DrumsRototom

ロートタムサウンドの魅力


INDEX
ロートタムサウンドの魅力ロートタムがフィーチャーされた名曲、 ’EXPRESSO
’EXPRESSO' のドラムスコア ~’EXPRESSO’のロートタムサウンドを楽しむ
PIERRE MOERLENピエール・モーレン
ロートタムを使用した海外アーティスト (ビル・ブルーフォード、アラン・ホワイト、テリー・ボジオ、アンディー・ウォード、ニック・メイスン、ベヴ・ベヴァン、フィル・コリンズ、ローレンス・トールハースト、ヴィニー・カリウタ、アレックス・ヴァン・ヘイレン、ダニー・セラフィン、ロジャー・テイラー)
ロートタムの使用法

仕様・使い勝手
パール製ロートタム (1981~1990年)
チューニングの緩み対策 (3/8インチのナット)
ロートタム専用スタンド(RMS-30) (廃番)
タムホルダーのカット (作業時間はわずか5分)
ロートタムのセッティング ~タムホルダーとアダプター
ロートタムのケース (大型収納トートバッグ)
クロームタイプのロートタム (規格の比較)

パールドラム・モデル年表

       








ロートタムサウンドの魅力

ロートタムサウンドの魅力が最大限に引き出された名曲
Gongのアルバム、’Gazeuse!’(ガズーズ!:1976年)に収録されている軽快でドライブ感溢れたジャズロック・ナンバー。インストルメンタル。

・ロートタムは全て音階チューニングされ、サビのパートでの沈み込むように、あるいは巻き上がるようにダイナミックに奏でられるタムロールやフィルインの各フレーズが与える印象が鮮烈である。また、メロディックな反復フレーズや、6、8、10、12インチをショットする際におけるオープン・リムショットによる金属的トーンを生かした破壊的なアタック音等、ロートタムサウンドの魅力が最大減に引き出された名曲である。因みにギターは当時GONGのメンバーだったアラン・ホールズワースによる演奏である。

・作曲・ドラム&ロートタム:ピエール・モーレン(2005年5月3日逝去)
・ギター:アラン・ホールズワース(2017年4月16日逝去)


       


"EXPRESSO"仕様

・2018年5月22日(火)撮影

日本に限らず、ロートタムといえばアクセント効果、あるいはビジュアル面での効果を狙った用途がもっぱらだが、ロートタムというユニークなパーカッションの本来的な魅力や効果が充分に引き出された楽曲はほとんど思い当たらない。ロートタムを導入後、「ペチペチ」とした薄っぺらなサウンドに大した必要性を感じられなかったり、一時的には用立ててもそれ以上活用しきれず、当初の魅力が薄れてすぐに飽きてしまったりするケースが多いようだ。

ピエール・モーレン(Pierre Moerlen)はこの曲、’EXPRESSO’で
ドラムキットに12台のロートタムを組み込み、音程の低いほうからそれぞれ「Lower C、Lower F、Lower G、C、G、B♭、Upper C、Upper D、Upper E♭、Upper F、Upper G、Upper A♭」で音階チューニングを行い、意図されたフレーズ構成によって鮮烈かつダイナミックなロートタムサウンドを炸裂させている。沈み込むように、あるいは巻き上がるようにダイナミックかつ流麗に奏でられる’Expresso’でのロートタムサウンドの秘密の一つが、この音階ピッチにあったのだ。ドライブ感溢れる楽曲の中で、まるでロートタムが生命を与えられ、躍動し、高らかに歌っているかのようだ。

※ロートタムのトーンの違いにより、①と②のサイズとセッティングを変更しています。
※「Moerlen」の発音、表記は「ムーラン」「モーレン」「モーラン」などが一般的で、かつ表記が統一されていないが、標準フランス語での発音は「モーレン」に近いため、このサイトでは「モーレン」と表記します。ただし、ピエールの出身地であるフランスのアルザス地方での言語である「アルザスドイツ語」での発音は「メルリン」となります。

       


’EXPRESSO’ ~ サビの部分でのロートタムの音階

■ロートタムのサイズと音階:
8インチ(Upper A♭)、②6インチ(Upper G)、③8インチ(Upper F)、④8インチ(Upper E♭)、⑤10インチ(Upper D)、⑥10インチ(Upper C)、⑦10インチ(B♭)、⑧10インチ(G)、⑨12インチ(C)、⑩14インチ(Lower G)、⑪16インチ(Lower F)、⑫18インチ(Lower C)
※ロートタムのトーンの違いにより、①と②のサイズとセッティングを変更しています。

       


■GONG の’GAZEUSE!’に収録されているロートタムを使用したその他の楽曲

’Percolations Pt.1 & 2' by GONG (ピエール・モーレン作曲)
・1976年に発表されたGONGのアルバム、「GAZEUSE!(ガズーズ!)」に収録。インストルメンタル。
・ピエール・モーレンはドラムキットに組み込んだロートタムの他にビブラフォン、マリンバ、グロッケンシュピール、ティンパニを演奏。静謐かつ清澄な時空を浮遊するパート1を経て、音階チューニングされたロートタムが表情豊かに歌い出し、掛け合い、疾走するドラマチックな組曲である。ドラムソロのパートでも各所で音階を意識したロートタムのフレーズが楽しめる。ヘッドは中・高音部が「コーテッドヘッド」、低音部に「CSヘッド」が張られている可能性があるが、まだ分析が済んでいない。因みに曲の前半で効果音的に演奏されているバイオリンとペダル・スティール・ギターは、当時GONGのメンバーだったアラン・ホールズワースによるものである。


2015年1月に入手したピエール・モーレンのサイン
残念ながら我がドラムの師、ピエールは2005年に53歳の若さで亡くなっている。


’Shadows of’ by GONG(作曲・ギター:アラン・ホールズワース)
・1976年に発表されたGONGのアルバム、「Gazeuse!(ガズーズ!)」に収録。インストルメンタル。この曲でもロートタムは音階チューニングされており、ヘッドは「コーテッドヘッド(ambassador)」が使用されているようだ。また、フルートでの間奏部ではロートタムを打撃するとともに瞬時に回転させることで得られる急激なピッチ変化を効果音的に使用したパーカッションサウンドが楽しめる。この回転効果音のほうはトーンをマイルドにするためにクリアーヘッドが使用されている可能性がある。

Gong のアルバム、Gazeuse!(ガズーズ!・1976年)’では、ドラム以外にもマリンバやヴィブラフォンなどの鍵盤打楽器も自在にプレイするマルチなパーカッショニストであるピエール・モーレンによる、ロートタムの音質や特性を活かした、さらに音階チューニングによるメロディックで効果的なフレーズや演奏を聴くことができるので、ロートタムの効果的な使用法を模索しているドラマーやパーカッショニストにとって参考になる点が多々あろう。


■アルバム、’Gazeuse!’(1976年)が発表された頃に行われたGongのライブ音源(ブートレッグ)を聴くと、それまでと同様のスタンダードなドラムセットでのサウンドは確認できるが、ロートタムのサウンドが確認できなかった。特にライブでは、’Gazeuse!’に収録されている曲を演奏する度にロートタム一式のチューニングやセッティングを変えるというのはほぼ不可能であり、また、ロートタムのピッチが不安定であることも問題としてあり、さらに、’Gazeuse!’以外のアルバムに収録されている曲を演奏するうえでも不都合があるのだろう。ピエールが当時ロートタムを使用して演奏している写真やレコーディング時の写真が全く公開されていないのが残念だ。



Drum score of EXPRESSO by GONG 1976

課題曲 ’EXPRESSO’ のセッティングポジション

・ ’EXPRESSO’ 仕様。
・2018年5月22日(火
)撮影

・ロートタムが多点(12台)となり、三段積みとなってしまった。

・原曲のトーンの違いを参考に、音程の高い「Upper A♭」を8インチに、それより音程の低い「Uppe G」を6インチに変更した。
・フレーズ連打等の都合により、ミドルレンジの「C(14インチ)」を右手に、また、「Upper G(6インチ)」と「Upper A♭(8インチ)」をスイッチするなど、一部セッティングを変更した。
・6、8、10インチにはミュートを行わず、12インチ以上のヘッドにはガムテープを使用してミュートを行っている。ヘッドは原曲のトーンと同じ「REMO Control Sound」。
・ピッチを固定するため、ナットを使用してホイールが回転しないようロートタムのボトム側リムを固定している。固定法については別項に記載した。
・キックペダルはラディックのスピードキング(W.F.L.スピードキングを含めた各年代製スピードキング、プレミア250S等で使用感を比較中)。
・スネアドラムはラディックのLM400(推定1976年製・REMO Coated Emperor)。
・ハイハットスタンドはDW7500(2020年よりTAMA HH205Sに変更)、ツインタムスタンド類はパール、その他はレンタルスタジオの備品。
・チャイナシンバル(Paiste 2002 China 20”)は現在スタジオに持参せず。
・原曲ではシンバルが計4枚使用されている可能性があるが、分析がまだ済んでいない。

■チューニングピッチ

・12台のロートタムが使用され、音程の低いほうからそれぞれ「Lower C、Lower F、Lower G、C、G、B♭、Upper C、Upper D、Upper E♭、Upper F、Upper G、Upper A♭」で音階チューニング。

■ロートタムのサイズ
・原曲で使用されている各音階でのロートタムのサイズは不明だが、トーンや音質、響鳴状況から「Lower C(18インチ)、Lower F(16インチ)、Lower G(14インチ)、C(12インチ)、G(10インチ)、B♭(10インチ)、Upper C(10インチ)、Upper D(10インチ)、Upper E♭(8インチ)、Upper F(8インチ)、Upper G(6インチ)、Upper A♭(8インチ)」と推定し、同様のセッティングを行った。

■ロートタムのヘッド
・Remoの「CSヘッド」、「ピンストライプヘッド」、「クリアヘッド(エンペラー)」、「コーテッド(エンペラー)」「コーテッド(アンバサダー)」「コーテッド(ディプロマット)」等の各種ヘッドでサウンドを比較したところ、硬質なアタック音、トーンの質などから、’Expresso’で使用されているロートタムのヘッドは「
CSヘッド」だと推定される。

■ヘッドへのミュート処置
・12インチ(C)、14インチ(Lower G)、16インチ(Lower F)、18インチ(Lower C)にはトーンをフォーカスするために何らかの方法でミュート処置が施されていると推測される。その他の、6インチ(G+)、8インチ(A♭+)、8インチ(F+)、8インチ(E♭+)、8インチ(C+)、10(Upper C)、10(D)、10(B♭)、10(G)の場合は、金属的打音を生かすためノーミュートの可能性が高い。

奏法
・6、8、10、12インチの場合、ヘッドショットだとトーンが甘くなり曲調に合わないため、ごく一部を除きオープンリムショットによる金属的で破壊的なアタック音を効果的に発出させている。


       


■’Expresso’ ドラムスコア
・ピエール・モーレンによるロートタムの音階奏法についてご参考いただけます。
・あくまで自分の練習用に採譜したもので、楽譜の正確な書き方がわからず、記譜に誤りがある場合があります。
※2023年現在、12年かけて修正を繰り返しているところです。随時部分的に譜面の修正を行っているため、現在掲載してある楽譜が最終的なものではありません。
・ノーマルスピードでの再生では聞き取れない打音がかなり多くあるため、細かな打音の分析は主にスロー再生によって行いました。
・採譜・分析には’SoundEngine Free’というフリーソフトを使用しました。
・ロートタムの音階の分析にはアコースティック・ギターを使用しています。
・ロートタムのサイズは、当方で所有するロートタムの音階ごとの実際の打音や響鳴具合等をもとに推定しています。

■ロートタムのサイズと音階:
・①8インチ(Upper A♭)、②6インチ(Upper G)、③8インチ(Upper F)、④8インチ(Upper E♭)、⑤10インチ(Upper D)、⑥10インチ(Upper C)、⑦10インチ(B♭)、⑧10インチ(G)、⑨12インチ(C)、⑩14インチ(Lower G)、⑪16インチ(Lower F)、⑫18インチ(Lower C)
※ロートタムのトーンの違いにより、①と②のサイズとセッティングを変更しています。

■ロートタムのナンバーとサイズ、配置、音階


※楽譜画像の元サイズは約1360×1850。
※採譜開始:2011年2月~随時修正
※最終更新:2023年10月11日(水)
■#1


■#2


■#3


■#4




・2018年2月6日(火)撮影



Pierre Moerlen


■Pierre Moerlen(ピエール・モーレン)

1975年11月に撮影されたピエール・モーレン、当時25歳。
翌1976年、ロートタムをフィーチャーしたリーダー作、’GAZEUSE!’が発表される。

※上画像:’Gazeuse!’が発表される前年、1975年11月15日、ロンドン公演でのショット。(無断転載禁止)
London 1975 プログレ日記・ライブリポート」様より掲載許可を頂きました。

Pierre Moerlen(ピエール・モーレン)… 元GONGのドラマー、パーカッショニスト。速く正確な、そして複雑な技巧を駆使するドラマーとして知られる。マイク・オールドフィールドとの共演実績も多い。1952年生まれ、2005年没(享年53)。

’Moerlen’の日本での表記は「ムーラン」「モーラン」「モーレン」などが一般的のようだが、ネット記事では他に「ムーレン」「モエルラン」「モルレーン」「モレーン」「モレラン」など、各人が自由に呼称を決めているようである。ただ、Pierre Moerlen's Gongのアルバム、’Time is the Key’のライナー執筆者がピエール本人に’Moerlen’の発音を確かめたところ、本人は「メルリン」と読むと答えたそうである。ピエールの出身地、フランス北東部のアルザス=ロレーヌ地方はもともとドイツ語文化圏に属し、特にアルザスで話されるアルザス語(または「アルザスドイツ語」ともいう)は南部ドイツ語の方言であるアレマン語の一つであるが、その語彙や発音は標準ドイツ語を使用する者に理解することが困難なほどに異なっており、一般的な「方言」の範疇を超えている。つまり、アルザス語は標準フランス語はもとより、標準ドイツ語とも異なった全く別の言語であるとも言え、そのため、おそらくアルザス語での発音であろう「メルリン」が、一般な表記である「モーラン」や「ムーラン」、「モーレン」などと極端に異なっていても不思議はない。

また、「モエルレン」や「モエルラン」「モルレーン」といったローマ字読み、あるいはそれに近い表記については、例えば英語であれば’soccer’を「ソクセル」、’baseball’を「バセバルル」などと読んでそれを正しい発音だと考えている人が存在しないように、 ’man’や’desk’、あるいは’déjà vu(フランス語)’や’morgen(ドイツ語)’など一部の単語は該当するとしても、ローマ字読みをすればどの言語のどの単語であれ常に発音が原音に最も近くなるなどと確信している人はほとんどいないだろう。確かにローマ字読みは原音を推定するための補助的ツールには違いないが、原音そのものを特定できるわけではない。「ムーラン・ルージュというフランス語がある。ピエールはフランス人だ。だから’moerlen’の読み方は、いかにも響きがフランス語らしいムーランのほうが正しいはずだ」、あるいは、「’moerlen’はフランス語でムーランと読むらしい。’len’はローマ字読みではレンだ。だからフランス語でもより正しくはムーレンとなるはずだ」のように、各人各様、感覚的な発想やローマ字読みとの連想が働いてしまうため、このように表記が著しく変則的に揺れているのではないだろうか。

イエス、キング・クリムゾン等に在籍したドラマー、「ビル・ブラフォード」というお馴染みの呼称であるが、本人はかねてから「ブラフォード」と呼ぶのをやめてほしいと要望しており、近年は本人の意向に沿い、原音に近い「ブルーフォード」という表記が定着しつつある。

ピエールに関する動画をいくつか見ると、PM:Gongのメンバー(フランス人)の発音や下に埋め込んだ動画(Gongzilla live in Hamburg 22nd February 2002)の中での’Gongzilla’のメンバーの発音によれば、’Moerlen’は「
モーレン(ヌ)」に近い発音がされている。英語のアルファベット、「N」を正しくは「エンヌ(「ヌ」は弱く)」と発音するように、「モーレン(ヌ)」の「ヌ」の場合も実際は一音節としてはっきりと発音されているわけではないため、一般的な日本語表記としては「ピエール・モーレン」でよいだろうし、これで表記を統一していくべきだ。ピエールの出身地、アルザス語での発音がもし「メルリン」であるならば、原音を尊重して本来はそのように表記したいところだが、情報不足により確定が困難なため、このサイトでは標準フランス語での発音に近い「ピエール・モーレン」と表記することにします。

PM:Gong… ’Pierre Moerlen's Gong’とは全く別のフランス人ユニット。大変紛らわしいバンド名であるため混同が避けられないが、’PM:Gong’は、ピエール・モーレン本人が生前企図していたらしい「新生ピエール・モーレンズ・ゴング」として再始動する際に集められたメンバー3名が中心となって結成されたバンドであるようだ。最近は’PM:Gong’は’正統 Pierre Moerlen's Gong’そのものを名乗っているのだろうか、同じバンド名での記載もしばしば目にするため、ますます混乱を来してしまうが、情報不足により詳細は不明である。アルバム、「Expresso」「Expresso Ⅱ」に代表される、後期’Gong’、及び’Pierre Moerlen's Gong’時代の中心メンバーによって結成された’Gongzilla’が本来’Pierre Moerlen's Gong’の正統だと言えるが、かと言って’PM:Gong’が決して偽物と言い切れるわけでもなく、’Pierre Moerlen's Gong’やピエール・モーレン本人の意向、遺志、音楽的志向を正統に引き継ごうという真摯な姿勢を抱いたユニットであり、実際、彼らの作品、「Pierre Moerlen's Gong / Tribute」を聴くと、’Gongzilla’のサウンドとは異なった、かつての’Pierre Moerlen's Gong’のサウンド、音楽性を彷彿とさせる。’Gongzilla’のサウンドがピエール本人の音楽的志向から多少離れている感もあるため、そういう意味では’PM:Gong’のサウンドを聴くと却って懐かしさを覚えるし、ピエールの面影もまたそれだけはっきりと思い浮かぶようにも感じられる。


Gongzilla - Percolations part 2 (featuring Pierre Moerlen) live

※Gongzilla live in Hamburg 22nd February 2002
※ドラムはピエール・モーレンによる演奏。
11分34秒後に「ピエール・モーレン(ヌ)」という発音が聞ける。


Pierre Moerlenへのインタビュー、および’Downwind’ の演奏(1979年11月17日)




・上画像:1973年にBBCスタジオで収録されたマイク・オールドフィールドの「チューブラー・ベルズ」ライブで各種パーカッションを担当するピエール・モーレン。


・上画像:撮影年不詳。ゴングのライブ時と思われる。

       






ロートタムを使用した海外のアーティスト

1970年代のプログレッシブロックの作品にはロートタムが使用された楽曲が多いので、ロートタムサウンドについて参考にされたい方は、差し当たり以下の作品群を視聴してみるとよいだろう。

’In the dead of night’ ~ Bill Bruford(ビル・ブルーフォード):UK/1978


・1978年当時のプロモーションフィルム。ブルーフォードは曲調に合わせて音階チューニング(Lower B、E、G、B)を行い、メロディックで印象的なフレーズを構成している。UKに在籍していた当時のドラムキットは、BDが22インチ、TTが12インチ、FTが16インチのスタンダードセットに加え、ロートタムは14インチと18インチの計2台を組み込んでいた。ヘッドは恐らくのちの「BRUFORD」時代と同様、「REMO ファイバースキン・ヘッド」が張られていると思われ、芯と深み、伸びのあるロートタム・サウンドとなっている。当時のバンドのメンバーは、ギターがアラン・ホールズワース(元:ソフトマシーン、ゴング)、ベースがジョン・ウェットン(元キング・クリムゾン)、キーボードがエディ・ジョブスン(元フランク・ザッパ & マザーズ)。

※Bruford本人が「
ブラフォード」と呼ぶのをやめてほしいと要望しているため、近年は原音に近い表記、「ブルーフォード」が定着しつつある。
※U.K.のアルバム『UK ~憂国の四士(1978年)』では、他にもブルーフォードによるロートタムの音階チューニングによる演奏を楽しめる。


’Sample and hold’ ~ Bill Bruford(ビル・ブルーフォード):BRUFORD/1978


・1979年のライブ映像。インストルメンタル。”BRUFORD”在籍当時のドラムキットは、BDが22インチ、FTが14インチに加え、ロートタムは14インチが2台、18インチが1台の計3台。ヘッドには「REMO ファイバースキン・ヘッド」が使用されているのが動画から確認できる。コーテッドヘッドとはやや異なった、芯と深み、そして伸びのあるトーンであり、明るく抜けのよいオープンなロートタム・サウンドが楽曲に埋もれることなく要所要所で個性的な彩りを放ってみせている。当時のバンドのメンバーは、ギターがアラン・ホールズワース(元:ソフトマシーン、ゴング、UK)、ベースがジェフ・バーリン、キーボードがデイヴ・スチュアート(元ナショナル・ヘルス)。

BRUFORDのアルバム、『FEELS SO GOOD(1978年)』『ONE OF A KIND(1979年)』では、音階チューニングされたロートタムによる演奏が各曲で聴けるので参考にするとよい。

■下の画像は上記動画「Bruford Live 1979」から切り出したもので、ロートタムのヘッドに「REMO ファイバースキンヘッド」が使用されているのが確認できる(丸いプリントマーク/当時)。



※パールドラム 1978年版カタログより


’Lark's Tongues in Aspic Part Ⅱ ~ Bill Bruford(ビル・ブルーフォード):King Crimson/1973


キング・クリムゾンの名曲、「太陽と戦慄 パートⅡ」(1973年)から。ビル・フル-フォードの当時のパーカッションキットの中に初期型ロートタムが二台セッティングされているのが確認できる。ただ、本編では演奏に使用されてはいない。



初期仕様のロートタム。REMO 1968 catalog より。
ヘッドの表面にはREMO ROTO TOM MADE IN U.S.A.’’とプリントされている。
※’DRUMARCHIVE.COM’様に画像の掲載許可をお願いしました。(2015年10月)

■実験
円形に切ったポリプロピレン製のプレートを作成し、現行品のロートタムのボトム側ホイール直下に装着してみたところ、サスティーンが若干抑えられ、トーンもややはっきりとするように感じられたが、際だった効果までは得られなかった。また、音階をはっきり出せるティンパニのようなトーンを狙って、台所で使用するステンレス製のボウル(bowl)に穴を開けてロートタムに装着してもみたが、やはり音響的に際立った効果はほとんど得られなかった。


■おまけ:ビル・ブルーフォードは’Ludwig スピードキング’の愛用者

ビル・ブルーフォードは1970年代のイエスとキング・クリムゾン在籍時にラディックのスピードキングを愛用していた。(上の画像は検証のため当方の所有するスピードキングの画像を重ね合わせたもの)
ビル・ブルーフォードのスピードキングへジャンプ

       


Alan White(アラン・ホワイト):YES/1978


1978年、イエスのロンドンでのライブ時のアラン・ホワイト。ロートタムに「REMO CSヘッド」が使用されているのが確認できる。ただ、アランはロートタムは限定的に使用していただけのようで、印象的な演奏が収録された楽曲が見当たらない。当時のイエスのメンバーは、ボーカルがジョン・アンダーソン、ギターがスティーヴ・ハウ、ベースギターがクリス・スクワイア、キーボードがリック・ウェイクマン。アラン・ホワイトは1972年にイエスに加入する以前にはジョン・レノン、ヨーコ・オノ、エリック・クラプトンらと共に1969年、初期「プラスティック・オノ・バンド」を構成するメンバーとして活動し、その後もジョン・レノンのアルバム、「イマジン」(1971年)のレコーディングに参加したことで知られる。

       


’Caesar's Palace Blues’~ Terry Bozzio(テリー・ボジオ):UK/1978


1979年当時のライブ映像。ロートタムに「REMO CSヘッド」が使用されているのが確認できる。硬質なアタック音、そしてオープンでダイナミックなサウンドだ。CSヘッドは引き締まった硬めのサウンドで、音の分散がある程度抑えられ、トーンをはっきりと出しやすい。当時のバンドのメンバーは、ベースがジョン・ウェットン(元キング・クリムゾン)、バイオリンがエディ・ジョブスン(元フランク・ザッパ & マザーズ)。



’Nothing to lose’ by UK 1979 PVより


       


’Skylines’ ~ Andy Ward(アンディー・ウォード):Camel/1977


1977年のライブ映像。インストルメンタル。「クリアーヘッド」が張られているのが確認できる。コーテッドヘッドに比べアタック音がソフトで、音質もマイルドでウォーム。明るく軽快なロートタムサウンドが、都会的で軽快な楽曲にいっそう新鮮な息吹を吹き込んでいる。ドラムキットは22インチのバスドラムと16インチのバスタムにロートタムは12インチが2台、14インチ、16インチが各1台。当時のバンドのメンバーは、ギターがアンドリュー・ラティマー、ベースがリチャード・シンクレア(元キャラバン)、キーボードがピーター・バーデンス、サックスがメル・コリンズ(元キング・クリムゾン)。


’Lunar Sea’


1977年のライブ映像。インストルメンタル。変拍子ながらドライブ感と叙情感に溢れた楽曲にロートタムの明るくオープンなトーンがよくマッチしている。


       



’Time’ ~ Nick Mason(ニック・メイスン):Pink Floyd/1971


PINK FLOYD 1971年のライブ
初期仕様のロートタムが8台セッティングされている。


・1973年発表。オーディオのみ。ロートタムが使用されているのはイントロのパートで、ニック・メイスンは
音階チューニングによってメロディックなフレーズを構成し、ドラマチックな楽曲に緊張感と幻想的な彩りを与えている。

当時演奏に使用されたロートタムは恐らく初期仕様のもので、現行仕様のものと異なりボトムが側が抜けていない分、音の分散やサスティーンの揺れがある程度抑えられ、比較的トーンがはっきりとする傾向がある。曲中のサウンドを聴く限りではヘッドは
クリアーヘッドの音質に近いが、初期仕様のロートタムに標準仕様だったコーテッド系のヘッドだろう。1973年当時のバンドのメンバーは、ギターがデイヴ・ギルモア、ベースがロジャー・ウォータース、キーボードがリック・ライト。因みに、イントロの間、ミュートしたロートタムを思わせるサウンドで「ポペポペ…」と秒針が時を刻むような音がずっと続くが、これはロートタムの音ではない。2002年、ロジャー・ウォータースが来日公演を行った際、「Time」の演奏に入る直前、ウォータースは、「この音は俺がこうやって作っていたのさ」と言わんばかりのジェスチャーをし、自身のベースを使用し、ミュート奏法によってこの音をそっくり再現していたことを覚えている。



'Time'でロートタムを演奏するNick Mason(2006年)
近年のライブではCSヘッドを使用しているようだ。




ロジャー・ウォータースのライブで'Time'を演奏するグレアム・ブロード(2007年)


       


’Confusion’ ~ Bev Bevan(ベヴ・ベヴァン):Electric Light Orchestra/1979


・1979年のPVより。「ペチペチン」というロートタムらしいパーカッシブなサウンドを曲中のごく一部でほんのアクセント程度に使用している。曲調に合った効果を上げるため、もともと余韻の少ないロートタムの音をさらに薄っぺらにトーン処理しているようだ。アタック音自体は硬質で明瞭なので、この曲のレコーディングではPVと同様にCSヘッドが使用されていると思われる。


Last train to London’ by E.L.O. 1979 PVより。
本曲中ではロートタムは使用されていないようだ。


       


’Fly on a Windshield’~ Phil Collins(フィル・コリンズ):Genesis/1976


・1976年当時のライブ映像。ビル・ブルーフォードとのダブルドラム編成。フィル・コリンズのドラムセットには2台のロートタムがセットされ、アクセント程度に使用しているようだ。ヘッドは「クリアーヘッド」が使用されている。また、ビル・ブルーフォードのパーカッションセットの中に初期型ロートタムがセットされているのも確認できる。


       


’ライブ動画 ~ Laurence Tolhurst(ローレンス・トールハースト):
The Cure/1979


・1979年のライブ動画より。ロートタムをドラムセットに組み込んでいたドラマーには、他にニューウエーブ・バンド、’The Cure’の’ローレンス・トールハースト’がいる。動画では「At Night」「Three Imaginary Boys」「Killin an arab」が演奏されている。CSヘッドが使用されているのが確認できるが、トールハーストはあまりタムタムを活用するドラマーではないらしく、ロートタムはアクセント程度にしか使用していないようだ。


       



ライブ動画 ~ Vinnie Colaiuta(ヴィニー・カリウタ):
With Frank Zappa/1978


・1978年、フランク・ザッパのドイツでのライブで演奏するヴィニー・カリウタ。ロートタムはハイハット・シンバルの上に1台、フロアータムの上に1台をセットし、サイズはそれぞれ10インチと12インチのようだ。

※「Colaiuta」の発音はアメリカ本国では「カリユータ」に近い発音となる。(アクセントは『ユー』)


       


’Jump’ ~ Alex Van Halen(アレックス・ヴァン・ヘイレン):
Van Halen/1984


・1984年に発表された『Jump』のプロモクリップでの一シーン。ロートタムは二段積みにし、6、8、10インチを上段に、下段には12、14インチ、ハイハットの脇に16インチをセットしているようだ。


       


’Live in Germany’ ~ Danny Seraphine(ダニー・セラフィン):Chicago/1977


・1977年、ドイツでのライブ動画から、ドラムソロの一シーン。ハイハット脇にセットされたロートタムは14インチのようで、ロートタムの回転サウンドを出す際にアシスタントが回転を補助している。シカゴのオリジナルメンバーでギタリストのテリー・キャスはこの年、拳銃の暴発事故により死亡した。

       


’Fat Bottomed Girls’ ~ By Roger Taylor(ロジャー・テイラー):Queen/1978


・1978年制作PV、’Fat Bottomed Girls’より。クイーンのロジャー・テイラーも70年代からロートタムを使用していたアーティストの一人だ。タムロール等で部分的にロートタムを使用している。ヘッドはコーテッドヘッド

’I'm in love with my car’ ~ By Roger Taylor(ロジャー・テイラー):Queen/1979


・1979年、ロンドンでのライブ動画より。間奏部等で一部ロートタムが使用されている。ヘッドはコーテッドヘッド



こちらは1979年、東京での同曲ライブ動画より。


■クイーンのロジャー・テイラーがロートタムについてコメントしている(3分15秒後)。ロートタムには
CSヘッドが使用されている。



■おまけ①:一部パールヘッドが張られたロジャー・テイラーのドラムキット

・1985年制作、’Making of One Vision’より切り出した。左の画像は11分37秒後、右の画像は1分6秒後のもの。
・ロジャーのドラムキットにはLudwig製の’
ROCKERS’ヘッドが張られているが、タムタムの一つにパールブランドのヘッド(’REMO’社によるOEM製品のようだ)が張られているのが確認できる。

■おまけ②:ロジャー・テイラーは’Ludwig スピードキング’の愛用者

・1973年制作PV、 ’Liar’ by QUEEN、約21秒後より切り出した。BONZOをリスペクトするQUEENのロジャー・テイラーも、やはりスピードキングの愛用者。
・’
ロジャー・テイラーのスピードキングへジャンプ



ロートタムの使用法

ロートタムの使用法を分類すると、概ね以下のようになる。

音階チューニング
GONGのアルバム、『GAZEUSE!(ガズーズ!)』でのピエール・モーレンのプレイや、ピンク・フロイドの『Time』のイントロでのニック・メイスンのプレイ、また、U.K.のアルバム『UK ~憂国の四士』やBRUFORDのアルバム、『FEELS SO GOOD』『ONE OF A KIND』でのビル・ブルーフォードのプレイのように、「
楽曲のキーに合わせた音階チューニングを行い、その楽曲のコンセプトや曲調に沿ってメロディックなフレーズや旋律そのものを創出する方法」。

メインタムとして使用
U.K.でのテリー・ボジオやキャメルのアンディー・ウォード、ライブでのビル・ブルーフォードのように、「
ロートタムを複数台ドラムセットに組み込み、特に音階チューニングによらずメインのタムタムとしてフルに使用する方法」。

アクセント用
クイーンのロジャー・テイラーやE.L.O.のベヴ・ベヴァン、ジェネシスのフィル・コリンズ、ザ・キュアーのローレンス・トールハーストのように、「
ロートタムはあくまで楽曲においてほんの一部アクセント効果を与える程度の使用にとどめる限定的な使用法」。

ビジュアル重視
活用するかどうかは別として、「
ロートタムをフルセットでゴージャスにセットアップし、特にビジュアル的な効果を狙う使用法」。

以上のうち、一般的なロートタムの使用法としては②と③になるだろう。ただ、③についてはロートタムがあってもなくても大差の無い、ごく限定的な使用法にとどまるため、ロートタムの活用法を見出せないままその必要性を感じられなくなったり、すぐに飽きが来てしまったりする展開が予想される。④についてはビジュアル面を特に重視するドラマーやバンドに有効だ。自身の半身が聴衆によく見え、パフォーマンスを派手にアピールでき、単に飾りとしてではなく、ロートタムをフルに、かつ効果的に活用できるドラマーなら尚更強いインパクトを与えることができるだろう。

尚、①については敷居が高いように思えるが、特定の楽曲で、その楽曲に使用されるコード内のいくつかの音階にロートタムをチューニングして要所要所でメロディックに演奏してみたり、効果的な音階フレーズを予め考案して計算どおりに演奏したりする方法を一度試してみることをお勧めする。サイズの組み合わせにもよるが、アイディアによっては2~3台のロートタムでもビル・ブルーフォードのように個性的で効果的、かつ印象的なロートタムサウンドを創出できるはずだ。

ちなみに、ピエール・モーレンによる「Expresso」では12台のロートタムが「Lower C、Lower F、Lower G、C、G、A♭、B♭、C、Upper E♭、Upper F、Upper G、Upper C」でチューニングされ、そのフレーズは極めて鮮烈、かつダイナミックで鮮烈だ。この曲には他にも音階を自由に操れるピエールだからこそ創出される音階フレーズが散りばめられており、まさにピエールはロートタムの魔術師と言っていい。一方、ビル・ブルーフォードの場合は使用したロートタムはわずか2~3台だが、タムタムやフロアタムと共にセットアップし、1オクターブほどの範囲内で音階チューニングしただけで極めて印象的で存在感のあるロートタムサウンドを創出している。ブルーフォードのように、少ない台数でのセッティングでありながらユニークで効果的、かつ存在感のあるロートタムサウンドを創出したアーティストもまたその後例を見ない。

以上のように、現在ロートタムの導入を検討されている方は、ロートタムの音質や特性を念頭に、ドラムセットでの位置づけや活用法を予めしっかりと考えておくとよいだろう。

       


ロートタム:その他の使用例

Mattias recording Rototom rim for Gösta Berlings saga

・ロートタムのリムが発する金属音を効果音として楽曲に使用しています。


Fernando "Cacho" Diaz on the RotoToms

・6インチ、8インチ、10インチのロートタム3台をそれぞれ「G、Upper D、Upper G」にチューニングしています。わずか3台でも少し工夫すればこのようにメロディックで表現豊かな演奏が可能です。


Triptych by Cosmo Barbaro ~ '76 Erie Thunderbirds Drum & Bugle Corps

・3台一組のロートタムセットを「C、F、G」にチューニングしているようです。


The B.D.A™ DREs , BREAKING THE ROTO TOMS IN FOR THE FIRST TIME,

  and Cuts up A Little bit.

・ハイピッチのロートタムサウンドがタイトでパワフルなドラミングによくマッチしています。


Rotorock or The Mischievous Robot (Tomáš Chmura - drum kit with rototoms)

・特定のフレーズを決めてメロディックに演奏するという発想は音階チューニングによるロートタムの使用法としては一般的なものですが、この動画を見てわかるとおり、固定メロディーの単純な反復が延々と続くと、あまりの単調さに一曲聴き終わるまでにうんざりしてしまいます。このような使用法だけならロートタムは別にあっても無くても同じでしょう。せめて異なったフレーズを挿入したり連打を組み込んだり、あるいは意表を突くようなフレーズを挟み込んだりするなどの工夫をしないと、音階チューニングしたロートタムはこの程度の使い方しかできないのかといったネガティブな印象を与えてしまうばかりです。


オスカー・ピーターソン&ルイ・ベルソン

・初めてバスドラムをツインでセッティングしたドラマーとして知られるルイ・ベルソンとピアニスト、オスカー・ピーターソンによる演奏。1980年の収録。演奏前にロートタムの簡単な説明、そしてドラムソロのごく一部でロートタムが使用されています。残念ながらロートタムが活用されているとは言えず、初めは物珍しさもあってドラムキットに組み込んだものの、活用法が見出せないためにそのままロートタムそのものに飽きたり不要となったりしてお払い箱としてしまうといったありがちな展開が予想されます。


エンカウンターズ VI 「ロトトムズと4人の打楽器奏者のための協奏曲」
 
- Encounters VI, "Concertino for Rototoms and Percussion Quartet"

・作曲家、ウィリアム・クラフトによる1976年の作品で、南カリフォルニア大学・ソーントン音楽学校の「Thornton Percussion Ensemble(ソーントン・パーカッション・アンサンブル)」による演奏です。音階チューニングされたロートタムが7台使用されています。もともとロートタムはティンパニの練習用に開発された楽器であり、薄手のヘッドを張ってマレットで叩くとティンパニのようなサウンドが楽しめます。



Remo Rototom


■Remo Rototom

※当方で所有するパールドラム1976年版カタログより
※都合により画像の構図を編集してあります。


■NEWS
ロートタムの12、14インチが生産終了
・2016年初頭、ロートタムの12、14インチが生産終了となりました。パール楽器側でも本国レモ社に生産の継続を強く要望しましたが、レモ社での決定は覆らなかったそうです。尚、パール楽器では「6,8,10インチ」に関しては「3台のセット販売(スタンド、タムホルダー、アダプターは別売り)」としての供給が継続されます。
(2016年5月26日追記)


ロートタムの16、18インチの生産終了年
・当方で所有するパール楽器の「2001年版」にはまだ16インチと18インチのロートタムが商品としてラインナップされており、「2007年版」ではそれが無くなっていることから、2000年代前期に両者は廃番となったと考えられる。2000年代前半に発行されたカタログが入手でき次第、詳細を本項でお知らせする予定。

       


オークションサイトなどで時々見かける「
パール製のロートタム」という製品が気になり、2013年10月にパール楽器に問い合わせたところ、「担当ではなかったので正確な情報にならないかもしれないが、かつてOEM(相手先ブランド名製造)によりパール社が製品を販売していた時期がある。スペックはREMOの製品とほとんど同じ」で、「REMO」のステッカーが貼られていないことと、固定レバーに「REMO」の刻印が無い程度の違いとのことだ。だとすれば、Remo製でもパール製でも、品質や音質についての違いは無いということになる。中古品市場に出品されているパール製ロートタムのさまざまな画像を逐次観察しているが、実際、当方の所有するレモ製ロートタムと仕様的にはまったく区別できない。年代による細部仕様の違いは若干あるが、REMO製と同じ鋳型が用いられて製造された製品だから当然だ。純粋に「ロートタムサウンドが欲しいだけだ」という方には、特にREMO製に強くこだわる必要はない。音質についても品質についても、REMO製とまったく変わらないと強く推定される。また、パール製ロートタムは製造年代がほぼ80年代に限られることから、ビンテージ品としての価値も無いわけではない。

■「REMO MADE IN U.S.A.」のプリントされた「
円形ステッカー」については、現在販売されているREMO製のロートタムには、上側ホイールの中心部上面に貼られてある場合があったり、下側ホイールの中心部上面に貼られてあったり、あるいは両方のホイールの中心部上面に貼られてあったり、まったくステッカーそのものがが貼られていなかったりと、規格がまったく統一されていない。その点に関してパール社の担当者の方は、仕様変更等の事情も考えられるが、海外生産品ということで、日本とは異なる、現地のメーカー側の厳密性に対する意識の差によるものではないか」とのことだった。

ロートタム専用スタンド
パール楽器のウェブサイトにあるロートタムの商品欄に以前掲載されていたロートタム専用スタンド、「RMS-30L、RMS-30S」が2013年10月現在掲載されていないため、その点について伺ったところ、「
当該機種は廃番となった。現在流通している商品は、各ショップでの在庫品ということになる」とのことだった。

当方で所有するREMOの6インチ、8インチのロートタムのレバーには、REMOの刻印が無い。また、REMOのロゴが記入された円形のステッカーについては、6インチのものには一切貼られておらず、8インチと14インチのものには上側ホイールに、10インチと12インチのものには下側のホイールに貼られている。オークションで入手した中古品の二台、16インチと18インチについては、16インチのほうにはレバーにREMOの刻印があるが、ステッカーは貼られていない(「レモ製」として入手したが…?)。18インチのほうは、上側と下側の両ホイールにステッカーが貼られている。

パール製ロートタムの本体にはRemoのロゴステッカーのような円形ステッカーが貼られておらず、レバーにも特に刻印は無いようである。また、REMO製のロートタムについても、本体に「REMOのロゴを記した円形ステッカー」が貼られておらず、レバーにもまた「Remoの刻印」が無いケースが存在する。ヘッドにREMOのヘッドが張られていても、当然のことながら本体がREMO製であることの証明にはならない。逆に、本体に円形ステッカーが貼られておらず、レバーにどのブランドの刻印も無いことで、それが「REMO製ではない」ことの証明にはならない。

以上のように、パール製ロートタムとREMO製ロートタムとの厳密な区別が困難な場合があり、オークションで、あるいは新品を購入する際にも、商品によって規格のばらつきが多いようなので、上下ホイールの両方に、あるいは、少なくとも片方に「レモのロゴステッカー」が貼ってあるかどうか」「締め付けレバーにレモの刻印があるかどうか」を、予め販売者や出品者に確認するとよい。また、ご自身が購入した現行品をいずれオークションなどで出品する場合にも備え、納品書や取扱い説明書等の書類も参考資料として保存しておくとよい。

■ROTOTOMS PEARL OEM PRODUCTS

※当方で所有するパールドラム1987年版カタログより

■上の画像:1987年版パールドラムのカタログより。ロートタムにパール製の「CMヘッド」が張られている。商品説明には「パール製」とも「レモ製」とも明記されていないが、「REMO」製であることを敢えて謳っていないことからすると、OEMによるパール製のロートタムだろう。

■OEM製品としてのパール製ロートタムが販売されていた期間や事情に関し話を聞こうと、あらためて2016年3月、パール社に電話で問い合わせてみたところ、残念ながら当時の事情を知る社員がおらず、詳細は分からないとのことだった。

■当方で現在所有するパールのカタログに掲載されてされているロートタムに関する主な情報は、以下のとおりである。

1976年版以来1980年版まで、毎年パール社のカタログではロートタムの項目に「REMO」あるいは「レモ」というブランド名が明記されてきたが、1981年版になるとロートタムの商品説明からブランド名の記載が無くなり、1982年版、1983年版でも同様に記載が無い。1984年版はカタログをまだ入手しておらず確認できていないが、1985年版、1986年版ではロートタムそのものがカタログに掲載されず、1987年版で再びロートタムがカタログに掲載されるが、やはり「REMO」の記載は無い。その後1988年版、1989年版でも同様に「REMO」のブランド記載が無く、1990年版は未確認だが、1991年版で「REMO」の記載が復活し、以後もこの記載が継続する。ちなみに、1987年版、1988年版、1989年版に掲載されたロートタムに張られたヘッドには「PEARL」のロゴマークが確認でき、「REMO」の記載が復活する1991年版ではロートタムに張られたヘッドは「REMO」となっている。パールでロートタムそのものを扱っていたのかどうか不明な時期が数年あるが、以上からすると、少なくとも国内については、パール製ロートタムが販売されていた期間は1981年から約10年ほどの間ということになるのだろう。

■ロートタム本体の仕上げ色については各版とも明記されていないが、写真から判断できる範囲では、1976年版から1980年版までは「クロームメッキ・フィニッシュ」、パール製と考えられる1981年版でのロートタムはクローム的な反射光が見られず、「マットなシルバー吹きつけ塗装」に見えるが、撮影時の光線の具合かもしれない。1982年版、1983年版では1981年版の写真が再使用されている。ただし、1981年版、1983年版では、別ページに掲載されているドラムセットに組み込まれたロートタムは明らかに「クロームメッキ・フィニッシュ」であり、1982年版でも別ページでロートタムを装着するためのアダプター、「AD-100」を紹介した写真に写っているロートタムは明らかに「クロームメッキ・フィニッシュ」である。1984年版はまだカタログを入手しておらず確認できていない。1985年版、1986年版ではロートタムの掲載そのものがカタログから無くなり、1987年版、1988年版、1989年版では「ブラック・エポキシ塗装」となり、1990年版については未確認で、「REMO」の記載が復活した1991年版では再び「クロームメッキ・フィニッシュ」となる。1992年版でも同様に「クロームメッキ・フィニッシュ」のロートタムが掲載されるが、1993年版で再び「ブラック・エポキシ塗装」となり、以後、この仕様で固定する。(1994~1998年版、2001年版、2007~2010年版、2013~2015年版を確認)。

■海外のオークションでは、特にアメリカでその中古品をよく目にするが、ロートタムの仕上げ色には「クロームメッキ」と「ブラック・エポキシ塗装」以外にも、「マットなシルバー吹きつけ塗装」の製品が製造されていた時期がある。1981年版、1982年、及び1983年版のカタログに掲載されたパール製ロートタムの本体カラーがこの「マットなシルバー吹きつけ塗装」の風合いによく似てはいるが、日本ではこの「シルバー吹きつけ塗装」のロートタムが中古品市場でほとんど流通してはいない事実からすると、当時のフィニッシュは「シルバー吹きつけ塗装」ではなく、やはり「クロームメッキ・フィニッシュ」だったのだろう。因みに日本ではこの「シルバー塗装」のロートタムがほとんど認知されていないことから、本来は「クロームメッキ・フィニッシュのロートタム」と称すべきところ、しばしば「シルバーのロートタム」として混用されている。


       


■オークション等では、特に楽器に関する専門的知識が十分でないリサイクル業者等によって、ロートタムに’REMO’のヘッドが張られてあることで「REMO製ロートタム」として出品されることがよくある。当然のことながら、ヘッドが’REMO’製でもロートタム本体が’REMO’製であるとは限らないので、その点を出品者に確認しておく必要があろう。ただ、ロートタム本体が’REMO’製であるかどうかを判断する材料といっても、実際にはホイールの中央に貼られた’REMO’のロゴがプリントされた銀色の円形ステッカーの有無しかなく、しかも、逆に’REMO’製ロートタムであってもその円形ステッカーが上下ホイールのいずれにも貼られていない場合もある。さらに、レバーに’REMO’の刻印があっても、パール製ロートタムにレバーだけレモ製に交換されている場合も全く考えられないわけではないため、正確な判定が困難な場合が少なくない。

■REMO製ロートタムと同様の仕様を持つ’MAXTONE’や’MAPEX’、’ZENN’、その他各社による製品も存在するが、当方ではこれらの製品については情報を一切持ち合わせていない。

・記:2013年10月16日
・追記:2016年3月


■Sound Reflector

※画像:当方で所有するパールドラムのカタログより(1979年版:Vol.1)


■Vari-Pitch

※画像:当方で所有するパールドラムのカタログより(1979年版:Vol.1)



チューニングの緩み対策


■DIY店で「3/8インチサイズ(8分の3インチサイズ=9.525mm)」のナットを入手し、それよりもやや大きめのサイズのスプリングワッシャー、平ワッシャーを使用してロートタムのホイールを固定した。上の画像は10インチのロートタムで、ボトム側ホイールを挟んで上下にそれぞれ平ワッシャー、スプリングワッシャー、ナットの順に装着して締め付けてある。ナットの締め付けには当方では「小型プライヤー(100円ショップで入手)」を使用し、随時緩みを確認している。ペンチでも締め付けできないわけではないが、締め付けにくく手間がかかり、その分時間もかかり、締め付け自体も十分ではないため、お勧めしない。

以上のような措置をとっても演奏状況によってはナットが緩んでしまう可能性があるため、ナットを二重にして装着したり、あるいは上側のホイールにもナットを噛ましたりするなど、適宜工夫が必要。

さらに、ホイールを固定していても叩いているうちにテンションボルトが緩んでくるため、「テンションキーパー」等の併用も必須である。




※当初は「蝶ネジ」を使用してロックしていたが、こちらは推奨しません。やはりしっかりとホイールを固定するにはナットを小型のプライヤーかスパナで締め付けるほうが確実。
※ロートタムのチューニングの緩み対策が、ドラムテック、村上敦宏さんのブログに紹介されているのでご参照ください。
・村上敦宏の「重箱の隅」… 「REMO ROTO TOM」の記事



■テンションボルトのネジ山崩れ


■応急処置


・ロートタムが2台、同時期にテンションボルトそれぞれ1本ずつがホイールからすっぽ抜けるようになった。一台は6インチ、もう一台は10インチで、ともに使用期間は実質半年程度。ホイール側のネジ山が完全に崩れてしまったらしく、ボルトが「ズル抜け状態」である。ホイール二器分を新品に交換すると結構な費用がかかるので、テンションボルト用ワッシャー、そしてDIY店で入手した一般的なネジとナット、スプリングワッシャー、蝶ネジを使用して応急処置を行った。

ネジのサイズはM5(直径5mm)×80mmで、その他のパーツもM5サイズである。ホイールの下にテンションボルト用ワッシャー、続いてスプリングワッシャー、ナット、スプリングワッシャー、蝶ネジという順に装着した。

頻繁に、あるいは持続的に強度のテンションをかけると、いずれこのようなネジ山崩れが起きる可能性もあるということを念頭に置いておいたほうがよい。

ロートタムをバスドラムに転用
海外のサイトで時々見かけるが、ロートタムの18インチをバスドラムに転用するケースがある。キックする衝撃を考えると、センターボルトを通すロートタム本体側のネジ山がかなりダメージを受けることが推測されるので、特に18インチの中古品の入手を検討する際には、センターボルトのガタつきがどの程度かについて、予め出品者に確認しておくことをお勧めする。ロートタムは剛性の高くないアルミニウムを素材としており、もともとバスドラムに転用することを想定して設計されていないため、外見では判別できないダメージを負う場合がある。

(記:2014年6月2日)



ロートタム専用スタンド RMS-30(廃番)

■RMS-30L
・ロートタム用スタンド(ロングタイプ:RMS-30Lの高さ調整幅は700~1100mmだが、十数センチあるセンターロッドの長さを含めたロートタム本体の高さは20cm前後になり、そのためスタンドにセットすると実際にはレールからさらに約20cmの高さに打面が来る。つまり、ロートタムの打面が水平になるよう設置した場合、その打面の高さはスタンドの設置面から最低でも約90㎝であり、ロートタム本体を傾けた場合でも打点が設置面から80㎝以上になる。そうした点を予め考慮に入れ、ショートタイプ(RMS-30S:500~800mmとうまく組み合わせるとよいだろう。

・専用スタンドは、一台のスタンドにセットした複数のロートタム本体の打面の高さがわずかに段差となる場合がある。

※パールのRMS-30シリーズは2013年に廃番となりました。


■10インチと12インチ

※上画像:左10インチ、右12インチ。打面に約1cmの段差。


■12インチと14インチ

※上画像:左12インチ、右14インチ。打面にほぼ段差無し。14インチと16インチの場合もほぼ段差無し。


■16インチと18インチ

※上画像:左16インチ、右18インチ。打面に約5mmの段差。


■打面角度

■ロートタム専用スタンド(RMS-30S、RMS-30L:いずれも廃番)は一本の真っ直ぐなレール上に、通常ロートタムを2台(6、8、10インチの組み合わせでは3台)セットするが、スタンドのネック部分での角度調整が上下方向しかできないため、一般のタムホルダーのようにドラマーのポジションに合わせて叩きやすい角度に個別にロートタム本体の向きを微調整することはできず、ドラムセットに組み込む場合は打面へのヒット角度やセッティングポジション等、いろいろと不都合が生じる可能性がある。

(記:2012年4月)



ロートタムのセッティング ~ タムホルダーとアダプターの使用

■T890A + RMA1 + TH88/C + TH88S/C

■画像:左から10、8、6インチ。タムホルダーは左側がショートタイプ(パール:TH88 S/C)、右側がロングタイプ(パール:TH88/C)。ロングタイプのほうにはロートタムの6インチと8インチの2台をセットした。タムスタンドはパールの’T-890A’、アダプターはパールの’RMA1’。ロートタム専用スタンド(RMS-30S、RMS-30L:いずれも廃番)では不可能な微妙な角度調整や高低調整が個別に可能であり、調整上の自由度はかなり高い。

ただし、調整範囲は完璧というわけではなく、それぞれのロートタムの設置角度や高さが微妙に合わず、その調整結果が意図に十分添わない場合もある。また、ロートタムのレバーやアダプター、タムホルダーのパイプなど、突起した形状のパーツが他のハードウェアやパーツなどに干渉し、自由なセッティングの支障になったり、干渉時にノイズを発生させたりする原因となる場合がある。

※スタンドがダブルレッグであると、特に大口径のロートタムをセッティングする際にはシングルレッグよりかなり安定する。
※ロートタムを複数台導入する予定がある場合、ロングタイプとショートタイプのタムホルダーをどのロートタムにどのようにしてセッティングするかについていろいろとイメージすることと思うが、実際にセッティングしてみるとイメージや想定と異なる状況があれこれと発生するため、タムホルダーやタムスタンドを追加注文する必要があったり、使用できずタムホルダーが余ったりするので、その点、予め覚悟が必要です。

■10インチと12インチ

※上画像:10インチと12インチをセットする場合は、タムホルダーはショートタイプ2本で済む。


■T-890A + RMA1 + TH88/C

※上画像:T-890A + RMA1 + TH88/C(2本)
・ロートタムは左が18インチ、右が16インチ。タムホルダーは2本ともロングタイプ(TH88/C)。この画像では、左側のタムホルダーの向きを逆順に、また、右側のタムホルダーを通常セットしてある。いずれにしても、タムホルダーのパイプが長く、結構邪魔になる。

(記:2012年8月10日)


       


■タムホルダーを下向きにセット

※上画像:左が14インチ、右が10インチ。
・このようにタムホルダー(TH88)を下向きにセットすると、ロートタム(14、10インチ)の打面中心部までの地上高を約69cmまで落とすことができた。タムホルダーの折り曲げ角度やアダプター(RMA1)の角度を調整したり、あるいはロングタイプのタムホルダーを利用したりすれば、さらに低くセットすることも可能だ。いずれにしても、セッティングを詰めるにはかなりの時間と工夫が必要。

■18インチと16インチ

※上画像:左が18インチで、打面中心部の地上高は約66cm、右は16インチ。タムホルダー(TH88/C)は、特にバスドラム側のパイプがバスドラム本体に当たって(つっかえて)、セッティングに支障を来すため、後日10cmほどカットした。また、他方のタムホルダーについても、セッティング時のバランス上の都合により、長い方のパイプ(アダプターをセットしてあるほう)を10cmカットした。パイプをカットする方法については、次項に記載したので、ご参考ください。

       


■セッティング

■ロートタムの長いレバーは、ハードウェアやドラム本体に干渉してセッティング上の支障となる場合がある。そこで、レバーの向きを決定した後、以後もその向きですばやくセッティングしたい場合には、ロッドの底部の一面にマジックペンで印を付けておくとよい。セッティングの変更等により印を消す必要が出た場合にはアルコールかベンジンを含ませたティッシュ等で拭き取ればよい。セッティングが決定するまではあれこれと試行を繰り返す必要があるため、マジックペンで印を付ける場合、「本塗り」するのは最後にし、それまでは簡易的なチェック塗り程度に止めておいたほうがいい。

また、スタンドの高さ調整、レッグの向き、さらにまた、どのタムホルダーにどのサイズのロートタムをセットするかなど、セッティングを素早くするためにはスタンドにもマジックで各所に印を付けておくとよい。

■タムホルダーのタイプ



・2018年2月6日(火)撮影

■ロートタム脱着時の注意
・一本のスタンドにロートタムを複数台装着して使用している場合、一台のロートタムを脱着する際にバランスが崩れ、一方のロートタムを装着したままスタンドごと倒れることがある。特に大口径のロートタムは自重による衝撃が大きく、フープの破損、センターボルトの折れ曲がりだけでなく、ロートタム本体が大きく損傷する可能性があるので注意が必要。



タムホルダーのカット

■10cmカットしたタムホルダー

・ 大口径(18、16インチ)のロートタムをセットするうえで、特にバスドラム側のタムホルダー(TH88/C:ロングタイプ)がバスドラムの本体に当たり(つっかえてしまい)、それが自由なセッティングの障害になっていた。TH88/Cは、ロートタムをセッティングするうえでは必要以上にパイプが長く、中間の長さのタムホルダーも販売されていないため、パイプカッターを購入し、自分でパイプのエンドを10cmほど切断することにした。


■パイプカッター

※上画像:ミツトモ製作所 パイプカッター ステンレス・スチール兼用型(66095)
・意外だったことに、タムホルダーの切断作業にはわずか5分程度の時間しかかからなかった。不思議なほどスムーズに、そして綺麗に切断できる。刃に使用されている素材は「炭素工具鋼」。尚、同種の製品が100円ショップ「ダイソー」にも売られていた。

※ビーターのシャフト(太さ約6mm)も切断できないかと思い、試してみたところ、カッターの刃(炭素工具鋼)がすぐに潰れ、それでも強引に作業を続けたところ、刃を固定するネジが緩んできて外れかかってしまった。後日、替刃を購入。やはりパイプ構造でないと切断は難しいようだ。ビーターシャフトは、後日、電動ドリルにディスク砥石を装着して切削した。

・ビーターのシャフト切削についての記事はこちらのページに記載


■切断語の廃材

■エンドキャップの再装着について
・タムホルダー(TH88/C)のパイプに使用されている部分の金属の厚さだが、エンド側が薄めで、それが徐々に厚くなっていく構造になっていた。そのため、プラスチック製のエンドキャップが切断面の内径にぴったりと合わず、パイプに再装着できないのではないかと思ったが、キャップにはパイプ径に対する多少の適用範囲があり、ゴムハンマーで叩き込んだら、一応は再装着することができた。ただし、キャップは無理やり押し込まれている状態なので、内部でパイプに接触している部分が潰れてしまっている可能性がある。

※ご注意:当項目におけると同様の作業を実施されたことで、機材等が意図せぬ破損を被ったり、経済的損害が生じたりする可能性があります。全て自己責任にて作業願います。

※この項:記:2013年6月20日



ロートタムのケース

■大型収納トートバッグ
・特殊な形状をしたロートタムを、安価に、しかもかさばらず簡便に運搬する方法として、検討の結果、以下の「大型収納トートバッグ(キャンプ用品)」をケースとして利用する方法を選択した。

ロートタムは専用のケースが販売されておらず、ネットで検索してみてもせいぜい「特注ケースを製作してもらう」「既存のケースを改造する」「そのまま運ぶ」といった情報くらいしか無く、ロートタムの運搬方法には多くの人たちが困っているようだが、近場のスタジオ通いを用途とするくらいであれば、この「大型収納トートバッグ」を利用する方法はかなり有効だと思う。

※ご注意
・運搬中、ロートタムの細いロッドが器物にぶつかり、ロッドが曲がってしまう恐れがあります。その点には特にご注意ください。

※購入品
キャプテンスタッグ(CAPTAIN STAG) 大型収納トートバッグ・Mサイズ・ブラウン・75リッター(M-1681):約¥900
※底敷が付属していないため、購入者が代替品を探す必要がある。代替品については下記記事をご参考ください。
※2013年現在の価格。価格はショップによって異なる。
※DIY店で売られている場合もある。


■18、16インチロートタム、2台の収納

※上画像: ロートタムをそれぞれ左右にずらし、斜めに向かい合わせにして立てると、バッグにしっかりと収まる。バッグの底敷きや仕切り、緩衝材には100円ショップで購入した樹脂製品やクッション等を利用した。


■センターベルトで固定

※上画像:センターの固定用ベルトを締めると、収納状態がいっそうまとまって安定する。運搬も楽で、車にも乗せやすい。(記:2013年2月13日)


■14、12、10インチロートタム、3台の収納

※上画像:樹脂製品をうまくパーティションとして利用すれば、このように小・中口径3台(10、12、14インチ)のロートタムが、案外大人しく収まってくれる。



■センターベルトで固定

※上画像:センターの固定用ベルトを締めるとすっきりとまとまって、重量もさほどではなく、運搬が楽。この大型収納バッグ、なかなかお勧めですよ。


※注意:運搬中、ロートタムの細いロッドが器物にぶつかり、ロッドが曲がってしまう恐れがあります。その点には特にご注意ください。
※6インチ、8インチのロートタムについては、小型のバッグが一つあれば収納、運搬に間に合う。



■購入品

※上画像:キャプテンスタッグ(CAPTAIN STAG) 大型収納トートバッグ・Mサイズ・ブラウン・75リッター(M-1681):約¥900
※底敷が付属していないため、購入者が代替品を探す必要がある。
※2013年現在の価格。価格はショップによって異なる。
※DIY店のキャンプ用品コーナー等で売られている場合もある。


■緩衝材や保護材として利用できるもの

※上画像:後方左から順に、
(1)便座フタ用カバーを被せた12インチロートタム。
(2)「つながるマット」(EVA樹脂製):底敷き用、パーティション用、緩衝用に利用。カッターを使用して形状を調整できる。
(3)ガーデニング用・キラキラマット(ポリエチレン、およびアルミニウム):緩衝用、パーティション用に利用。カッターを使用して形状を調整できる。
(4)PPシート(ポリプロピレン製):底敷き用に利用。カッターを使用して形状を調整できる。
(5)台所用マット(ポリプロピレン、およびラテックス):底敷き用に利用。
(6)便座フタ用カバー(アクリル、およびポリエステル):ロートタム(10、12、14インチ)のカバーとして利用できる。フープまでなら16インチまでカバーすることが可能だが、少々きつい。当方ではスタジオでの収納時間を短縮するため、結局運搬の際にはこれを使用していない。自宅保管用等には利用できるだろう。
(7)クッション(ポリエステル製):緩衝材としてかなり有効。

※底敷き:大型収納バッグの最も底に「PPシート」を敷き、その上に「つながるマット」、さらにその上には「台所用マット」を敷いて緩衝効果を上げた。底敷きを厚くしすぎるとバッグにロートタムが収まらない場合があるので注意。
※以上はすべて100円ショップ・ダイソーにて購入。

■その他
・ロートタム本体の運搬方法として、その他に、特注ケースを製作してもらう方法、バスドラムのケースを利用する方法、大型の衣装ケースを利用する方法、PVC製のウェットバッグを利用する方法、ポリエチレン製のソフトバスケットを利用する方法、ポリプロピレン製の工具ケースやコンテナケース、特大のゴミ箱を利用する方法、コットン製のエコバッグを利用する方法等々について調べてみたり、実際にDIY店に探しに出掛けたりして検討してみたが、やはりどれも決定的な選択とはならなかった。

・18、16インチロートタムをクローゼットケースを利用して収納する方法として、「天馬:コスパ・クローゼットケース・ワイド・深3段」(幅63×奥行53×高さ69cm)の利用も一時候補に挙げたが、かさばるうえに簡便ではなさそうなので、やはり案を却下。ただし、工夫によってはロートタムの保管や運搬にも利用できそうだ。

■ロートタムのスタンド用ケース
PROTECTIONRACKETの’5029 (LPTR29LTHW)’1つにつきツインタムスタンドを1本、アダプターを装着したままのタムホルダーを2本収納し、運搬している。

アダプターをロートタムに取り付けたまま収納すると必要以上にかさばり、収納ケースに困るだけでなくセッティングにも手間取り、余計に時間を費やしてしまう。ロートタムはアダプターから外し、アダプターはタムホルダーに装着したままでケースに収納したほうが分解にもセッティングにも手間取らない。また、ロートタムのロッド底部には別項に説明したとおりマジックで印をつけてアダプターへの装着方向が一目でわかるようにしておき、ツインタムスタンドもまた決定した高さで素早くセッティングできるよう、パイプにマジックで印を付けておけば、セッティングが容易で効率的に作業できる。

※この項:記:2013年2月13日



Vintage Rototom(ビンテージ・ロートタム)

■現行品との規格の違い

■クロームフィニッシュ

・2014年10月、海外のオークションを利用してクロームメッキタイプのロートタムを入手した。たまたま格安で6インチ、8インチ、10インチのロートタム(クロームフィニッシュ)が旧型スタンド付きのセットで出品されていたので、即決価格で落札した(上の画像は6インチロートタムの主要パーツ)。

■サイズ比較

※以下はノギスや物差しを使用して計測した実測値であり、また、年代により規格の変更等もありうるため、あくまで参考程度にとどめてください。尚、当方で所有する「ビンテージ品」の製造年代は不明であり、また、現行品とは、当項目では当方が2012~2013年に購入した商品を指します。

■6インチ・上側ホイール
・ビンテージ品
A:46mm B:19.5mm、C:8.5mm、D:14mm、E:12.5mm、F:14mm、G:38mm、H:141mm
重量:252g
フープ重量:207g(※ただし、オリジナルパーツかどうかは不明)

・現行品
A:45mm、B:19.5mm、C:7.5mm、D:14mm、E:11mm、F:16mm、G:39.5mm、H:139mm
重量:243g
フープ重量:277g
※参考:タマ・レギュラー・スティールフープ(MFH6-4/1.6mm厚):200.3g

■6インチ・下側ホイール
・ビンテージ品
A:45.5mm、B:19.5mm、C:8mm、D:14mm、E:12mm、F:14mm、G:38.5mm、H:191mm
重量:307g

・現行品
A:44mm、B:19mm、C:9.5mm、D:15mm、E:11.5mm、F:16mm、G:40.5mm、H:189mm
重量:316g


■8インチ・上側ホイール
・ビンテージ品
A:46mm B:19.5mm、C:8.5mm、D:14mm、E:12mm、F:14mm、G:38.5mm、H:191mm
重量:302g
フープ重量:276.5g(※ただし、オリジナルパーツかどうかは不明)

・現行品
A:44mm B:19mm、C:9.5mm、D:15mm、E:11mm、F:15mm、G:40mm、H:188mm
重量:318.5g
フープ重量:375.5g
※参考:パール・レギュラー・スティールフープ(RIM0804/1.6mm厚):301g

■8インチ・下側ホイール
・ビンテージ品
A:46mm B:19mm、C:8.5mm、D:12.5mm、E:13mm、F:14mm、G:38.5mm、H:241mm
重量:380.5g

・現行品
A:45mm B:20mm、C:8mm、D:19mm、E:13mm、F:15.5mm、G:39mm、H:241mm
重量:454.5g


■10インチ・上側ホイール
・ビンテージ品
A:46mm B:20mm、C:8mm、D:18mm、E:13.5mm、F:14mm、G:37.5mm、H:242mm
重量:390.5g
フープ重量:329.5g(※ただし、オリジナルパーツかどうかは不明)

・現行品
A:45mm B:20mm、C:8mm、D:19mm、E:13mm、F:15.5mm、G:39mm、H:242mm
重量:458g
フープ重量:449g

■10インチ・下側ホイール
・ビンテージ品
A:46.5mm B:19.5mm、C:9.5mm、D:18mm、E:10.5mm、F:13mm、G:74.5mm、H:294mm
重量:655.5g

・現行品
A:45.5mm B:18mm、C:9mm、D:17.5mm、E:10.5mm、F:18mm、G:73.5mm、H:294mm
重量:639.5g


※ロートタム本体の素材:アルミニウム
※ロートタムの現行品は本体が「ブラックフィニッシュ(black epoxy coated/エポキシ樹脂焼き付け塗装)」であるが、かつては「クロームフィニッシュ(chrome-plated finish/クロームメッキ)」の他に「シルバーフィニッシュ(silver finish/通常塗装)」もあったようだ。シルバーフィニッシュは海外のオークションサイトでよく目にすることができるが、金属メッキされているわけではないため、クロームフィニッシュのような鏡面光沢はなく、一般のスプレー塗装と同様のマットな「銀色」をしている。日本ではシルバーフィニッシュのロートタムがほとんど出回っていないため、「クロームフィニッシュのロートタム」を「シルバーフィニッシュのロートタム」と呼び誤っている人が多い。
※現行品のセンターボルトの直径は「3/8インチ=8分の3インチ」であり、そのままビンテージ品のロートタムに転用できる。


■形状の違い(6インチ)

■形状の違い
・全体としてはほとんど同じ形状で、一見してその違いは分からないが、各所、細部で微妙に形状が異なっている。特に大きな違いとしては、リム内側のアール(Radius:レイディアス=語源的には「半径」だが、製造用語としては「丸みをつけること」「カドをとること」の意)の取り方がある。

ビンテージ品(年代不明)の場合は、リムの上端から途中までは緩やかにカーブをとり、下側約7mmの部分はリインフォースメント(reinforcement:補強)を兼ねるように急激にホイール内側に向かって曲がっている。それに対し現行品は、リムの上端から下部に至るまで連続的に一定して緩やかなカーブをとってあり、下端には別途リインフォースメントが設けてある。

ただし、今回入手した6インチ、8インチ、10インチのビンテージ・ロートタムのうち、10インチの下側ホイールのリムだけが現行品と同じ形状だったので、ロートタムは年代によって総じて規格のばらつきが見受けられる可能性がある。

また、80年代初頭には「ブラックフィニッシュ」のロートタムが「クロームフィニッシュ」のロートタムと併売されている時期があったので、同じブラックフィニッシュであっても、中古品の中には上記旧型(クロームフィニッシュのリムの形状と同じ形状)の製品があるということになる。事実、当方がオークションで入手したブラックフィニッシュの16インチ、18インチが、この旧型のリム形状をしている。

※参考サイト:The RotoTom Drum Experts.com


■音質について
・ビンテージ品と現行品とで音質がどの程度異なるのか興味があったので、6インチ、8インチのロートタムに同じ種類のヘッド(CSヘッド)を張り、現行品にはビンテージ品と同じ1.6mm厚のフープを装着し、両者のサウンドを聞き比べてみたが、普通にスティックで叩く分にはその違いをはっきりと聞き分けられるほどの大きな違いは無かった。

ただ、ヘッドに耳を近づけて軽く叩いてみると、音が消える直前の場合だが、クロームフィニッシュのほうは自然に音量減衰していくのに対し、現行品は急激に音量減衰しているようだ。ロートタム本体に金属をメッキした場合と樹脂をコーティングした場合とでその程度の違いが出ても不思議はないが、それは意外にもごく小さなものだった。また、この減衰度の違いは普通に演奏する分には聞き分けられないレベルの音量でのものであり、しかもヘッドにガムテープを貼るなどしてミュートして使用するのであれば、特に固執する問題とはならないはずだ。

ヘッドをコーテッド(アンバサダー)に替え、軽くではなく普通にスティックで叩いた場合の両者の音質については、クロームフィニッシュの場合は「心持ち軽く、明るい」印象、そして、現行品は「心持ち引き締まった、まとまりのある」印象であるが、これは本体のフィニッシュの違いからくる当方の単なる先入観に過ぎないかもしれない。

ヘッドの種類、フープを厚めにするか薄めにするか、ワッシャーにプラスチックを使用するか金属を使用するか、ガムテープなどでミュートをするかしないか、あるいはスタンドの種類や形状、固定具合等によってもサウンドの印象は変わるので、ご自身でいろいろと試し、好みのサウンドを追求してみてください。

以上は厳密な測定を行ったわけではなく、当方の感覚的な印象として記載したものにすぎないので、あくまで参考程度にとどめてください。



Chronological table of Pearl Drums

パールドラム:モデル年表
※まだ入手できていないカタログが多いため、暫定記入となります。カタログが追加入手でき次第、逐次情報を年表に反映します。
※同じ年に発行されたカタログでも時期によって版が異なる場合があるため、年表に記載したモデルの販売年に1年のずれが生じる場合がありますので、その点、予めご了承ください。
※1990年代に販売されていた「復刻版バレンシア(1987年が最終生産となった『餃子ラグ』が装着されている)」や、同じく1990年代、カタログ掲載期間以前にも長い期間販売されていた「フォーラム(肉薄廉価版の餃子ラグが装着されている)」等は一般のカタログではなくフライヤー(チラシ)等の頒布にて販促される商品で、「カタログ外商品」と呼ばれる。「カタログ外商品」や「カタログ掲載期間外」の商品については情報把握が困難なため、以下年表には記載していません。因みに、他社についても同様ですが、「カタログ外商品」は製造コストを極限まで下げて製造される普及品がほとんどであるため、品質もノーブランド製品並に低下するのが一般です。

PROFESSIONAL SERIES(暫定記入:2016年8月27日現在)
元画像:930×2690ピクセル(ダウンロードしてご利用ください)

※文化的に貴重な財産でもあるビンテージ品、その他パール製ドラムの変遷を一部でも記録し、多くの方々と情報を共有したいと思っています。特に70年代のカタログをお譲りいただける方はこちらまでご連絡ください。どうぞ宜しくお願いいたします。

MIDDLE CLASS & BEGINNER SETS(暫定記入:2016年8月27日現在)
元画像:930×3400ピクセル(ダウンロードしてご利用ください)


ビンテージ品の保全等に関して
※特に1970年代製以前のビンテージ・ドラムセットはなるべくバラ売りしないようにしましょう。一度散逸すると同年代、同仕様のセットで再生することがほぼ不可能となります。改造もなるべくしないようにしましょう。
※バスドラムの、特にフロントヘッドが当時のまま現存している場合はなるべくホールを開けないでおくようにしましょう。

金属のメンテナンスに関して
※新品の機材を購入した際には、「クレ・ポリメイト」等のワックス剤と「CRC 5-56」「CRC 6-66」等の防錆剤をウェスの上で混合し、ドラムの金属部品やスタンド類に塗布することで薄い保護皮膜が形成され、ひどい錆やくすみを防止できる場合があります。また、一度錆びたりくすんだりしても比較的クリーニングしやすく、ざっとで構わないので、新品購入時にまず一回、その後は適時この保護処置をメンテナンスとして行うことをお勧めします。ただし、上記薬剤を塗布後は、表面に薄い皮膜を残す程度に乾拭きを行い、せっかく塗布した薬剤を完全に拭き取ってしまわないように注意しましょう。また、ワックス剤や防錆剤をドラムのラグ等のパーツに直接吹き付けるとシェル部にまで薬剤が浸透し、塗装やカバリング、あるいはシェル素材そのものに深刻なダメージを与える場合があるので、必ずウェス等を使用して金属部だけに塗布するようにしましょう。
※「金属磨き」の「ピカール」は番手で約4000番相当の研磨粒子(平均3ミクロン)を含有しているため、金属部のクリーニングやくすみ取り等には使用しないようにしましょう。Ludwigの’Supraphonic’等、アルミ地へのクロームメッキには下地処理として塩化ニッケルがメッキされているため、ピカールで磨いているうちにやや赤茶色っぽい光沢を放つようになった場合、クロームメッキ層が消失しかけている可能性があります。高級なメタル製スネアドラムをピカールやその他の液体研磨剤で磨いて(こすり削って)「超綺麗になった~♪!」と喜んでいる人がいますが、ナベやフライパンを磨くのとは事情が異なるので、「ピカール」に限らず研磨剤入りのつや出し剤や金属磨き等の製品を通常のメンテナンスに使用するのはやめておきましょう。
※当方では長年、前項で先述したように、金属部についてはワックス剤と防錆剤を混合してウェスで塗布する処置を新品購入時にまず一度行い、経過を見ながら適時同様の処置を行っています。小さな錆が発生してもツメ先で少し擦るだけでポロッと落ち、軽度なくすみもさっと一拭きするだけで除去できので、後々を考えると却ってこのほうがメンテナンスが楽です。ウェスは微細な塵埃(じんあい)が付着していない綺麗なものを使用します。カバリングの場合は当方では「クレ・ポリメイト」で済ませていますが、ラッカー塗装についてはその処置法を承知していませんので、楽器店にご相談ください。
※楽器をクリーニングするにしても、あまり頻繁に行うのもやめたほうがよい。楽器の表面に付着した極微細な塵埃(じんあい)をクロスやウェスでこすりつけることになるので、当然クリーニングの度に無数の極微細なキズが増えていくことになる。メタルスネア等のシェル側面に懐中電灯等の光を当ててその反射光を見れば今表面がどの程度の状態にあるかわかるので、一度確認してみるとよいでしょう。
※中古楽器の場合、メンテナンスされた形跡のあるものはめったに存在せず、大概はひどいくすみや錆にまみれています。金属部にダメージを与えずにひどいくすみが取れる製品が見当たらない以上、最後の手段として「ピカール」等の「金属磨き」を使用せざるをえないケースもあるにはあるのですが、くすみの状態によっては「唾(ツバ)」をつけてウェスでこするだけで消失する場合もあり、状況によって適宜処置法を判断するとよいでしょう。
錆取りに関しては、錆具合によって対処がさまざまに異なり、一概にこれでという簡便な方法がありません。簡単に落とせる錆もあれば、逆に金属自体が腐食しているためにそれ以上の腐食を止めるので精一杯という場合もあり、ある程度の知識と経験が必要とされます。大概の「錆取り製品」は紙やすりでこするように金属表面を荒らして削り落とすことで錆を除去する方法を採っているため、大切な楽器が傷だらけにならないよう、むやみに「錆取り製品」を使用するのは避け、まずは楽器店でメンテナンスの知識が豊富な店員に対処を相談されることをお勧めします

       


■推定1980年終盤製、PEARL GIATNT STEP ARTISTのバスドラム

※2016年5月5日撮影


パール・「ジャイアントステップ・アーティスト」のバスドラム(22×14インチ)。2016年3月入手。シェルはメイプル材にファイバーグラスクロスをラミネートした「メイプルファイバー」。ロゴバッジのみ1981年以降の角形アルミプレート仕様だが、ファイバー製フープ、及びスムースホワイトヘッドが標準仕様であること、また、フロントヘッドの「Pearlロゴ」の下に「GIANT STEP ARTIST」とシリーズ名が併記されていること、ヘアラインレッドのカバリング、といった点が全て1980年を最終とする仕様なので、当機は1980年終盤製と推定した。オーダー後、オーナーの手に渡ったのは恐らく1981年初頭だろう。

パスドラムに限らず、深胴サウンドには飽き飽きしているというか、ヘッドの種類やチューニングにもよるだろうが、あの深胴独特の暗く重々しい妙な低音成分と籠もった(曇った・濁った)トーンが生理的に受け付けられず、70年代の面影を色濃く残すこの古びたモデルには思い入れを深めている。本体カバリングには傷らしい傷が無く、また、フープにはキックペダルを装着した痕も全く無い。打面には複数箇所にガムテープがべったりと貼られていたが、やはりヘッド自体にダメージが全く無いことからすると、恐らくワンオーナー品で、一時期使用後は物置に長期間放置されていたのだろう。本体のクリーニング、及び金属パーツを分解し、時間のある折にネジ、ワッシャーの一つひとつまでこつこつと錆やくすみを極力除去し、また、どのパーツにもいちいち防錆処置も施すといった作業にまるまる2ヶ月を費やした。しかしながら、ラグやタムホルダーベース、レッグ等の金属部に発生しているピッツ(pits)が非常に多く、手を尽くしてはみたが、これだけはどうにも処置することができなかった。




タムホルダーの穴には丸棒を数センチの長さに切って詰め込んである。ヘッドを指で叩いてみただけだが、雷鳴のような、あるいは地鳴りのような、バランスの取れた開放感のある自然な低音がドーンー……と、ゆっくりと空間に解放されていく。夏の終わり、風の無い夕刻、所々に雲間を見せつつ、ぽつぽつと静かに雨が降りだす中、ふいに聞こえてきた遠雷、そんな光景がふと心によぎり、その風情をも肌で感じさせてくれる、しみじみとした味わいのある生きた低音だ。それに比べ、日頃使用しているレンタルスタジオの複数のルームに備え付けてあるドラム(Pearl MCX)の、あの「ドベン」という張りのないバスドラサウンドの気持ち悪いこと。低音成分だけが妙に強調されていて、音域のバランスも極端に悪い。ただの重低音発生装置でしかなく、サウンドに深みも無ければ色気も味わいも無い。心に何も響いてこないどころか、生理的な拒絶反応がどうしても抑えられない。重低音が重視される今の時代の風潮を反映した、打面側ヘッドがベコベコするほど緩く張るチューニングのせいかもしれないが、気持ちが悪いのを我慢しながら仕方無く使用し続けている。

       


1973年版カタログ(7月版)

仕様関連
ドラム本体のラインナップは、プロモデルが「ニュー・プレジデント」、「アーティスト」の2シリーズ、ミドルクラス以下は「ダイナマックス」、「サンダーキング(ツインタム仕様・スネアドラムは10ラグ仕様)」、「ダウンビート(シングルタム仕様・ネアドラムは8ラグ仕様)」、「チャレンジャー(シングルタム仕様)」、「バレンシア(シングルタム仕様)」の5モデルとなっている。 前年までの旧「プレジデント」が改良され、「ニュー・プレジデント」として生まれ変わる。説明には「ニュー・プレジデントシリーズは、トップドラマーに愛用され好評を博しているプレジデントが、より重厚なモデルに生まれ変ったニューモデルです。ファイバー胴によるビッグパワーに新設計パーツの機能性が結びつきドラムの王者としての風格を高めました」とある。 「アーティスト」の説明には、「プレジデントで、トップドラマーを驚嘆させたパールの技術が、またも新製品を作り上げました。木とグラスファイバーの特殊な合成による胴、および新設計のパーツによって、そのサウンド、デザイン、迫力は国産ドラムのイメージを大きく打ち破りました」とある。

バスドラムのフロントヘッドは、プロモデからビギナーモデルまで全機種丸みを帯びた旧型のブランドロゴ(通称『亀の子ロゴ』)が使用されている。 本体ラグの形状については、プロモデルはベース部が長方形・ボディーが略六角形・トップに縦筋のある通称「餃子ラグ」。ミドルクラス以下のラグは小舟をひっくり返したような「舟形」で、「バレンシア」モデルのみ「角形」バッジについては、「CHALLNGER」、「VALENCIA」の計二機種には各モデル名が英語でプリントされたプレート(アルミプレートか)が貼られ、プロモデルでは「ARTIST」、ミドルクラス以下の「DYNA-MAX」、「THUNDER KING」の二機種にはゴールド(実際にはゴールドとカッパーの中間色)で「PEARL」とエンボスされた小型の黒いプレート(プラスチック製か)、そして「PRESIDENNT」のみ「PRESIDENT」とクロームでエンボスされた小型の黒いプレート(プラスチック製か)が貼られている。「DOWN BEAT」については不明。 全機種とも、フープはスティール製。

■シェル素材
「ニュー・プレジデント」シリーズの説明には、「ファイバー胴によるビッグパワーに新設計パーツの機能性が結びつきドラムの王者としての風格を高めました」とある。シェルのサンプル写真は掲載されていない。
「アーティスト」シリーズの説明には、「木とグラスファイバーの特殊な合成による胴、および新設計のパーツによって、そのサウンド、デザイン、迫力は国産ドラムのイメージを大きく打ち破りました」とある。シェルのサンプル写真は掲載されていない。

※ファイバーシェル… 「(ニュー)プレジデント」シリーズに使用されているシェルで、1975年版のカタログには「P.O.F樹脂を積層合成した世界主要国に特許をもつパール独自の胴を、表面、エッジともセンバンで仕上げしたもので、パワフルでくせのないサウンドが特徴です」とある。色は赤茶色厚みはウッドシェルの半分くらい
。尚、1982年版のカタログには「フェノール樹脂を含むペーパー状の素材を鉄心に積層し、加熱、除湿して作り上げる」とある。フェノール樹脂はプラスチックの一種。
※ウッドファイバーシェル
「アーティスト」シリーズに使用されているシェル。1973年版には「ウッドファイバーシェル」という呼称は用いられていないが、1974年版で「ウッドファイバーシェル」という呼称が用いられる。1975年版では説明欄により「ファイバーウッドシェル」と「ウッドファイバーシェル」という二種の呼称が用いられている。また、1973年版、1974年版のカタログにはシェルのサンプル写真もシェルについての説明も掲載されていないため、シェルの仕様や仕上げ状態等の詳細は不明であるが、1975年版のカタログでは「上質材の9プライの木胴とグラスファイバーを特殊合成したもので、湿度の影響を受けやすい木胴の欠点を補ない、ヘビーで柔らかみのあるサウンドが特徴です」とある。また、同年版のカタログに掲載されているシェルのサンプル写真を見る限りでは、繊維片を白い塗料に混ぜてシェル内面に塗り広げた特殊コーティング処理が施されているようだ。

ウッドシェル」の説明については記載が無い。


※「PRESIDENT」シェルの区別
・パール社の
1976年版カタログによれば、プロモデルである「プレジデント」、「アーティスト」、「クリスタルビート」、「ニュー・ダイナマックス」の四機種にはバスドラム前面ヘッドの「亀の子ロゴ」の上に、いずれも「PRESIDENT」とプリントされており、一見したところでは「クリスタルビート」以外はシリーズの区別ができない。中古品の購入を検討されている方は、バスドラムの前面ヘッドに「PRESIDENT」とプリントされていても「アーティスト」や「ニュー・ダイナマックス」等の他シリーズである場合もあるため、以下に挙げた方法によりシェルの特徴を確認することをお勧めする。

①シェル表面やエッジ部に木目が見られるかどうかを確認する。コーティング等により木目が視認できない場合はバスドラムの内面にあるタムホルダー取り付け穴からシェル断面を見る手もある。「プレジデント」のシェル素材はフェノール樹脂=プラスチックなので、当然木目は無い
②1973年型、1974年型については不明だが、1975年型、1976年型「アーティスト」の場合はウッドシェル内面が「繊維片(ファイバー)を混ぜた白い塗料で特殊コーティング」されていたようだ。また、1973年型、1974年型「ダイナマックス」については不明だが、1975年型、1976年型「ニューダイナマックス」の場合はウッドシェルに「青灰色の塗装」が施されていたようだが、いずれも詳細については不明である。
「ダイナマックス」は1975年にプロモデルにグレードアップし、名称も「ニュー・ダイナマックス」となるが、1977年に「ダイナマックス」へと名称が再び変更となっている。この年(1977年)のカタログに掲載されたシェルのサンプル写真ではシェル内面に白色の特殊コーティングが施され、さらに翌1978年にはクリアー塗装に変更されたようだ(詳細は不明)。
シェルの厚み… 「PRESIDENT」や「PRESIDENT EXPORT」のシェルの厚みはウッドシェルの半分程度である。

■カラーフィニッシュ
ドラム本体のカラーフィニッシュは、#1:白パール、#3:銀ダイヤ、#4:青ダイヤ、#5赤ダイヤ、#13:マリンパール(※白パールより青っぽい発色)、#15:サテンシルバー、#16:サテンゴールド、#23:レッドオイスター(※赤地に黒で虎目のような模様)、#24:オイスターパール(白地に黒の虎目のような模様。翌年廃番)、#31:ジェットブラック、#45:ウッドグレイン(※茶色の木目模様)の全11色

■その他
ジュピター・スネアドラム」の価格は、#4814(14”×5”・10本ロッド)が38,000円。「パール・メタルスネアドラム」の価格は、#4214(14”×5”・10本ロッド)が27,000円、#4314(14”×5”・8本ロッド)が25,000円、#4514(14”×5.5"・10本ロッド)が16,000円、#4614(14”×5.5"・8本ロッド)が14,000円。「パール・スネアドラム」の価格は、#2414(14”×5”・10本ロッド)が16,000円、#2314(14”×5”・8本ロッド)が14,000円、#3214(14”×5”・6本ロッド)が9,000円。
’Formula-602’、’Formula-602 Sound Edge’、’Giant Beat’、’Dixie’の各シリーズをラインナップしたパイステシンバルの商品案内には、「パイステシンバルは、スイスの山峡で、この道30年の職人たちによって仕上げられた音の芸術品です。厳しい品質管理による製品の均一化により、シンバルに要求される”音”の極限をきわめたものです」とある。

       


1974年版カタログ(6月版?)

仕様関連
ドラム本体のラインナップは、プロモデルが「ニュー・プレジデント」、「アーティスト」、「クリスタル・ビート」の3機種、ミドルクラス以下は「ダイナマックス(シングルタム仕様・12インチタム追加可能)」、「サンダーキング(ツインタム仕様・スネアドラムは10ラグ仕様)」、「ダウンビート(シングルタム仕様・13インチタム追加可能・スネアドラムは8ラグ仕様)」、「チャレンジャー(シングルタム仕様)」、「バレンシア(シングルタム仕様)」の5機種となっている。 「ニュー・プレジデント」シリーズの説明には、「プレジデントシリーズはドラマーの要求を完全に満たした最高級ドラムのシリーズです。パールで開発したファイバーシェルは湿度の影響をまったく受けない、良く通る明るいサウンドとビッグパワーが特徴です。その上新設計パーツの機能性と結びつき、ドラムの王者としての風格をそなえています」とある。 「アーティスト」の説明には、「従来のウッドシェルの欠点を完全に補なったウッドファイバーシェル(プライウッドとグラスファイバーの特殊合成による胴)のプロフェッショナルモデルのドラムシリーズです。プレジデントと同じデザイン、同じ機能をもちながらウッドシェル独特の柔かみのあるサウンドが特徴です」とある。「クリスタルビート」が新たに登場。その説明には、「クリスタルビートセットは特殊製法によるシームレスアクリルシェルでステージ効果まで計算して作り上げたカスタムメードのドラムセットです。継ぎ目のないシェルは音質、音量のすぐれたブリリアンスサウンドを生みだしました」とある。

バスドラムのフロントヘッドは、プロモデからビギナーモデルまで全機種丸みを帯びた旧型のブランドロゴ(通称「亀の子ロゴ」)が使用されている。 本体ラグの形状については、プロモデルはベース部が長方形・ボディーが略六角形・トップに縦筋のある通称「餃子ラグ」。ミドルクラス以下のラグは小舟をひっくり返したような「舟形」だが、「バレンシア」モデルのみ角形。 バッジについては、「CHALLNGER」、「VALENCIA」の計二機種には各モデル名が英語でプリントされたプレート(アルミプレートか)が貼られ、プロモデルでは「ARTIST」、ミドルクラス以下の「DYNA-MAX」、「THUNDER KING」の二機種にはゴールド(実際にはゴールドとカッパーの中間色)で「PEARL」とエンボスされた小型の黒いプレート(プラスチック製か)、そして「PRESIDENNT」のみ「PRESIDENT」とクロームでエンボスされた小型の黒いプレート(プラスチック製か)が貼られている。「DOWN BEAT」については不明。 全機種とも、フープはスティール製。

■シェル素材
「ニュー・プレジデント」シリーズの説明には、「パールで開発したファイバーシェルは湿度の影響をまったく受けない、良く通る明るいサウンドとビッグパワーが特徴です。その上新設計パーツの機能性と結びつき、ドラムの王者としての風格をそなえています」とある。シェルのサンプル写真は掲載されていない。
「アーティスト」シリーズの説明には、「従来のウッドシェルの欠点を完全に補なったウッドファイバーシェル(プライウッドとグラスファイバーの特殊合成による胴)のプロフェッショナルモデルのドラムシリーズです。プレジデントと同じデザイン、同じ機能をもちながらウッドシェル独特の柔かみのあるサウンドが特徴です」とある。シェルのサンプル写真は掲載されていない。

※ファイバーシェル… 「プレジデント」シリーズに使用されているシェルで、1975年版のカタログには「P.O.F樹脂を積層合成した世界主要国に特許をもつパール独自の胴を、表面、エッジともセンバンで仕上げしたもので、パワフルでくせのないサウンドが特徴です」とある。色は赤茶色厚みはウッドシェルの半分くらい
。尚、1982年版のカタログには「フェノール樹脂を含むペーパー状の素材を鉄心に積層し、加熱、除湿して作り上げる」とある。フェノール樹脂はプラスチックの一種。
※ウッドファイバーシェル「アーティスト」シリーズに使用されているシェル。1973年版には「ウッドファイバーシェル」という呼称は用いられていないが、1974年版で「ウッドファイバーシェル」という呼称が用いられる。1975年版では説明欄により「ファイバーウッドシェル」と「ウッドファイバーシェル」という二種の呼称が用いられている。また、1973年版、1974年版のカタログにはシェルのサンプル写真もシェルについての説明も掲載されていないため、シェルの仕様や仕上げ状態等の詳細は不明であるが、1975年版のカタログでは「上質材の9プライの木胴とグラスファイバーを特殊合成したもので、湿度の影響を受けやすい木胴の欠点を補ない、ヘビーで柔らかみのあるサウンドが特徴です」とある。また、同年版のカタログに掲載されているシェルのサンプル写真を見る限りでは、繊維片を白い塗料に混ぜてシェル内面に塗り込んだような特殊処理が施されているようだ。


ウッドシェル」の説明については記載が無い。


※「PRESIDENT」シェルの区別
・パール社の
1976年版カタログによれば、プロモデルである「プレジデント」、「アーティスト」、「クリスタルビート」、「ニュー・ダイナマックス」の四機種にはバスドラム前面ヘッドの「亀の子ロゴ」の上に、いずれも「PRESIDENT」とプリントされており、一見したところでは「クリスタルビート」以外はシリーズの区別ができない。中古品の購入を検討されている方は、バスドラムの前面ヘッドに「PRESIDENT」とプリントされていても「アーティスト」や「ニュー・ダイナマックス」等の他シリーズである場合もあるため、以下に挙げた方法によりシェルの特徴を確認することをお勧めする。

①シェル表面やエッジ部に木目が見られるかどうかを確認する。コーティング等により木目が視認できない場合はバスドラムの内面にあるタムホルダー取り付け穴からシェル断面を見る手もある。「プレジデント」のシェル素材はフェノール樹脂=プラスチックなので、当然木目は無い
②1973年型、1974年型については不明だが、1975年型、1976年型「アーティスト」の場合はウッドシェル内面が「繊維片(ファイバー)を混ぜた白い塗料で特殊コーティング」されていたようだ。また、1973年型、1974年型「ダイナマックス」については不明だが、1975年型、1976年型「ニューダイナマックス」の場合はウッドシェルに「青灰色の塗装」が施されていたようだが、いずれも詳細については不明である。
「ダイナマックス」は1975年にプロモデルにグレードアップし、名称も「ニュー・ダイナマックス」となるが、1977年に「ダイナマックス」へと名称が再び変更となっている。この年(1977年)のカタログに掲載されたシェルのサンプル写真ではシェル内面に白色の特殊コーティングが施され、さらに翌1978年にはクリアー塗装に変更されたようだ(詳細は不明)。
シェルの厚み… 「PRESIDENT」や「PRESIDENT EXPORT」のシェルの厚みはウッドシェルの半分程度である。

■カラーフィニッシュ
ドラム本体のカラーフィニッシュは、#1:白パール、#3:銀ダイヤ、#4:青ダイヤ、#5赤ダイヤ、#13:マリンパール(※白パールより青っぽい発色)、#15:サテンシルバー、#16:サテンゴールド、#17:サテンブルー(新色)、#23:レッドオイスター(※赤地に黒で虎目のような模様)、#31:ジェットブラック、#45:ウッドグレイン(※茶色の木目模様)の全11色「クリスタルビート」のシェルカラーには、クリアー、レッド、ブルー、イエローの四色が用意されている。

■その他
パール・クリスタルスネアドラム」はまだ発売されていない。「ジュピター・スネアドラム」の価格は、#4814(14”×5”・10本ロッド)が45,000円。#4914(14”×6.5”・10本ロッド)が48,000円。「パール・メタルスネアドラム」の価格は、#4214(14”×5”・10本ロッド)が32,000円、#4314(14”×5”・8本ロッド)が30,000円、#4514(14”×5.5"・10本ロッド)が18,000円、#4614(14”×5.5"・8本ロッド)が16,000円。「パール・スネアドラム」の価格は、#2314(14”×5”・8本ロッド)が16,000円、#3214(14”×5”・6本ロッド)が10,000円。
’Formula-602’、’Formula-602 Sound Edge’、’Giant Beat’、’Dixie’の各シリーズをラインナップしたパイステシンバルの商品案内には、「パイステシンバルは、スイスの山峡で、この道30年の職人たちによって仕上げられた音の芸術品です。厳しい品質管理による製品の均一化により、シンバルに要求される”音”の極限をきわめたものです」とある。

       


1975年版カタログ(1974年12月版?)

仕様関連
ドラム本体のラインナップは、プロモデルが「プレジデント」、「アーティスト」、「クリスタル・ビート」、「ニュー・ダイナマックス」の4シリーズ、ミドルクラス以下は「サンダーキング(ツインタム仕様・スネアドラムは10ラグ仕様)」、「ダウンビート(シングルタム仕様・18インチバスドラム選択可能・13インチタム追加可能・スネアドラムは8ラグ仕様)」、「チャレンジャー・MK-Ⅱ」(ツインタム仕様)、「チャレンジャー(シングルタム仕様)」、「バレンシア(シングルタム仕様)」の5モデルとなっている。 「プレジデント」、「アーティスト」シリーズには、ドラマーの要望に応じたさまざまなセッティングを実現する「カスタムライン」が用意され、「プレジデント」シリーズには24インチ、26インチのバスドラムを使用した「ビッグショット」も用意されている。前年までの「ダイナマックス」がプロモデルとして生まれ変わり、「ニュー・ダイナマックス」となる

バスドラムのフロントヘッドは、プロモデからビギナーモデルまで全機種丸みを帯びた旧型のブランドロゴ(通称『亀の子ロゴ』)が使用されている。 本体ラグの形状については、プロモデルはベース部が長方形・ボディーが略六角形・トップに縦筋のある通称「餃子ラグ」。ミドルクラス以下のラグは小舟をひっくり返したような「舟形」だが、「バレンシア」モデルのみ角形。バッジについては、「CHALLNGER」二機種、「VALENCIA」の計三モデルには各モデル名が英語でプリントされたプレート(アルミプレートか)が貼られ、「ARTIST」、「CRYSTAL BEAT」、「NEW DYNA-MAX」のプロモデル三種、及び「THUNDER KING」「DOWN BEAT」の二機種にはゴールド(実際にはゴールドとカッパーの中間色)で「PEARL」とエンボスされた小型の黒いプレート(プラスチック製か)、そして「PRESIDENNT」のみ「PRESIDENT」とクロームでエンボスされた小型の黒いプレート(プラスチック製か)が貼られている。全機種とも、フープはスティール製。

■シェル素材
「プレジデント」シリーズには積層合成された「P.O.F樹脂」、また、「アーティスト」シリーズには木胴に白色のファイバーを特殊樹脂で接着した「ファイバー・ウッド・シェル」が使用されている。

※ファイバーシェル… 「プレジデント」シリーズに使用されているシェルで、「P.O.F樹脂を積層合成した世界主要国に特許をもつパール独自の胴を、表面、エッジともセンバンで仕上げしたもので、パワフルでくせのないサウンドが特徴です」とある。色は赤茶色厚みはウッドシェルの半分くらい
。尚、1982年版のカタログには「フェノール樹脂を含むペーパー状の素材を鉄心に積層し、加熱、除湿して作り上げる」とある。フェノール樹脂はプラスチックの一種。
※ファイバーウッドシェル
… 「アーティスト」シリーズに使用されているシェルで、「上質材の9プライの木胴とグラスファイバーを特殊合成したもので、湿度の影響を受けやすい木胴の欠点を補ない、ヘビーで柔らかみのあるサウンドが特徴です」とある。カタログに掲載されている写真を見る限りでは、繊維片を白い塗料に混ぜてシェル内面に塗り込んだような特殊処理が施されているようだ。

ウッドシェル」の説明欄には、「オーソドックスなウッドシェルですが、特殊接着剤の使用とヒートコンプレス製法の優秀性は、世界各国で認められています」とあり、ウッドシェル使用のモデルとして「ニューダイナマックスセット」、「サンダーキングセット」、「ダウンビートセット」、「チャレンジャーマークⅡセット」、「チャレンジャーセット」、「バレンシアセット」が挙げられている。尚、内面塗装されたシェルとそうでないシェルの区分については説明が記載されていないが、1977年版カタログに記載された説明を参考にすると、内面塗装が施されていないのは「チャレンジャー・シリーズ」と「バレンシア」であろうと思われる(詳細は不明)。また、「ウッドシェル」のサンプル写真が1枚掲載されており、
シェル内面が青灰色になっているが、これは恐らくプロモデルで唯一ウッドシェルが採用されている「ニューダイナマックスセット」に使用されているシェルのサンプルだろうと思われる。

※「PRESIDENT」シェルの区別
・パール社の
1976年版カタログによれば、プロモデルである「プレジデント」、「アーティスト」、「クリスタルビート」、「ニュー・ダイナマックス」の四機種にはバスドラム前面ヘッドの「亀の子ロゴ」の上に、いずれも「PRESIDENT」とプリントされており、一見したところでは「クリスタルビート」以外はシリーズの区別ができない。中古品の購入を検討されている方は、バスドラムの前面ヘッドに「PRESIDENT」とプリントされていても「アーティスト」や「ニュー・ダイナマックス」等の他シリーズである場合もあるため、以下に挙げた方法によりシェルの特徴を確認することをお勧めする。

①シェル表面やエッジ部に木目が見られるかどうかを確認する。コーティング等により木目が視認できない場合はバスドラムの内面にあるタムホルダー取り付け穴からシェル断面を見る手もある。「プレジデント」のシェル素材はフェノール樹脂=プラスチックなので、当然木目は無い
②1973年型、1974年型については不明だが、1975年型、1976年型「アーティスト」の場合はウッドシェル内面が「繊維片(ファイバー)を混ぜた白い塗料で特殊コーティング」されていたようだ。また、1973年型、1974年型「ダイナマックス」については不明だが、1975年型、1976年型「ニューダイナマックス」の場合はウッドシェルに「青灰色の塗装」が施されていたようだが、いずれも詳細については不明である。
「ダイナマックス」は1975年にプロモデルにグレードアップし、名称も「ニュー・ダイナマックス」となるが、1977年に「ダイナマックス」へと名称が再び変更となっている。この年(1977年)のカタログに掲載されたシェルのサンプル写真ではシェル内面に白色の特殊コーティングが施され、さらに翌1978年にはクリアー塗装に変更されたようだ(詳細は不明)。
シェルの厚み… 「PRESIDENT」や「PRESIDENT EXPORT」のシェルの厚みはウッドシェルの半分程度である。ある。

■カラーフィニッシュ
ドラム本体のカラーフィニッシュは、#1:白パール、#3:銀ダイヤ、#4:青ダイヤ、#5赤ダイヤ、#13:マリンパール(※白パールより青っぽい発色)、#15:サテンシルバー、#16:サテンゴールド、#17:サテンブルー、#23:レッドオイスター(※赤地に黒で虎目のような模様)、#31:ジェットブラック、#34:ヘアラインシルバー、#35:ヘアラインゴールド、#36:ヘアラインブルー、#39:ブルージーンズ(※ジーンズ生地を貼りつけたものか)、#45:ウッドグレイン(※茶色の木目模様)の全15色「クリスタルビート」のシェルカラーには、クリアー、レッド、ブルー、イエローの四色が用意されている。

■その他
パール・クリスタルスネアドラム」の価格は、#AC-314(14”×5”・10本ロッド)が35,000円。「パール・メタルスネアドラム」の価格は、#4514(14”×5.5”・10本ロッド)が18,000円、#4614(14”×5.5"・8本ロッド)が16,000円。「パール・スネアドラム」の価格は、#2314(14”×5”・8本ロッド)が16,000円、#3214(14”×5.5”)が10,000円。
’Formula-602’、’Formula-602 Sound Edge’、’2002’、’Dixie’の各シリーズをラインナップしたパイステシンバルの商品案内には、「パイステシンバルは、スイスの山峡で、この道30年の職人たちによって仕上げられた音の芸術品です。厳しい品質管理による製品の均一化により、シンバルに要求される”音”の極限をきわめたものです」とある。

       


1976年版カタログ(C060830版)

仕様関連
ドラム本体のラインナップは、プロモデルが「プレジデント・エクスポート(新登場)」、「プレジデント」、「アーティスト」、「クリスタル・ビート」、「ニュー・ダイナマックス」、ミドルクラス以下が「サンダーキング(ツインタム仕様・スネアドラムは10ラグ仕様)」、「ダウンビート(シングルタム仕様・18インチバスドラム選択可能・13インチタム追加可能・スネアドラムは8ラグ仕様)」、「チャレンジャー・MK-Ⅱ」(ツインタム仕様)、「チャレンジャー(シングルタム仕様)」、「ロックンローラー(シングルタム仕様。ツインタム仕様も選択可)」、「バレンシア(シングルタム仕様)」となっている。 「プレジデント・エクスポート」、「プレジデント」、「アーティスト」シリーズには、ドラマーの要望に応じたさまざまなセッティングを実現する「カスタムライン」が用意され、「プレジデント・エクスポート」、「プレジデント」の二機種には、24インチ、26インチのバスドラムを使用した「ビッグショット」が用意されている。

新たに発売された「プレジデント・エクスポート」シリーズのフロントヘッドには、このシリーズにのみ現行デザインと同じブランドロゴ(海外向けパールブランド)が使用され、他のプロモデル、及びミドルクラス以下のモデルには全て丸みを帯びた旧型のブランドロゴ(通称『亀の子ロゴ』)が使用されている。 本体ラグの形状は、「ロックンローラー」モデルが舟形、「バレンシア」モデルが角形、その他のモデルはベース部が長方形・ボディーが六角形状・トップに縦筋のある、通称「餃子ラグ」バッジについては、「CHALLNGER」二機種、「ROCK'N ROLLER」「VALENCIA」の計四機種には各モデル名が英語でプリントされたプレート(アルミプレートか)が貼られ、「PRESIDENT EXPORT」「ARTIST」「CRYSTAL BEAT」「NEW DYNA-MAX」のプロモデル四機種、及び「THUNDER KING」「DOWN BEAT」の二機種にはゴールド(実際にはゴールドとカッパーの中間色)で「PEARL」の文字がエンボスされた小型で黒い長方形のプレート(プラスチック製か)、そして「PRESIDENNT」のみ、「PRESIDENT」とクロームでエンボスされた小型で黒い長方形のプレート(プラスチック製か)が貼られていた。 全機種とも、フープはスティール製。
REMOの「ロートタム」が新たに発売される(※上画像を参照のこと)。ロートタム用のスタンド(#613)は、ロートタム一台を単体でスタンド一本に装着するタイプ。

■シェル素材
「プレジデント・エクスポート」シリーズのシェルには積層合成された「ファイバー・グラス」、「プレジデント」シリーズには積層合成された「P.O.F樹脂」、また、「アーティスト」シリーズには木胴に白色のファイバーを接着した「ファイバー・ウッド・シェル」が使用されている。

※ファイバーグラスシェル
… 「プレジデント・エクスポート」シリーズに使用されているシェルで、「強度において他に例がないほど強く、ビッグパワーと輝くようなサウンドを誇る」とある。また、1977年版のカタログには「ファイバーグラスを積層合成した胴を旋盤仕上げしたもの」とあり、1978年版には「他のどんなドラムでもかなわない強力なパワーと音のぬけがポイントです。さらにクセがなく湿気の影響をうけることなく、あらゆる条件を満たしたパーフェクトなドラムといえるでしょう」と記載されている。シェルの固有色は薄い茶灰色厚みはウッドシェルの半分くらい
※ファイバーシェル… 「プレジデント」シリーズに使用されているシェルで、「ドラムの王者としての風格をそなえ、パワフルでくせのないサウンドが特長」とある。また、1976年版には「P.O.F樹脂を積層合成した世界主要国に特許をもつパール独自の胴を、表面、エッジともセンバンで仕上げしたもので、パワフルでくせのないサウンドが特徴です」とあり、1982年版のカタログには「フェノール樹脂を含むペーパー状の素材を鉄心に積層し、加熱、除湿して作り上げる」と記載されている。尚、フェノール樹脂はプラスチックの一種。シェルの固有色は赤茶色厚みはウッドシェルの半分くらい
※ファイバーウッドシェル
… 「アーティスト」シリーズに使用されているシェルで、「ウッドシェルの特徴を残しながらもヘビーなサウンド」とあり、1976年版には「上質材の9プライの木胴とグラスファイバーを特殊合成したもので、湿度の影響を受けやすい木胴の欠点を補ない、ヘビーで柔らかみのあるサウンドが特徴です」とある。カタログに掲載されている写真を見る限りでは、繊維片を白い塗料に混ぜてシェル内面に塗り込んだような特殊処理が施されているようだ。
※デラックス・ウッドシェル(コーティング・ウッドシェル)
… シェルのサンプル写真を見る限りではシェル内面に
青灰色の塗装が施されているようで、「オーソドックスなウッドシェルに特殊塗料をコーティングした一般的には高級品として扱われている…」とある。具体的にどのモデルに使用されているシェルであるのかの説明はないが、プロモデルの中で唯一ウッドシェルを採用している「ニューダイナマックス」モデルに使用されたものである可能性がある。

ウッドシェル」の説明欄には、「ウッドシェル使用のドラムは ・ニューダイナマックスセット・サンダーキングセット・ダウンビートセット・チャレンジャーマークⅡセット・チャレンジャーセット・ロックンローラーセット・バレンシアセット・メロディックタムタム」とだけあり、内面塗装されたシェルとそうでないシェルの区分がなされていない。ただ、1977年版を参考にすると、内面塗装が施されていないのは恐らく「チャレンジャー・シリーズ」と「ロックンローラーセット」、「バレンシア」、「メロディックタムタム」の各モデルであろうと思われ、「サンダーキング」と「ダウンビート」のシェル内面には透明のラッカー塗装が施されている可能性がある。


※「PRESIDENT」シェルの区別
・パール社の
1976年版カタログによれば、プロモデルである「プレジデント」、「アーティスト」、「クリスタルビート」、「ニュー・ダイナマックス」の四機種にはバスドラム前面ヘッドの「亀の子ロゴ」の上に、いずれも「PRESIDENT」とプリントされており、一見したところでは「クリスタルビート」以外はシリーズの区別ができない。中古品の購入を検討されている方は、バスドラムの前面ヘッドに「PRESIDENT」とプリントされていても「アーティスト」や「ニュー・ダイナマックス」等の他シリーズである場合もあるため、以下に挙げた方法によりシェルの特徴を確認することをお勧めする。

①シェル表面やエッジ部に木目が見られるかどうかを確認する。コーティング等により木目が視認できない場合はバスドラムの内面にあるタムホルダー取り付け穴からシェル断面を見る手もある。「プレジデント」のシェル素材はフェノール樹脂=プラスチックなので、当然木目は無い
②1973年型、1974年型については不明だが、1975年型、1976年型「アーティスト」の場合はウッドシェル内面が「繊維片(ファイバー)を混ぜた白い塗料で特殊コーティング」されていたようだ。また、1973年型、1974年型「ダイナマックス」については不明だが、1975年型、1976年型「ニューダイナマックス」の場合はウッドシェルに「青灰色の塗装」が施されていたようだが、いずれも詳細については不明である。
「ダイナマックス」は1975年にプロモデルにグレードアップし、名称も「ニュー・ダイナマックス」となるが、1977年に「ダイナマックス」へと名称が再び変更となっている。この年(1977年)のカタログに掲載されたシェルのサンプル写真ではシェル内面に白色の特殊コーティングが施され、さらに翌1978年にはクリアー塗装に変更されたようだ(詳細は不明)。
シェルの厚み… 「PRESIDENT」や「PRESIDENT EXPORT」のシェルの厚みはウッドシェルの半分程度である。

■カラーフィニッシュ
ドラム本体のカラーフィニッシュは、#1:白パール、#3:銀ダイヤ、#4:青ダイヤ、#5赤ダイヤ、#13:マリンパール(※白パールより青っぽい発色)、#15:サテンシルバー、#16:サテンゴールド、#17:サテンブルー、#18:サテンレッド(新色)、#23:レッドオイスター(※赤地に黒で虎目のような模様。翌年廃番)、#31:ジェットブラック、#34:ヘアラインシルバー、#35:ヘアラインゴールド、#36:ヘアラインブルー、#37:ヘアラインレッド新色)、#38:クロームメタル新色)、#39:ブルージーンズ(※ジーンズ生地を貼りつけたものか。翌年廃番)、#40:ヘアラインブラック新色)、#41:ヘアラインホワイト新色)、#45:ウッドグレイン(※茶色の木目模様)の全20色「クリスタルビート」のシェルカラーには、クリアー、レッド、ブルー、イエローの四色が用意されている。

■その他
ジュピター・スネアドラム」の価格は、#4814(14”×5”)が45,000円、#4914(14”×6.5")が48,000円。シェルの素材については記載が無い。
’Formula-602’’2002’’Dixie’の各シリーズをラインナップしたパイステシンバルの商品案内には、「パイステシンバルは、スイスの山峡で、この道30年の職人たちによって仕上げられた音の芸術品です。厳しい品質管理による製品の均一化により、シンバルに要求される”音”の極限をきわめたものです」とある。

       


1977年版カタログ(CO761050版)
■仕様関連
ドラム本体のラインナップは、「プレジデント・エクスポート」シリーズ、「プレジデント」シリーズ、およびそれらのオプションシリーズである「ビッグショット」、他には「ジャイアントステップ」シリーズ(新登場)、「クリスタル・ビート」シリーズ」、「ダイナマックス」(『NEW DYNA-MAX』から名称変更)、「サンダーキング」(ツインタム仕様・22インチバスドラム選択可能・スネアドラムは10ラグ仕様)、「ダウンビート」(シングルタム仕様・18インチバスドラム選択可能・13インチタム追加可能・スネアドラムは8ラグ仕様)、「チャレンジャー・MK-Ⅱ」(ツインタム仕様)、「チャレンジャー」(シングルタム仕様)、「ロックンローラー」(シングルタム仕様・13インチタム追加可能)となり、「アーティスト」シリーズと「バレンシア」が廃番となる。「ビッグショット」はバスドラムのサイズが26インチ、24インチ、タムタムが13インチ、14インチ、バスタムタムが16インチ、18インチのビッグサイズシリーズで、「プレジデント・エクスポートと「プレジデント」両機種でカスタムが可能。 「ジャイアントステップ」シリーズが新たに発売される。説明には「メイプルだからこそ成し遂げた”不滅のウッドシェルサウンド”。ウッドシェルドラムとしてはこれ以上望めない程の驚くべき音量と完璧な音のぬけを実現…このシリーズには、丸みのあるあたたかい木のサウンドを生かすために、耐久性抜群のファイバー製バスドラムカウンターフープを使用する等、徹底したウッドシェルサウンドづくりがなされています」とある。 「ニューダイナマックス」から「ダイナマックス」に名称変更され、説明には「プロフェッショナルモデルにグレードアップされて以来、急激に人気の集まったダイナマックスセット。9プライのウッドシェルに湿気防止とハードボディ化を目的とした特殊樹脂の内面コーティングが施され、やわらかみを残したダイナミックなサウンドが特徴です」とある。「ニューダイナマックス」以外のフープはスティール製。

バスドラムの前面ヘッドにプリントされたパールのブランドロゴが旧タイプのデザインから現行デザインのロゴに全シリーズ統一された。また、ロゴの下に「プレジデント・エクスポート」シリーズには「PRESIDENT EXPORT」、「プレジデント」シリーズには「PRESIDENT」、「ジャイアント・ステップ」シリーズには「GIANT STEP」、「クリスタルビート」シリーズには「CRYSTAL BEAT」、「ダイナマックス」シリーズには「DYNA-MAX」と、それぞれのシリーズ名がプリントされるようになった。
エントリーモデル、’Valencia’が廃番に。 「ロックンローラー」のラグが「舟形」からプロモデルと同様の形状でやや小さめのラグ(通称餃子ラグ)」に変更される。「THUNDER KING」のバスドラムが前年までの6テンションから8テンションに変更。バッジについては、1976年版と同様の形式。
ロートタム用「コンビネーションスタンド(#RT-613)」が新たに登場。これは、2013年より廃番となったロートタム専用スタンド、’RMS-30シリーズ’と形は近似しているが、バー上の随意の位置にロートタムをセッティングできるわけではなく、バーに開けられた数か所の穴のいずれかの位置にセッティングするタイプらしい。

■シェル素材
「プレジデント・エクスポート」シリーズのシェルに採用されている「ファイバーグラスシェル」の説明には、「最も強力なパワーと音のぬけが最大の特徴で、輝くようなブリリアンスサウンドを持っています。また、耐久力においては他に例がないほど強く、湿気の影響を全くうけない完璧とも言えるドラムです」とあり、「プレジデント」シリーズのシェルに採用されている「ファイバーシェル」の説明には、「パワフルでハギレの良い明るいサウンドが特徴で、湿気の影響は全く受けません」とある。 「ジャイアントステップ」シリーズに採用されている「メイプルシェル」の説明には、「北方からわざわざ取りよせたぜいたくなメイプル材を厳選し、十分な乾燥期間を与えた後にヒートコンプレス製法で真円に成型、内面にはニス塗りを施し、ベテラン職人の手でエッジ仕上げをしたもの。材質が均一でキメが細かいためパワー、音のぬけは、ウッドシェルとしてはこれ以上望めない程優れ、まるく、あたたかみのある音色が特徴です」とあり
同モデルのフープにのみ、「ファイバーフープ」が使用されている。「クリスタルビート」シリーズに使用されている「クリスタルシェル」の説明にはは、「特殊樹脂をロータリー製法によって真円で継ぎ目のないシームレス胴に仕上げ、さらに旋盤でエッジ調整を施したもの。センシティブでドライなサウンドとビッグパワーが特徴で、透明な美しい輝きステージに映えます」とある。また、「ダイナマックス」モデルには、「湿気防止とハードボディー化を目的とした特殊樹脂による内面コーティング」を施したシェルが使用され、「ヘビーでやわらかみのあるサウンドが特徴です」とある(ウッドシェルⅠ)。

「サンダーキング(ツインタム・スネアは10ラグ)」、「ダウンビート(シングルタム・スネアは8ラグ)」には、「内面塗装を施した」ウッドシェルが採用されており(ウッドシェルⅡ)、他の「チャレンジャー・MK-Ⅱ」、「チャレンジャー」、「ロックンローラー」のシェルの説明には、「一般に木胴と呼ばれるオーソドックスなものですが、パール独自のヒートコンプレス製法により、真円でバランスのよい仕上がりになっています。ヘビーでやわらかみのあるサウンドが特徴です」とある(ウッドシェルⅢ

※ダイナマックスセットのシェルについて… 「ウッドシェルⅠ」に分類された唯一のシェルで、掲載されている写真では内面に塗装された特殊樹脂の色は白色。ただし、1976年版では名称変更前の「New-Dyna-Max」であり、シェル内面は「青灰色」だったようだ。また、1978年版では「ダイナマックス」のシェルは通常のクリアー塗装に変更となったようである。

■カラーフィニッシュ
ドラム本体のカラーフィニッシュは、#1:白パール(翌年廃番)、#3:銀ダイヤ翌年廃番、#4:青ダイヤ、#5:赤ダイヤ(翌年廃番)、#13:マリンパール(※白パールより青っぽい発色)、#15:サテンシルバー、#16:サテンゴールド、#17:サテンブルー、#18:サテンレッド、#19:ニューマリンパール(※新色マリンパールより発色度が高めか)、#20:シルバーリプルパール(波紋のような独特の模様)、#31:ジェットブラック、#33:スノーホワイト(※新色。真っ白。)、#34:ヘアラインシルバー、#35:ヘアラインゴールド、#36:ヘアラインブルー、#37:ヘアラインレッド、#38:クロームメタル、#40:ヘアラインブラック、#41:ヘアラインホワイト、#45:ウッドグレイン(※赤茶色の木目模様。翌年廃番)、#55:シルバーフラッシュ(※新色。サテンシルバーよりやや反射光沢を抑えてある)の全22色。「クリスタルビート」のシェルカラーには、クリアー、レッド、ブルー、イエローの四色が用意されている。

■その他
ジュピター・スネアドラム」の価格は、#4814(14”×5”)が51,000円、#4914(14”×6.5")が54,000円。シェルの素材については記載が無い。「ジャイアントステップ」シリーズに使われているスネアドラムは「メイプル・スネアドラム」で、価格は#G-314(14”×5”)が39,000円、#314D(14”×6.5”)が42,000円。
パイステ2002」の商品説明には、「アメリカでは最も人気のある2002シンバルは、パワフルで輝くようなサウンドをもち、主にロックドラマーが好んで使っています」とある。
この年、アメリカのハードロックバンド、「KISS」が初来日し、4月4日、千葉県八千代市にある「パールドラム」の工場を訪れ、約2時間にわたって見学を行った。


■KISSのピーター・クリスがパールのドラム工場を見学(1977年4月4日・千葉県八千代市)

※「ミュージックライフ」誌(1977年7月号?)の切り抜きより。

ピーター・クリスがパールのドラム工場に見学にやって来た1977年4月4日はKISSの日本武道館での追加公演があった日で、当日、私もバンドの仲間達と一緒にコンサートに観に行きました。エンターテイナーとしてのピーター・クリス、KISSのストレートなハードロックが非常に刺激的、かつ魅力的でした。同年2月にはエアロスミスも初来日しており、この時もみんなで武道館に観に行きました。両者のコンサートではバウワウが前座を務め、30分間ほど演奏していました。ディスコミュージック全盛の頃で、70年代前期に全盛を誇り時代を象徴していたような大物バンドもぽつぽつと姿を消したり影を潜めたりし、70年代前期の熱気と輝きが失われつつある中、新たな世代への怒濤を巻き起こし時代を担ったキッスやエアロスミスの存在感は大きかった。

       


1978年版カタログ(Vol.3)
■仕様関連
ドラム本体のラインナップは、「プレジデント・エクスポート」、「プレジデント」、「ビッグショット(バスドラムに26、24インチを用意)」、「ジャイアントステップ・アーティスト」(新発売)、「ジャイアントステップ」、「クリスタル・ビート」、「ダイナマックス」、「ビッグショット Jr」(バスドラムが24インチ)、「サンダーキング」(ツインタム仕様・バスドラムが22インチに変更)、「チャレンジャー・MK-Ⅱ」(ツインタム仕様・バスドラムが22インチに変更)、「ロックンローラー・カスタム(ツインタム仕様)」、「ロックンローラー」(シングルタム仕様)となる。

「ジャイアントステップ・アーティスト」が新たに発売される パールドラムの旧型「六角タムホルダー(#716)」が全面廃止となり、プロフェッショナル・シリーズには現行のタムホルダーと近似したパイプタイプの形状をした新開発「ユニロックシステムタムホルダー(#717・六角ナットによる固定)」が採用された。ミドルクラス以下のモデルにもまた、パイプタイプの新開発タムホルダー(#727・蝶ネジによる固定)を採用。ただし、「独立固定方式」ではなく、一本のベースパイプ上部にセットしたアダプターに二本のタムホルダーをセットするタイプ。 ファイバーフープが採用されているのは「ジャイアントステップ」と「ジャイアントステップ・アーティスト」のみ。 バスドラムの前面ヘッドには、「プレジデント・エクスポート」シリーズには「PRESIDENT EXPORT」、「プレジデント」シリーズには「PRESIDENT」、「ジャイアント・ステップ」シリーズ、及び「ジャイアント・ステップ・アーティスト」シリーズには「GIANT STEP」、「クリスタルビート」シリーズには「CRYSTAL BEAT」、「ダイナマックス」シリーズには「DYNA-MAX」と、それぞれのシリーズ名が「PEARL」ロゴの下にプリントされている。ミドルクラス初のビッグサイズドラム5点セットである「ビッグショット Jr」が新たに発売される。24、13、14、16、18(各インチ)のセットで、シェルは「サンダーキング」と同様、内面がポリウレタン塗装された「ダイナミックウッドシェル」が使用されている。バッジについては、1976年版、1977年版と同様の形式。

■シェル素材
「プレジデント・エクスポート」シリーズのシェルに採用されている「ファイバーグラスシェル」の説明には、「他のどんなドラムでもかなわない強力なパワーと音のぬけがポイントです。さらにクセがなく湿気の影響をうけることもなく、あらゆる条件を満たしたパーフェクトなドラムであるといえるでしょう」とあり、「プレジデント」シリーズのシェルに採用されている「ファイバーシェル」の説明には、「日本のように湿気の多い所では最大の威力を発揮します。常に同じサウンドを出すことができ、ローピッチでもよくぬけよく鳴ります。ファイバーグラスシェルよりややおちついた音色が特徴です」とある。「ジャイアントステップ・アーティスト」に使用されている「メイプルファイバーシェル」の説明には、「厳選されたメイプル材の内側にファイバーグラスクロスを密着させ、よりしんの太いサウンドを実現」とあり、「ジャイアントステップ」に使用されている「メイプルシェル」の説明には、「パールの他のシリーズとは全く相反する完璧なウッドシェルサウンドのドラムです。メイプルは成形した後変形しにくく、常に安定したパワーと音色を保ちます。内面にはクリアラッカー塗装を施してあります。まるくあたたかいサウンドが特徴です」とあり、
前年の「ニス塗り」という表現が「クリアラッカー塗装」という表現に変わっている。「ダイナマックス」に使用されている「ウッドシェル」の説明には、「内側表面番にはカバ材を使用。ダイナミックな迫力とまるみのあるサウンドが特徴です」とある。
「ビッグショット・Jr」「サンダーキング」「チャレンジャー・Mk-Ⅱ」に使用されているシェルは「ダイナミック・ウッドシェル」であるが、「内面ポリウレタン仕上げ」となっているのは「ビッグショット・Jr」「サンダーキング」で、「チャレンジャー・Mk-Ⅱ」にはその記載が無く「9プライ」とだけ記載されている。また、「ロックンローラー カスタム」には「ヒートコンプレス製法による9プライ胴」とあり、「ロックンローラー」も同様のシェル構成だろう。

■カラーフィニッシュ
ドラム本体のカラーフィニッシュは、#13:マリンパール(翌年廃番)、#15:サテンシルバー、#16:サテンゴールド(翌年廃番)、#17:サテンブルー(翌年廃番)、#18:サテンレッド(翌年廃番)、#19:ニューマリンパール、#20:シルバーリプルパール、#31:ジェットブラック、#33:スノーホワイト、#34:ヘアラインシルバー、#35:ヘアラインゴールド、#36:ヘアラインブルー、#37:ヘアラインレッド、#38:クロームメタル、#40:ヘアラインブラック、#41:ヘアラインホワイト(翌年廃番)、#55:シルバーフラッシュ、#62:オレンジフラッシュ(※新色。サテン系よりやや反射光沢を抑えてある)、#63:ブラウンフラッシュ(※新色。サテン系よりやや反射光沢を抑えてある)、#64:アーミーグリーン(新色。やや茶灰がかった緑色。サテン系よりやや反射光沢を抑えてある)、#65:ディープオーシャン新色。カタログでは鈍い青紫色に見える)、#66:ワインレッド(※新色。フラッシュ系か)の全22色

■その他
ジュピター・スネアドラム」の価格は、#4814(14”×5”)が55,000円、#4914(14”×6.5")が58,000円。シェルの素材については、「世界でも数少ないブラスシェルを使用」と記載。「ジャイアントステップ」シリーズに使われている「メイプル・スネアドラム」の価格は、#G-314(14”×5”)が43,000円、#314D(14”×6.5”)が46,000円。他にスネアドラムで主な製品としては、「ファイバーグラス・スネアドラム」&「プレジデント・スネアドラム」について、「ピーター・クリス、ルイ・ベルソン等が愛用しているモデル。数多い要望のため、復活しました。」とある。「ファイバーグラス・スネアドラム」の価格は、#F-314(14”×5”)が50,000円、#F-314D(14”×6.5”)が53,000円、「プレジデント・スネアドラム」は#P-314(14”×5”)が43,000円、#P-314D(14”×6.5”)が46,000円。新製品として「オプショナル・メイプルスネアドラム#GA-314DJ(14”×6.5”)」が発売。シェルには「メイプル・ファイバー」が採用され、価格は58,000円。
パイステ2002シリーズに「チャイナタイプ(18、20インチ)」「サウンドエッジ(14、15インチ)」が新たに登場。「パイステ2002」の商品説明には、「急激に人気を集めたシリーズで、コシがあり、ロックドラマーが要求する派手さと、パワフルなサウンドは定評があります」とある。

       


1979年版カタログ(Vol.1)
■仕様関連
ドラム本体のラインナップは、「プレジデント・エクスポート」シリーズ、「プレジデント」シリーズ、「ビッグショット」(バスドラムが26インチ、または24インチ)、「ジャイアントステップ・アーティスト」シリーズ、「ジャイアントステップ」シリーズ、「クリスタル・ビート」シリーズ、「ダイナマックス」シリーズ、「ビッグショット Jr」(バスドラムが24インチ)、「サンダーキング」(ツインタム仕様・バスドラムが22インチに変更)、「チャレンジャー・MK-Ⅱ」(ツインタム仕様・バスドラム22インチ仕様・バスドラム20インチ選択可能)、「ロックンローラー・カスタム」(ツインタム仕様)、「ロックンローラー」(シングルタム仕様)で、前年と同じ
※「ビッグショット・ジュニア」と「サンダーキング」は構成品単体としては同じ製品で、バスドラムは24、22、20、18インチ、タムタムは10、12、13、14インチ、バスタムは14、16、18インチが用意されている。

「プロフェッショナル・ドラムシリーズ」では、バスタムレッグ用のブラケットが面と面で締め付けて固定する方式に改良され、ブラケットのデザインもそれまでのやや丸みを帯びた六角形状から角張った八角形状のものに変更。ただし、プロモデル各シリーズの写真は1978年版と同一のものが使用されているため、ブラケットは旧式ままで掲載されている。 全てのプロフェッショナル・ドラムシリーズに「ファイバー製ドラムフープが採用される。ただし、やはりドラムセット自体の写真は「ジャイアント・ステップ」、「ジャイアントステップ・アーティスト」シリーズ以外は「メタルフープ」のまま掲載されている。 バスドラムの前面ヘッドには、「プレジデント・エクスポート」シリーズには「PRESIDENT EXPORT」、「プレジデント」シリーズには「PRESIDENT」、「ジャイアント・ステップ」シリーズ、及び「ジャイアント・ステップ・アーティスト」シリーズには「GIANT STEP」、「クリスタルビート」シリーズには「CRYSTAL BEAT」、「ダイナマックス」シリーズには「DYNA-MAX」と、それぞれのシリーズ名が「PEARL」ロゴの下にプリントされている。 REMOの「ピンストライプヘッド(クリアー)」、そして、バスドラム前面専用で、パールのブランドロゴが白くプリントされた「ブラックビート・ヘッド」が新登場バッジについては、1976~1978年版と同様の形式。
ロートタム用「サウンドリフレクター(※上画像を参照のこと)」、そして、ロートタムをパールのプレジデントシェルに組み込んだ新機軸、「バリ・ピッチ(Vari-Pitch)」が新登場(※上画像を参照のこと)。

■シェル素材
1978年版と同一で、変更無し。

■カラーフィニッシュ

ドラム本体のカラーフィニッシュは、#15:サテンシルバー(翌年廃番)、#19:ニューマリンパール、#20:シルバーリプルパール(翌年廃番)、#31:ジェットブラック、#33:スノーホワイト、#34:ヘアラインシルバー、#35:ヘアラインゴールド、#36:ヘアラインブルー、#37:ヘアラインレッド、#38:クロームメタル、#40:ヘアラインブラック、#55:シルバーフラッシュ、#56:ゴールドフラッシュ(※新色。サテン系よりやや反射光沢を抑えてある)、#57:ブルーフラッシュ(※新色。サテン系よりやや反射光沢を抑えてある)、#58:レッドフラッシュ(※新色。サテン系よりやや反射光沢を抑えてある)、#60:イエローフラッシュ(※新色。サテン系よりやや反射光沢を抑えてある)、#61:グリーンフラッシュ(※新色。サテン系よりやや反射光沢を抑えてある)、#62:オレンジフラッシュ、#63:ブラウンフラッシュ、#64:アーミーグリーン、#65:ディープオーシャン(※カタログでは鈍い青紫色に見える)、#66:ワインレッドの全22色

■その他

ジュピター・スネアドラム」の価格は、#4814(14”×5”)が55,000円、#4914(14”×6.5")が58,000円。「メイプル・スネアドラム」の価格は、#G-314(14”×5”)が43,000円、#314D(14”×6.5”)が46,000円。ファイバーグラス・スネアドラム」の価格は、#F-314(14”×5”)が50,000円、#F-314D(14”×6.5”)が53,000円、「プレジデント・スネアドラム」は#P-314(14”×5”)が43,000円、#P-314D(14”×6.5”)が46,000円で、いずれも据え置き。オプショナル・メイプルスネアドラム:#GA-314DJ(14”×6.5”)」の価格は58,000円で据え置き。
パイステ2002」の商品説明には、「華やかで、コシのあるパワフルなサウンドが魅力です。ロック、クロスオーバー等、エレクトリックミュージックに最適です」とある。

       


1980年版カタログ(Vol.1)
■仕様関連
ドラム本体のラインナップは、「プレジデント・エクスポート」シリーズ、「プレジデント」シリーズ、「ビッグショット(バスドラムに26、24インチを用意)」、「ジャイアントステップ・アーティスト」シリーズ、「ジャイアントステップ」シリーズ、「ダイナマックス」シリーズ、「クリスタルビート」シリーズ、「ビッグショット Jr」(バスドラムは24インチ仕様)、「サンダーキング」(ツインタム仕様・バスドラムは22インチ仕様)、「チャレンジャー・MK-Ⅲ」(トリプルタム仕様・バスドラムは22インチ仕様)、「チャレンジャー・mK-Ⅱ」(ツインタム仕様・バスドラムは22インチ仕様・バスドラム20インチ選択可能)、「ロックンローラー・カスタム」(ツインタム仕様)、「ロックンローラー」(シングルタム仕様)となり、10インチタムタムを加えた「チャレンジャー・MkⅢ」が新たに登場
※「ビッグショット・ジュニア」、「サンダーキング」は前年のような選択可能なバリエーションが無くなった。 

プロフェッショナル・シリーズではバスドラム・レッグが改良され、レッグの付け根にプラスチック製の黒い円形プレートが装着された特徴的なデザインとなる。また、一部を除き、ハードウェアも含め、ハンドルナットがそれまでの細目の十字形状から三本筋の入った台形を左右対称に組み合わせた形状へと変更されるパーカッシブなシンセサイザーでありながら、タムタムの感覚で演奏できる「パール・シンカッション」を新たに発売。6種の音色がプリセットされた’Mode Selector’をベースに、TUNE、DECAY、WIDTH、SWEEP、L.F.O.、S/Hなど、シンセサイザーの機能をフルに駆使することにより、カラフルなサウンドを生む。また、アタックの強さにより音量や表情も変えることが可能。 バスドラムの前面ヘッドには、「ジャイアント・ステップ」シリーズ、及び「ジャイアント・ステップ・アーティスト」シリーズには「GIANT STEP」、「クリスタルビート」シリーズには「CRYSTAL BEAT」それぞれのシリーズ名が「PEARL」ロゴの下にプリントされているが、「プレジデント・エクスポート」シリーズ、「プレジデント」シリーズ、「ダイナマックス」シリーズの場合は「PEARL」ロゴのみプリントされたブラックビートヘッドが装着されていたり、他のシリーズもドラムセットを背面から撮影した写真であったりするため、シリーズ名がプリントされているかどうかの確認はできない。ただ、ヘッドはブラックビートヘッド以外で各シリーズ名がプリントされた標準ヘッドを指定できた可能性がある。バッジについては、1976~1979年版と同様の形式。

■シェル素材
プロフェッショナルモデルのシェルは1979年版と同一で、変更無し。
「ビッグショット・Jr」「サンダーキング」は「内面ポリウレタン仕上げによるダイナミック・ウッドシェル」、「チャレンジャー・Mk-Ⅱ」「チャレンジャー・Mk-Ⅲ」に使用されているシェルは「9プライ・ウッドシェル」、「ロックンローラー カスタム」「ロックンローラー」は「9プライ・ウッドシェル」と記載されており、やはり1978年版、1979年版と同一だと思われる。

■カラーフィニッシュ

ドラム本体のカラーフィニッシュは、#19:ニューマリンパール、#21:スモーキークローム(※新色。うっすらとヘアライン処理された半光沢のクローム色)、#22:スモーキーコパー(※新色。うっすらとヘアライン処理された銅色)、#31:ジェットブラック、#33:スノーホワイト、#34:ヘアラインシルバー、#35:ヘアラインゴールド(翌年廃番)、#36:ヘアラインブルー(翌年廃番)、#37:ヘアラインレッド(翌年廃番)、#38:クロームメタル、#40:ヘアラインブラック(翌年廃番)、#55:シルバーフラッシュ、#56:ゴールドフラッシュ、#57:ブルーフラッシュ、#58:レッドフラッシュ、#60:イエローフラッシュ、#61:グリーンフラッシュ、#62:オレンジフラッシュ、#63:ブラウンフラッシュ(翌年廃番)、#64:アーミーグリーン(翌年廃番)、#65:ディープオーシャン(※カタログでは鈍い紫色に見える)、#66:ワインレッドの全22色

■その他
ジュピター・スネアドラム」の価格は、#4814(14”×5”)が55,000円、#4914(14”×6.5")が58,000円で据え置き。「メイプル・スネアドラム」の価格は、#G-314(14”×5”)が43,000円、#314D(14”×6.5”)が46,000円で、やはり据え置き。ファイバーグラス・スネアドラム」の価格は、#F-314(14”×5”)が50,000円、#F-314D(14”×6.5”)が53,000円、「プレジデント・スネアドラム」は#P-314(14”×5”)が43,000円、#P-314D(14”×6.5”)が46,000円で、やはりいずれも据え置き。オプショナル・メイプルスネアドラム」改め、「メイプル・ファイバー・スネアドラム:#GA-314DJ(14”×6.5”)」の価格は58,000円で据え置き。また、「ジュピター」シリーズに採用されている「パラレルアクション・スイッチ」の付いていないブラス製スネアドラムとして、「ブラス・スネアドラム」がラインナップされ、価格は、#4214(14#×5”・10本ボルト)が43,000円、#4314(14”×5”・8本ボルト)が37,000円。他には、「ピーター・クリスモデル」として、#F-314DP(14”×10”)が62,000円でラインナップ。
パイステ2002」の商品説明には、「華やかで、コシのあるパワフルなサウンドが魅力です。ロック、クロスオーバー等、エレクトリックミュージックに最適です」とある。(79年のコメントと同一)
アーティスト達の使用モデルが数例紹介されている。
プレジデント・エクスポート… スティックス・フーパー、チェスター・トンプソン、ピーター・クリス、アート・ブレイキー、ブッチ・マイルス、ジミー竹内
プレジデント… レス・ビンクス(「ジャイアント・ステップ・アーティスト」も所有)、つのだ☆ひろ、村上”ポンタ”秀一、富樫雅彦
ジャイアント・ステップ・アーティスト… キース・ヌードソン、アル・ムザーン、アンディー・ウォード、レス・ビンクス(「プレジデント」も所有)、ジョージ川口、日野元彦、石川晶

       


1981年版カタログ(Vol.2)

■仕様関連
「プロフェッショナル・ドラムシリーズ」では、「プレジデント・エクスポート・シリーズ(ファイバーグラス・シェル)」は「FX」、「プレジデント・シリーズ(ファイバー・シェル)」は「PX」、「ジャイアントステップ・アーティストシリーズ(メイプルファイバー・シェル)」は「GAX」、「ジャイアントステップ・シリーズ(メイプルシェル)」は「GX」、他に、新たに加わった「ブルースフレイバー・シリーズ(バーチシェル)」は「BX」として、前年までと異なり、モデル名より形式名のほうをやや前面に出す形に記載法を替えつつある体裁となっている。また、ミドルクラス以下のラインナップとしては、「WD=ワイルドウイングシリーズ」(エクストラ・ベースウッドシェル Ⅰ)、「PC=ペースメーカーシリーズ」(エクストラ・ベースウッドシェル Ⅱ)、「RB=ロックバードシリーズ」(ダイナミック・ウッドシェル)があった。「WD=ワイルドウイング」シリーズの説明には、「プロフェッショナルタイプの”エクストラ・ベースウッドシェル”に、強力なハードウエアを組み込んだニューラインナップ」とあり、「PC=ペースメーカー」シリーズの説明には、「エクストラ・ベースウッドシェルⅡを新たに採用し、一段とサウンドがパワーアップした、このクラス最強のドラムシリーズです」とあり、また、「RB=ロックバード」シリーズの説明には、「ビギナー向けにセレクトされたこのシリーズは、パールが長年つちかってきたサウンド・コンセプションを余すところなく受け継いだハイ・コストパフォーマンス・モデルです」とある。

’Crystal Beat’、’Rock'n Roller’、’Challenger’、’Thunder King’などの往年のモデルが廃番となり、新たに「プロフェッショナル・ドラムシリーズ」、「ワイルドウイング・ドラムシリーズ」(バスドラムが22インチ仕様)、「ペースメーカー・ドラムシリーズ」(バスドラムが22インチ仕様)、「ロックバード・ドラムシリーズ」(バスドラムが20インチ仕様)としてラインナップが刷新される。 プロフェッショナル・シリーズには新たにウッドフープが採用され、ファイバー・フープが廃番(?)に本体ラグの形状は、ベース部が長方形・ボディーが略六角形・トップに縦筋のある、通称「餃子ラグ」)のまま。 深胴タイプのタムタムを新たに開発。「長年ドラムサウンドを追求しつづけてきたパールが送るニュータイプのサウンドは、ヘビー&ディープ。豊かな低音域からからサスティーンの効いたハイピッチサウンドまで、ワイドなチューニングレンジが身上です。極端に深いと却って鳴りやぬけをにぶくするため、『直径に対する理想的な深さ』を決定しました。」とある。「RB=ロックバード」シリーズ以外に採用。深胴タイプのタムタムに対応するため、プロモデルには「#717H」「#717HW(ツイン)」、ミドルクラス以下のモデルには「#727H」「#727HT(ツイン)」などのロングタイプのタムホルダーが新たに開発される。 バスドラムの前面ヘッドについては、「ペースメーカー」シリーズ、「ロックバード」シリーズ以外はブラックビートヘッドが標準装備となったため、プロモデルでのシリーズ名のプリントは廃止となったようだ。 ドラムそれぞれのシェル外側に貼り付けてあるブランドバッジ(エンブレム)が、ビギナーモデル以外はそれまで小型の黒い長方形のプレート(ブランド文字とそれを囲むラインがエンボスされ、ゴールド(実際にはゴールドとカッパーの中間色)にメッキされていた。「プレジデント」モデルのみクロームで「PEARL PRESIDENT」の文字をメッキ)から、アルミ製で薄型の大型プレート(黒地にブランド文字が白抜きプリントされ、シリアルナンバーを刻印)に変更され、ビギナーモデルを含め全モデルで統一された

ロートタムの記載から「REMO」あるいは「レモ」が消える。この年より約10年間、「パール製ロートタム」が販売されていた模様。 ロートタム用の新型アダプター、「AD-100」が登場。ロートタム専用スタンドを使用せずとも、一般のタムホルダーにロートタムを装着できるようになった。ただし、一見黒いキューブ状をした形状で、角頭ボルト数本で固定する、いかにも無骨で安定性の悪そうな機構。 「バリ・ピッチ」、「サウンドリフレクター」が廃番にパーカッシブなシンセサイザー、「シンカッション」は継続販売。

「深胴」の読み方について… 「深い(ふかい=訓読み)」+「胴(ドウ=音読み)」の意味の造語であるが、国語的には「ふかドウ」というように上を和語(日本由来の言葉)として訓読みし、下を漢語(中国由来の言葉)として音読みする(これを『湯桶(ゆとう)読み』という)のは、由来の異なる読み方を混用するという点で本来の熟語の読み方としては規範から外れ、特殊な読み方であるとされる。ただ、敢えて規範に沿わず「ふかドウ」と読むことで、「深い胴」であるという意味が伝わりやすくなるとされるため、この例外的な熟語の読み方が「通り名」として慣用されてきたという経緯がある。しかしながら、まるで分別ある成人が「低音」を「ひくオン」、「打面」を「うちメン」などと読み誤って平然としているかのようで、国語的な感覚から「深胴」を「ふかドウ」と読むことに違和感を覚え、あるいは、無知っぽさを平然と露呈する気恥ずかしさも感じられるため、当時から敢えて「シンドウ(音読み+音読み=これを『音音読み』という)」と、熟語本来の読み方をする人も少なからず存在した。
現在では「深胴」以外にも「浅胴」と通称されるサイズのタムタムも存在し、それぞれのタイプの読み方を対照させ、意味を通りやすくするために、「ふかドウ」「あさドウ」といった「湯桶読み」が通例となっているようだが、そもそも意味の通りやすさと言っても、もともと限られた範囲の人間しか使用しない用語であるならば、「シンドウ」「センドウ」と熟語本来の読み方をして使い慣れていけばそれはそれで問題無いはずだ。よって、「本来の熟語としての読み方」と「通り名(通称)」との違いくらいは踏まえておいても損はないし、そのうえで、それぞれが好みの呼び方をすればよいだろう。
因みに、現在については不明だが、1981年版のパールドラムのカタログでは「深胴」という語に「ふかどう」という読み方が当てられている。この読み方については熟語の成り立ちを確認しなかったためであるかもしれないし、熟語本来の正しい読み方よりも馴染みやすさや意味の通りやすさを優先しての決定なのかもしれない。また、1977年版の「ジュピター・スネアドラム」の説明欄に「深胴タイプ」という文言、1978年版の「ジュピター・スネアドラム」、「メイプルスネアドラム」の説明欄に「深胴モデル」という文言、1980年版の「ファイバーグラス・スネアドラム(ピーター・クリスモデル)」の説明欄に「深胴スネア」という文言が見られるが、いずれもふり仮名は書かれていない。


■シェル素材
「ブルースフレイバー」シリーズに使用されている「バーチシェル」については、「ウッドシェルの素材としてはメイプルについで評価の高いバーチ(カバ材)を100%使ったニューモデルで、メイプルと比べややまるみのある線の太さとアコースティックな響きが特徴。…強度も申し分ありません」とあり、「ワイルドウイング」シリーズに使用されている「エクストラ・ベースウッドシェル Ⅰ」については、「ベースウッド(シナ材)と呼ばれるメイプルに近い特性をもった木材を、クリアラッカーで仕上げを施したニュータイプのドラムシェルです。ウッドシェルにありがちな音の甘さやこもりは、世界的にその優秀性を認められている”ヒートコンプレス製法”により徹底的に排除」とある。また、「ペースメーカー」シリーズに使用されている「エクストラ・ベースウッドシェルⅡ」の説明には、「同クラスでの追随を全く寄せつけないハイグレードな性能とファットなサウンドを誇ります」とあり、「ロックバード」シリーズに使用されている「ダイナミック・ウッドシェル」の説明には、「一般には木胴と呼ばれているものでスタンダードな9プライのウッドで構成されています。…音の立ち上がり、パワー、チューニングに対する音色のニュアンスの変化、音のとおりなど、どれをとっても安定した性能を誇ります」とある。「ファイバーグラス・シェル」「ファイバー・シェル」「メイプルファイバー・シェル」「メイプル・シェル」については1978年版を参照のこと。

■カラーフィニッシュ

ドラム本体のカラーフィニッシュは、#11:クインシーウッド(※新色。木目模様)、#19:ニューマリンパール、#21:スモーキークローム、#22:スモーキーコパー、#31:ジェットブラック、#33:スノーホワイト、#34:ヘアラインシルバー(翌年廃番)、#38:クロームメタル、#55:シルバーフラッシュ、#56:ゴールドフラッシュ(翌年廃番)、#57:ブルーフラッシュ、#58:レッドフラッシュ、#60:イエローフラッシュ、#61:グリーンフラッシュ、#62:オレンジフラッシュ、#65:ディープオーシャン(※カタログでは鈍い紫系色に見える)、#66:ワインレッドの全17色。また、カバリングタイプ以外にも「ジャイアントステップ」「ジャイアントステップ・アーティスト」には#100:ワインレッド・ラッカー、#101:ウォルナット・ラッカー(※茶色)、#102:ナチュラルメイプル(※木地の自然色)の
全3色が別途ラッカー仕上げとして新たに加わり、新開発されたバーチシェルのシリーズ(BXシリーズ)にも#112:ナチュラルバーチ(※木地の自然食)をラッカー仕上げとして別途新たに設定

■その他
ジュピター・スネアドラム」、「ファイバーグラス・スネアドラム」、「プレジデント・スネアドラム」、「ピーター・クリスモデルが廃番に。「メイプルファイバー・スネアドラム」については、#GA-314DJ(14”×6.5”)が廃番となり、新たに#GA414(14”×5”)が55,000円で、#414D(14”×6.5”)が58,000円で、#414ED(14”×8”)が60.000円でラインナップ。また、メイプル・スネアドラム」は、#G-314(14”×5”)、#314D(14”×6.5”)が廃番になり、新たに#G-414(14”×5”)が52,000円で、#G-414DS(14”×6.5”・春慶塗り)が58,000円で、#G-414S(14”×6.5”・春慶塗り)が55,000円でラインナップ。ブラス・スネアドラム」の価格は、#4214(14#×5”・10本ボルト)が46,000円、#4314(14”×5”・8本ボルト)が40,000円。さらに、同モデルに「パラレルウイングアクションスイッチ」を搭載した#B-414(14”×5”)が55,000円で、#B-414D(14”×6.5”)が58,000円でラインナップ。他には内面にバーチ材を使用した「エクストラバーチ・スネアドラム」がラインナップされ、価格は#D-314D(14”×6.5”・ダイカスト・ストレーナー)が28,000円、#D-414D(14”×6.5”・パラレルウイングアクションスイッチ)が39,000円。他には廉価モデルとして「メタル・スネアドラム」があった。
前年まで掲載されていた’Paiste’シンバルの宣伝記載が無くなり、新たに’Avedis Zildjian’シンバルが記載される。この件に関しては、当時、楽器店店員から「パール側とパイステ側で価格面での折り合いが付かず、提携関係が切れた(パイステ側の大幅な値上げ要求に対しパール側が受け入れなかった)」といった趣旨の話を聞いたことがあるが、真相は不明。ジルジャンの紹介文には、「’Avedis Zildjianの手によって誕生したこのシンバルは、以来じつに350年以上のあいだ彼のポリシーを頑ななまでに守り続け現在に至りました。ジルジャンシンバルの歴史は常にそれぞれの時代の音楽とともにあったわけで、今今なお1枚1枚ハンドクラフトでつくり上げられている製品もまた現代の多様化した音楽の動向と歩みを共にしているのです。」とある。

       


1982 年版カタログ(Vol.1)
■仕様関連
プロフェッショナル・シリーズのラインナップは前年と同じ。ただし、前年まで「FX=プレジデントエクスポート」シリーズを最上級モデルと位置づけ、それに続けて「PX=プレジデント」シリーズ、「GAX=ジャイアント・ステップ・アーティスト」シリーズ、「GX=ジャイアント・ステップ」シリーズ、「BX=ブルースフレイバー」シリーズの順に掲載されていたものが(※価格としてはFX、GAX、GX、PX、BXの順になる)、「GAX」、「GX」、「BX」、「FX」、「PX」の順に変更され、メイプルファイバーシェルが使用された「GAX=ジャイアント・ステップ・アーティスト」シリーズを最上位モデルとして強く前面に打ち出されている。また、見出し文字については、「ジャイアント・ステップ・アーティスト・シリーズ」といったモデル名の文字より形式名である「GAX」の文字のほうが大きく記載される。 「WD=ワイルドウイング」シリーズの説明には「……名実ともに”セミ・プロフェッショナル”のドラムシリーズ」、「PC=ペースメーカー」シリーズの説明には「……ビギナーにとっては”いい音”を知るきっかけとなる、ハイクオリティーのドラムセット」とあり、また、「RB=ロックバード」シリーズの説明には「使ってはじめて実感を呼び起こすサウンドの良さ……」とある。

「FX」と「PX」両モデルの22インチ、24インチ、26インチのバスドラムには、14インチ以外にも深さ16インチの「エクストラ・ディープモデル」が新たに加わる「FX」と「PX」両モデルタムタムに「ヘビーメタル志向のニューモデル」として、直径と同じ深さをもつ「エクストラ・ディープモデル」が新たに加わるバスドラムの床側2本のボルトに「角頭ボルト」を使用し、これが全シリーズ同一規格となるプロフェッショナル・シリーズのタムタム、フロアタムが全て「ノーミュート」仕様に変更されるフロアータム・レッグ・ラバーチップ(脚ゴム)がより安定性の高い大型の形状のものに全シリーズ規格変更「ワイルドウイング」シリーズのドラムレッグがそれまでの「引き出し型」からバスドラム本体に固定し折りたたみが可能なプロ仕様のレッグに変更される。 「ワイルドウイング」と「ペースメーカー」の両モデルのみタムホルダーのデザインが一新され、より堅牢となる。「ロックバード」のタムホルダーは旧型のままで、ギア部分が「円盤型」。また、プロフェッショナルモデルのタムホルダーも従前までの角頭ボルトで角度固定する旧型のまま。 「PC=ペースメーカー」シリーズのバスドラム・スパーがそれまでの「引き出し式一本ロッド」からプロ仕様のものに変更される。 「WD=ワイルドウイング」シリーズに24インチのバスドラムが追加される。「RB=ロックバード」シリーズに深胴タムタムが追加され、これで全シリーズに深胴タイプが揃う。本体ラグの形状は、全シリーズとも通称「餃子ラグ」のまま

パーカッシブなシンセサイザー、「シンカッション」は継続販売。

■シェル素材

「GAX=ジャイアント・ステップ・アーティスト」シリーズに採用されている「メイプルファイバー・シェル」の説明には、「メイプルの内側にファイバーグラス・クロスを密着させた、パールが世界に誇るオリジナル・シェル。材料は、長期にわたる自然乾燥を施し厳選した”セレクテッド・メイプル”。ファイバーグラス・クロスは、機の持ち味を全くそこなわない極薄のものを使用。シェル内部の含有水分を排除し、メイプルとファイバーグラスの相乗効果は”鳴り”、”ぬけ”に大きく貢献しています。メイプルファイバーの”鳴り”は今やウッドシェルの最高峰と評され、世界の一流アーティストの瞠目を集めています……」とあり、「GX=ジャイアント・ステップ」シリーズに採用されている「メイプル・シェル」については、「ウッドのドラム材としてベストの資質を有するメイプルを100%使用し、6プライに加工した、パールを代表するシェルのひとつ。メイプルの特徴は高密度で堅いことと、含有水分が少なく狂いが生じにくいこと。パールでは、長期間の自然乾燥の後、熟練したクラフツマンによる厳しい品質検査を通過した”セレクテッド・メイプル”のみを使用。高度の成型技術を駆使し完璧なシェルに仕上げています。シェル内面にはクリアラッカーをやや薄めに塗り、防湿対策も十分……」とある。また、「BX=ブルースフレイバー」シリーズに採用されている「バーチシェル」については、「最近のドラムシーンでポピュラーな存在となりつつあるバーチ(カバ材)を100%使用したプロフェッショナル・タイプのシェル。メイプル同様、厳しい品質管理のもとで選び抜かれた材料のみを、6プライに成型。パールのウッドシェル・ラインではメイプルに次ぐポジションにあるものの、一般のバーチシェルとは一線を画します。ヒートコンプレス成型によりやや堅めに仕上げられたパールのバーチシェルは、ウォームなサウンドを十分生かした上で、信じられないほどのパワーを確保……」とある。
「ワイルドウイング」シリーズに採用されている「エクストラ・ベースウッドシェル Ⅰ」については、「メイプルに似た特性特性をもつベースウッドを内側2プライに、外側6プライをダイナミックウッドで構成したセミ・プロフェッショナルなドラムシェル……シェル内側はクリアラッカーフィニッシュで完璧」とあり、「ペースメーカー」シリーズに採用されている「エクストラ・ベースウッドシェルⅡ」については、「ナチュラルなベースウッドを内側2プライに使用したダイナミックウッドとのコンビネーションシェル」とあり、また、「「ロックバード」シリーズに採用されている「ダイナミック・ウッドシェル」については、「……ハードタッチの9プライ・ウッドシェル」とある。

■カラーフィニッシュ
ドラム本体のカラーフィニッシュは、#11:クインシーウッド、#19:ニューマリンパール、#21:スモーキークローム、#22:スモーキーコパー(翌年廃番)、#31:ジェットブラック、#33:スノーホワイト、#38:クロームメタル、#55:シルバーフラッシュ、#57:ブルーフラッシュ、#58:レッドフラッシュ、#60:イエローフラッシュ、#61:グリーンフラッシュ、#62:オレンジフラッシュ、#65:ディープオーシャン(※カタログでは鈍い青色に見える)、#66:ワインレッドの全15色。カバリングタイプ以外にも「ジャイアントステップ」「ジャイアントステップ・アーティスト」には#100:ワインレッド・ラッカー、#101:ウォルナット・ラッカー(※茶色)、#102:ナチュラルメイプル(※木地の自然色)に加え、新たに#103:ブラックラッカーの
全4色がラッカー仕上げとして設定される。バーチシェルのシリーズ(BXシリーズ)にも#112:ナチュラルバーチ(※木地の自然食)に加え、#100:ワインレッド・ラッカー、#103:ブラックラッカーの全3色がラッカー仕上げとして設定される。さらに、「ワイルドウイング」シリーズの説明に「このクラスでは例のないラッカーフィニッシュのワインレッドウッド初登場!」とある。

■その他
メイプルファイバー・スネアドラム」については、ラインナップ、価格ともに前年と同様、#GA414(14”×5”)が55,000円、#414D(14”×6.5”)が58,000円、#414ED(14”×8”)が60.000円。また、メイプル・スネアドラム」のラインナップ、及び価格は、#G-414S(14”×5”・春慶塗り)が55,000円、#G-414(14”×5)が52,000円、#G-414DS(14”×6.5”・春慶塗り)が58,000円、#G-414D(14”×6.5”)が55,000円、G-414ED(14”×8”)が57,000円。ブラス・スネアドラム」のラインナップ、及び価格は、#B-514(14”×5”)が46,000円、#B-414(14”×5”)が55,000円で、#B-414D(14”×6.5”)が58,000円。新たに「バーチ・スネアドラム」として#BC-314D(14”×6.5”)が36,000円。「エクストラバーチ・スネアドラム」は、#D-514D(14”×6.5”)が28,000円。他には廉価モデルとして「メタル・スネアドラム」があった。
「国産初のプロフェッショナル・シンバル第1弾 期待に応えて登場。」と銘打ち、「Pearl CX-600」が新登場。説明には「……パールが、初めての試み、プロフェッショナル・レベルのシンバルを開発しました。……今までにない特殊配合の高品質な素材、その音色、そして音の余韻、しかも価値あるナイスプライス。……」とある。また、「CX-600」に併せ、「CX-500」も登場。

       


■Pearl President Big Shot(1977年夏購入・撮影)


バスドラムが26インチ、タムタムが13、14インチ、バスタムが16インチ。六角タムホルダー仕様が最終年となった1977年5月頃に購入。一年以上、朝・夕刊の配達を続けて念願のドラム本体を手に入れたが、まだシンバル類は買えないでいる時期。いずれにしても集合住宅なので練習場所も無い。最初はこんなハイグレードなドラムなど買う予定は無かったのだが、当時、きっとカタログを毎日眺めながら夢想しているうち、単純に「ハードロックをやるならでかいドラムセットのほうがいいだろ。。。」みたいなことを考えて暴走してしまったように思う。そういえば、確か最初はバスドラムのサイズは20インチを希望していたが、一年以上夢想しているうちに22、24インチと希望サイズが徐々に大きくなり、グレードも徐々にアップして、最終的にプレジデントの26インチに決めてしまったのだったと思う。プレジデント・エクスポートはさすがに手が届かなかった。

「楽器を買いそろえたら、バンドをやろう」と仲間達と決めていたので、念願叶ってバンドを組むと、毎週水曜日の夕方、牛乳配達用のリヤカーを借り、それにドラムの機材一式を載せて1キロほど先にある公民館にまで運び、3階にある講堂で仲間と一緒に練習をした。当時、公民館に理解ある職員が一人いらっしゃり、本当は騒音の問題からロックバンドには貸し出しすることができなかったにもかかわらず、「予約記入票にはフォークソングの練習ということにしておけばいいよ」と、特別な計らいにより公民館の講堂を借りられることになった。練習中には時々別のルームで活動をしている他のサークルから騒音の苦情が来たが、それでもあの時、バンド練習のための場所がもし提供されなければ、仲間と共に一年半もの間バンド活動に打ち込める機会は訪れなかっただろう。その後、騒音に対する苦情のために講堂の使用は不可能となり、自分自身もドラムを叩くことを諦めたが、いくつかの偶然が重なって、奇跡的に仲間達とともにバンド活動を継続することができたのは、今以て本当に幸運だったと思う。

キッス、ディープパープル、グランドファンク、レインボー、バッド・カンパニー、レッド・ツェッペリン等、仲間達それぞれが気に入りの曲を提案し合い、コピーをし、イベントに出演したりしていたが、翌年にはプログレッシブ・バンドに再編し、キング・クリムゾンやキャメル、ピンク・フロイド、UK、スペース・サーカス等の曲をコピーして遊ぶようになった。みんな下手くそだったが、70年代の後半をバンド活動に没頭して大いに楽しんでいた。やむを得ぬ事情で80年頃に「ビッグショット」を手放し、その後、ほんの一時期バンド活動を再開する機会があったが、練習する場所や機会がまともに得られなければ上手くなることは絶望的と確信し、ドラムを叩くことを諦め、2010年頃まで30年近くドラムのことは敢えて考えないようにしていた。「ビッグ・ショット」の売却先は埼玉県の私立高校だったか、その生徒だったか。ウッドと違って抜けのよい明るくカラっとした音で、好みだった。俺の相棒、「プレジデント・ビッグショット」、今、どこにあるのだろう。

Ludwig Supraphonic LM400のページ
Ludwig Speed King Pedalのページ

       











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