実験の目的

空き缶をストローで吹いて倒す実験である。グライダーは空気の中を動いて揚力を得ている。グライダーから見ると自分に向かって吹いている風の中にいることになる。静止した物体に空気の流れが当たるとき、物体によって空気の流れの方向が変わる。空気は物体から力を受けて方向を変えるが、物体は空気が受けた力の反力を受ける。
図1 空き缶倒しの実験
ストローで空き缶を吹いて空き缶の倒れる方向を測定する。缶を倒す力は流れの方向と流れに直角の方向の二つの成分を持ち、流れに直角な成分が揚力である。
翼に当たった気流が翼により下方に曲げられると、その反作用として翼は上に引かれる力を受ける。これが揚力の発生のメカニズムであることを理解できるようになって欲しい。

関連資料

参考とした情報

  • 日本機会学会編、石綿良三、根元光正著:「流れのふしぎ」,2004年(2刷),講談社 ブルーバックス
  • オリジナルは平行に置いた2本の棒の上に空き缶を置いて吹く実験であった。このアレンジだと缶が倒れる方向を棒によって制限しているため、演示としてはやりやすいが力が働いた正確な方向を知ることができない。缶の下にボトルのキャップなど小径の円柱を取り付けることにより缶を倒れやすくして力の働く方向を実験により求めるように変更した。

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実験の準備

缶の加工

アルミ缶をストローで吹く。吹き付けた空気の力でアルミ缶は倒れる。倒れた方向で働いた力の向きが分かる。
アルミ缶をそのまま立てただけではなかなか倒れてくれない。アルミ缶の底に20mm前後の円形の台をつけると、比較的倒れやすくなる。どの方向にでも同じように倒れるためには、台の接地部分が円形であり、缶のちょうど中心に取り付ける必要がある。
取り付けた後で倒れる方向に偏りが無いことを確かめておく。図の例は、ゴム製のパイプ用キャップを用いた。ペットボトルのふたや他のものでも使うことができる。
台をつけたら、基準線を書き、基準線を0°として、0°、45°、90°の位置にマークする。図の例では、小型の円形シールを貼った。

実験用台紙と実験データシート

リンクにあるPDFファイルを印刷する。台紙はA4用紙に印刷し、左右2枚一組になっている。中央線で切ってつき合わせてセロテープで接着する。
データシートは4人程度の小グループが1組になって実験することを想定して作ってある。

実験の手順

セットアップ

平らで水平な机の上に台紙を置く。台紙中央にあるの○の中央に缶の台を置き、基準線を台紙の0°の方向に会わせる。

ストローの方向と吹きかた

ストローで赤、黄、青のマークを狙って吹く。ストローの向きは必ず台紙の0°の方向を向かせる。青のマークを吹くときは缶の外周部を接線方向に吹くことになる。実験前にきちんと注意しておかないとマークに向けて吹く子が多いので、接線方向をきちんと指示する。
吹くときは短く強く「ふっ」と吹く。「ふーっ」と長く吹くと缶が動き始めたときにもまだ風が当たっているので、マーク以外のところにあたり、実験結果の再現性が悪くなる。
実験してみると分かるが、青のマークを吹くと缶は吹いた方向40°付近に倒れてくる。倒れている途中でも吹き続けると最初倒れようとした方向より押されて角度が小さくなる。

実験の進め方

最初に練習実験を一人ずつ指導者が見ながら行なう。全員済ませたら、順番に繰り返し実験をさせ、データシートに記入する。
データシートは各実験条件で5回ずつ実験してその結果を記入するようにしてある。測定を5回済ませたら、それぞれの平均を計算して、データシートのもう一枚に転記する。
全部の実験が終わったら転記したデータの平均を計算してまとめを行なう。

実験のまとめと進行のヒント

実験のまとめ

赤を吹いた時は、ちょうど反対側に押され、平均値は概ね0°になる。正面に当たった風は缶の左右に分かれて流れ、風は缶を「押す」力を及ぼす。
黄色や青を吹いた時は缶は吹いた方向に倒れる。青を吹いたとき缶が倒れる方向は40°前後であり、黄のときはそれより小さい。缶の側面に当たった風は缶の表面に沿って曲がる。風が缶の表面に沿って曲がるためには風は缶の方向に引かれなければならない。逆に缶は風によって風が流れている方向「引く」力を及ぼす。

進行のヒント

実験のイントロとして、セットした缶におもちゃの鉄砲で玉を当ててたおす。玉は缶の表面を押すので当たった位置と反対向きに「押されて」倒れる。固体の「もの」を当てたときには缶は必ず「押さ」れる。
この実験では風が表面に直角以外の角度で当たると、当たった方に物体が引かれることが分かる。風と直角方向に力が働くことに特に注目して欲しい。
この実験はろうそく消しの実験とペアで行なうことが多い。ろうそく消しの実験では物に当たった空気の流れは、ゴムボールのように弾むのではなく、当たった位置からできるだけ物の表面にそって流れるという流体の性質を理解するために行なう。

実験のまとめ

  1. 物に当たった空気の流れはものの表面に沿う方向に流れの向きを変える(ろうそく消しの実験で確かめる)
  2. ものに当たった空気は当たった方向にものを押す
  3. 空気がものの表面に沿って曲がるのは流れている方向に直角に引かれるためで、逆にものは反対向きに空気に引かれる