品写真に使用されているモデル。ロングフィン、フットボード裏面にリブが4本、フレーム本体底面の「中空孔」無し、プラットフォーム(フープ受けの台座)裏面のリブ無し、フロアープレート裏面に「ノンスキッドパッド」装着、ロッカーヘッドの「くびれ」が「ほぼ直角」、コネクティング・リンクは「薄く長い」タイプで先端は「半円形」、ヒールのヒンジ部に挿通されたロッド末端の直径は6.2mm、その形状は「ナベ型」ではなく「フラット」で、「Cリング(C型ワッシャー)」を噛ませてある。
④『1970年型」(1970年頃):
・ロングフィン、フットボード裏面にリブが4本、フレーム本体底面の「中空孔」は無い。プラットフォーム(フープ受けの台座)裏面にリブは無い。フロアープレート裏面に「ノンスキッドパッド」装着、ロッカーヘッドの「くびれ」が「滑らか」な形状に変更、コネクティング・リンクは「薄く長い」タイプで先端は「半円形」、ヒールのヒンジ部に挿通されたロッド末端の直径は6.2mm。その形状は「ナベ型」ではなく「フラット」で、「Cリング(C型ワッシャー)」を噛ませてある。
⑤『70年代初期型』(1971年頃~1974年頃):
・ロングフィン、フットボード裏面にリブが4本、フレーム本体底面の「中空孔」は無いものがほとんど。プラットフォーム(フープ受けの台座)裏面にリブの無い個体がほとんどか。フロアープレート裏面に「ノンスキッドパッド」装着、ロッカーヘッドの「くびれ」が「滑らか」、コネクティング・リンクは「薄く長い」タイプで先端は「半円形」、ヒールのヒンジ部に挿通されたロッド末端の直径は約8mm。その形状は80~90年代製と同様の「丸みを帯びたナベ型」。ロッド末端の「Cリング(C型ワッシャー)」は無くなる。
※以上の3種は「フットボード裏面のリブが4本」で、かつ「ロングフィン」を仕様的特徴とする。
※「70年代初期型」は現物を未入手のため、主に画像情報に基づく。入手後に情報を反映します。
⑥『70年代中・後期製』(1974年頃~1979年頃):
・ショートフィン、フットボード裏面にリブが4本、フレーム本体底面に「中空孔」が設けられたものがほとんど、プラットフォーム(フープ受けの台座)裏面にリブ有り、フロアープレート裏面に「ノンスキッドパッド」装着、ロッカーヘッドの「くびれ」が「滑らか」、コネクティング・リンクは「薄く長い」タイプで先端は「半円形」、ヒールのヒンジ部に挿通されたロッド末端の直径は約8mmか。その形状は80~90年代製と同様の『丸みを帯びたナベ形』。
※さらに年代により細部に仕様の違いがありうる。
※以上の6種は「コネクティングリンク」が「薄く・長い」仕様を特徴とし、以下の2種は「コネクティングリンク」が「厚く・短い」仕様を特徴とする。
※「70年代中・後期型」は現物を未入手のため、主に画像情報に基づく。入手後に情報を反映します。
⑦『80~90年代型』(1980年頃?~1990年代終盤?) :
・ショートフィン、フットボード裏面にリブが4本、フレーム本体底面の「中空孔」有り、プラットフォーム(フープ受けの台座)裏面にリブ有り、フロアープレート裏面に「ノンスキッドパッド」無し、ロッカーヘッドの「くびれ」が「滑らか」、コネクティング・リンクは「厚く短い」タイプで、先端は「直線形」、ヒールのヒンジ部に挿通されたロッド末端の直径は約8mmか。その形状は「丸みを帯びたナベ型」。
※さらに年代により細部にも仕様の違い有り。
※以上の7種は本体が「シルバー」に塗装されている点で共通している。
⑧『最終型』(90年代終盤?~2014年):
・本体の塗装がこれまでのシルバーからブラックに変更され、「最終型」の仕様となる。ショートフィン、フットボード裏面にリブが4本、フレーム本体底面の「中空孔」有り、プラットフォーム(フープ受けの台座)裏面にリブ有り、フロアープレート裏面に「ノンスキッドパッド」無し、ロッカーシャフト全体のシェイプが特に後期は「かなり滑らか」、コネクティング・リンクは「厚く短い」タイプで、先端は「直線形」、ロッドエンドの直径が約5.9mm(形状が整っている)。
※さらに年代により細部に仕様の違いがある。例えば、当方の所有する「最終型」の一台には「ロッカーカム」に「フランジ」が付いていない。
■「ウィリアム・F・ラディックⅢ氏」によれば、BONZOはラディック社と契約する以前からラディック製機材を使用していたとのことなので、当然「W.F.L ロゴのスピードキング」も所有していた可能性が高い。熱烈なBONZOマニアを自認する諸氏は、60年代後半から70年代初期にかけての仕様の異なる複数のスピードキング、少なくとも①、②、③、④、⑤の全モデルを買い揃えていく新たな楽しみができることになる。誠に喜ばしいことであるに違いない!
※「W.F.L. スピードキング」と1968年頃に製造されたと推定される「Ludwig スピードキング最初期型」はともにフットボード裏面に設けられたリブが2本であるが、4本リブ仕様のフットボードに比べてアクションが一段軽くなる。パワフルな演奏には4本リブタイプのほうが向くが、2本リブタイプ、4本リブタイプともに速い連打ができるようになるには相当な訓練が必要。
※BONZOが1976年頃以降に使用していたスピードキングの仕様については、現在調査中(画像がどうしても見つからない)。
※スピードキングの本体がブラックに塗装された「Ludwig スピードキング・最終型」が販売されはじめた年が特定できる資料、情報をお持ちの方は是非こちらまでご連絡ください。また、名機「スピードキング」に関する情報を後の世代にまで永く伝えていくため、スピードキングに関する情報をお持ちの方は是非ご連絡くださいませ。
※この項、記2016年5月15日
■作成中
・1972~73年か。
・ビル・ブルーフォードとスピードキングが明瞭に写った写真
■Double exposure ~ 画像の重ね合わせ
・画像作成中!
■おまけ:ビル・ブルーフォードはロートタムの愛用者
・ビル・ブルーフォードは70年代からロートタムを使用していたアーティストの一人。
・ビル・ブルーフォードのロートタム
■REMO ロートタムのページはこちら
■Ludwig LM400のページはこちら
(記:2016年11月)
・’I'm in love with my car’ by QUEEN’ ~1979年、ロンドンでのライブ動画より。ロジャー・テイラーは70年代からロートタムを使用していたアーティストの一人。
■REMO ロートタムのページはこちら
■Ludwig LM400のページはこちら
(記:2016年4月)
■Premier 250S
・Premier 250S
※「Premier 1976-77年版カタログ」より
(カタログは1977年に当方が入手したもの)
・「Premier 1976-77年版カタログ」の「250S」の説明欄には以下のようにある。
「Fast, tough, easy action.The reasons for its popularity both abroad and
at home will be obvious the minute you try one. Complete with 2-way leather
and lambswool beater and finished in durable metalic paint with chrome
plated trim. Folds in one movement. *Dual ballraces;hardened steel, frictionless.
*Completely dustproof *Wide space between posts *Lags, quick-action thumb-screw
for beater adjustment」(Premier 1976-77 catalog)
※各年代のカタログ内容については’DRUMARCHIVE.COM’で確認するとよい。
■Premier 250S
・2015年12月に入手した「Premier 250S」。製造国だけあって、このペダルはイギリスにタマ数が多いようだ。
■March 7,1969 ~Premier 250S Pedal of Ian Paice
・上画像:ディープ・パープル、1969年3月7日に撮影された第一期メンバーによるロンドンでのライブ画像より一部を拡大した。フットボードを最大限に踏み込んでいるためにフロアーの固定バー(Fixed
stay)とフットボードとが一体になって見えているが、バーの形状やフットボード(Vinyl-moulded steel foot plate)の黒っぽい色合い等の特徴が「Premier 250S」に酷似している。
※元画像にはメンバーとしてイアン・ギランやロジャー・グローバーがクレジットされているが、被写体の人物は当人達ではなくロッド・エバンスとニック・シンパーであるため、誤記載である。
※第一期メンバー:ロッド・エバンス(ボーカル)、ニック・シンパー(ベースギター)、リッチー・ブラックモア(ギター)、ジョン・ロード(キーボート)、イアン・ペイス(ドラム)
※ロッド・エバンス(ボーカル)、ニック・シンパー(ベースギター)はこの時期、1969年3月頃にメンバー間の意見対立からバンドを解雇される。
■Double exposure ~ 画像の重ね合わせ ~Ian Paice's Premier 250S Pedal
・当方の所有する「Premier 250S」をゴム紐を使用してフットボードが踏み込まれた状態に固定し、ほぼ同角度から撮影したうえで二枚の画像を重ね合わせた。フットボード固定バー(Fixed
stay)全体の形状、ヒール部の機構や形状、フットボードの形状が「Premier 250S」とほぼ完全に一致する。
■March 7,1969 ~Ian Paice's Premier 250S Pedal
・同日(1969年3月7日)に撮影された別角度からの画像より一部を拡大。「Premier 250S」の左側のシーリング・キャップが一部見えている。
■Double exposure ~ 画像の重ね合わせ ~Ian Paice's Premier 250S Pedal
・画像の重ね合わせを行ったところ、フレーム上部の様子やスプリングの位置、ヒール部等、各部の様子がよくわかる。
■July 14,1970 ~Premier 250S Pedal of Ian Paice
・上画像:第二期ディープパープル、1970年7月14日に収録されたイギリスの’Granada TV’でのライブ映像より一部を静止画として切り出し、拡大した。切り出した位置は、演奏曲である’Improvisation/Mandrake Root’での約2分20秒後。
・わずかにヒール部分だけであるが、その機構や形状、色合い等が「Premer 250S」に酷似している。右側に見えるのはリッチー・ブラックモアの左手とギターのネックである。
※第二期メンバー:イアン・ギラン(ボーカル)、ロジャー・グローバー(ベースギター)、リッチー・ブラックモア(ギター)、ジョン・ロード(キーボート)、イアン・ペイス(ドラム)
■Double exposure ~ 画像の重ね合わせ ~Ian Paice's Premier 250S Pedal
・このキックペダルも「Premier 250S」で間違いないだろう。
■July 14,1970 ~Ian Paice's Premier 250S Pedal
・’Improvisation/Mandrake Root’より。プレミア250Sを使用してのイアン・ペイスの演奏。
■December 1,1974 ~Ian Paice's Premier 250S Pedal
上画像:1974年12月1日に撮影された第三期ディープ・パープルによるライブ時の画像から一部を拡大した。ヒール部の機構や形状が「Premier 250S」と酷似する。
※第三期メンバー:デビッド・カバーデイル(ボーカル)、グレン・ヒューズ(ベースギター)、リッチー・ブラックモア(ギター)、ジョン・ロード(キーボート)、イアン・ペイス(ドラム)
■Double exposure ~ 画像の重ね合わせ ~Ian Paice's Premier 250S Pedal
・フットボード固定バー(Fixed stay)の形状、ヒール部の機構や形状が「Premier 250S」とほぼ完全に一致する。
■December 5,1974 ~Ian Paice's Premier 250S Pedal
・上画像:1974年12月5日に撮影された、第三期ディープパープルのステージ写真から。ペイスによって蹴り倒されたバスドラムに「プレミア250S」が装着されている。
・「Premier 250S」にはフットボードのヒール部表面にリベットが一つ打たれた仕様と打たれていない仕様がある。厳密に何年からリベットが打たれるようになったのかその時期は判明していないが、少なくとも70年代に製造されたほとんどの「250S」にはリベットが打たれているようだ。
■December 5,1974 ~Ian Paice's Premier 250S Pedal
・撮影:1974年12月5日。
■December 5,1974 ~Ian Paice's Premier 250S Pedal
・撮影:1974年12月5日。
・プレミア製のビーターだと思われるが、最大長でセッティングされていることがわかる。
■February,1975 ~Ian Paice's Premier 250S Pedal
・上画像:1975年2月の第三期ディープ・パープルのライブ画像から一部を拡大した。フットボードのヒール部表面の色合いや形状、機構等が「Premier 250S」と酷似している。
■Double exposure ~ 画像の重ね合わせ ~Ian Paice's Premier 250S Pedal
・フットボードのヒール部のや形状、ヒンジ部のピンの位置、固定バー(Fixed stay)の形状等がほぼ完全に一致する。イアン・ペイスが1975年2月の時点で使用していたキックペダルは「Premier 250S」で間違いないだろう。
・ちなみにイアン・ペイスは身長が約170cmと小柄なため、当時はよく上げ底靴を履いていた。
※リッチー・ブラックモアはこの後4月にディープ・パープルから脱退する。
■December 15,1975 ~Ian Paice's Premier 250S Pedal
・1975年12月、日本武道館での撮影。この公演でのディープ・パープルは、トミーボーリン、グレン・ヒューズ、デイヴィド・カヴァデイル、ジョン・ロード、イアン・ペイスを擁する第4期の布陣である。
・『プレミア250S』のフットボード上面に装着されている、黒いビニル製のモールドカバーが写っている。また、そのすぐ下には『プレミア250S』の「固定バー(Fixed stay)」もわずかに見えている。
※画像の重ね合わせは後日!
■December 15,1975 ~Ian Paice's Premier 250S Pedal
・1975年12月15日、ディープ・パープル(第四期)の日本武道館での公演で『プレミア250S』を使用して’BURN’を演奏するイアン・ペイス。
・ディープ・パープルは翌1976年7月24日に解散を正式発表する。また、同年12月4日にはギタリストのトミー・ボーリンが麻薬の過剰摂取のため25歳の若さで急逝する。
■残念ながらこれまでに断片的な情報しか得られてはいないが、「イアン・ペイスは少なくとも1969年3月から1975年12月までの7年近く、ディープ・パープルの第1期から第4期にかけて一貫してプレミア250Sを使用していた」ことはほぼ明白である。そして、「Speed King」「Fireball」「Highway Star」「Smoke on the water」「Burn」「Mistreated」…
イアン・ペイスによる数々の名演が、この「Premier 250S」によって生み出されたのだ。
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■March 1,1981(WHITESNAKE period)
・上画像:1981年3月1日、'Whitesnake'時代のイアンペイスを撮影した写真を一部拡大した。キックペダルのシルエットから推察するに、機種は「Ludwig #205 Ghost Pedal」であろう。
※元画像のクレジットには「1975年12月1日」と記載されているが、ペイスの風貌、クリアーヘッドを張ったドラムヘッド等の諸状況、また、同じ日の撮影と思われる別ショットの日付から、正しくはホワイトスネイク時代、「1981年3月1日」の撮影と思われる。
■Ludwig #205 Ghost Pedal
・Ludwig #205 Ghost Pedal
※「Ludwig 1980年版カタログ」より
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■Hoop spacers type 1 ~ フープスペーサー・タイプ1
・ラディック社製ドラムのフープ(Ludwig hoop)は幅が広めで、その幅に合わせてスピードキング等のキックペダルも設計されているそうで、それより幅が狭めのフープ(Narrow
hoop)にスピードキングを装着すると、ペダルのロッカー末端がドラムヘッドに接触してしまうため、フープスペーサーの装着が推奨される。
※当方では以前は次項で紹介した「フープスぺーサー・タイプ2」を使用してきたが、2015年10月以降は「タイプ1」を使用している。
※フープスペーサーの作成が面倒な場合は、まずは「割り箸一本」をフープとペダルとの間に挟んで調子を見てみてください。
■Ludwig製フープスペーサー
※Ludwigの1980年版カタログ(Copyright 1978 by Ludwig Industry)によれば、当時オプション品として「BASS
DRUM HOOP SPACERS」なるものが販売されていたようだ。商品説明には「For bass drums with narrow hoops it becomes necessary to position pedal
1/16" back from drum head to allow swing-clearance between rocker
shaft and head. To accomplish this, we provide rubber hoop spacers with
split pins which can be attached to the Speed King Pedal as illustrated.」とあり、つまり、「幅の狭いフープにスピードキングを装着する場合、ビーターを振るためのクリアランスの確保には16分の1インチ分、スピードキングを後退させて設置する必要がある」ということだ。ただ、「16分の1インチ」というと、わずか「1.59mm」の長さであり、カタログに掲載されたイラスト内の点線相互の間隔とは印象的に大きく異なるため、イラストはあくまで「概念図」として見るべきなのかもしれない。イラストに画かれた「ショート・フィン(実測で約12.5mm)」の長さをもとにこの間隔を推測すると、7~8mmほどになるだろう。また、逆にもし約2mm程度のスペーサーを装着してもかなり薄いため、バスドラムのフロントを持ち上げる高さによってはやはりロッカー末端がヘッドに接触する場合があり、実用にならない。これまでに現物の画像を確認したこともなく、どうにもこの商品の実体がよく掴めない。
※DRUMARCHIVE.COM様に画像の掲載許可をお願いしました。(2015年10月5日)
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■Hoop Spacers Ludwig type?
・Ludwig のカタログに掲載された「フープスペーサー」のイラストを参考に形状を推測して作成してみた(こんな感じ?)。スペース長は実用的な範囲にとどめ、約4mmとした。商品説明にある「split
pin」とは「割ピン」のことで、「書類整理専用:割ピン(100個入り・25mm・約300円)」を文具店で入手し、転用した。この程度のスペース幅であればスピードキングでもクローズ奏法が可能。
※ご注意
「ショート・フィン仕様」のビンテージ品の中には左右にあるフィンのうち片側にしか穴が開けられていない仕様のものもあるため、その場合は次項にある「フープスペーサー・タイプ2」を作成してみてはいかがだろう。
■作成法
・当方では平常利用しているスタジオに備え付けのドラム(PEARL MCX:22インチ・ウッドフープ:幅40mm)の場合、スピードキングのコネクティングリンク上部のロッカー末端がドラムヘッドに接触してしまうため、「4mm用フープスペーサー・タイプ1」をスピードキングに装着して使用している。
・因みに「PEARL MCX:22インチ・ウッドフープ:幅40mm」の場合、フープのエッジからヘッド面までの距離は「約32mm(ヘッドのテンションによって若干変動する)」、スピードキングのショートフィンの幅が「約12.5mm」、そして、それに「4mm」のスペーサーを装着すると、ヘッド面からペダルのポストまでの距離は「48.5mm」となる。ちなみに「バスドラムのフロントを持ち上げる高さ」が変わると、ロッカー末端とヘッド面との距離も若干変動する。
■設計図
■作成手順
・ゴム板を用意し、「縦17mm、横14mm、高さ15mm」のサイコロ状に切り出す。
・ゴム表面へのライン等の書き込みは極細の油性マジックペンを使用するとよい。
・中心の溝の切り出し方… 溝の最奥部付近まではカッターでざっくりと切り出した後、紙やすり(60番前後)を二つに折り、その間に定規を挟んで持ち、「サンダー」代わりにして切れ込みの最奥部を整形する。「フィン」の先端部の形状どおりのきれいな曲面にする必要はないが、スペーサー二個ともに同じスペース長となるよう調整する必要がある。
・割りピンを通す穴は錐(きり)を使用して開ける。反対面の穴の位置がずれてしまわないよう注意して作業すること。
・スペーサー全体の形状を微調整する場合はカッターを使用せず、紙やすり(100番前後)を作業台の上に置き、そこにスペーサーを押し付けるようにしてこすり、整形するとよい。ただし、きれいな平面を出すのは難しい。
・上画像:粗めの紙やすり(60番前後)を二つ折りし、その間に定規を挟んでサンダー代わりとし、スピードキングのフィンが収まるよう切れ込みの最奥部を整形する。きれいな曲面にする必要はないが、スペース長を調整しつつ削る必要がある。
・台座用クッション:厚さ1mmのゴムシートを「幅21×奥行き26mm」程度の大きさにカットし、両面テープで台座(フープ受け)に貼り付ける。「台座用クッション」を貼ることで、フープの損傷を防ぎ、蝶ネジの締め付けによるペダル本体の不自然な傾きをある程度抑え、ペダルを安定させるのにも有効。3mm厚のゴム板だとトウクランプとの隙間が狭くなり、フープを噛ませづらくなるのでお勧めしない。尚、ビンテージ品のスピードキングの場合、シルバーの塗装が大変剥げやすいため、あまり強力な粘着力のある両面テープを使用すると、テープを剥がす際に塗装も剥がれてしまう場合がある。ただ、「台座用クッション」を貼らなくても台座部分はいずれフープによって傷が付き、塗装が剥げてしまうものなので、フープの損傷を防ぎ、ペダルの固定を安定させる効用を考量すれば「台座用クッション」を貼っても実用的には決して損は無いだろう。
・両面テープ:両面テープの厚さには一般タイプから極薄タイプまで様々あるが、あまり厚すぎないほうがよい。また、粘着力については強力タイプや超強力タイプは避けたほうがよいだろう。ただ、粘着力が強くなくても、ビンテージ・スピードキングの場合はもともとシルバーの塗装は剥げやすいので念のため。
・カッター:厚手のゴム板は結構固いため、ゴムの切り出しには大型のカッターが必要。刃は新しいものに替える。鋭角研磨刃である「OLFA 特専黒刃(大):LBB10K」がお勧め。カッターマットも入手しておくとよい(100円ショップで入手可)。厚手のゴム板をカッターで切る際には、一度にざっくりと切ってしまおうとせず、ステンレス製の物差し(100円ショップで入手可)を当て、刃を垂直に立てたままカッターを何度かに分けて走らせ、徐々に切っていくほうが綺麗に切れる。ゴムの形状や大きさによって切り方を適宜変えるとよい。
・紙やすり:溝部分の整形には粗めの「60番前後」、スペーサー全体の整形が必要な場合には「100番前後」があると作業も早くなる。
・その他:紙やすりを使用してゴムを整形する際にゴムの粉塵が出るので、防塵マスクを着用するとよい。
※単純な形状にもかかわらず、ゴムの弾力のために直線や直角、平面を正確に切り出すのが困難なため、スペーサーの切り出し、整形、および微調整には結構な手間がかかります。作成を途中で諦めざるをえなくなるケースも考えられますので、作業に自信が持てない方、作業自体が面倒な方は、初めから細かい作業を厭わない知人等に作成を依頼されることをお勧めします。
※スペーサーの作るスペースによってビーターと打面との距離がある程度決まり、ビーターの振り角度を調整することになるので、スペーサーはあまり厚くなりすぎないように調整することをお勧めします。ペダルを装着するフープの幅にもよりますが、制御のしやすさ、脚の疲労度等から言えば、個人的には5mmのスペーサーの使用で一杯いっぱいと感じていおり、スピードキングの場合、ペダルを踏み込んだ際にロッカー末端とヘッド面との間に3~5mm程度の隙間ができるのが一つの基準となるので、まずは「4mm用のスペーサー」を作成することをお勧めします。また、バスドラムのフロントを持ち上げる高さを調整するとロッカーとヘッド面との距離も変わるので、適宜調整しながら、また、スツールの高さや位置等、総合的にバランスを図りながらスピードキングを制御しやすいセッティングを詰めていってください。
■結束バンド(Cable ties)
・上はスペーサーを「結束バンド(100円ショップで入手。80mm・100本入り)」で固定した場合の例。このように「割ピン」以外にも「結束バンド」や「フリーカットワイヤー」「紐」等でスペーサーを固定することが可能。
(タイプ1作成:2015年10月)
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■Hoop Spacers Type 2 ~フープスペーサー・タイプ2
・「ショート・フィン仕様」のビンテージスピードキングの中には左右の「フィン」のうち一方に穴が開けられていない仕様のものがあり、その場合は「フープスペーサー・タイプ1」が装着できないため、こちらの「タイプ2」を使用してみてはいかがだろう。
※フープスペーサーの作成が面倒な場合は、まずは「割り箸一本」をフープとペダルとの間に挟んで調子を見てみてください。
※ご注意
・特にビンテージ・スピードキングは、そのシルバーの塗装が非常に剥がれやすくなっています。当項目でご紹介するフープスペーサーのご使用により、両面テープを剥がす際に塗装も一緒に剥がれてしまう恐れがありますので、実用を優先される方以外の方はこちらでご紹介するフープスペーサーのご使用をお避けください。
■Hoop Spacers Type 2
■4mmスペーサーの作成
・準備するもの
・ゴムブロック:「厚さ20mm」の「ゴムブロック」を1個。(奥行き25mm×幅20mm×高さ13mmに切り出せるゴムブロックであればよい)
・台座用クッション:厚さ1mmのゴムシートを「幅21×奥行き26mm」程度の大きさにカットし、両面テープで台座(フープ受け)に貼り付ける。「台座用クッション」を貼ることで、フープの損傷を防ぎ、蝶ネジの締め付けによるペダル本体の不自然な傾きをある程度抑え、ペダルを安定させるのにも有効。3mm厚のゴム板だとトウクランプとの隙間が狭くなり、フープを噛ませづらくなるのでお勧めしない。尚、ビンテージ品のスピードキングの場合、シルバーの塗装が大変剥げやすいため、あまり強力な粘着力のある両面テープを使用すると、テープを剥がす際に塗装も剥がれてしまう場合がある。ただ、いずれにしても台座部分はフープによっても傷が付き、塗装が剥げてしまうものなので、フープの損傷を防ぎ、ペダルの固定を安定させる意味では「台座用クッション」を貼ったほうがよいだろうと思える。
・両面テープ:両面テープの厚さには一般タイプから極薄タイプまで様々あるが、あまり厚すぎないほうがよい。また、粘着力については強力タイプや超強力タイプは避けたほうがよいだろう。ただ、粘着力が強くなくてもシルバーの塗装は剥げやすいので念のため。
・カッター:厚手のゴム板は結構固いため、ゴムの切り出しには大型のカッターが必要。刃は新しいものに替える。鋭角研磨刃である「OLFA 特専黒刃(大):LBB10K」がお勧め。カッターマットも入手しておくとよい(100円ショップで入手可)。厚手のゴム板をカッターで切る際には、一度にざっくりと切ってしまおうとせず、ステンレス製の物差し(100円ショップで入手可)を当て、刃を垂直に立てたままカッターを何度かに分けて走らせ、徐々に切っていくほうが綺麗に切れる。ゴムの形状や大きさによって切り方を変えるとよい。
・紙やすり:スペーサーの形状を整える際には「100番前後」があると作業も早くなる。
・その他:紙やすりを使用してゴムを整形する際にゴムの粉塵が出るので、防塵マスクを着用するとよい。
■作業上の注意点
※単純な形状にもかかわらず、ゴムの弾力のために直線や直角、平面を正確に切り出すのが困難なため、スペーサーの切り出し、整形、および微調整には結構な手間がかかります。作成を途中で諦めざるをえなくなるケースも考えられますので、作業に自信が持てない方、作業自体が面倒な方は、初めから細かい作業を厭わない知人等に作成を依頼されることをお勧めします。
※スペーサーの作るスペースによってビーターと打面との距離がある程度決まり、ビーターの振り角度を調整することになるので、スペーサーはあまり厚くなりすぎないように調整することをお勧めします。ペダルを装着するフープの幅にもよりますが、制御のしやすさ、脚の疲労度等から言えば、個人的には5mmのスペーサーの使用で一杯いっぱいと感じていおり、スピードキングの場合、ペダルを踏み込んだ際にロッカー末端とヘッド面との間に3~5mm程度の隙間ができるのが一つの基準となるので、まずは「4mm用のスペーサー」を作成することをお勧めします。また、バスドラムのフロントを持ち上げる高さを調整するとロッカーとヘッド面との距離も変わるので、適宜調整しながら、また、スツールの高さや位置等、総合的にバランスを図りながらスピードキングを制御しやすいセッティングを詰めていってください。
■設計図
・厚手のゴム板を上記のサイズに切り出す。
・スペーサーの底部に両面テープを貼り、ペダル本体に接着する。
・センター用スペーサーに貼られた両面テープの厚さ分を念頭に、サイド用スペーサーの全長を微調整するとよい。
※3mm厚や5mm厚のスペーサーを作成する場合は、上図の全長、および「B」の長さを調整して切り出す。
※図のAの面やフープが当たる面など、サイドスペーサーの平面を平滑にする必要のある箇所には、紙やすり(100番前後)を作業台に置き、つまみ持ったスペーサーのほうを紙やすりの上で平行移動しながらこすりつけ、平滑にしていく。
■面取り
・左右それぞれのスペーサーの底部に面取りを行う。カッターで切りづらい場合は紙やすり(100番前後)を作業台の上に置き、そこにスペーサーを押し付けるようにして整形するとよい。
(タイプ2作成:2012年4月)
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■スティールフープへの装着
■ゴムプレート
・スピードキングをパール製のスティールフープ(幅40mm)に装着しようとしたが、フープの内側に溝が走っているため、ペダルの固定ができない。前後左右にずれ動くだけでなく、ペダルのロッカー末端がヘッドの打面に接触する。そこで、DIY店で5mm厚のゴム板を入手し、20×50mmの大きさに切り、適当に面取りし、両面テープで貼り付けた。
・スピードキングのコネクティングリンクとバスドラムのヘッド面との距離が近すぎて接触するので、次項に紹介したフープスペーサーを使用するとよい。フープスペーサーの作成が面倒な場合は、まず試しに割り箸一本をスペーサー代わりに挟んで操作具合を見てみることをお勧めする。
・スタジオでの練習の際、スピードキングは使用に伴う震動によりシーリング・キャップが脱落して紛失する恐れがあるので、その防止措置を採っている。上の画像は「ボンド・水性アクリル充填剤・多用途シール(クリアー)」という商品を、充填したばかりの段階で撮影。
・充填剤の先は「細口ノズル」となっているので、直接シーリングキャップの円周上に盛り、小指の先を上手く使ってはみ出しを除去し、ボリュームを整えるとよい。
・充填時は白いが、乾燥すると透明な軟質プラスチックに硬化する。乾燥後は剥がし取るのも簡単であるが、そのためこの措置は恒久的なものではなく、適宜充填のし直しを行い、ペダルの使用に際してもキャップの脱落が無いか、毎回確認したほうがよい。
・硬化すると充填時より充填剤のボリュームがかなり目減りするため、充填時にはうっすらと塗るより、画像のように多少ぼってりと厚めに盛るほうが、充填剤を塗り直すなどする際に「ペロリ」と剥がしやすくなるので丁度良い。
■硬化後
■シーリング剤
・「セメダイン・高性能シリコーン系充填剤・バスコーク・クリア(半透明)」でも試してみた。乾燥後は完全なクリアではなく半透明の乳白色をしていて、シリコンが短期間でメラメラと剥がれてきて見た目が良くないうえ、塗り直しをする際にはシリコーンがこびりついて剥がし取るのに結構な手間がかかるので、こちらの使用はお勧めしません。
■シーリングキャップの外し方
・シーリングキャップはねじ込み式ではなく、ただ単にフタを被せるようにシリンダーの枠内に押し込んであるだけなので、演奏中の振動が継続すると自然に外れてしまうことがよくあるが、何かの事情により自分でキャップを外す必要がある際には、次の手順で外すとよい。
①予めシーリングキャップの外周に「CRC-5-56(呉工業)」等の潤滑剤を差しておく。
②「一方のポストにタオルを巻き」、「片手でそのポストを持ってフレームをぶら下げる」
③シーリングキャップの直ぐ下辺りの、「ポストの首部分」をプラスチックハンマーかゴムハンマーを使用して暫く叩き続ける。
④固着してキャップが外れない場合は、タオルで保護しながら、時々キャップ表面やカム格納部の外周も軽く叩いて振動を与える。
※タオル等で保護せずに直接叩いたり、シリンダーのエッジ付近を叩いたりすると、フレーム本体が欠損したり塗装が剥がれたりする恐れがあるので十分注意すること。ハンマーは100円ショップで入手できる「プラ&ゴムハンマー」が便利。
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■「Ludwig ロゴ」~1994年版のラディックのカタログより
・ 1994年版(1994 The Selmer Company, Inc)のカタログ写真より一部を拡大した。
・シルバーに塗装された「シカゴ仕様」のスピードキングのフットボードには「Ludwig CHICAGO」のロゴが刻印され、キックペダル全体が黒く塗装された『最終型スピードキング』には「Ludwig MADE IN USA」と刻印されている。上の画像は1994年版(1994 The Selmer Company, Inc)カタログに掲載されたスピードキングの写真を一部拡大したものだが、フットボード上の刻印はもちろん「Ludwig CHICAGO」である。
※同じ写真のシーリングキャップに刻印された文字とビーターヘッドにあるキャップの文字については判読不能だった。
・当方で所有する、1989年に発行された音楽雑誌(冒頭のジョン・ボーナムの記事が掲載された雑誌)には、都内某有名楽器店の広告に「シカゴ仕様」のスピードキングが商品写真として掲載されており、また、Ludwigが1984年に拠点をモンローに移してから10年経った1994年版カタログにもシカゴ時代と同じ仕様のスピードキングが掲載されている事実から、1980年代にはブラックに塗装された「最終型スピードキング」はまだ存在していなかったと断定され、また、「シカゴ仕様のスピードキング」の製造が少なくとも1990年代中期頃までは継続されていたことも断定される。
■当方の所有するスピードキングのフットボード
・当方で所有するスピードキング二種を、ラディックの1994年版カタログに掲載されたスピードキングの写真とほぼ同角度で撮影した。
■Double Exposure ~画像の重ね合わせ
・ブラックに塗装される以前の「シカゴ仕様」のスピードキングにはフットボード表面に「Ludwig MADE IN USA」と刻印された個体は存在しないのだが、念のため上に掲載した1994年版カタログの写真と当方が所有する「シカゴ仕様」のスピードキングの写真とを重ね合わせてみた。「CHICAGO」の「A」の文字部分は判然としないが、それ以外の文字は陰影、文字幅、文字数等がほぼ重なり合う。
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■シーリング・キャップ~1988年版のラディックのカタログより
※上画像:Ludwigの1988年版(Copyright・年次記載無し)カタログより。Ludwig社は1984年にシカゴからモンローに移転したが、1988年版のカタログでは「シーリングキャップ」にまだ「CHICAGO. U.S.A.」が刻印された「スピードキング単体の商品写真」が掲載されている。カタログ写真を確証とすることはできないにせよ、1984年のモンロー移転後も少なくとも数年間はシカゴ時代の仕様をそのまま継続していたようだ。情報が少ないため、「フィン」や「フットボードのロゴ」についての年代同様、「シーリングキャップ」についても明確な仕様変更の年代を特定するのは困難だ。
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■「ブラック塗装の仕様」
・本体が黒く塗装されるようになった「最終型スピードキング」の生産が開始された年代については、現在のところ全く特定されていない。本体がシルバーに塗装された「シカゴ仕様」のスピードキングが掲載されている1994年版カタログに掲載されている商品写真を根拠とすれば、「最終型スピードキング」は少なくともカタログ発行年の前年である1993年の時点ではまだ存在していなかった可能性が高い。
これは別言すると、シルバーに塗装され、かつ「ショート・フィン」を仕様とした、いわゆる「『70年代製ビンテージ・スピードキング』とは、1970年代中期から1990年代中期までの約20年間に製造され続けた製品を指す」ということになり、これには誰しも違和感を覚えずにいられないだろう。ただ、内外のオークション等に出品されている個体を観察すると、「シルバー塗装でショートフィン仕様」のスピードキングが、80年代製や90年代製のものをも含めて「70年代製ビンテージ・スピードキング」として出品される例が散見され、これは、出品者側に「シルバー塗装のスピードキングは60年代製か70年代製」、「フィンが長いほうが60年代製で、短いほうが70年代製」というこれまでの大まかな区分認識が一般化しているためであり、シルバー塗装されているというだけで「(70年代製)ビンテージ・スピードキング」として出品されるタマ数が、特に製造国であるアメリカで異常なほど多い理由もここにある。
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■写真の使い回し(1971年版~1982年版)
・1971年版(Copyright 1970 by Ludwig Industries)と1982年版(Copyright 1982 Ludwig Industries, Inc.)に掲載されたスピードキング単体での商品写真は、元版が同一である。ただし、1982年版では、フロアープレート底部に装着されていた「Non-skid
pad(#2476:滑り止めパッド)」が修正によりカットされている。
■DRUMARCHIVE.COMというカタログサイトにはLudwigが過去に発行したカタログが掲載されているのだが(ただし、掲載されている年次は所々飛んでいる)、「スピードキング単体の商品写真」は1982年版までは「フィン」は「ロング仕様」となっており(1983年版については不明)、「ショート・フィン仕様」のスピードキングが登場するのは1984年版である。両年のカタログに掲載されたこれら「スピードキング単体の商品写真」に基づけば、「フィンの仕様変更は1983年か1984年」ということになるのだが、それではこれまで長らく一般説となってきた「ショート・フィン仕様のスピードキングは1970年代製」という一般認識が崩れ、「ショート・フィン仕様のスピードキングとは1980年代中期以降の製品を指す」となってしまい、従来の認識と大きく矛盾してしまう。
「スピードキングのフィンの幅が狭くなった(フープを深く噛ませるようになった)のは1970年代中期」といった楽器店関係者の証言、また、海外でも一般に同様の認識があることから、Ludwigのカタログに掲載された「スピードキング単体の商品写真」は、その年のスピードキングの仕様を正確に反映しているわけではないという点を念頭に置く必要がある。海外のサイトでも、「Ludwigのカタログに掲載されている写真は過去の写真の使い回しが当たり前」とする認識があり、事実、上に画像を掲載したとおり、1982年版(Copyright 1982 Ludwig Industries, Inc.)に掲載された「スピードキング単体の商品写真」は、実はその11年前の1971年版(Copyright
1970 by Ludwig Industries)に発行されたカタログに掲載された「スピードキング単体の商品写真」と元版が同一のものである。 Ludwigに限らず、一般に楽器メーカーでは特にマイナーチェンジ程度の仕様変更については、わざわざその都度製品の写真を撮影し直して直ちに次版のカタログに反映させるとは限らない側面が現実としてあるからだ。
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■「フィン」の仕様変更年について
・フィンの仕様変更の理由についは諸説あるが、「’Ludwig’製バスドラムのフープが仕様変更によりその幅が広くなり、そのためキックペダルとバスドラムのヘッド面が離れすぎてしまい、操作上の不都合が生じたため」という説が一般であるようだ。そのフープ幅の仕様変更期については現在調査しているところだが、「1960年代後期ではないか」、「1970年前後ではないか」「1970年代前期ではないか」というように証言者によって認識がさまざまに異なっている。
・「Copyright 1978 by Ludwig Industries Printed in U.S.A. All rights reserved」と記載された「1980年版カタログ」の「スピードキング単体の商品写真」の中に「BASS DRUM HOOP SPACERS」という商品が記載されている。この記載によると、フープスペーサーとは「『ラディック製フープ(Ludwig hoop)』より幅の狭い『他社製フープ(Narrow hoop)』にスピードキングを装着する際にスピードキングのロッカーシャフトがバスドラムのヘッドに干渉するのを回避させ、クリアランスを確保するための補助部品」である。
・1980年版のカタログが上記記載にあるとおり「1978年」に制作されたものだとすると、遅くとも1978年にはこの純正「フープスペーサー」の販売が開始されており、ラディック製フープの幅が広く仕様変更されたのもまた、遅くとも1978年だということになる。これは同時に、「フィン」が「ロングタイプ」から「ショートタイプ」に仕様変更されたのもまた1978年以前ということになるのだが、以下、さらにこの点について検証を進めてみた。
※現在1960年代から1970年代に製造されたラディック製バスドラムを所有している方で、フープ幅について情報をお持ちの方は、是非こちらまでご連絡ください。ご協力のほどお願い申し上げます。
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・前項で記したように、ラディックのカタログに掲載された「スピードキング単体の商品写真」は1971年版から1982年版までの足かけ12年間(ただし、Copyright 記載年を基準にすれば1970年から1982年までの足かけ13年間となる)「使い回し」されたものであるため、この写真を年代区分する際の絶対的根拠とすることはできない。そこで、カタログに掲載されている「各種ドラムセットに装着されたスピードキング」の写真を観察したところ、1980年版「総合カタログ」や1975年版「ビスタライトカタログ」に「ショート・フィン仕様のスピードキング」が既に撮影に使用されていることが新たに確認できた。
■1980年版のドラムセットには既に「ショート・フィン仕様」のスピードキングが撮影に使用されている
・Ludwigの1980年版カタログではドラムセットに装着された「ショート・フィン仕様」のスピードキングが撮影に使用されており、それが数枚確認できる。上の画像は「COMBO Ⅱ」というセットの写真を一部拡大したもので、フィンの形状からして「ショート・フィン仕様」であることは疑いない。
・1980年版のカタログには「Copyright 1978 by Ludwig Industries Printed in U.S.A. All rights reserved」と版権記載があり、カタログ制作年が1978年だとすると、遅くとも1978年には「ショートフィン」が存在していたことの確証となる。
■画像の重ね合わせ
・当方のスピードキング(ショート・フィン仕様)をカタログ写真に写っているスピードキングとほぼ同じ角度から撮影し、二枚の画像を重ね合わせた。「ロングフィン仕様」は「ショートフィン仕様」の二倍の長さがあるため、このようにきれいにフィンの形状が重なり合うことはない。1978年にはフィンが確実に「ショート仕様」となっていた確証と見てよいだろう。
■さらに! ショートフィン仕様のスピードキングは1974年には既に存在していた!
・1975年版の「総合カタログ(Copyright 1974 by Ludwig Industries)」に掲載されているドラムセットの写真を確認したところでは、撮影に使用されたのは従前の「ロング・フィン仕様」のスピードキングであるが、別版である1975年版「Vistalite カタログ(Copyright 1975 Ludwig Industries)」には、やや不鮮明ながらも明らかに「ショートフィン仕様」のスピードキングであると判断可能な2枚の写真(上の画像)がドラムセットに装着された状態で掲載されている。
■1975年版「Vistalite カタログ」で確認できるこの「ショートフィンのスピードキング」については、カタログ掲載用の写真が撮影されたのがカタログ発行年と同じ1975年、あるいはその前年中であると仮定しても、遅くとも1974年終盤には既に「ショート・フィン仕様」のスピードキングが存在していたと見ることができ、そうなるとフィンの仕様が変更された年代について、これまでの通説である「1970年代中期」に一致するのだ。 そして、この「ショート・フィン」の仕様は、スピードキングの生産終了を迎える2014年まで、その後およそ40年間続くことになる。
※1975年版「総合カタログ」表紙裏には「Copyright 1974 by Ludwig Industries」と版権記載され、また、1975年版「Vistalite カタログ」の巻末には「Copyright
1975 Ludwig Industries」と記載されている。
※1976年版の「総合カタログ(Copyright 1975 Ludwig Industries)」でも、掲載されているドラムセットに装着されたスピードキングの中に、「ロング・フィン仕様」であれば多少は写っているはずの「フィン」の先端部分がどれにも見られず、また、フープのエッジとスピードキングのポストとの距離からも、撮影に仕様されているスピードキングは「ショート・フィン仕様」ではないかと推察される写真が複数ある。画像が非常に不鮮明なため断定まではできず、ここに引用することができなかったのが残念だ。
■1973年版「Vistalite」カタログより
※1973年版の「総合カタログ(Copyright 1972 by Ludwig Industries)」、及び1973年版「Vistalite カタログ(Copyright 1973 by Ludwig Industries)」に掲載されたドラムセット(NO.993TP)に装着されたスピードキングはいずれも「ロングフィン仕様」となっており、ドラムセットにセッティングされたスピードキングの写真の中にも「ショートフィン仕様」であろうと推定されるスピードキングの写真は一切発見できなかった。また、1974年版のカタログについては、カタログサイト('DRUMARCHIVE.COM')にカタログそのものが掲載されていないため、現在内容を確認できていない。引き続きカタログ現物の入手に努めたい。
※ラディックより「Vistaliteモデル」が初めて紹介されたのは1972年。
※2017年4月28日追記:1975年版の「総合カタログ」を数種観察したところ、「CATALOG NUMBER '75」というバージョンや「CATALOG
NUMBER '75-1」というバージョンがあり、また、やはり1975年版のプライスリストにも「1974年3月1日版」、「1974年7月15日版」等があることがわかった。つまり、1974年3月の時点で1975年版の総合カタログが発行されていたということは、元々1974年版の「総合カタログ」自体が存在しない可能性があるということになる。
※「DRUMARCHIVE.COM」以外に、「Vintage Drum Guide」というサイトに「Vistalite 1974年版カタログ」が掲載されている。この版のカタログには、上記検証に引用した「Vistalite 1975年版カタログ(Copyright 1975 Ludwig Industries)」に掲載されている「Big Beat Outfit」、「Pro Beat Outfit」の計二機種が、元版が同じ写真で掲載されている。ということは、フィンが「ショート仕様」へと変更された年がさらに1年遡り、1973年である可能性が浮かび上がってくるのだが、残念ながらカタログに「Copyright」記載が無く、実際に1974年版のカタログかどうかが確認できていない。
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■フィンの変更年は1974年か
バスドラムのフープ幅の変更に伴う自社製キックペダルの装着、及び操作性の不具合は当然当初より想定されていた事案だろうから、フープ幅の変更時期とフィンの規格変更とは時期的に一致していると見るのが自然だろう。あるいは、フィンの規格変更が後回しになっていたとしても、企画から製造までのプロセスにそう時間はかけていられないはずだ。
さて、「Vistalite カタログ」についてだが、版権記載の無い「1974年版(?)」と、発行年次が明記された「1973年版Copyright
1973 by Ludwig Industries」、及び「1975年版(Copyright 1975 Ludwig Industries」のわずか三種の情報のみに基づいて浮かび上がる事実、推論は以下のとおりとなる。
①ラディックの「Vistalite モデル」の発表は1972年である。(事実)
②「1973年版 Vistalite カタログ(Copyright 1973 by Ludwig Industries)」に掲載されたドラムセットに装着されたスピードキングのフィンは「ロング仕様」である。(事実と考えられる)
③「1975年版 Vistalite カタログ(Copyright 1975 Ludwig Industries)」に掲載されたドラムセットに装着されたスピードキングのフィンは「ショート仕様」である。(事実と考えられる)
④この「1975年版 Vistalite カタログ(Copyright 1975 Ludwig Industries)」に基づくと、「フィン」が「ロング仕様」から「ショート仕様」へと規格が変更されたのは「遅くとも1975年」であるのはほぼ確実である。
⑤「1975年版 Vistalite カタログ(Copyright 1975 Ludwig Industries)」を根拠とした場合、カタログに掲載された「スピードキング(ショートフィン仕様)」が装着されたたドラムセットの写真は、発行年度である「1975年内」に撮影されたか、あるいは「早ければ1974年内」」に撮影された可能性も排除できない。
⑥「1974年版」とされる「Vistalite カタログ」が存在するが、版権記載が無く、発行年度が不明である。
⑦発行年度が確定されないこの「1974年版 Vistalite カタログ」には、「ショートフィン仕様」のスピードキングが装着されたドラムセットが掲載されているが、これは「1975年版
Vistalite カタログ(Copyright 1975 Ludwig Industries)」に掲載された写真と元版が同一である。
⑧規格の変更を行う必要性が認識されてから「具体的な立案、試作、テスト、撮影、一定数の製造」等、販売までに数か月の準備期間が必要である。これは「ショート仕様のフィン」が「誕生した時期」と、その仕様を備えたスピードキングが実際に「市場にリリースされた時期」とに数ヶ月のタイムラグが生じるということだ。
⑨立案から市場へのリリースまでの準備期間を仮に3か月とし、「1975年版 Vistalite カタログ」の発行時期を仮に「1975年中期」とした場合、「遅くとも1975年前期」に「ショートフィン仕様」のスピードキングが既に誕生していた可能性が考えられる。
⑩「1974年版 Vistalite カタログ」が現実に存在するとした場合、その発行は実際に「1974年」である可能性があるが、前年の「1973年内」に発行されていた可能性も排除できない。ラディックのカタログではその年の版が実際に同年に発行されたものもあれば、前年、あるいは前年以前に発行されているケースが実際にあるからだ。ただ、「1973年版
Vistalite カタログ(Copyright 1973 by Ludwig Industries)」が現実に存在することを踏まえると、「1974年版」の発行が「1973年前期」である可能性は低い。
⑪⑩から、「1974年版」が現実に存在するとすれば、その発行は「早ければ1973年中期」、そして、1974年も終盤になってから「1974年版」のカタログが発行されるのは不自然であるため、「遅くとも1974年中期」であろうと考えられる。
⑫⑪から、「1974年版 Vistalite カタログ」が現実に存在し、その発行が「1973年後半から1974年前期」であると仮定した場合、「フィン」が「ロング仕様」から「ショート仕様」へと規格変更された時期は、広くとって「早ければ1973年前期」、「遅くとも1974年中期」と考えられる。
■以上から、スピードキングのフィンが「ロング仕様」から「ショート仕様」へと変更された年代がこれまでの通説に一致し、「1970年代中期」であったと考えられるが、「1974年版 Vistalite カタログ」が現実に存在するかしないかで1年程度の違いが生じるため、その範囲も広がって「早ければ1973年前期」、「遅くとも1975年前期」ではないかと推測される。
ただ、に「『ロングフィン仕様』のスピードキングの生産は少なくとも1973年内のある時期までは続いた」と考えられること、また、「誕生」と「リリース」との期間にあるタイムラグを加味すると、「ショートフィンの登場」を便宜的には「1974年頃」としてよいのではないかと個人的には考えている。
※以上の年代検証は極めて限定的、一方面的な分析によるものであり、当方の錯誤、誤認も十分に有り得るため、あくまで「仮確定」とし、新たな情報が得られ次第、当サイトの記事に反映します。
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■フィンの違いによる年代区分について
ところで、 「Ludwig スピードキング」のビンテージ品については、「ロング・フィン」仕様を「60年代製」、「ショート・フィン」仕様を「70年代製」と、便宜的に「大まかな」区分がなされるのが内外を問わず一般である。しかし、上述したとおり、「フィンの変更年」は1970年代中期(1974年頃)であると見られ、しかも、次項以降で検証するとおり、同じ「ロング・フィン」のスピードキングであっても細部仕様の違いから以下のように分類される。
①『1968年型』:『Ludwig CHICAGO ロゴ・最初期モデル』
・フットボード裏面のリブが2本・ロッカーシャフトのヘッド形状は「ほぼ直角」にくびれている。フープを載せるプラットフォーム裏面にはまだリブが設けられていない。コネクティングリンクは「薄く・長いタイプ」。ロングフィン。ノンスキッドパッド装着。
②『1969年型』:『Ludwig CHICAGO ロゴ・4本リブ最初期型』
・1971年版以降、1982年版までカタログに掲載されていたスピードキングの商品写真に使用されている個体と同一モデル。フットボード裏面のリブが「4本」に変更される。ロッカーシャフトのヘッド形状は「WFLモデル」と同様の形状で、「ほぼ直角」にくびれている。ヒール部ヒンジに挿通されたロッド末端が「平べったタイプ」で、しかも「Cリング=C型ワッシャー」を噛ませてある。フープを載せるプラットフォーム裏面にはまだリブが設けられていない。コネクティングリンクは「薄く・長いタイプ」。ロングフィン。ノンスキッドパッド装着。
③『1970年代初期型』
・1970~74年頃までのモデル。フットボード裏面のリブは4本。ロッカーシャフトのヘッド形状が後の標準形状と同一で「滑らか」。フープを載せるプラットフォーム裏面にはまだリブが設けられていものがほとんどだが、後に設けられるようになる。ヒール部ヒンジに挿通されたロッド末端の形状は80~90年代のものと同様に丸みを帯びた「ナベ型」で、「Cリング=C型ワッシャー」は装着されない。コネクティングリンクは「薄く・長いタイプ」。ロングフィン。ノンスキッドパッド装着。
④『1970年代 中・後期型』
・1974年頃にフィンは「ショートタイプ」へと変更された。フットボード裏面のリブは「4本」。フープを載せるプラットフォーム裏面にリブが設けられた。また、ある時期から本体フレーム底面に『中空孔』が新たに設けられた。コネクティングリンクは1970年代終盤まで続く「薄く・長いタイプ」。ロングフィン。ノンスキッドパッド装着。
以上のように「フィンの長さ」だけを基準に「60年代製」と「70年代製」とに区分するのは正確な判断とは言えないことがわかる。
※DRUMARCHIVE.COM様に画像の掲載許可をお願いしました。(2015年10月5日)
※追記・訂正:随時
※記:2015年10月
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■おまけ
・ラディックの1971年版(Copyright 1970 by Ludwig Industries)頃以降、1982年版(Copyright 1982, Ludwig Industries)頃までのカタログに掲載されているスピードキング単体の商品写真は元版が同一のものであるが、印刷状態によるためか、特に1980年版ではコネクティングリンク下端とトウクランプとを「糸」か「テグス」で結んであるのがはっきりと見える。これは恐らく、カタログ写真撮影時にスピードキングの姿容を整えるべくビーターのアングルを調整するための措置だったと思われる。実際にはスピードキングのビーターはニュートラルポジションではこの写真のように高く立ち上がることはなく、もっと深めに奏者側に傾いている。ビーターが手前に倒れかかっているより立ち上がった写真のほうがペダルの動的な印象が強まり、姿容も美しく見せる効果があるのだろう。
・1981年版(Copyright 1981 by Ludwig Industries)のカタログにはフットボード上の’SPEED KING’の文字の、特に「’S’と’G’の形状がイレギュラーなタイプ」の個体が掲載されている。’S’の文字は通常より縦長で、「ニョロッとしたヘビのような印象」を与え、’G’の文字もまた通常より縦長で、トウモロコシのような「頭がとがり気味」の形状をしており、いずれもWFL時代のロゴ文字に近似したデザインである。また、文字それぞれの間隔が通常より若干空き気味であるため、’D’と’K’の間隔がかなり狭くなっている。さらに、文字パターンだけでなく、各所で細部がレギュラータイプとわずかに異なっている。
■イレギュラーなタイプは1970年頃以降、補充的に製造されたか
・別項にも記載したが、「Non-skid pad(滑り止めパッド)」がフロアープレート底面に標準仕様として装着されていたのは1960年頃から1980年頃までの約20年間であったようで、また、コネクティングリンクが「薄く・長いタイプ」から「厚く・短いタイプ」に仕様変更されたのも1980年頃であるようだ。1981年版のカタログに掲載されたこの「イレギュラーな文字タイプ」のスピードキングを観察すると、フロアープレート底面に「Non-skid pad」が装着されておらず、コネクティングリンクは新仕様の「厚く・短いタイプ」となっており、つまり「80~90年代仕様」と同一である。
現在、中古市場に流通しているイレギュラータイプのスピードキングのサンプル画像を収集中であるが(2017年11月19日現在、83台分)、これを観察した限りでは、この「イレギュラーな文字タイプ」のスピードキングには、フロアープレート底面に「Non-skid pad」が貼られ、コネクティングリンクが「薄く・長いタイプ」のもの、つまり「70年代型」のものと、「Non-skid pad」が貼られず、コネクティングリンクが「厚く・短いタイプ」、つまり「80~90年代型」の二種を確認できる。
1968年頃の製造と推定される「Ludwig ロゴの最初期型スピードキング」にはこのイレギュラーな文字パターンは1台も発見できていないことから、恐らくこのタイプのスピードキングは1970年頃から生産調整か何かの理由により長約10数年にわたって補充的にに生産されていたということになるのだろう。
■イレギュラータイプのスピードキング
・上の画像で左側の個体は2017年5月に入手した「イレギュラー」な仕様のスピードキング。「フットボードに刻印された「SPEED KING」の文字デザインが「レギュラータイプ」のスピードキングのそれと異なっている。
・「イレギュラータイプ」と「レギュラータイプ」の現物双方をよく比較してみると、「SPEED KING」の文字パターン以外にも各所に異なった点が多々あることがわかった。
■フットボード裏面
・フットボード裏面については、リブや外枠の厚みが「レギュラータイプ」に比べて「薄い」という点が挙げられる。ただ、フロアープレートを含めてのフットボード全体の総重量はほとんど同じであり、個体差の域を出ない。
■刻印の違い
・「イレギュラータイプ」には「C」の中に「W」と「M」をあしらったロゴが刻印され、「レギュラータイプ」には「矢印」の中に「K」「D」「C」をあしらったロゴが刻印されている。
※2019年10月22日(火)追記
・「K.D.C.」ロゴと「C.W.M.」ロゴについて
・WFL時代から2000年代まで長らくスピードキングの本体フレーム、フットボード、ロッカー等のアルミ製パーツに刻印されてきた「K.D.C.」のロゴマークについて、新たに判明した情報として、これはかつてイリノイ州シカゴにあった「Krone Die Casting(クロゥン・ダイ・キャスティング)」社のものであるようだ。また、1970年頃より十数年間、補充的に製造されていたスピードキングの同アルミパーツに見られる「C.W.M.」のロゴマークについては、1937年に創業後、現在もシカゴ近郊で操業を続けている「Chicago White Metal Casting」(シカゴ・ホワイト・メタル・キャスティング)」社のものであるようだ。現在の企業ロゴを見てわかるとおり、かつての刻印とアルファベットの構成デザインが完全に一致している。いずれの社もラディックの下請け企業として、ドラムのラグ等の各種アルミパーツ、また、各種楽器に使用されるアルミパーツ類の鋳造を請け負っていたと考えられる。しかしながら、「K.D.C.」社は2000年代についに廃業したようで、「C.W.M.」社についても、1984年にノースカロライナ州モンローに拠点を移したラディックとの現在の契約状況は不明である。
■ヒールクランプの刻印
・ヒールクランプにもそれぞれ二種の異なったロゴが刻印されている。
■本体フレーム底面の刻印
・本体フレーム底面に刻印されたロゴもまたそれぞれ二種で異なっている。
・リブの厚みは「レギュラータイプ」より「イレギュラータイプ」のほうが若干薄くなっている。
・本体フレームポストに格納されている「コンプレッション・スプリング(押しバネ)」の強さを調整するための「止めネジ」をねじ込む周囲の幅が、「イレギュラータイプ」のほうが若干大きめとなっている。
・「中空孔」については少なくとも1970年代の中期以降の製品には必ず設けられているようなので、1970年代初期のいずれかの時期に設けられるようになった可能性がある。この点については現在調査中。
※2018年2月10日(日)追記:「中空孔」は1973年頃の個体から見られるようで、さらに調査を継続します。
■ロッカーシャフトの裏側
・「イレギュラータイプ」のロッカーシャフトの裏側のロゴもまた「W.M.C」となっている。
■全体写真
・当方で所有するイレギュラータイプの特徴:
①コネクティング・リンクが薄く長い(1970年代末までの仕様)
②ロングフィン仕様(1973年頃までの仕様)
③本体フレーム底面に「中空孔」が無い(1970年代初期? までの仕様)
④フットボード裏面のリブが4本(1969年頃以降の仕様)
⑤プラットフォーム(フープ台)裏面にリブが有る(1970年代初期? 以降の仕様)
⑥「Non-skid pad」を装着(1960年頃~1970年代末までの仕様)
⑦コンプレッション・スプリングの巻き数が27(1990年代以前の仕様)
⑧ベアリングがハーフオープンタイプ(1980年代中期? 以前の仕様)
⑨フットボードのヒール部のロッド末端がナベ型に処理(1970年代初期? 以降の仕様)
⑩本体フレームポスト内、及びカム格納部に「肌色をしたコンパウンド状の潤滑剤」が固形化していた。これは「W.F.L スピードキング」、および「推定1968年製・最初期型スピードキング」に注入されていた潤滑剤と同種のもの。「70年代中・後期型」のスピードキングについては未入手のため、確認ができていない。
⑪「フットボード裏面」、「ヒールクランプ裏面」、「ロッカーシャフト裏面」、「本体フレーム底面」のいずれの箇所にも共通して「W.M.C」のロゴが刻印されているため、本体フレームとフットボードが年代の違うもの同士で「組み違い」が起きている可能性は低い。
・以上から、当機は「1970年代初期(1970~1972年頃)」に製造された個体である可能性がある。今後、「レギュラータイプ」の「1970年代初期型」、「1970年代中・後期型」スピードキングを入手後に改めて比較、分析を行う予定。
■「イレギュラータイプ」の出現率
・特にアメリカの中古市場に出品されるスピードキングの中で「イレギュラータイプ」が出現する率については、現在までの観察では感覚的には20台程度に1台、5%程度の出現率だろうか。
・さらに、「イレギュラータイプ」には「ショートフィン仕様」と「ロングフィン仕様」の二種があるようで、主に生産国アメリカでの中古市場に出品される個体の画像収集を行っているが、2017年5月12日現在、サンプル画像58台分中15台が「ロングフィン仕様」で、この割合は25%強、残りは「ショートフィン仕様」で、こちらの割合は74%である。故障等により年代の違うフレームとの組み違いが起きているケースも考えられるが、その点は考慮せずに単純にサンプル画像のみを資料としたため、あくまで参考値としていただきたい。画像サンプルが200台分に達したら改めてこの項にて報告を行います(2019年10月1日現在、143台分)。
・本項で紹介した「イレギュラータイプ」の個体には、「フットボード」、「ロッカー」、「フレーム本体」、「ヒールクランプ」のいずれにも「W.M.C.」のロゴが刻印されているが、中古市場に出品されている個体の画像を観察する限りでは、フットボードが「レギュラータイプ」であっても他の三つのパーツのうちいずれかに「W.M.C.」の刻印があったり、また、フットボードが「イレギュラータイプ」であっても、他の三つのパーツのうちいずれかに「K.D.C.」のロゴが刻印されている個体があったりするようだ。既にスピードキングを所有している方は四箇所の刻印を一度確かめてみてはいかがだろう。
■「W.M.C ロゴ」と「K.D.C ロゴ」
・「W.M.C」の刻印と「K.D.C」の刻印が、ラディックからパーツ等の製造を委託されていた下請けの企業のロゴを表している可能性があり、いずれこの点についても調査をしたい。
・「イレギュラータイプ」と「レギュラータイプ」の違いは鋳造時に使用される型枠の違いから来ているが、「どういった経緯でその二種の型枠が作られるようになったのか」、また、「なぜイレギュラーなタイプは個体数が多くないのか」といった問題については追跡調査ができず、確証を得るのは非常に困難であろう。ただ、一般論として、下請け企業ではラディックのフットペダルだけでなく各社から受注した様々なパーツを製造しているであろうから、ラディック側ではその時その時で生産量のバランスをとる必要から、メインの企業である「K.D.C」による生産量を「W.M.C.」に補完させる形をとっていたのかもしれない。
・主要パーツの四種(フレーム本体、ロッカー、フットボード、ヒールクランプ)いずれもが「K.D.C.製」である場合は「(主要パーツ四種が)K.D.C.製のスピードキング」、主要パーツの四種いずれもが「W.M.C.製」である場合は「(主要パーツ四種が)W.M.C.製のスピードキング」、あるいは主要パーツ四種が「K.D.C.製」と「W.M.C.製」で混成による場合は「(主要パーツ四種が)混成タイプのスピードキング」として分類してもよいだろう。
※2016年、「Supraphonic LMシリーズ」のシェルについて野中貿易の打楽器担当の方に電話でお話を伺ったところ、シェルや部品の細部は下請け企業によって若干異なる場合があるとのことだった。
■操作感
・フットボードのリブが2本仕様である「W.F.L. スピードキング」や、同じく2本リブ仕様である1968年頃に登場したと推定される「最初期型
Ludwig スピードキング」は4本リブ仕様のものよりアクションが一段軽く感じられるが、この「イレギュラータイプ(4本リブ仕様)」については他の4本リブ仕様の「レギュラータイプ スピードキング」と操作感は特段変わらない。
※記:2017年5月
■Black Chicago
・シルバーに塗装された「シカゴ仕様のスピードキング」は少なくとも1990年代中期まで製造され、その後ブラックに塗装された「最終型スピードキング」に仕様変更される。「最終型」ではフットボード表面の刻印も「CHICAGO」から「MADE
IN U.S.A.」に変更されたが、この移行段階における最初期に「ブラック塗装でありながらフットボード表面に『Ludwig CHICAGO』が刻印」されたスピードキングがごく少数製造された。
フットボード表面のヘアライン処理はのちの模様(横筋や斜め横筋)とは異なり、全面「縦スジ」となっており、コネクティングリンクを装着するフットボード先端には「フラットスプリング(平バネ)」が付き、プラスチック製のブッシュがまだ装着されておらず、フロアープレートの厚みも「1.8mm」の薄いタイプで、全てシカゴ仕様のままである。また、内部ベアリングが「オープンタイプ」で、コンプレッション・スプリングの巻き数が「27」、ビーター固定用の「蝶ネジのつまみが大きめ」となっている等についても同様であるが、全体的にリニュアルに向けたプロトタイプのような趣である。
他に特徴としては、本体フレームの黒塗装はのちのモデルと同様の「ややざらついた感触の黒塗装」であるが、フロアープレートの塗装はそれと異なった「薄くマットな黒塗装」となっている。 本体のシーリングキャップの刻印はこの時期の他のモデルと同様、「MONROE. NC U.S.A.」である。
※記:2017年10月
■スピードキングの年代別区分
・スピードキングの年代区分は概ね以下のようになる。
※1949年頃以前の『旧型スピードキング』については本サイトでの考証から除外している。
①『新型 W.F.L.モデル』(1950年頃~1967年頃):
・ リンゴ・スターが使用したことで知られるモデル。ロングフィン、フットボード裏面にリブが2本、フレーム本体底面に「中空孔」無し、プラットフォーム(フープ受けの台座)裏面にリブ無し、1960年頃よりフロアープレート裏面に「ノンスキッドパッド」装着、ロッカーヘッドの「くびれ」が「直角」、コネクティング・リンクは「薄く長い」タイプで先端は「半円形」、ヒールのヒンジ部に挿通されたロッド末端の直径が約5.3mmと小さい。
②『1968年型=Ludwig CHICAGO ロゴ・最初期型=2本リブ』(1968年頃):
・ロングフィン、フットボード裏面にリブが2本、フレーム本体底面に「中空孔」無し、プラットフォーム(フープ受けの台座)裏面のリブ無し、フロアープレート裏面に「ノンスキッドパッド」装着、ロッカーヘッドの「くびれ」が「ほぼ直角」、コネクティング・リンクは「薄く長い」タイプで先端は「半円形」、ヒールのヒンジ部に挿通されたロッド末端の直径が約5.5mmで小さめ。
※以上の2種は「フットボード裏面のリブが2本」で、かつ「ロングフィン」を仕様的特徴とする。
③『1969年型=4本リブ最初期型』(1969年頃):
・ラディックのカタログで、1971年版(Copyright 1970 by Ludwig Industries)から82年版(Copyright 1982 Ludwig Industries, Inc.)にかけて掲載され続けたスピードキングの商品写真に使用されているモデル。ロングフィン、フットボード裏面にリブが4本、フレーム本体底面の「中空孔」無し、プラットフォーム(フープ受けの台座)裏面のリブ無し、フロアープレート裏面に「ノンスキッドパッド」装着、ロッカーヘッドの「くびれ」が「ほぼ直角」、コネクティング・リンクは「薄く長い」タイプで先端は「半円形」、ヒールのヒンジ部に挿通されたロッド末端の直径は6.2mm、その形状は「ナベ型」ではなく「フラット」で、「Cリング(C型ワッシャー)」を噛ませてある。
④『1970年型」(1970年頃):
・ロングフィン、フットボード裏面にリブが4本、フレーム本体底面の「中空孔」は無い。プラットフォーム(フープ受けの台座)裏面にリブは無い。フロアープレート裏面に「ノンスキッドパッド」装着、ロッカーヘッドの「くびれ」が「滑らか」な形状に変更、コネクティング・リンクは「薄く長い」タイプで先端は「半円形」、ヒールのヒンジ部に挿通されたロッド末端の直径は6.2mm。その形状は「ナベ型」ではなく「フラット」で、「Cリング(C型ワッシャー)」を噛ませてある。
⑤『70年代初期型』(1971年頃~1974年頃):
・ロングフィン、フットボード裏面にリブが4本、フレーム本体底面の「中空孔」は無いものがほとんど。プラットフォーム(フープ受けの台座)裏面にリブの無い個体がほとんどか。フロアープレート裏面に「ノンスキッドパッド」装着、ロッカーヘッドの「くびれ」が「滑らか」、コネクティング・リンクは「薄く長い」タイプで先端は「半円形」、ヒールのヒンジ部に挿通されたロッド末端の直径は約8mm。その形状は80~90年代製と同様の「丸みを帯びたナベ型」。ロッド末端の「Cリング(C型ワッシャー)」は無くなる。
※以上の3種は「フットボード裏面のリブが4本」で、かつ「ロングフィン」を仕様的特徴とする。
※「70年代初期型」は現物を未入手のため、主に画像情報に基づく。入手後に情報を反映します。
⑥『70年代中・後期製』(1974年頃~1979年頃):
・ショートフィン、フットボード裏面にリブが4本、フレーム本体底面に「中空孔」が設けられたものがほとんど、プラットフォーム(フープ受けの台座)裏面にリブ有り、フロアープレート裏面に「ノンスキッドパッド」装着、ロッカーヘッドの「くびれ」が「滑らか」、コネクティング・リンクは「薄く長い」タイプで先端は「半円形」、ヒールのヒンジ部に挿通されたロッド末端の直径は約8mmか。その形状は80~90年代製と同様の『丸みを帯びたナベ形』。
※さらに年代により細部に仕様の違いがありうる。
※以上の6種は「コネクティングリンク」が「薄く・長い」仕様を特徴とし、以下の2種は「コネクティングリンク」が「厚く・短い」仕様を特徴とする。
※「70年代中・後期型」は現物を未入手のため、主に画像情報に基づく。入手後に情報を反映します。
⑦『80~90年代型』(1980年頃?~1990年代終盤?) :
・ショートフィン、フットボード裏面にリブが4本、フレーム本体底面の「中空孔」有り、プラットフォーム(フープ受けの台座)裏面にリブ有り、フロアープレート裏面に「ノンスキッドパッド」無し、ロッカーヘッドの「くびれ」が「滑らか」、コネクティング・リンクは「厚く短い」タイプで、先端は「直線形」、ヒールのヒンジ部に挿通されたロッド末端の直径は約8mmか。その形状は「丸みを帯びたナベ型」。
※さらに年代により細部にも仕様の違い有り。
※以上の7種は本体が「シルバー」に塗装されている点で共通している。
⑧『最終型』(90年代終盤?~2014年):
・本体の塗装がこれまでのシルバーからブラックに変更され、「最終型」の仕様となる。ショートフィン、フットボード裏面にリブが4本、フレーム本体底面の「中空孔」有り、プラットフォーム(フープ受けの台座)裏面にリブ有り、フロアープレート裏面に「ノンスキッドパッド」無し、ロッカーシャフト全体のシェイプが特に後期は「かなり滑らか」、コネクティング・リンクは「厚く短い」タイプで、先端は「直線形」、ロッドエンドの直径が約5.9mm(形状が整っている)。
※さらに年代により細部に仕様の違いがある。例えば、当方の所有する「最終型」の一台には「ロッカーカム」に「フランジ」が付いていない。
※スピードキングの本体がブラックに塗装された「Ludwig スピードキング・最終型」が販売されはじめた年が特定できる資料、情報をお持ちの方は是非こちらまでご連絡ください。また、名機「スピードキング」に関する情報を後の世代にまで永く伝えていくため、スピードキングに関する情報をお持ちの方は是非ご連絡くださいませ。
(記:2016年2月9日)
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■Footboard ~ フットボード
・フットボード裏面のリブが4本タイプと2本タイプとでは2本タイプのほうがアクションが軽く、ヒールクランプをリバース(リリース)するとフットボードの自重が軽くなる分アクションがわずかに軽くなり、操作感も変わる。
■Fin ~ フィンの形状
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■グレーにペイントされたトウクランプ
・ラディックの1994年版カタログ(1994 The Selmer Company, Inc)に掲載されたスピードキングの写真では、トウクランプがグレーに塗装されているのが確認できる。カタログ情報が不足しているためこの仕様が継続していた期間は不明だが、オークション等の中古市場でこのタイプのトウクランプを装着したスピードキングはごくまれに見かける程度なので、個体数はさほど多くはないのだろう。カタログ掲載用に写真が撮影されたと考えられる1994年頃のごく一時期にのみ製造された仕様なのだろう。
■Rocket shaft ~ ロッカーシャフト
・ロッカーシャフトの形状の違いは上図のとおりである。70年代初期、及び中・後期の製造と確実に推定される個体を所有していないため、入手後に仕様比較を行う予定。(2016年2月12日現在)
■ロッカーシャフト先端の形状変更
■Frame base ~ 本体底面のリブ
■Ribs and Floor plate ~ フットボードのリブとフロアープレート
・フットボード裏面のリブが4本タイプと2本タイプとでは2本タイプのほうがアクションが軽く、ヒールクランプをリバース(リリース)するとフットボードの自重が軽くなる分アクションがわずかに軽くなり、操作感も変わる。
■Diameter of Rod end ~ ロッド末端の径
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■真正60年代ビンテージ・Ludwig スピードキング
・繰り返しになるが、1960年代後期の一定期間にもし「Ludwig ロゴ」がまだ存在しなかったと仮定すると、一点大きな問題が生じる。それは、内外を問わずこれまで長く一般に通用してきた、Ludwig CHICAGO ロゴで、かつロングフィン仕様の「60年代製ビンテージ・スピードキング」なるものが、不可解なことに実は60年代には存在しなかった」という非常な矛盾を生じてしまうことだ。先述したとおり、1967年から1969年までのいずれかの年(当サイトでは1968年頃と推定した)に「WFL ロゴ」から「Ludwig
ロゴ」に仕様変更され、それが一定期間製造されていたと考えるのが自然であり、事実、遅くとも1968年頃に製造されたと推定される「Ludwig ロゴ」のスピードキング(2本リブ仕様・当方で所有する個体)が存在することで明らかなように、最大でも約3年間の短い期間ではあるが、この時期に製造された「Ludwig CHICAGO ロゴ(ロングフィン仕様)」のスピードキングは確かに存在する。別言すると、「真正60年代製スピードキング(Ludwig CHICAGO ロゴでロングフィン仕様)」というものは製造期間が最大でも3年程度しかなく、そのタマ数が極めて限られているということにもなるわけだ。
また、「ショートフィン仕様」への変更が行われたと推定される1974年より以前、つまり1970年代初期に製造されたスピードキングであっても、「ロングフィン」であるという点のみにおいては60年代終盤製と仕様が共通しているため、一般にはこの「70年代初期(1970~1973年頃)製スピードキング」と「60年代終盤(1967~1969年頃)製スピードキング」とを区別せず、いずれも「60年代製スピードキング」として同一に扱われている。しかし、正確には両者はそもそも製造された年代が異なるのだから、本来は同一視するのは適当ではない。
■大まかな区分
厳密な区分とは言い切れないが、「Ludwig CHICAGO ロゴ」で、かつ「フットボード裏面のリブが2本、フィンがロング仕様」である場合は「1960年代終盤(1968年頃と推定される)に製造された真正ラディック・スピードキング」であり、「フットボード裏面のリブが4本で、フィンがロング仕様」の場合は「早ければ1969年内に製造が開始され、また、遅くとも1973年頃まで製造されていた『70年代初期仕様』のラディック・スピードキング」であるということになる。
■真正70年代ビンテージ・スピードキング
前項(真正60年代ビンテージ・スピードキング)で説明した内容を踏まえると、「Ludwig ロゴの70年代製スピードキング」なるものは、実は大きく分けると「1970年代初期仕様、つまり1969~1973年頃に製造された『ロングフィン』仕様のスピードキング」と、「1970年代の中・後期仕様、つまり1974年頃~1979年に製造された『ショートフィン』仕様のスピードキング」との二種があるということになる。
そしてこの二者のいずれもが「真正70年代ビンテージ・スピードキング」であると言えるわけだが、もし「真正70年代製スピードキング」に固執するならば、別項でも説明したとおり、一見したところでは仕様的にほとんど区別ができない「1980~1990年代に製造されたスピードキング」が存在するということは踏まえておく必要がある。
「『ロングフィン』は60年代製スピードキング」、「『ショートフィン』は70年代製スピードキング」といった不正確な区分がこれまで長らく一般であったこと、そして、「80年代製や90年代製のスピードキング」の存在が念頭に置かれてこなかったことから、海外のオークションサイト等では「80年代製や90年代製のシルバー塗装されたスピードキング」が「70年代製ビンテージ・スピードキング」、あるいは「(70年代製を前提とした)ビンテージ・スピードキング」として取引されているケースが少なくないという現実がある。製造国であることを差し引いても、「70年代製ビンテージ・スピードキング」としての出品が、特にアメリカでそのタマ数が異常に多い理由もうなづけるわけである。
「真正の70年代ビンテージ・スピードキング」を識別するには、フロアープレートの裏面に「Non-skid pad(#2476:滑り止めパッド)」が装着されているかどうかが一つの基準になるだろう。WFL、およびラディックのカタログによれば、1957年版ではスピードキングにこの「Non-skid pad」がまだ装着されておらず、翌1958年から1959年にかけては不明であるが、1960年版では「Non-skid pad」が商品説明欄に追記されており、その後1981年頃までこの仕様が継続していたようだ(※1981年版カタログでは、「スピードキング単体」の商品写真からは『Non-skid pad』が消えたが、1982年版のドラムセットに装着されたスピードキングにはまだ『Non-skid
pad』が装着されたまま掲載されている。撮影自体は1981年と思われる)。
ただ、「Non-skid pad」は消耗品であり、剥がし取ることもまた決して困難なことではなく、60年頃から81年頃にかけて「Non-skid
pad」が標準仕様として常に確実に装着されていたかどうかの確証も得られていない。また、80年代のいずれかの時期までこのパッドを補充パーツとして単体で入手できた時期もあった可能性が高く、さらに、一部イレギュラーな仕様の個体が存在したり、中古商品によっては各部が部品交換されていたりする場合もあるため、「Non-skid pad」の有無のみが年代特定のための絶対的基準となり得るわけではない。
「Non-skid pad(滑り止めパッド)が装着されていること(後付けされたり剥がされたりした個体も有り得る)」以外には、コネクティング・リンクの厚さが「1.6mm」で、その全長が「75mm前後」の「薄い・ロングタイプ」であること、その「先端がアーチ形状」であること、フットボードの「リブが4本」であることが「真正70年代製スピードキング」を判断する基準の一つとなろう。
■仕様年表
・年表は「2017年5月2日現在」のものです。中古市場に出品されている個体の仕様を観察し、逐次年表を修正しています。
・中古品の中にはフレーム本体とフットボードとが年代の異なるもの同士「組み替え」られていたり、あるいは「組み違い」が起きていたりする場合があり、明らかにそのように判断できるものは参考から除外している。
・コネクティング・リンクやロッカーシャフト等において「部品交換」が行われたと推測される個体も参考から除外している。
・’drummechanix’等のカスタムショップにより改造されたと思われる個体についても参考から除外している。
・ラディック社の発行したカタログ、当方の所有する実機(10台/内、2台は譲渡)、中古市場に出品されている個体の画像等をもとに、当方の個人的な推測を交えて年表を作成しているため、事実と必ずしも一致しない場合があります。その点、予めご了承ください。
■情報提供のお願い
・Ludwigの名機、「Speed King Pedal」に関する情報が大変不足しています。「1968年に『CHICAGO ロゴ』のスピードキングを新品で購入した、または販売していた」「1973年に『ショート・フィン仕様』のスピードキングを新品で購入した、または販売していた」「1997年に『黒く塗装されたスピードキング』を新品で購入した、または販売していた」「Ludwig
1970年代のステンレススティール製バスドラムのフープ幅」「Ludwig 1970年代前半のビスタライトのフープ幅」「1990年代の雑誌に掲載された楽器店による『最終型スピードキング』の広告写真」「『スピードキングがリニューアル!』等の文言のある雑誌広告」等の情報の他にも、スピードキングの仕様や年代特定に関する情報をお持ちの方はこちらまでご連絡ください。ご協力のほど宜しくお願いいたします。
■Finish(塗装)
ラディックの1994年版カタログには、「シルバー塗装」された「シカゴ仕様」のスピードキングが堂々と掲載されている。その年にもし最新仕様である「ブラック」の最終型スピードキングが販売される予定であったとしたら、購入者はカタログで見た商品とは全く異なる意想外な仕様の現物を予告無く購入させられることになり、それは一部信用問題にも関わろうから、1994年時点ではスピードキングは確実に「シルバー」だったのではないかと推定し、年表にはその販売年である1994年を「仮の基準年」として記入した。また、1989年発行の音楽雑誌(冒頭のジョン・ボーナムの記事が掲載された雑誌)に掲載された都内有名楽器店の広告にも「シカゴ仕様(シルバー塗装)」のスピードキングが商品として掲載されており、この点から少なくとも1980年代にはまだブラックに塗装された最終型スピードキングは生産されていないのは確実だ。以上から「最終型スピードキング(ブラック塗装)」が実際に生産開始されたのは1990年代後半以降であろうが、情報不足のためその点が確認できていないことにより、年表には2000年を仮の基準年として記入した。(1990年代から2000年前後の期間の仕様については現在調査中で、カタログ等の資料入手に努めている)
■Logo type
「WFL ロゴ」が刻印されたスピードキングの商品単体のイラストが1951年版(Copyright 1950, WFL Drum Co.)から1967年版(Copyright
1966 by Ludwig Drum Co.)まで継続してカタログに掲載されている。また、1967年版のカタログに掲載されたドラムセットに装着されたスピードキングもまた「WFL
ロゴ」となっていることが確認でき、さらに、1967年には当然1967年版の商品案内どおり「WFL ロゴ」のまま販売されたはずであると仮定し、「WFL
ロゴ」が存在していた仮の基準年を1967年とした。また、「Ludwig CHICAGO ロゴ・4本リブ仕様」がカタログに初めて登場するのは1971年版(Copyright 1970 by Ludwig Industries)で(1968~1970年版は不明)、カタログ掲載の前年を撮影年、あるいは製造年と考えると、「Ludwig CHICAGO ロゴ」の開始は遅くとも1970年と考えられる(Copyright 記載にも「1970」とある)。さらに、当方が2016年2月に入手した「Ludwig
CHICAGO ロゴ」のスピードキングは「フットボード裏面のリブが2本仕様」であり、別項にて説明したとおり、中古市場に出現する個体数から、「Ludwig CHICAGO ロゴ」が遅くとも1969年には存在していた」可能性が高く、しかも、長らく通用している「60年代製Ludwigスピードキング(CHICAGO ロゴ、ロングフィン仕様)」がもし60年代後半の一定期間に存在しなかった場合にはこの通説に矛盾が生じるうえに、その期間がわずか1年程度であった場合にもまた「60年代製スピードキング」という通説を担保するうえでは不自然な個体数となってしまうため、この点からも「Ludwig CHICAGO ロゴの開始は遅くとも1969年」だったのではないかと推測され、これにより1969年を仮の基準とした。
続いて、1994年版のカタログではスピードキングの塗装がまだシルバーの「シカゴ仕様」のまま掲載され、「Finish(塗装)」の項で仮定したとおり、カタログ発行年である販売年を製造年とも見なし、「CHICAGO
ロゴ」の継続は少なくととも1994年までとし、その1994年を仮の基準とした。本体が黒く塗装されるとともに機構的な変更が加えられ、「MADE IN USA ロゴ」が刻印される「最終型スピードキング」の製造開始は遅くとも2000年であろうと「仮定」し、「シーリング・キャップ」や「フロアープレートの全長」等の仕様変更年と同様、2000年を仮の基準とした。1990年代後半の仕様については現在、調査中。
■Fin type… 1973年版「総合カタログ(Copyright 1972 by Ludwig Industries)」、1973年版「Vistalite
カタログ(Copyright 1973 by Ludwig Industries)」双方に掲載されているドラムセットに装着されたスピードキングは「ロングフィン仕様」であることから、その前年である1972年を撮影年、製造年と考え、「ロング・フィン仕様」は少なくとも1972年まで製造が継続していたと見なし、これを仮の基準年とした。また、1975年版(Copyright 1974 by Ludwig Industries)の「総合カタログ」では、スピードキング単体の商品写真も、また、ドラムに装着されたスピードキングの写真もともに「ロング・フィン仕様」となっているが、同年(1975年)に発行された「Vistalite カタログ(Copyright 1975 Ludwig Industries)」には明らかに「ショートフィン」と判断可能な2枚の写真が掲載されており、その前年を撮影年、また、製造年と考え、「ショート・フィン」への仕様変更は遅くとも1974年からと推定し、これを仮の基準年とした。1973年時点の状況にについては現在調査中。
■Non-skid pad(滑り止めパッド)の有無
フロアープレート裏面に貼られた「Non-skid pad(滑り止めパッド)」については、ラディックの1957年版(Copyright 1956
Ludwig Drum Co.)のカタログにはその説明の記載が無いが、1960年版(Copyright 1959 Ludwig Drum Co.)には明記される。1958年から1959年にかけては不明。また、1981年版(1981
Ludwig Industries)ではそれまでの版と異なり新たに撮影されたスピードキング単体の商品写真に既に「Non-skid pad」が装着されておらず、1982年版(Copyright
1982, Ludwig Industries, Inc.)では商品単体の写真は1971年版に使用された元版が同じ写真を再び転用し、レタッチ(画像修正)によって「Non-skid
pad」が削除された状態で掲載されている。1980年版(Copyright 1978 by Ludwig Industries)では商品単体の写真にもドラムセットに装着されたスピードキングの写真にも「Non-skid
pad」が装着されていることから、「Non-skid pad」が標準装備されていた仮の基準年を1960年から1979年までとした。ただ、この約二十年の期間に「Non-skid pad」が確実に標準仕様として継続されていたかどうかまでは確認がとれていない。「Non-skid
pad」が装着されていることが60年代製、70年代製のビンテージ・スピードキングを識別する一つの基準にはなるが、このパーツは剥がし取ることも困難なことではなく、また、補充部品(#2476)として後付けも可能だった時期があるため、年代特定の決定的な基準となるわけではない。
■スプリングの巻き数
別項にも記載したとおり、WFLモデルを含め、シルバー塗装されていたと見られる90年代中期までのほとんどの「シカゴ仕様」のコンプレッション・スプリング(押しバネ)は巻き数が「27」であるようだ。ブラックに塗装された「最終型」の巻き数は「26」で、このスプリングの特性の違いが両者で踏み込みの軽さ、強いて言うなら操作性や制御性にも大きく影響を与える要素となっていると推測される。
■フットボード裏面のリブ本数
強度向上のためフットボード裏面にある「rib(リブ=筋状補強)」の数が2本から4本に増設された時期については、「Ludwig Chicago ロゴ」が刻印されたスピードキングの中に「WFL ロゴ」時代と同じくリブが2本のみのモデルが存在することから、逆に「WFL ロゴ」のモデルにはリブが4本仕様のものが存在しないと推定される。その「WFL ロゴ」のスピードキングが、「Logo type」の項に説明したとおり少なくとも1966年まで製造されていたと推定されること、また、「Ludwig CHICAGO ロゴ」で、かつ二本リブのスピードキングが1967年から1969年の間のいずれかの時期に製造開始されていると推定されることから、リブが確実に2本のみだったのは少なくとも1967年までと見て、これを仮の基準年とした。さらに、4本に増強されたリブのうち外側の2本はフットボードに開けられた四か所のホール斜め上面からも見て確認できるのだが、ラディックの1971年版カタログ(Copyright
1970 by Ludwig Industries)に掲載されたスピードキングの商品単体の写真にはその外側のリブが明瞭に写っており、そのため、カタログが発行される前年に撮影が行われたと考えると(Copyright記載にも『1970』とある)、少なくとも1970年には既にリブが4本に増設されていたと見なすことができ、この1970年を仮の基準年とした。1968年から1969年の仕様については現在、調査中。
■本体裏面のリブ本数
フレーム本体、バスドラムのフープを乗せる台座部分(プラットフォーム)の裏面についてもフットボード裏面と同時期に「rib(リブ=筋状補強)」が新たに増設された可能性があるが、この時期の中古品の中には、フットボードにリブが4本ありながら、本体台座部分の裏面にはリブが無い個体が少なからず存在する。この逆のパターンは「組み替え」、あるいは「組み違え」でない限り存在しないと思われ、本体台座部分のリブの増設はフットボード裏面のリブ増設より時期的に後だった可能性が高い。ただし、前項目でフットボード裏面のリブが確実に2本だった年として推定した1967年の翌年である1968年から70年代初期のいつ頃に台座裏面のリブが増設されたかを絞り込むのは、目立たない箇所であるためにかなり困難であるが、当方が所有する「CHICAGO ロゴ(推定1968~69年製)」の個体がまだリブが増設されていないことから、少なくとも1968年まではまだ増設されていないものと見なし、1968年を仮の基準年とした。因みに年表中の「2+0」、「2+2」それぞれの最初の「2」とは、台座部分のリブではなく、左右テンションスクリューを結ぶ位置に元々ある二本のリブを表している。1950年頃から1960年頃にかけての仕様は確認できていないが、この横方向に設けられた二本のリブについては元々あったものと見なして年表に記入した。
■ロッカーシャフトのヘッド形状
ロッカーシャフト先端、ヘッドの手前のくびれた部分の形状については、少なくとも1966年製造のWFLモデルまでは直角であるのに対し、「Ludwig CHICAGO ロゴ」に変更された直後、つまり1960年代終盤のモデル(当方の所有する、推定1968~69年製と見られる個体)ではまだほぼ直角に近い形状を残している。くびれた底の部分はWFLモデルと異なりわずかに丸みをもち、ヘッド全体もまた若干だがサイズ的に大きくなり、ネック部分はWFLモデルと同様にまだ骨張った形状を残している。そして、ラディックの1976年版(Copyright
1975 Ludwig Industries)のカタログに掲載されたスピードキング単体の商品写真では、ロッカーシャフト先端のヘッドの、例のくびれた部分は「最終型」に通ずる滑らかな形状へと変更されていることが確認でき、カタログ掲載用に撮影が行われたのがカタログ発行年の前年である1975年と考えると(Copyright記載にも『1975』とある)、ロッカーのヘッド形状が滑らかになるのは1970年代初期ではないかと推測することができる。さらに、中古市場に出現する1970年代初期に製造されたと見られる「ロングフィンでフットボード裏面が四本リブ仕様」の個体、つまり「1970年代初期型
Ludwig スピードキング」を観察してみると、そのほとんどでロッカーのヘッド形状が滑らかな新形状のものとなっていることから、遅くとも1973年には滑らかな形状へと変更されていたと見なし、仮の基準年を1973年として記入した。因みにこの滑らかな新規のシェイプは「最終型スピードキング」のヘッド形状にも継承されるが、「最終型」及びそれ以前の数年間における製品のシェイプは研磨処理が強化され、「より滑らかになり、メッキの光沢もかなり強くなる」。
■ロッカーシャフトの補強
「WFL ロゴ」のスピードキングの場合、ロッカーシャフト中央にビーターを挿入するための穴があり、その右脇の部分、つまりビーターロッドを固定するための蝶ネジが据えられる部分の金属には十分な厚みをとってあるが、反対側(左側)にはまだ金属の盛り上げが行われていない。その後、「Ludwig ロゴ」に変更された1960年代終盤以降のモデルには、恐らく補強を主目的とした金属の盛り上げがこの部分に施され、これが「最終型スピードキング」に至るまで標準の仕様となる。
■本体ポストの太さ
外見状は判別が難しいが、実機を計測したところ、WFLモデルの本体ポストは以後のラディックモデルのポストよりわずかに太めとなっている。WFLのポストは「ややずんぐりとした印象」であり、以後のポストは「スリムな印象」である。中古品の中には本体が「WFL」のものでありながらフットボードが「Ludwig ロゴ」のものに組み合わされた個体や、その逆の組み合わせになった個体も存在するが、これは仕様変更期の「レアな個体」である可能性もあるが、単なる「組み違い品」あるいは「組み替え品」である場合も少なくないので、ビンテージ品の選定を行ううえでは、ある程度スピードキングの仕様について予備知識を得ておくことをお勧めする。
■コネクティング・リンクの厚さと全長
1980年版(Copyright 1978 by Ludwig Industries)のカタログに掲載されているスピードキングの写真によれば、コネクティング・リンクはその厚さが「約1.6mmの薄型」、全長は「75mm前後のロングタイプ」であったようだが、1981年(Copyright 1981 Ludwig Industries)、及び1982年版(Copyright 1982
Ludwig Industries)、1984年版(Copyright 1984 The Selmer Company)カタログに掲載された写真によれば、その厚さが「3.2mmの厚型」、全長は「約70mmのショートタイプ」に仕様変更されたようである。「シカゴ仕様」のスピードキングの中古品にはよく「への字」に曲がったコネクティング・リンクをしばしば見かけるが、これは上記二種のうち「薄型、ロングタイプ」のコネクティング・リンクであり、実際、手でも簡単に曲げられるほどの厚みしかない。その後、1980年頃、スピードキングのコネクティング・リンクは「厚型、ショートタイプ」へと変更され、ペンチを使用しても曲げられないほどに堅牢となった。
※実機を計測したところ、1960年代に製造されたと推定されるWFL時代のスピードキングのコネクティング・リンクの全長は「75.8mm」、当方の所有する1968年~69年の製造と推定される「Ludwig ロゴ・2本リブ仕様」のスピードキングのコネクティング・リンクの全長は「74.3mm」だった。70年代初期、及び中・後期に製造されたスピードキングのコネクティング・リンクについては、確実にその年代のものと推定される個体を入手後に計測する予定。
※個体差もあろうが、コネクティング・リンクの全長を大まかに分類すると、「WFL ロゴ」時代が「75~76mm」、そして「CHICAGO ロゴ」に変更されて以後、1979年までの期間は「74~75mm」であると仮に見なし、暫定的に年表に記入した。また、当方で所有する推定80年代~90年代製のスピードキングの場合は4台とも「69.4mm」であり、1981年版、1984年版のカタログに掲載されたスピードキング単体の商品写真からはコネクティング・リンクの全長が「短く厚いショートタイプ」であることが確認でき、その撮影が行われたであろう前年、つまり1980年にはコネクティング・リンクが「ロングタイプ」から「ショートタイプ」へと仕様変更されていたと見なし、さらに、この「ショートタイプのコネクティング・リンク」は1994年版のカタログに掲載されたスピードキング単体の写真でも同仕様のものが装着されていると推認されるため、1980年から1994年を仮の基準とし、この時代のコネクティング・リンクの全長を「69~70mm」と見なして年表に記入した。本体が黒く塗装された「最終型スピードキング」のコネクティング・リンクは、当方が所有する3台(1台は後に譲渡)ともに「70.0mm」であるため、「最終型」の仕様開始は遅くとも2000年であろうと仮定し、コネクティング・リンクの全長を統一的に「70mm」と見なし、2000年までを仮の基準として年表に記入した。
■コネクティング・リンクの先端形状
1979年以前の「薄く、長いタイプのコネクティング・リンク」はその先端が「アーチ状」となっており、1980年以後の「厚く、短いタイプのコネクティング・リンク」はその先端が「直線状」である。よって、この点は70年代製以前の個体と80年代製以後の個体とを識別する一つの基準となる。
■フロアープレートの全長
実機を計測した限りでは、WFLモデルが「203.5mm」、1968~69年の製造と見られる「Ludwig ロゴ(ロングフィン仕様・フットボードのリブが2本)」の個体が「204mm」、推定80年代~90年代製の4台がそれぞれ「200mm」、「203mm」、「204mm」、「205mm」だったため、これは個体差として把握してよいものと考え、上記全ての時期を通して「200mm~205mm」として年表に記入した。「最終型スピードキング」についても個体差が当然考えられるが、当方で所有する3台(後に一台は譲渡)は全て「204mm」だったため、暫定的に「204mm」とみなして記入した。
■フロアープレートの厚さ
実機9台を計測した限りでは、WFLモデルから90年代までを通して、シルバーに塗装された「シカゴ仕様」のフットボードについては、その厚みは「1.8mm」で共通しているものと推認されるため、暫定的に「1.8mm」として年表に記入した。また、「最終型スピードキング」の場合は剛性を高めるためにフロアープレートの厚みが「2.2mm」に増強されているため、「2.2mm」として年表に記入した。
■Ceiling cap(シーリング・キャップ)
1988年版のカタログに掲載されたスピードキング単体の商品写真では、シーリング・キャップにはまだ「CHICAGO」が刻印されていることから、1984年のモンローへの拠点移転時に即時シーリングキャップの刻印も「MONROE」に変更されたわけではないようだ。当年表では、当方の所有するモンロー移行期に製造されたと見られる一台の仕様(別項に記載)等も勘案し、撮影が行われたと考えられる先のカタログ発行年の前年、1987年を仮の基準年とした。ただし、シーリング・キャップは外れて紛失しやすいパーツであること、また、そのために補充部品として長く在庫があった可能性もあり、「MONROE」が刻印されたシーリング・キャップが標準仕様として統一的に装着されるようになるのはかなり遅れ、1990年前後だった可能性もあるが、正確な年代検証は困難。
■ビーターのキャップの刻印
ラディックがモンローに拠点を移した1984年以降、スピードキングの各所仕様の中でも比較的早く変更が可能だと思われるのが「シーリング・キャップ」と「ビーターのキャップ」であるが、小さく目立たないパーツでもあるため、年代の正確な特定は困難である。
■ベアリングのタイプ
実機比較によれば、「WFLモデル」の場合はベアリングにシールド(フタ)は無いが、内部のベアリングボールが少し見える程度に隙間が開いた「ハーフオープン・タイプ」となっており、当方の所有する1968~69年に製造されたと推定される「Ludwig CHICAGO ロゴ」の個体にも同一のベアリングが使用されている。70年代については現時点で不明であるが、遅くとも80年代中期以後のベアリングにはキャップが使用されず内部のボールがそのまま見える「オープンタイプ」であり、「最終型スピードキング」の場合はベアリング内部が一切見えない「完全シールドタイプ」が採用されていたようだ。
■ヒール部のロッド末端の太さ
フロアープレートのヒール部に出ているロッド末端の直径は、「WFL モデル」が「約5.3mm」でかなり細め、「推定1968~69年製・Ludwig 初期モデル」もまた「約5.5mm」とかなり細めである。「推定1980年代中期以降のモデル」の場合はかなり太めの「約7.9mm」、「最終型」が「約5.9mm」だった。ただ、当方で所有する「推定80年代終盤製」の個体は「約7mm」となっており、年代により差異がある可能性がある。1970年代製のサイズについてはまだ実機を所有しておらず、現時点では不明。
■フットボード先端の『ベロ』
「WFL モデル」と、シルバーに塗装された「Ludwig のシカゴ仕様」のスピードキングの場合、フットボード先端に平らな形状をしたスプリングである「フラットスプリング」、通称「ベロ」が装着されている。フットボードをコネクティングリンクに引っかける際のガイド部品としての役割とともに、ペダルを使用中にコネクティングリンクからフットボードが外れてしまわないようガードする役割があるようだが、年代によってこのフラットスプリングが「真っ直ぐなタイプ」のものであったり、下側か上側どちらかに一回折り曲げた「『く』の字タイプ」のものであったりする。また、黒く塗装された「モンローモデル」ではフットボード先端のスプリングピン(ロールピン)にプラスチック製のブッシュ(bush=円筒形の筒)が装着されるため、フラットスプリングの装着は無くなる。ただし、「シカゴ仕様」から「モンロー仕様」へと移行する時期(1990年代終盤か)に、黒く塗装されたフットボードにフラットスプリングが装着された仕様の製品が希少ながら存在する。
■未詳
各項目の基準年と基準年を挟み、仕様が確認されていない部分については「未詳(Unknown)」としてある。
■ビンテージ・スピードキング
・スピードキングの素人研究に必要だったため、2015年7月~2016年2月にかけて、国内外のオークションを利用し、ビンテージ品を計6台入手した(WFL1台を含む)。
※その後2台を譲渡し、1台を追加入手した。さらに調査のため年代の異なる3台をできれば年内に追加入手する予定(2017年5月現在)。
■操作感
・当方が所有するビンテージ・スピードキングの中で最初に入手した一台はフレーム本体が傷だらけで、かなり使い込まれていたらしく、ヒール部のロッド(軸)周囲がシンバルのキーホールのように縦に若干広がってしまっていたのだが、これを試奏して驚いたことに、それまでメインで使用していた「最終型スピードキング」と比較して明らかに踏み込みが軽く、しかもなめらかに操作でき、コントロールがしやすいと感じられた。
スピードキングは、特によく使い込まれていない場合、ペダルを踏み込む際にビーターヘッドに重量を感じ、ビーターヘッドを力ずくで振り回しているような違和感やバランスの悪さが感じられ、従前そうした特性がさらにコントロールの難しさに強く反映しているのではと感じていた。ところが、このビンテージ・モデルの場合、ビーターがペダルの一部に組み込まれてある程度一体化し、内蔵スプリングとのバランスもとれ、ビーターヘッド自体の重みをさほど意識せずにコントロールに集中でき、軽快に操作することができた。これは特に今まで使用していた「最終型」には無かった感覚だった。「ビンテージ・スピードキングは踏み込みが軽い」とは従前耳にしてはいたが、これは後述するとおり、両者フットボードの重量にはほとんど違いはないため操作感の違いはここから来るのではなく、内蔵スプリング(コンプレッション・スプリング)の「特性の違い」や、それ以外にもコネクティング・リンクの全長の違い、「最終型」に装着されたプラスチック製ブッシュによるビーターの振り角度への影響といった「機構上の特性」といった要素が複合的に影響を与えているようだ。
■ショートフィンとロングフィン
・70年代中期以降のスピードキングの「フィン」は「ショートサイズ」、つまり「半インチ=約12.7mm」であり(冒頭の記事を参照のこと)、50~70年代初期におけるスピードキングの「フィン」は「ロングサイズ」、つまり「1インチ=25.4mm」である。当方がスタジオ練習で使用しているパール・MCX(ウッドフープ)での使用時には、フープスペーサーは通常「4mm用」を装着し、バスドラムのヘッド面とスピードキングのロッカー末端とがスレスレの状態で使用しているが、50~70年代初期のスピードキングの「フィン」の仕様は長さが1インチなので、「ショートフィン仕様」のスピードキングに約13mm(!)ものフープスペーサーを装着するのに相当し、5mmのスペーサーまでで一杯いっぱいと感じているところ、ビーターをヘッド面からさらに8mmも遠く離してスピードキングを操作するというのは、個人的には非実用的なセッティング条件だ。
ただ、プレイヤーそれぞれに奏法の違いや志向の違いもあるので、スピードキングの入手を検討している場合には、最低限の条件として、ビーターとヘッド面との距離を考慮したうえで、「ロング・フィン仕様(フープをかませる奥行きが浅い=50~60年代の仕様)」を選ぶか、あるいは「ショート・フィン仕様(フープを深くかませる=70年代中期以降の仕様)」を選ぶかし、そのうえでフープスペーサーを作成する心づもりがあるならば「ショート・フィン仕様」のスピードキングを選択すればよいし、踏みしろが深めになっても制御や脚力、体力に自信があれば「ロング・フィン仕様」のスピードキングを選択すればよいだろう。また、いずれの仕様にしろ、バスドラムのフロントを持ち上げる高さを変えることでも、ビーターとヘッド面との距離を若干調整することができるので、その点も念頭に置くとよい。
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■分解
専門的な分析はできないものの、ビンテージ品(シルバー塗装のタイプ)数台と「最終型スピードキング(ブラック塗装のタイプ)」一台の駆動部を分解し、スプリング、カム(ロッカーシャフト)、プランジャー(棒ピストン)、ベアリング等の仕様について計測、比較してみた。その結果、それぞれのパーツにおいて目立った差異は無かったのだが、ただ一点、スプリングの巻き数が、ビンテージ・スピードキングが共通して「27+α」、最終型は「26+α」となっており、巻き数が多いシカゴデザインのモデルのほうが踏み込みが軽く、ペダルの機能的バランスが比較的とれているように感じられた。
そこで、ビンテージ品のスプリングを「最終型スピードキング」に換装して使用してみたところ、ビンテージ品の操作感に近い操作感、つまりアクションがある程度軽く滑らかにはなるのだが、別項に記載したようにスプリング以外にペダルの機構的要素も操作性に影響しており、スプリングを換装しただけではビンテージ品と同一の操作フィーリングを得るのは困難なようだ。また、スプリングの特性や機構上の違いに加え、初期オーナーの踏み癖によるものだろう、特に使い古された一台の左側のカムの軸とそこに接するプランジャーの先端がかなり摩耗しており、このようなパーツの摩耗具合といった要素もまた、スピードキングの操作に自由度と柔軟性を与えていると推測される。
※コンプレッション・スプリングの巻き数の数え方について…… スプリングの末端は平坦に研削されており、その末端部分において完全な線の形状をとどめている部分を基点にして巻き数を数えた。そのため、専門的なスプリングの巻き数の数え方とは異なる。
※上の画像:ビンテージ・スピードキングのカムとプランジャー。
・ビンテージ品6台の中で最初に入手した、最も使い込まれたスピードキングのカムとプランジャー。カムのほうは摩耗によりわずかに軸がえぐれてしまっている。プランジャーの先端もまた、カム軸を受ける部分の表面がわずかに摩耗している。こうした両者の摩耗がスピードキングの動作をある程度滑らかにし、コントロールのしやすさにも影響していると考えられる。
■Rare?
・上の画像は2015年9月に海外のオークションで入手したビンテージ・スピードキング。商品の到着時に剥がし取った商品ラベルを再度仮止めして当初の状態に再現し、撮影した。本体とフットボード双方に同一の商品ラベルが貼り付けられたままになっており、そこに価格である「$89.99」以外に商品コードやバーコードが記入されている。シーリングキャップ二枚には「MONROE
NC U.S.A.」、箱にもまた「MONROE N.C.」とあるが、ビーターには「CHICAGO U.S.A.」と刻印されている。ラディックの1988年版カタログに掲載されたスピードキング単体の商品写真ではシーリングキャップにまだ「CHICAGO」が刻印されているので、上記個体は1980年代終盤、もしくは1990年代初頭おける製造品である可能性がある。
・同機は、本体やフットボードに多少の傷や汚れがあり、また、ビーターにも多少の汚れがあり、いずれも一定期間は使用されていた形跡があるが、フットボード表面には磨耗がほとんど無く、ヒール部分の「軸ピン」周辺にも広がりは無く、ほとんどガタつかない(大概のビンテージ品は多少ガタついている)。さらにアルミ地肌に新品時当初に特有の光沢がまだそのまま残っていた。また、カム軸に接するプランジャー上端を外して確認したところ、摩耗はまったく見られなかったので、恐らくカム軸にも磨耗は無いと思われる。商品の使用状態、フットボードのアルミ表面の状態や光沢、蝶ネジのメッキがほとんどくすんでいないこと、本体とフットボード双方に同一の商品ラベルが当時そのままに残っていたこと等の状況から、ワンオーナー品である可能性が高い。しばらく使用してのち、使い慣れないために箱にしまわれたまま保管されていた、といった趣である。商品本体の落札価格は日本円で約24,600円、その他に配送料や関税などの諸費用を含め、総額で約34,600円となった。
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■スピードキングの駆動部パーツ
■WFL Speed King Pedal:1960s ~ WFL スピードキング・1960年代仕様
■Ludwig Speed King Pedal:Late 1960s ~ ラディック・スピードキング 最初期型
■Ludwig Speed King Pedal:Early 1970s ~ スピードキング 1970年代 初期仕様
■Ludwig Speed King Pedal:Mid 1970s-Late 1970s~ スピードキング 1970年代 中・後期仕様
■LudwigSpeed King Pedal:1980s ~ スピードキング 1980~90年代仕様(シルバー塗装)
■LudwigSpeed King Pedal:The latest model ~ スピードキング 最終型(ブラック塗装)
■計測結果
当方で所有するスピードキングのうち何台かの駆動部を分解し、主要パーツの計測を行った。両者における仕様の違いに興味があってわざわざ分解して計測したのだが、結局具体的な各部数値をここに記載しないことにした。両者に数値的な違いが無いか、あるいはほとんど無く、敢えて比較する意味を見出せなかったためだ。
例えばロッカー(弓形の駆動部材)の重量はいずれも140~141gで、1g程度は個体差の域を出ない。メッキの状態は製造年代等によって若干異なるが、ロッカー各部における形状の微妙な差異もまた個体差の域を出るものではない。カムについてはビンテージ品、および当方が2011年に新品で購入した最終型スピードキングにもやや小さめのフランジが付いていたが、同じ最終型でも、今回分解した年式不明の個体にはフランジが付いていなかった。フランジが付いたタイプと付いていないタイプではカム本体の重量に約2gの差が出るが、プランジャー(棒ピストン)が接するカムの軸部分の径は、両者4.2mmで同一である。カム本体のサイズもまた、フランジ部分を除いてまったく同一である。プランジャーを受ける「カム軸」の位置については外見的には両者に違いは無さそうだが、精密な測定が困難であるため断定することは避けるにしても、各個体それぞれの使用に伴うカム軸やプランジャー先端面の摩耗度の違いを考えれば、両者の操作性の違いに影響を及ぼすほどの大きな要素とはなっていないようだ。
プランジャーについては、細い軸部分の長さに両者で0.5mmの差があったが、もともと太い軸に細い軸を差し込んであるだけの構造なので、やはり個体差の域を出るものではない。重量についても、ビンテージ品が2本で85g、最終型が85.3gで、摩耗の違いを考えれば両者は同一と言ってよいだろう。スプリングについては、ビンテージ品は初期使用者の踏み癖による圧縮のためか左右で全長がごくわずかに異なり、それぞれ79.5~79.7mm、最終型の場合は左右ともに80mmで、やはり両者に差異はほとんど無い。スプリング本体の径も8.7mmで同一だった。ただし、スプリング線一本の径については、手持ちのノギスでは精密な計測が困難なため、行っていない。
フットボード(フロアープレートを含む)の重量については、ビンテージ品4台を計測したところ、それぞれ485.5g、481g、476.5g、473gで、436.5g(2本リブ)、459.5g(WFL・2本リブ・ノンスキッドパッド付き)で、最終型(ブラック塗装仕様)3台の場合は(一台はのちに譲渡)、それぞれ494g、486.5g、そしてフットボード裏面を研削した個体については切削前に重量を計測し忘れたが、研削後の重量は491gだった。
2本リブの個体2台を除き、敢えて重量を平均すると、ビンテージ品が「479g」、最終型が「490.5g(裏面を研削した個体を含める)」で、ビンテージ品のほうが「11g程度」軽くなっていた。ただし、これはフットボード単体での計測値ではなく、フロアープレートの重量を含め、しかも両者の塗装仕様の違い、プレートの厚みの違い、細部各パーツの違い等の要素を一切考慮せずに単純比較したものなので、あくまでその点を念頭に置いたうえでの参考としていただきたい。
そのフロアープレートについてだが、ビンテージ品にはプレートがグニャグニャに曲がったものをよく見かけるが、当方で入手した一台目のビンテージ品がやはり多少不規則に歪んでいたため、工具を使ったり手で圧迫したりしてほぼ元の形に修復した。ところが、ブラックに塗装された「最終型スピードキング」の場合、かなり硬いために手先だけでプレートを曲げることはほぼ不可能であり、変形した個体はほぼ皆無であろう。そこで、両者の厚さを測ってみたところ、ビンテージ品の場合が1.8mm、最終型の場合が2.2mmで、最終型は剛性をより高めてあることがわかった。さらに、フロアープレート単体での全長は、ビンテージ品が200~204mmと個体によってばらついているのに対し、最終型は204mmで統一されているようだ。
フロアープレートの両者での厚みの違いからすれば、当然ビンテージ品と最終型とではフットボード単体での重量差はさらに縮まるはずである。フロアープレートのついたままフットボードの重量を量ると個体差があるが、フットボード単体として見た場合、その重量はビンテージ、最終型両者にほとんど違いは無く、そのためフットボードが両者の操作性の違いに影響を与えているわけではないと言える。
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■操作感の違いはどこから来るか
以上のように、全体的にはビンテージ品と「最終型」とに操作性の違いに結びつく大きな仕様の違いというものは見られなかったのだが、ただ、スプリングの巻き数がビンテージ品4台が全て「27+α」、最終型3台が全て「26+α」で、従前ビンテージ品のほうが踏み込みが軽いと言われてきた点に、やはりスプリングの巻き数の違い、さらに言うならスプリングの特性の違いと、別項に記載した機構上の違いといった要素が深く関係しているようだ。巻き数が異なるにもかかわらずスプリング本体の重量には両者に差異が無いので、スプリング線一本の径が両者でごくわずかに異なり、その特性にも大きく影響を及ぼしていることが推測される。
スプリングの特性の違い以外にも、フットボード先端にある、コネクティング・リンク(連結バー)を掛けるためのスプリングピン(ロールピン)単体では直径3.2mmであるが、「最終型」には「ブッシュ(bush=プラスチック製の円筒管)」が装着されており、その直径は4.8mmある。また、コネクティング・リンクの長さは70年代のものは「最終型」より5mm前後長く、フロアープレートの全長の違いもフットボードの傾斜角度やビーターの振り角度の違いとして反映している。
■カムとプランジャーの摩耗について
どの程度ペダルが使い込まれているかにもよるが、スピードキングは使い込んでいくうちにカムの軸とそこに接触するプランジャー(棒ピストン)の上端部分がともに摩耗し、奏者のクセや奏法に徐々にスピードキングの側が馴染み、そのアクションも徐々に滑らかになってくる。この駆動部の摩耗がどの程度進んでいるかは、ペダル本体の外見から判断することはできない。ペダル本体の外見がボロボロでも、カムやプランジャーがほとんど摩耗していない場合もあれば、逆に外見が綺麗でも相当にそれら部位が摩耗してへたっている場合もあるだろう。
プランジャーの場合は、ペダル本体底部にある「スプリングテンション調整ネジ(P-1260)」を外せばスプリングとプランジャー両者を取り出すことができるので、プランジャー先端の摩耗具合を実際に確かめることができるが、プランジャーを元に戻すには一定方向にポストに差し込み、カムにうまくかみ合わせる必要があることから、本腰入れてのメンテナンスを実施する意思が無い限りはこの作業はお勧めしない。また、カムについても、カムにフランジが付いていないタイプであれば、シーリングキャップを外せばある程度カム軸の磨耗具合が確認できるが、フランジが付いているタイプの場合、フランジが遮って磨耗具合を視認することが難しい。
■プランジャーやカムの破損について
当方で所有するビンテージ・スピードキングの中に、一部プランジャーの細い軸部分が根本から少し傾いたものがあった。ポスト内部にはペダル本体の底面から約3cmの深さまでネジ溝が切ってあり、「スプリング調整ネジ(adjustment
screw):P-1260」を最奥まで締め込むと、ペダルを踏み込んでいないニュートラルな状態で、調整ネジとプランジャー下端とのクリアランスは約6~7mmとなる(精密な測定は行っていないため、あくまで目安としてください。以下同様)。通常使用においては、ペダルを踏み込むとプランジャーは2mm程度押し下がり、それでも調整ネジとのクリアランスは4~5mmあり、プランジャーを損傷することはないはずだ。ところが、バスドラムからペダルを外し、ロッカーが反転するまで手で無理やり回転させると、プランジャーは最大で7mm程度押し下がるので、調整ネジが最奥までねじ込まれていた場合、プランジャーの下端が調整ネジと接触する恐れがある。そこまで調整ネジを締め込んだらカムとプランジャーやカムが破損し、パーツの交換修理が必要になる恐れも出てくるので、スピードキングの駆動部の構造を自身でもある程度確認しておくとよいだろう。
■ピンパンチ(Pin punch)
もしカムやベアリングを外すといった目的で駆動部を分解する場合には「ピンパンチ=Pin punch(ピンポンチともいう):3mm径」という道具を入手し、ペダルに打ち込まれた「スプリングピン(ロールピン)」にそれを当て、ハンマーで叩いて抜き取る。ただ、細かく馴れない作業であるため、スプリングピンを抜く際にも、再度打ち込む際にも、ずれたピンパンチの先端によって打ち込む穴の周辺に傷を付けてしまう恐れが多分にあり、よほど必要な場合以外、この作業はお勧めしない。
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■ビーター
・上にある画像は「CHICAGO」が刻印されたビーター(L1286(ハードフェルト))4本のうちの2本。左が推定80年代中・後期のものと思われるモンロー製ビンテージ・スピードキングに付属していたもの。右は年代不明。キャップの形状は、右の個体はは現行品(販売中!)と同様に「R(Radius=レイディアス=語源的には「半径」だが、製造用語としては「丸みをつけること」「カドをとること」の意)」がとってあるが、左は直線で形成されている。刻印されている文字の書体も両者で異なる。重量は左が80.0g、右が83.2g。ただし、新品時の重量より若干目減りしているだろう。フェルト部分の高さは右のほうが2.5mmほど高く、現行の’L1286’と比べると5mmほど高さがかさむようだ。スピードキングは本体の塗装、メッキの状態、超ネジの形状、ビーターに至るまで、年代により総じて細部の仕様にかなりバラつきがあり、脈絡がはっきりしない。
■ビーターロッド
・推定80年代中・後期に製造されたと見られるビンテージ・スピードキング(モンロー製)に付属していたビーター(L1286・CHICAGOの刻印)だが、ビーター脱落を防止するための措置だろう、驚いたことに標準仕様としてロッドの末端45mmが平滑に切削処理してあった。この切削がロッドの両面に、計二箇所施されている。自分自身、これまで金属やすりを使用して同じような切削を施してビーターの脱落を防止してきたが、実はラディック社自身も既に過去、ユーザーの意見・要望を採り入れ、製品にそれをフィードバックさせるという姿勢を持ち実践していたことに大いに感心させられたのだが、コスト削減のためだろうか、その後ユーザーにとって重要なこの措置が継続されず取りやめられてしまったのは残念だ。ビーターの脱落防止措置によりスピードキング本体の評価も肯定的に見直されるはずなのに、売り上げ自体にはさしたる好材料とはならなかったということなのか、とにかくその判断の理由については不明である。
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■塗装の色調
・塗装については経年による変色も考えられるが、当方で所有する6台については、広い意味でシルバー(もしくはシルバーグレー)という点で共通してはいるが、それぞれ色調や風合いが異なる。上の画像は二本リブ仕様の2台を除く4台を撮影したもので、①は恐らく1980年代後半のモンロー製(ただしシカゴ仕様)で、色調は最も強く黄色味を帯びている。②はビンテージ品としては最初に入手した個体で、①に比べわずかに黄色味を帯びており、④が最も濃いシルバーとなっている。また、シルバーの塗装が剥げやすい点については全てのビンテージ・スピードキングに共通しているようだ。
※②にはフープスペーサー、③にもセンターにのみフープスペーサーを装着してある。
■スプリングピンの打ち込み穴
・上の画像での本体の並び順に対応させて並べてある。塗装以外の相違点としては、トウクランプを本体に固定するためのスプリングピン(ロールピン)を打ち込むための穴径が、右側(奥側)は四台とも同じ小さな径で共通しているが、①と②のみ左側(手前側)だけが大きめの径になっている。
■ところで、「コネクティング・リンク」、つまり「連結バー」であるが、スピードキングのビンテージ品(50~80年代初頭に生産されたと思われる個体)に、本来は真っ直ぐな細いプレートであるにもかかわらず「へ」の字の形に曲がったものを、特に海外のオークションでは非常に多く見かける。これは恐らくビーターの振りが重く感じられるなどし、ビーターを短くセットしようにもロッドがコネクティングリンクに当たってしまい、スピードキングの制御においてさらにそれが障害となり、その対処としてペンチか何かの工具で強引にプレートが曲げられたものではないだろうか。「へ」の字の形が意外に揃っているものが多いので、あるいはそのような措置をサービスとして行うショップでもあったのだろうか。ビーターロッドを研削するほうが対処としては適切で簡便だと思うが、誰しも自身で研削作業したり工場に依頼したりまでして積極的に対処しようとは思わないだろうから、金属やすりをで研削する簡便な対処であっても、当時からその方策が知れ渡ることが無かったのだろう。いずれにしても、「『へ』の字リンク」はスピードキングの制御には長年多くの人たちが苦闘してきたということの一つの証左と言えるだろう。
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■フロアープレートの裏面
・本体の画像での並び順と対応させてフロアープレートを並べた。フロアープレートの塗装も本体の色調、風合いと一致する。中古品の中には本体とフロアープレートとが組み違えてあるものや、異なった年代のパーツが組み合わされて出品されているものもあるので、入手を検討するうえでは、ある程度色調の見比べやパーツごとの年代鑑定をすることをお勧めする。
ヒール部を固定する赤い矢印の部分を「ロッド」と呼ぶことにして、このロッドを受けるプレート側の穴の広がり方と、フロアープレートのヒール底部の塗装の剥げ方を見れば、ペダルの使用状況がある程度推測が可能だ。②の軸受け穴は相当に使い込まれた形跡があり、左右のうち特に左の軸受け穴がシンバルの「キーホール」のように縦に2mm近く広がってしまっていた。左右の穴の広がり方の違いは、恐らく初期オーナーの踏み癖によるものと思われ、使用に際して特に支障は無いが、ガタつきは多少大きくなる。
また、②の本体側でも、カムやプランジャーの磨耗の度合いに左右で大きく偏りを生じていた。特に左側のカム軸とプランジャー上端の磨耗が激しかったのだが、このカム軸とプランジャー上端の磨耗が、コンプレッション・スプリングの特性の違いやフロアープレートの全長の違いといった要素に加え、スピードキングのアクションを軽く滑らかにする要素となっている。実際、当方で所有する6のビンテージ品の中で、最も使い込まれて一見ジャンク品に近いこの古びたスピードキングが、実は最も操作が軽快かつ滑らかで使いやすく、自然とこれをメインに使用するようになっている。
(記:2015年10月)
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■機構的な違い
・フロアープレートの全長が200mmである「シカゴモデル(#2機)」の場合、ビーターを垂直に立てるとコネクティングリンク(連結バー)もまた垂直になる。
・「最終型(モンロー製)」のフロアープレートの全長は「シカゴモデル(#2機)」のものより4mm長い204mmであり、フットボードも数ミリメートル後方に位置する。フロアープレートの全長の違いはフットボードの位置や傾斜角度に影響し、フットボードを踏み込んだ際のビーターの振り角度がシカゴモデル(#2機)より大きくなる。
50~80年代初頭に生産されたスピードキングのコネクティング・リンク(連結バー)は全長が75mm前後であるのに対し、80年代中期以降、最終型に至るまでのコネクティング・リンクの全長は約70mmであり、この全長の違いとともに、フットボード先端に装着されているプラスチック製のブッシュ(bush=円筒形の部品)もまた、ニュートラル時のフットボードの傾斜角度を急にする要素となっている。
・フロアープレートの全長はわずか4mmの違いだが、これがフットボードの踏み込み度合いに対するビーターの振り角度を機構的に大きく変えている。以前(2014年4月)、モンローモデルのフットボード裏面を「ディスク砥石」でえぐるようにして削り、フットボードの軽量化を図って操作感がどう変わるか実験してみたものの、まるで変化が感じられなかった理由はこのような点にもあったのだ。
・ビンテージ品にはフロアープレートの前半分の形状が崩れているものをよく見かける。フロアープレートの厚みは「最終型」のほうが0.4mm厚く、その分当然重量も増す。剛性が高められていることで、ビンテージ品とは異なり、手では簡単に曲げられない。両者の重量差については別項にも記載したが、フロアープレートの重量差を差し引けば、モンローモデルとシカゴモデルとでフットボード単体の重量に差異はほとんど無いと考えられ、両者の操作性の違いはフットボード単体の重量の違いから来るものではない。
・「最終型」には3.2mmのスプリングピン(ロールピン)に直径4.8mmのプラスチック製のブッシュが装着されており、この太い径のパーツがフットボードの傾斜角度やアクションにも影響を与えている。
・コネクティング・リンクの(連結バー)の上端には、隙間からわずかにしか見えないが、「最終型」だけでなくビンテージ品にもプラスチック製のブッシュ(bush)が装着されている。二本リブ仕様の2台(WFLモデル1台と、推定1960年代末製造の1台)には、プラスチック製ではなく金属製のブッシュが装着されていた。
・スプリングテンションを「最弱」にし、フットボードに負荷をかけないニュートラルな状態からコネクティングリンクを垂直に立てたときのビーターの振り角度を両タイプのモデルで比較してみたところ、「17°」の差あることがわかった。
・上記シビンテージ品「#2機」とは別の「#1機」は80年代中・後期のモンロー移行期における個体と推定されるが、この個体のフロアープレートの全長は205mmで、「最終型」よりもさらに1mm長くなっている。ビンテージ品4台のフロアープレートの全長は、「#1機」が205mm、「#2機」が200mm、「#3機」が203mm、「#4機」が204mmで、この四台以外に、WFLモデルが「204mm」、推定1960年代末仕様の個体がやはり「204mm」で、個体によりかなりばらつきがあった。
・同じビンテージ品であっても、「#1機」と「#2機」とでフロアープレートの全長が5mm違うわけだが、ビーターの振り角度を比較したところ、「#2機」が「58°」であるのに対し、「#1機」は「78°」もあり、両者には何と「20°」もの違いがあった。(バスドラムのヘッド面までの振り角度ではなく、ニュートラル状態からコネクティングリンクが垂直になるまでフットボードを押し込んだ場合のビーターの角度)
・ 「最終型」のフレームにビンテージ品「#2機」のフットボード(フロアープレートを含む)を換装すると、フットボードの位置が数ミリメートル前方にシフトし、ニュートラルな状態でのビーターの位置はほとんど変わらず、フットボードの傾斜も急なままだが、コネクティングリンクを垂直に立てたときのビーターの角度は「#2機」とほぼ同じになる。それだけでなく、操作感も「#2機」に近づき、かなり軽くなる。また、巻き数(特性)の異なるビンテージ品のスプリングを換装すると、操作感がよりビンテージ品に近づくことがわかった。
※ビンテージ品のフレームに最終型のフットボードを装着するにはフットボード先端にあるブッシュを外さなければ装着できない。ピンパンチを使用してピンを外そうと試みたが、かなり硬く固定されており、結局外すのを諦めた。
■操作感
・ビンテージ品の「#1機(フロアープレート全長:205mm)」と「#2機(同:200mm)」、そして、「最終型」の本体フレームに「#2機」のフットボード(フロアープレートを含む)を換装し、これら3機で操作感を比較してみた。
①:「#2機」は従前より繰り返しているとおり、最も動作が軽く滑らかで、ビーターの重量をほとんど意識せずに制御でき、操作性が最も高い(ただし、所有機の中で最もガタつきが大きいためノイズも激しい)。
②:続いて制御が楽なのは、やはりシカゴモデルの「#1機」で、フロアープレートの全長が205mmと「#1機」より5mmも長いので、きっと動作がやや重く制御も難しくなるだろうと予測していたが、「#2機」ほどではないにせよ、足に吸い付いてくるような感じやビーターの打ち込み速度など、シカゴモデルに共通した操作性、制御性はしっかりと備えていると感じられた。「#2機」より若干ビーターの重みを感じたが、制御のしやすさからすればさほどの問題には思えなかった。
③:「#2機」のフットボードを換装した「最終型」については、純正仕様の「最終型」には感じられない動作の軽さや制御性を感じるが、やはりコンプレッション・スプリングの特性の違いから来るのだろう、「最終型」に特徴的なビーターの重みが若干だが意識され、その点を除けば「#1機」に近い操作感だと思われた。コンプレッション・スプリングをビンテージ品のもの(巻き数27)に交換すると、②の#1機とほとんど操作感の区別がつかなくなる。
※記:2015年11月
※追記:2015年12月7日
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■スピードキングの入手
先述したとおり、スピードキングを入手する場合、最低限の条件として、ビーターとヘッド面との距離を考慮したうえで「ロング・フィン仕様(フープをかませる奥行きが浅い=50~1974年頃の仕様)」を選ぶか、あるいは「ショート・フィン仕様(フープを深くかませる=1974年頃~最終型(モンロー仕様))」を選ぶかしなければならない。フープスペーサーを作成する心づもりがあるならば、「ショート・フィン仕様」のスピードキングを選択すればよいし、踏みしろが深めになっても制御、体力、脚力に自信があれば「ロング・フィン仕様」のスピードキングを選択してもよいだろう。また、いずれの仕様にしろ、バスドラムのフロントを持ち上げる高さを変えることでも、ビーターとヘッド面との距離を若干調整することができるので、その点も念頭に置くとよい。
さらに、ビンテージ品、「最終型」とを問わず、外見的にはボロボロであっても、良い意味で使い込まれ、カム軸やプランジャーの先端が適度に摩耗し、スプリングとのバランスもうまくとれ、アクションも軽く滑らかで足と一体化するように自在に操作できる逸品と言えるスピードキングが存在する可能性があるが、ただ、それを入手した際に、そもそもスピードキングの特性を把握し、セッティング条件を調整できなければ、もしそれが逸品であっても、逸品であることそれ自体に気づくことなく、そのままお払い箱としてしまうケースが十分に考えられる。あるいはまた、外見的に綺麗で、機械的にも上記パーツ類が十分に熟(こな)れておらず、まだ総合的なバランスがとれていない状態にある場合、もしこのようなスピードキングを入手しても、やはりただ使いづらいという実感を抱くのみで、使い込んでスピードキングを奏者側に馴染ませる以前に、そのままペダルをお払い箱にしてしまうケースも有り得るだろう。
スピードキングの中古品を入手する前に外見以外の本来的な意味でのコンディション、機能的コンディションを見抜くのはまず不可能であり、また、入手してからでさえ、スピードキングの特性とセッティング条件をよく踏まえておかないと、他の一般的なペダルとの対比的視点のみによって、ただ「使いづらい」「実用的でない」といった一面的評価が下され、その本来的な魅力を見出し、ポテンシャルを引き出す機会そのものを逸してしまう可能性がある。そういう意味では、「名機とやらをいっぺん使ってやるか」「BONZOと同じペダルだからな」くらいの動機や好奇心だけでスピードキングに手を出すのは冒険と言えるかもしれない。
「最終型」にしろビンテージ品にしろ、外見によらずよく使い込まれていない個体が意外と少なくないと考えられるので、入手した当初は自由にならず使いづらいと感じられると思うが、スピードキングの特性を踏まえたうえで、各種セッティング条件を詰めていきながら時間をかけてしっかりと使い込んでいけば、カム軸とプランジャー先端の磨耗も進み、やがて奏者の奏法や踏み癖にも徐々に馴染んでいくと思われる。そして、スピードキングを踏んでいて心から楽しめ、自由に制御できるようになったその時、スピードキングはあなたにとっての本当の名機となっているに違いない。
※記:2015年9月20日
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■チェックポイント(ビンテージ・スピードキング)
オークション等では、商品の状態判断に不都合な情報を敢えて明示しない出品者が多いので、入札を検討する前に必要最小限の情報確認をすることをお勧めする。
・年代:別項に検証したとおり、シルバー塗装されたスピードキングは「W.F.L.モデル」を除くと、1960年代終盤製から1990年代製まで幅があるため、予めそれぞれの年代ごとに仕様の違いを確認しておくことをお勧めする。
・フィン:「ショート・フィン仕様」か「ロング・フィン仕様」かを確認する。「ショート・フィン仕様」の場合、手持ちのドラムのフープ幅が40mmだとペダルのロッカー末端がバスドラムのヘッド面に接触するため、別途「フープスペーサー」を自作するか、毎度割り箸を一本挟み込む必要がある。割り箸一本を挟むだけでもスペーサーとしてのとりあえずの機能を代替できるが、より精密な制御には向かないかもしれない。逆に「ロング・フィン仕様」の場合は、フープ幅によってはバスドラムのヘッド面とペダルとの距離が離れすぎて「踏みしろ」が深くなり、操作、制御が困難になる可能性もある。また、疲労度もかなり増す。
・ビーター:ラディック純正品かそうでないかを確認する。また、フットボードのロゴが「Ludwig CHICAGO」でもビーターが「MONROE」である場合があるので、その点を確認する。さらに、ビーター固定用の蝶ネジがボルトに替えられていないか確認する。蝶ネジが装着されていても、前オーナーがボルトを使用してビーターを固定していた場合、ネジ山が多少緩くなっている可能性がある。ただし、この点を入札前に確認することは困難だろう。
・シーリング・キャップ:フットボードやビーターに「CHICAGO」の刻印があってもシーリングキャップが「MONROE」である場合があるので、その点を確認する。
・フレーム本体:シルバーの塗装は剥がれやすく、大概のビンテージ品は外見が綺麗ではない。スプリングやカムが格納されたポスト2本が外側に向けて広がりすぎていないか確認する。
・フットボード:フットボード表面の摩耗具合を確認する。外見上は汚くても、オーナーがペダルに使い慣れないために使用頻度の低いスピードキングが少なくない。また、フットボード裏面の「筋状補強(リブ)」が2本タイプか4本タイプかについて確認する。2本タイプは4本タイプよりアクションが一段軽くなり、両者の操作感に少なからず違いがある。パワフルな演奏には4本タイプのほうが向くが、2本タイプも4本タイプもスピーディーな連打には相当な訓練が必要となる。
・フロアープレート:本来は段差が設けられているが、ビンテージ品はその厚さが1.8mmしかないため、段差が崩れ、歪んでいるものが多い。ただし、操作性にはほとんど影響は無い。また、フットボードを固定するための「ロッド=軸」を通した穴にキーホールのような極端な広がりが無いか確認する。多少の広がりは大抵生じており、多少大きめの穴であっても操作性にはさほど影響無い。また、裏面に「Non-skid
pad(滑り止めパッド)」が装着されている場合は、1960年頃から1980年頃の期間に製造された個体である可能性があるが、「Non-skid
pad」は補充部品でもあるため、60年代、70年代ビンテージ品を判定するうえでの確実な基準となるわけではないので念のため。
・コネクティング・リンク:本来は真っ直ぐなスチール・プレートだが、厚さ1.6mmだった1980年頃以前のコネクティング・リンクは手でも曲げることが可能で、ビーターロッドとの接触回避のためにーナーによって「くの字」に曲げられたものが少なくない。80年代中期以降に製造された「スピードキング」のコネクティング・リンクは厚みが倍の3.2mmに増強されており、それ以前のコネクティング・リンクのように簡単に曲げることができない。尚、これはあくまで個人的な見解だが、当ページ冒頭、「スピードキングがものにできない……!!」でも説明したとおり、スピードキングはその機構や動作の特性からビーターを「最大長」にしたほうが操作性がよく感じることが多いので、操作しづらいからといってコネクティングリンクを無理にへし曲げてまでビーターを短くセットしても(海外では非常に多い)、実際には期待するほどの効果は得られないだろう。
・コンプレッション・スプリング:「ビンテージ・スピードキング」と「最終型スピードキング」との操作性の違いに大きな影響を与えている要素の一つと考えられるのが「コンプレッション・スプリングの巻き数」だが、これを事前に出品者に確認することは困難だ。また、よほどのことが無い限りはビンテージ品のスプリングが「モンロー仕様」のスプリングに交換されていることはないだろう。
・カム:当方が新品で2011年に購入した「最終型スピードキング」には「フランジ」が付き、別の「最終型」の個体には付いていなかったことからすると、「フランジ」の無いタイプは生産終了を迎える直前の数年間だけに限定される仕様なのかもしれない。ビンテージ品に「フランジ」の付いていないカムが装着されているとすれば故障等により近年に交換された可能性があるが、これは希少ケースと言ってよいだろう。
・プランジャー(押し棒):事前に確認するのは困難だが、細い軸部分の根本が多少傾いている場合がある。ただし、折れていなければ機構上、操作上、影響は無い。
・その他:ヒールクランプ固定用のネジとワッシャーは付いているかどうかを確認する。無い場合は楽器店に在庫の入手が可能かどうかを問い合わせるとよい。
※記:2015年12月10日
■Pearl #810 Bass Drum Kick Pedal
※追記:2022年2月:エインズレイ・ダンパーが当機「パール#810」を使用している画像が複数発見できました。サイトのリニュアル後に内容を反映させます。
・1977年購入。1980年代初頭より2010年までドラムをやめていたが、今も保存だけはしてある。名器である、といった評判は、これまでついぞ耳にしたことがない。純正品のベルトが腐っていたので、工業用ベルトで代替。2014年4月に久しぶりに当機をスタジオ練習の際に一時的に使用した。ラディックのスピードキングと比べるとキックする際に力の入れ方を調整しやすいが、パワー不足と、レスポンスが少々良くないように感じ、このペダルは今後も使用することはないだろうと思った。
■Pearl #810
■駆動シャフトの磨耗
■Pearl #810
・1977年に購入後、使用1年半ほどの間に、スティール製の駆動シャフトの末端部分が摩耗し、緩みが大きくなったため、確か1980年前後に、薄い金属片を噛ませて応急処置をした記憶がある。
■金属片
・シャフト部分に噛ませた金属片。それでもまだビーターの回転角度に遊びが多少できる。
■シャフトの磨耗
・使用に伴い、シャフトがかなり摩耗してしまっている。このままで使用すると、ペダルの踏み込みの際に緩みに近い遊びが出てしまい、キックペダルとしての用途を果たせない。
■アルミ製パーツ
・意外にもアルミ製のパーツのほうは、駆動シャフトを受ける部分がほとんど摩耗していない。
■空回り度のチェック
・パールのキックペダル、#810をオークションで入手されるご予定の方は、駆動ベルトの状態以外にも、駆動シャフト末端の摩耗具合を品質上のチェックポイントにされると宜しいでしょう。チェックの仕方は、ペダルのフットボードを手で軽く押した際に、駆動シャフトの末端部がどの程度空回りするかでわかります。1ミリ程度であればまだ許容範囲ですが、それ以上空回りするようであるならフットボードの踏み込みにおいて「遊び」が相当にあり、補修が必要だと見てよいでしょう。
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■Pearl P-3000D ELIMINATOR Demon Drive
■デーモンドライブ
・2011年3月購入。
・いろいろ調整したり踏み方を変えてみたりしたが、自分の技量ではまったく使いこなせない。「これが現在の世界最高水準のキックペダルというものなのか……?」というのが正直な感想。体の一部になかなかなってくれようとしないので、別次元の道具のような印象。遊びが一切無いので、キック時以外の時にはビーターがやたらにブルブルと震えて安定せず、打音がばらつく。意図せずヘッドに当たってしまうこともしばしば。恐ろしく踏みづらい。力加減もコントロールも難しく、まったく思い通りに操作できない。よほど時間をかけて操作に熟練する必要があるのだろう。
(記:2012年4月)
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