研修医宿題
野口分類とGGO
八木 由生
野口分類について
細気管支、肺胞上皮の異型増殖に由来する末梢肺の腫瘍性病変として、異型腺腫様過形成atypical adenomatous hyperplasia(AAH)と末梢型の腺癌の大きく2つの病変を挙げることができる。
異型腺腫様過形成atypical adenomatous hyperplasia(AAH)は末梢型腺癌との境界病変、あるいはその前癌病変として把握されている病変である。AAHは一般的には5mm以下の大きさで、肺胞から呼吸細気管支を巻き込んだ同部の上皮の異型増殖からなる。同様の増殖パターンを示す末梢型の肺腺癌は細気管支肺胞上皮型の腺癌と呼称されているが、AAHは腺癌と比較して細胞密度が低く、細胞異型も弱い事等が鑑別点として挙げられる。
末梢型の肺腺癌では、その組織分類で野口分類(Cancer 75:2844-282,1995)が多用されている。この分類は野口が外科的に切除された2cm以下の小型の末梢型肺腺癌を病理組織学的に検討し、組織学的な増殖パターンから6型に分類したもので、予後とよく相関している。この分類はType A(localized bronchioloalveolar carcinoma,LBAC)、Type B(肺胞構造の虚脱部分を伴うLBAC)、Type C(活動性の繊維芽細胞の増生部分を伴うLBAC)、Type D(低分化腺癌)、Type E(管状腺癌)、Type F(圧排性、破壊性増殖を伴う乳頭状乳頭状腺癌)からなり、検討症例の3/4はAAHと同様に基本的には既存の細胞上皮を置換して増殖する腺癌、残余の1/4は肺胞上皮非置換性に破壊性増殖を示す腺癌である。前者の腫瘍にはType A, Type B, Type Cが含まれ、後者の腫瘍にはType D, Type E, Type Fが含まれる。
5年生存率は間質浸潤を欠くType A, Type Bは100%、間質への浸潤部分を認めるType C では75%、一方早期浸潤癌であるType D, Type E, Type Fは予後不良で、Type Dで約52%とのべている。
Grand Glass Opacity
新しいWHO分類で、腺癌の亜型として分類された細気管支肺胞上皮癌(BAC)は間質浸潤のない肺胞胞隔進展を示す癌として定義された。理論的には本腫瘍は非浸潤癌であるためリンパ節転移は有り得ず、縮小手術のよい適応と考えられる。BACは高分解能CT(HRCT)ですりガラス様陰影(GGO)として捉えられ、GGOはBACを良く反映しており、GGO面積の半定量結果は有力な術式決定因子となり得る。
このような微小肺癌や早期肺癌に対し、積極的に縮小手術を試みる際のもうひとつの重要な点は局所再発の防止にある。この問題を打開するには術中迅速肺切除margin洗浄細胞診を行い、陽性と診断された場合、標準手術に術式コンバートを行うなどの方法がある。
Jul 31, 2005
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