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 第25号(2005.10.16発行)



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   化学なんて大嫌い!という人のための
              風変わりなヒント  第25号
                  2005年10月16日発行

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 <目次>
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 1.一風変わった化学の授業
     〜 水素について

 2.化学をつくった人たち
     〜 ヘンリー・キャヴェンディッシュ

 3.あとがき
 -------------------------------------------

 ────────────────────────────────
  1.一風変わった化学の授業
          〜 水素について 〜
 ────────────────────────────────

  今回は「水素」についてです。
  これから少しずつ身近になっていく元素かもしれません。


  水素は最も軽い気体なので、かつては気球、飛行船などに用いられて
 いました。

  現在は、爆発、炎上の危険が高いことから、ヘリウムに置きかえられ
 ています。
 (1937年に起こった大型飛行船ヒンデンブルグ号の炎上事故がその
 きっかけとなりました)。


 水素の性質
 ──────

  無色、無臭で、最も密度の小さい気体(空気の約14分の1)です。

  酸素や空気の存在下で燃焼させると、爆発的に反応して水を生成しま
 す。

  常温での反応性はほとんどありません(フッ素との反応は例外です)
 が、高温状態や触媒を用いることで多くの物質と直接反応が可能となり
 ます。

  還元剤として作用させることができるので、パラジウム、白金などの
 触媒存在下で、有機化合物などへの付加反応(水添反応)にも用いられ
 る重要な原料です。


  また、金属に吸収されやすい性質があります。

  この性質を利用して、ニッケル水素型の二次電池に水素吸蔵合金とし
 て使用されています。ただしこの性質によって、特定の種類の金属製耐
 圧容器がもろくなりやすい状態にもなります。


  ちなみに「水素」の名前の由来は、「水を生成するもの」という意味 
 のギリシア語が元になっていて、ラヴォアジェによって提案されたもの
 です。


 水素を得るには
 ────────

 ・工業的な製法としては、以下のように天然ガスや石油と高温水蒸気と
  の反応、電気分解などがあります。

   1)ニッケル触媒の存在下で、天然ガスやナフサを650〜800
     ℃の水蒸気と反応させる方法。

   2)赤熱したコークスに水蒸気を送り、水性ガス(一酸化炭素:
     水素=1:1)と呼ばれる化学燃料をつくり、それを分離する
     方法。

   3)水酸化ナトリウム水溶液や希硫酸などを電気分解することで水
     が電気分解されるので、その結果として水素(と酸素)を得る
     方法。
     ※この方法は、電気を使うのでコストが高くなってしまうのが
      難点です。


 ・実験室では、亜鉛に希硫酸を反応させて、水上置換で集めるのが一般
  的です。また、金属水素化物の加水分解でも得られます。


 水素の用途
 ──────

  水素は、アンモニアや塩化水素、多くの有機化合物の原料として重要
 です。

  特にアンモニアは、硝酸を経由して化学肥料や火薬などを作るための
 重要な原料になっています。

  また原料としてだけでなく、燃焼によって大きなエネルギーが得られ
 ることから、ロケットなどの液体燃料としても使用されています。


  さらに、最近話題になっている燃料電池の燃料としても使用されます。

  発電の結果生成するのが水だけであることから、燃料電池はクリーン
 なエネルギー源として注目されています。

  その普及に向けて小型化やエネルギー効率向上の研究が進められてい
 るところです。
 (今後、石油に代わるエネルギー源のひとつとして発展していくと思い
 ます)。


 水素結合
 ─────

  水素結合は、電気陰性度の高い原子(主にN、O、F)との間で生じ
 る弱い結合のことです。

  水素原子をはさんで、分子間にクーロン力がはたらくことで形成され
 ます。

  共有結合と比べると結合エネルギーがずっと小さく、強すぎず弱すぎ
 ない結合で、タンパク質やDNAなどの構造を形成する重要な要因とな
 っています。


  水の沸点が他の同じくらいの分子量の物質より高い理由や、氷の密度
 が液体の水よりも小さくなるのも、水素結合ができるためです。


 宇宙の中での位置づけ
 ───────────

  水素は、星のエネルギー源である核融合反応の原料にもなっています。

  太陽をはじめとする恒星の多くは、核融合反応によって発生するエネ
 ルギーによって輝いています。

  太陽での主な核融合反応は、4個の水素原子核(陽子)から1個のヘ
 リウム原子核ができるもので、この過程で大きなエネルギーが生じます。


  また、水素は宇宙でもっとも多い元素です。

  太陽には重量比で約74%含まれています。
 (残りは、ヘリウム:約25%、その他:1%です)。


 水素の同位体
 ───────

  水素の同位体には以下の3種類があります。

   質量数1のもの:(特にプロチウムとも言います:H)
           存在比:99.985%
   質量数2のもの:デュウテリウム(重水素:D)
           存在比:0.015%
   質量数3のもの:トリチウム(三重水素:T)
           放射性同位体で半減期が12.35年

  ※質量の差が大きく、性質がかなり異なるので特別な名前がつけられ
   ているのが特徴です。


 ────────────────────────────────
  2.化学をつくった人たち
        〜 ヘンリー・キャヴェンディッシュ 〜
 ────────────────────────────────

  今回は、イギリスの物理学者であり化学者(当時の言葉では自然哲学
 者)のキャヴェンディッシュを取り上げます。
  ここでは、彼の化学に関連する業績を中心に見ていくことにします。



  キャヴェンディッシュは、名門貴族の家系である、チャールズ・キャ
 ヴェンディッシュ卿の長男として、1731年にフランスのニースで生
 まれました。

  ケンブリッジ大学のピーターハウス・カレッジに学び、学位を取らず
 に退学します(これは当時としては珍しいことではありませんでした)。

  その後はずっと、ロンドンで隠遁者のように世間との交際を避け、自
 分の邸宅内で実験や研究に明け暮れる毎日を送ります。

  内気で引っ込み思案な性格だったようですが、科学者としての活動は
 積極的で、王立協会での集まりには欠かさず出席していました。



  化学の分野でのキャヴェンディッシュの研究は、主に気体(※1)に
 関するものでした。

  水素や二酸化炭素に加えて、発酵や腐敗などで生じる気体についての
 研究を行っていました。
 (それらの可燃性、水溶性、比重などを調べ、気体に様々な種類がある
 ことを示しました)。


 水素について
 ───────

  水素は、燃える気体として当時までにその存在が一部の人には認識さ
 れている気体でした。

  しかし彼は酸と金属の反応によって得られる気体がどれも同じ水素で
 あることを確認し、他の気体とは区別してその密度や性質を詳しく調べ
 ました。

  このことから、水素の発見者として彼の名前が残ることになります。

  また、水素と空気の混合物を燃やすと水ができることを最初に明らか
 にしました。

  ただ、彼はフロギストン説(※2)を熱心に支持していたため、水素
 は金属から分離してくるフロギストンであると考えていました。

  従って多少の矛盾を感じながらも、残念ながらその本質を把握するこ
 とはできずに終わりました。
 (これらの本質的な解明は、後にラヴォアジェによってなされました)。


 空気について
 ───────

  赤熱した炭に空気を繰り返し通し、反応の結果得られた気体(二酸化
 炭素)を取り除くと、空気の一部のみが失われることを確認します。

  このことから、空気の中には複数の成分があること、つまり空気が混
 合物であるという認識を持ちます。

  また、空気中で電気火花を飛ばして窒素を酸素とを反応させ、得られ
 た気体を水に溶かして硝酸を得ました。

  その際、空気の中に一定量のどうしても反応しない不活性な成分を見
 出します。

  しかし、彼にはそれが何であるかは不明のままでした。

  ※この不活性な気体がアルゴンなどの希ガスであると判明するのは約
   100年後のことです。
   希ガスの発見者であるラムゼーは、キャヴェンディッシュの実験を
   追試することを手始めとしてアルゴンを発見することになります。

  さらに、空気(大気)の組成が時間や場所を変えても一定であること
 を示しました。


  これらの水素や空気に関する実験は、水や空気が、ギリシア以来言わ
 れてきたような元素ではないこと(化合物や混合物であること)を示す
 実験結果となりました。



  キャヴェンディッシュが行った物理に関する研究としては、地球の密
 度と重力定数の測定、比熱、潜熱、熱膨張などに関する研究、電気に関
 する研究などがあります。

  公表されなかったものが多かったのですが、その当時としてはかなり
 精密な実験を行っていたようです。



  キャヴェンディッシュの業績は、生前にはあまり知られることがあり
 ませんでした。

  彼が完全な結果だと思うものしか公表しなかったからです。

  残りの研究成果が公表されるのは、ずっと後の物理学者であるマクス
 ウェルによってキャヴェンディッシュの遺稿が整理され、まとめられて
 からのことになります。

  そこには数多くの時代を先取りしたような研究があり、その当時の科
 学者に驚きをもって迎えられました。

  仮に彼の全ての研究内容が生前に公表されていたら、科学の進歩の度
 合いは違っていただろうと言われています。


  後に彼を記念して、ケンブリッジ大学にキャヴェンディッシュ研究所
 が設立され、その栄誉が称えられました。
  (さらに後の話ですが、このキャヴェンディッシュ研究所から多くの
 ノーベル賞受賞者が出ることになります)。



 ○ 簡単な用語紹介と補足

  ※1 当時の気体の呼び方
    当時は気体のことを「〜空気」というように呼んでいた。現在の
    ような名前がつくのは後のことになる。

   (当時の気体の呼び方の例)
     ・二酸化炭素: 固定空気
     ・水素: 可燃空気
     ・酸素: 脱フロギストン空気
     ・窒素: 窒息空気、毒性空気、フロギストン化空気、など

    今回は、わずらわしさを避けるために現在の名称を使用している。

  ※2 フロギストン説
    物が燃えるとフロギストン(燃素)と呼ばれるものが放出されて、
    灰が残るという説。
    この頃はフロギストン説が主流であったが、後にラヴォアジェの
    精密な実験によって覆されることになる。


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  3.あとがき
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  受験生にとって秋という季節は、少しずつペースアップしながら、い
 ろんな対策をとっていかなくてはいけない時期ですね。

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 と思います。

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  ◇◇ 化学なんて大嫌い!という人のための          
                     風変わりなヒント ◇◇
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