白い悪魔の恐怖
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■「ウルトラマン80」第51話としての「メビウス」批評

<序章>
凍怪獣マーゴドンをUGMが倒し、エイティ(矢的猛)が地球を去ってから25年後のある日、地球に再び怪獣が出現した! 宇宙警備隊大隊長「ウルトラの父」は、宇宙警備隊のルーキーを地球に向かうよう命じた−。その名はウルトラマンメビウス!! 彼はUGM解散後、新たに組織された防衛隊GUYSの隊員「ヒビノ・ミライ」として、ウルトラ兄弟が守ってきたこの美しい星・地球に降り立った。

そう、ウルトラマン誕生40周年記念作品『ウルトラマンメビウス』は、『ウルトラマン80』と地続きの世界で繰り広げられる空想科学特撮作品だ。

■第1話「運命の出逢い」/冒頭で早速、ウルトラ6兄弟、レオ兄弟、そしてエイティ、ユリアンが登場する。それは、地球に向かうメビウスを見送るかのように−。
■第16話「宇宙の剣豪」/地球に急接近する「オオシマ彗星」。この彗星を発見した天文学者は、矢的猛の教え子の1人。『80』第6話「星から来た少年」に登場した天体観測大好き中学生「大島明雄」君その人なのだ。※第18話「ウルトラマンの重圧」でも「オオシマ彗星」B群が地球に接近し、メビウスが破壊する。
■第17話「誓いのフォーメーション」/『80』第13話「必殺!フォーメーション・ヤマト」に登場した再生怪獣サラマンドラの別個体が出現した。体をバラバラにされても細胞片から再生してしまう不死身の怪獣の弱点は、GUYSのデータベース「ドキュメントUGM」にあった。それは「喉」。弱点を攻撃するため、矢的猛が考案したあの作戦「フォーメーション・ヤマト」が始まった。
■第40話「ひとりの楽園」/宇宙植物怪獣ソリチュラが噴撒する花粉に含まれていた物質「ソリチュラ化合銀」は、『80』第31話「怪獣の種飛んだ」に登場した植物もどき怪獣ゾラが噴撒した花粉も微量ながら含まれていたという!

スペクト!ウルトラシリーズ。『メビウス』製作スタッフの熱意に敬意を表したい。グドンにツインテール、超獣、円盤生物までもが登場し、タロウがウルトラダイナマイトを使い、おおとりゲン(レオ)がメビウスに特訓を課す…。そして、矢的猛の教え子の現在が明らかになり、80怪獣がリメークされることになるなんて、だれが予想しただろうか。『ウルトラセブン』の続編がオリジナルビデオ作品として製作された時、『80』に続編があるなら…と夢想したものだが、ついに夢が現実になる!

■『ウルトラマンメビウス』第41話「思い出の先生」で矢的猛が円盤生物を追って地球に帰還する。もちろん、長谷川初範氏が4半世紀ぶりに矢的猛を演じる。そして、『80』第2話「先生の秘密」に登場した矢的猛の生徒で不登校だった「塚本幸夫」君がいまでは、中学校の教師をやっているという。統廃合で桜ヶ岡中学校が廃校になるという。『80』第3話「泣くな初恋怪獣」に登場した硫酸怪獣ホーがマイナスエネルギーを受けて出現するという。

まさにこれは『ウルトラマン80』第51話だ。放送日まで待てるはずがない!
(2007/1/8)


■第51話■思い出の先生(『ウルトラマンメビウス』第41話)
脚本:川上英幸/監督:佐野智樹/特技監督:鈴木健二
(2007年1月27日放映)

<徹底研究>
ある朝、塚本幸夫は担任する不登校児を自宅まで迎えに訪れていた。塚本はかつて矢的猛先生に導かれたように、少年に優しく語りかける…。そのころ、円盤生物ロベルガー2世を追って、あの光の巨人が地球に降り立った。その名はウルトラマン80。

桜ヶ岡中学校に赴任した塚本は、落語やスーパーと再会する。そして、彼らは廃校になる桜ヶ岡中学校で、最後の同窓会を開こうと計画するのだった。「矢的先生は来てくれるかな」…。そこへマイナスエネルギーに似た波動が観測された場所を調査していたミライ(メビウス)が訪れる。塚本は思い切って尋ねた。「GUYS隊員なら、かつてUGM隊員だった矢的先生の連絡先を知りませんか」…。ミライは80に伝えるが、80は「彼らには会えない」と首を縦に振らない。

そして同窓会当日、桜ヶ岡中学校に硫酸怪獣ホーが出現した!!

■エイティが降り立った。矢的の生徒たちが叫ぶ「俺たちのウルトラマンだ」! エイティのバックルビームを受け、ホーは静かに消えていった。

「先生に憧れて僕は教師になりました!」「大学で研究する日々を送っています!」…生徒たちの声を受けて、空へ帰っていくエイティ。「感謝しているのは私の方だ」…矢的猛は自分の言葉で、あの時、怪獣と戦うために教師を辞め、生徒たちの前から姿を消したことを謝るべく、生徒たちとの再会を果たすのだった。

園モノとしてスタートした『ウルトラマン80』ながら、路線変更により“ウルトラマン先生”の設定が事実上消滅してしまったために、最終回の定番であるはずの“矢的猛先生と生徒たちとの別れ”が描かれることはなかった。矢的猛を演じた長谷川初範氏も「ずっと気持ちの中でもやもやしてた」という“先生編”への決着が、4半世紀を経て果たされるという奇跡を、とにかく素直に喜びたい。
■冒頭、不登校児を自宅まで迎えに来た塚本先生…。それはまさに、『80』第2話と同じシチュエーションではないか。かつての不登校児「塚本君」がいまでは桜ヶ岡中学の教師になっている! そして、あの時の矢的先生のように、逆立ちして“地球を持ち上げる”のだ! 『メビウス』の主題歌が流れることに違和感を覚えるほど、実に『80』的世界なのだから、乾杯である。
■また、『80』で特撮監督助手を務めていた鈴木健二氏が特技監督として登板したことが嬉しいではないか。ウルトラスパイラルビーム、ウルトラ400文キック、ウルトラレイランス、サクシウム光線、そしてバックルビームといったエイティの超技が続々と繰り出されるわ繰り出されるわ。劇伴や効果音も、当時のものが絶妙に使われており、これはもう、客演の域を超えている活躍ぶりなのだ。
■ただ、桜ヶ岡中学の“校舎”が怪獣ホーを出現させたというのは、理由はどうあれ強引過ぎないか。もう少しマイナスエネルギーの生かし方があってもよかったと思う。ま、1年E組のクラス会というのも強引だが(一般的にクラス会は「3年○×組」で開催するものだと思うし)。
■塚本が前の学校で受け持っていた元UGM隊員の子供とは、どの隊員の子供なのか、そういうことは置いといて、出世頭?の大島明雄君が同窓会欠席なのは残念だとか、そういうことは置いといて、中学校の屋上で塚本、博士、落語、スーパー、ファッション、真一ら生徒たちがエイティに向かって「仰げば尊し」を歌うシーンは、メーンターゲットを完全無視した超絶場面だ。「さよならは終わりではなく、新しい思い出の始まりといいます」−かつて矢的が地球を去る時に話した言葉の通り、思い出は熟成されていたのだ。
■そして、きっと矢的は、オオヤマやハラダ、タジマらUGMの旧友と再会し、城野エミの墓前に花を供したことだろう。…ありがとう、夢のような30分だった。
(2007/2/3)


して、第50話「心からの言葉」/エンペラ星人によって暗黒化した太陽を復活させるため力を尽くすウルトラ兄弟。そこに駆け付けるレオ、アストラ、タロウ、そして80!! だれもが愛する青い星は、地球人とウルトラマンの協力で史上最大の危機を乗り越えるのだった。
(2007/5/27)

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