魚菜王国いわて

欧米の傲慢

今、WTO(世界貿易機関)の閣僚会議がメキシコのカンクンで開かれ、結局まとまらず決裂しました。
その背景に先進国側の傲慢さがあまりに目立ちます(「WTOは世界の農業の敵」も参照してください)。
例えば、先進国側の農業補助金です。
ウルグアイ・ラウンド合意から、途上国側が市場開放を進めたにもかかわらず、先進国側が巨大な農業補助金を削減しなかったことにものすごい不満がうずまき、それゆえ、先進国と途上国の間で何もまとまらなかったようです。
その問題の補助金の額がすごい。

アメリカが1兆8,000億円、EUが5兆8,000億円と巨額で、ちなみに日本は7,500億円。
国土の狭く平地の少ない、しかも食糧自給率の低い日本のような国の補助金ならばまだ理解できるんですが、大規模で効率的な農業のできるアメリカが、どうしてこんな補助金が必要なのか不思議に思います。
どう考えても、他国の農業を破壊するために、赤字財政の中からカネを出しているとしか言いようがありません。
しかも途上国のカネの価値と先進国のカネの価値は桁が違い、財政の規模も違います。
これが正当な貿易交渉と言えるのでしょうか。
先進国の農業補助金のせいで、途上国での農業での減収額は235億ドルにものぼるようで、その被害を与える側の額をみれば、EUが129億ドル、アメリカが67億ドルの損害を与えているようです。
自給率のかなり低い、日本・韓国も34億ドルの被害を与えているようです。

この傲慢な欧米の交渉について、先進国の国内からも批判の声が高まっています。
普通の人間の考えなら、そして世界全体のことを考える人なら、欧米の主張はあまりにひどい。
機械や電気機器なら、エネルギーがあれば確実に動きます。
しかもこれらは、気象などの自然災害左右されることは稀です。
一方、農業は気象災害、気候変動、そのほかにも病気や害虫被害とも戦わなければならない。
不安定な生産状況を考えれば、農業分野の完全な市場開放は許されるべきではないでしょう。
農業を利用するビジネス、ビジネス化する農業、これらに補助金与える者、与えられる者、私は彼らに宮沢賢治の著作を勧めます。
WTOの今回まとまらなかった責任をとって、先進国の交渉者やトップは、どうやったら交渉がまとまるか、実際に日本や途上国で農業を経験してもらいたいものです。

今回のWTOに関する情報のソースは

http://www.asahi.com/special/wto/TKY200309130099.html

にあります。
結果は

http://www.asahi.com/special/wto/TKY200309150074.html

です。

ちなみに関連する記事の一部を、「WORLD・WATCH」5/6月号の「地元の”食と農”を支援する」から紹介します。
同じWTO閣僚会議の99年のシアトルでのことを、カリフォルニアに拠点を置く経済学シンクタンク「食糧と開発のための政策研究所」を率いるアヌラダ・ミッタルが語ったものです。

ミッタルによれば、シアトルで行われた1999年のWTO交渉が決裂したのは、多くの交渉が大半の国を除外した密室取引で進められているという事実に抗議するため、途上国の貿易大臣が退場したからだという。さらに、WTOの農業合意の草案となる文言を起草したのが、多国籍の食品加工貿易会社であるカーギル社の副社長だったことも指摘した。
「これでは食糧の民主主義ではなく偽善です」とミッタルはいう。そして、最近の貿易交渉の場では、アメリカやヨーロッパが自国の関税や農民への助成金を高い水準で維持したまま、貧しい国々に首尾よく関税を引き下げさせてきたという説明を加えた。
(「WORLD・WATCH」2003年5/6月号p31)

どうせ欧米は傲慢にあの手この手で逆襲してくるんでしょうから、個人レベルでできることは産地表示を見て、欧米の食品は不買にすることでしょうね。
できれば「地産地消」「スローフード」の意識で、地元の食べ物を買ってもらいたいです。

このほかにも、いろいろ「WORLD・WATCH」5/6月号から紹介したい文章があるんですが、次の一文だけやめます。
ニワトリ、って歩けないんだそうです。
「途上世界の工場型畜産農場」からです。
もっと読みたい人は,
買って読んでください。

工場型生産の導入は、家畜の真の健康に対する農民の関心を失わせてしまった。多くの場合、ニワトリはまともに歩くこともできない。できるだけ短い期間内に体重を増やすため、成長促進に効果のある抗生物質を多量に投与されているからである。ブタは体の向きを変えることもできない狭い枠に閉じ込められる。ウシは集中肥育場に詰め込まれ、排泄物にまみれている。
(前掲書p39)
(2003年9月15日)



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