■インレタの上手な貼りかた



最近よく質問を受けるので、表題の企画を製作してみました。

確かに
トレジャータウンでご用意しているインレタの中には、「どうやって貼るの?」と思うような小さなものがたくさんあると思います。
もちろん市販完成品に付属するインレタで慣れていらっしゃる方も多いですが、当方で用意しているインレタは「印刷部分のみに糊が敷かれているタイプ(※一部製品を除く)」で、対して完成品などに付属するインレタは「シート全体または印刷部分周囲に糊が敷かれている」タイプであり、その構造が異なります。

転写する方法じたいは両者とも変わらないのですが、当方で用意するタイプのほうが「転写部分周囲に糊が残らない」(※一部製品を除く)という利点があり、つまり必要以外の周囲を汚さない利点があります。その代わり印刷部分のみの細い「線」で転写されるため、少々難しく、また転写後の強度も相対的には強くなくクリアースプレーを吹く対策がおすすめとなります。

一方で周囲に糊が敷かれているタイプは糊ごと転写されるため、線ではなく面で転写できるため、転写が容易という利点と、転写した文字の周囲の糊が対象物に残り、文字のまわりが経年とともに黒ずみやすい欠点があります。(こちらもクリアーを吹くことである程度防ぐことができます)
模型をはじめて最初に扱うインレタは多くが周囲に糊が敷かれているタイプだと思いますので、初心者の方は当方のインレタを扱うと最初は失敗することが多いかと思います。

昔は「工作をされる方ならこの本を必ず持っている」というようなバイブル書やバイブル企画があったと思えるのですが、今は雑誌のハウトゥー企画のようなものが乱立され情報が溢れる割には基本的な情報を万遍なく網羅している企画が少ないようにも思えます。

また更新車についてはリニューアル化後に対応するよう、赤色のSIV標記もあわせて収録。リニューアル前にする場合は、この部分をあらかじめカッターナイフや爪楊枝の先でシートから削り取ってから転写してください。正面の細密化が完了したら、所属標記やATSなどの標記もあわせて貼ってみませんか

まず一般的な車番標記のインレタから(使用した製品)。
文字の平行、垂直に注意して位置決めします。周囲の窓や車体裾など車体側の構造と、インレタの位置をあわせますが、インレタの周囲の車体番号やパターンからも情報を読み取ります。
今回は左端の「クモハ455-29」を転写するのですが、その際にその下段の「クモハ455-30」の文字の高さを覚えておき、他車も同じ高さで転写するようにすれば編成で車番の高さがバラバラ・・・ということも防げます。


それとどんなもので転写するか。
専用のバーニシャーなど、便利な工具もいろいろ発売されていますが、私はいつも「爪楊枝」を使っています。
食卓から失敬すれば良いことですが、旅行先の車内で食べるお弁当などの割り箸の包みに入っているもの、普通使わなければそのまま捨てられてしまいます。しかしもったいないので、ここはモデラーなら持ち帰りましょう。

ほかにも「インクの出なくなった古いボールペンの先」を使えるという話も聞いたことがあります。私も試したのですが、爪楊枝とはまた違う感覚なので、好みによると思います。ご自身にとっていちばん使いやすい道具を、色々と不要なところで試して練習してみてください。場数を踏むのが一番の上達になると思います。
さて実際に転写。

このように割合大きめのサイズであれば、シートのまま転写しても構いません。



・・・と書いてみますが、まわりにも車番のパターンがぎっしり詰まっており、このまま転写すると回りの余計なものまで転写されてしまいそうです。
これでは失敗の元ですね。
ではどうするか。

転写したい部分だけを、カッターナイフで切り出してしまいます。

もちろん、そのまま表からカッターナイフなど押し当ててしまったら、その周囲ごとカッティングマットに転写されてしまいます。必ず糊面を上にして(=裏返して)切り出します。

実は整然と並んだインレタのシートを切り出すのは勿体無いように思え、勇気が要るとか、よくよく考えると本末転倒な?!話も聞いたことがありますが、綺麗に転写できてこそのインレタです。ものの大小にかかわらず、不安を感じるときは必ずパターンを切り出すようにしましょう。
裏返して、切り出したインレタです。
こうすることで、回りの「これから転写しようと思っていたパターン」を誤って転写してしまうことも防ぐいちばんの近道です。
切り出したインレタはそのままではたいてい小さすぎて、保持できません。無理して爪の先なんかで押さえていては結局失敗の元です。

左の写真では2つのポイントに着目してください。

まずセロテープで仮止めしていること。
セロテープを貼るときには、特に小さいパターンではインレタの表と裏に注意してください。うっかり裏に貼れば全損です・・・。

シートのまま「えいっ」と勢いで転写するのではなく、このように手間をかけてあげることでかなりの失敗を防ぐことができます。

もう一点。
今回転写例として示したトミックスの455系の連結面には、幌パーツがついていました。作業の邪魔になるので取り外しています。

まわりに突起物が多いと、そこにインレタを引っ掛けて文字を傷つけてしまったり、セロテープの仮止めがうまくいかなかったりと何かと都合が悪いですので、はずせるものは外してしまうほうが無難です。
こちらも爪楊枝で隅々までこすりつけていきます。
そろそろ大丈夫、と思ったらセロテープを剥がします。

大丈夫、の目安は、転写が完全にできてシートから文字パターンが離れていくと、文字の見え方が変わります。


例えて言えば・・・
擦りガラスの向こう側にいる人がガラスに頬をぴったりとつけると、その部分だけははっきり見えますね。でもその頬をガラスから離すと、その姿はぼやけてしか見えなくなります。
・・・なんちゅう例えでしょうか。
乗務員扉のガラスに、「乗務員室」の文字を転写します(製品)。

車体からガラスを分解してみましたが、これでは扉のHゴムガラスなどに一緒に不要部分が転写されてしまいそうですね。

こういうときは、必ず上の説明ように必要部分だけを切り出して作業します。
上記のような手順を踏んで作業した一例です。

一応、歪みもなく転写できたと思います。

これをシートから切り離さずに全て転写することは、こういう作業を無数にやってきた私でも不可能です。

だいじな車両を汚さないためにも、ひとつひとつ切り出してからセロテープで仮止め→それから転写されることをおすすめします。

なおその際にも、先に転写が完了したインレタやデカール類にセロテープが触れると、今度はそちらを傷つけてしまいます。そばに転写済みの箇所がある場合はよくご注意ください。
正面の編成番号のインレタを転写します(製品)。

そのままでも良いですが、作業性を考えて分解してみました。
急行型電車の正面ガラスの分解はけっこう厄介です。こちらのページで紹介しています。
こちらもさきほどと同じように、必要部分のみ切り出してから転写しています。まずセロテープで仮止め。
爪楊枝でシート部分を丁寧にこすります。

また強くこすりすぎると、肝心の文字パターンがつぶれてしまうことがあります。強すぎず、かつ均等にこすることを心がけてください。

強くぎず、といっても、経年の過ぎたインレタは転写力が弱まり、なかなか転写できないと思います。
初めて購入したインレタを転写するときや、長期間保管していたインレタを使用するときは、どの程度の力を加えれば転写できるのか、必ず不要部分を不要なプラ板や車体の裏側などに試しに転写してください。
そうやって感覚をつかんでから本番に移られることをおすすめします。
こんな小さいインレタですが、難なく転写できました。

横着せず、ちょっとした一手間が上手な転写のコツだということがおわかりいただければと思います。

あくまで「腕」ではありません。「手間をかけられるかどうか」です。
・初めてのとき、久々のとき、不安なときはまず不要部分で練習
・特に小さいものは切り出してセロテープで固定
失敗を恐れずに、チャレンジしてみてください。
・補足1:このほかの方法

上記のほか、先に必要部分をクリアーデカールや市販デカールの余白の透明部分に転写して、それを対象物に貼ることもひとつの方法です。
例えば貨車や国鉄コンテナの側面、ステンレスカーのビートの周囲などのような凹凸の連続する箇所や凹んでいる箇所など平面ではない部分には便利で、おすすめしたい方法です。
→トレジャータウン品番TTL850番台の製品は、イメージ部分の膜自体に粘り気と強度があり、転写が十分でないと糊が負けてカールし、はがれてくることがあります。かなり念入りに台紙をこすりつけるなどして、定着を図ってください。また強度がある反面、水濡れに弱い素材を使用している製品がございます。クリアーデカールの併用はお避けください。


・補足2:失敗した場合

転写に失敗してしまった場合は、セロテープを貼って剥がす、を繰り返してください。少しずつでも剥がれていくと思います。
もしカス状になってどうしてもはがれなくなってしまった場合で、市販完成品の場合はなるべく少量のエナメル系のうすめ液を綿棒の先につけて拭き取ってください。あまり大量のうすめ液をつけたり、また少量でも元の塗装の材質によっては塗装を冒したり、塗装面の光沢が変化することがありますので、ご注意ください。

コンパウンド(液状やすり)で磨き落とすことも可能ですが、その面の光沢が変化することが多いです。

光沢の変化が置き、あまりに見苦しい場合は、インレタを全て転写した後に車体表面をクリアーラッカーで保護することで光沢の調子を整えることができます。市販のグリーンマックスの光沢または半光沢クリアーや、GSIクレオス、ガイアノーツなどさまざまなメーカーから透明系塗料が発売されていますので、お近くの模型店で用途を相談してください。


・補足3:表面の保護
インレタやデカールを転写した場合、極力クリアーラッカーを薄く吹いて表面を保護してください。
補足2で述べた光沢面の変化が発生したときも、一連の作業が終了してからクリアーラッカーを吹きつけることで、表面を整えることができます。
またクリアーラッカーの吹きつけは、必ず薄く吹き重ねるようにしてください。一度に多量のラッカーとインレタやデカールが触れると、そのインクが溶け出して文字がつぶれることがあります。こうなると修復の方法はありませんので、特に気温が低い冬季や夜間の作業の場合は注意してください。

※このとおりに作業することで成功を保証するものではありません。

2014年7月17日更新

戻るときは、ブラウザの「戻る」ボタンを使用してください。