<1時間目>
いきなりですが・・・
スコアカードを読んでみよう!!
さて。いきなりですが、下に「スコアカード」の一部分を載せてみました。何の予備知識もなしに、読んでみてください。分かるところがあるでしょうか?
さて、どうだったでしょうか?
意味は分からないまでも、何となく、「雰囲気」を感じとっていただくことはできたでしょうか?
いきなり、というのは無理がありますから、今度はいくつか、スコアカードを読み解くための「ヒント」を差し上げます。下に掲げたものを見ながら、もう一度、上のスコアカードを見てみてください。
@算用数字(1.2.3〜)は、野手の守備位置を表します。
1 投○手 ピッチャー 6 遊撃手 ショート
2 捕○手 キャッチャー 7 左翼手 レフト
3 一塁手 ファースト 8 中堅手 センター
4 二塁手 セカンド 9 右翼手 ライト
5 三塁手 サード
※代打はH、代走はR、指名選手(Designated Player)はDPを表します。
A◇の中の記号は次のとおりです。
・T・U・V アウトカウント(ワンアウト・ツーアウト・スリーアウト)
・○または● 得点
・ 残塁
Bたてに細長い四角の中に入っているのは、
・○ ストライク
・● ボール
・― ファウルボール
C打者・走者など攻撃側のメンバーはすべて漢数字(一、二、三、四〜)で表します。
Dその他の記号は、
K 三振
⌒ フライ(飛球)(ファウルフライはF⌒)
/ 安打(ヒット)
S 盗塁(スチール)
D 死球(デッドボール)
1−3 ゴロ(この場合は、1から3、つまり、投手から一塁手に送球されてアウト)
2−6TO タッチアウト(タッグアウト)(この場合は、2から6、つまり捕手から遊撃手に送球が送られてタッチアウトになったという意味)
さて、どうでしょうか。ヒントを参考にしていくらか読めるようになったでしょうか?
それでは、正解を説明しながら解説することにしましょう。
@AB
@・Aは、一見すると違うようですが、使い方にちがいはありません。
Aは、スコアカードを報道機関にファクシミリで送る際の時間を短縮するために規格が変更されたものです。現在は、日本協会やそれに準拠した埼玉県協会のスコアカードも現在はこのスタイルが用いられています。@は、現在も、「スコアブック」では使われています。
この“箱”は「ボックス」といいます。実際のグラウンドにある打者席のことを「バッターボックス」といいますが、この「ボックス」も、ひとりの打者が打席に立ったとき(出塁すれば、そのあとも)の記録を記入するようになっています。
それでは、ボックスの使い方を、Bを見ながらご説明することにしましょう。
(A)…投球を記入する欄
○ストライク・●ボール・―ファウルボールを記入します。
この欄で注意していただきたいのは、
各打者への「最終投球」は記録しない。
ということです。
つまり、三振の第3ストライク、四球の第4ボールは(A)欄には書かない、ということです。
これは、打者が打って出塁するかアウトになったとき(「打撃完了」)の投球は記録しようが ないわけですから、同じ原則で記録することになるわけです。
(B)…アウトカウント・得点・残塁を記入する欄
TUVアウトカウント・○(または●)得点・残塁を記入します。
@…打者が一塁に出塁した記録を記入する欄
A…走者が二塁へ進むか、二塁に達する前にアウトになった記録を記入する欄
B…走者が三塁へ進むか、三塁に達する前にアウトになった記録を記入する欄
C…走者が本塁へ進むか、本塁に達する前にアウトになった記録を記入する欄
@〜Cについては、実際のスコアカードを対照しながら、解説することにしましょう。
それでは、1回の攻撃からみていきましょう。
1番打者の打席、(A)欄には、【―,―,●】と書かれていますね。
これは、前に説明したように、―がファウルボール、●がボールですから、初球と2球目がファウルボール、3球目がボールであったことがわかります。
そして、AとBにまたがって、K と書かれ、(B)欄には、Tという記号が縦長に書かれています。Tは、アウトカウントのことですから、ワン・アウトになったことがわかりますね。
Kは、三振を示す記号でした。三振をなぜKと表示するのかは、諸説ありますが、実ははっきりしていません(三振の英語表記は、Strike
Out)。ですから、「三振はK」というように覚えてしまうしかないでしょう(大リーグで活躍している野茂英雄投手がロサンゼルス・ドジャースに入団したとき、“ドクターK”と呼ばれていたのをご記憶の方もおいででしょう)。
ところで、一番打者のKには、右肩に「3」がついています。まるで、数学の「指数」(2の3乗)のようですが、この場合は、ツーストライクのあとにバントした打球が、ファウルボールになったことを指しています。ツーストライク後のバントがファウルになるとアウトになる、いわゆる「スリーバント失敗」でアウトになった、ということを示しているわけです。
ここでひとつ付け加えておきますと、この場合は、打者が一塁に達する前にアウトになった場合に当たるわけですが、このような場合には、ボックスのAとBの欄を使って、その原因を大きく書きます。
たとえば、2回の6番打者のボックスは、AとBの欄に「9−3」と書かれています。これは、9、つまりライトゴロで打者走者が一塁に達する前にアウトになった、ということを示していることが分かるわけです。
また、その際のアウトカウントは、(B)欄を飛び出して下に大きく書くようにしましょう。
1番打者のボックスが読めれば、2・3番打者のボックスも読めることとと思います。
なお、3番打者のボックスの右隅に2本の斜線が引かれています。
これは、「イニングがここで終わりましたよ」ということを示すものですから、忘れずに書き込むようにしてください。
2回の攻撃に移ります。
2回の先頭・4番打者は、初球・ストライクのあと、@欄にDとあります。
Dが死球、すなわちデッドボールであることは前に書きました。@欄は、打者が一塁に出塁したときに記録する欄、ということもよろしいでしょうか。
一塁走者となった4番打者は、5番打者に対する初球のボールのときに、二塁への盗塁に成功しました。走者が二塁へ進んだわけですから、A欄にSと記録します。
同時に、どの打者の何球目のときに、盗塁したのか分かるように、ボールカウントと進塁の記録欄に「,」(カンマ)をつけて、その機会を明らかにしておきます。カンマは、イニングが終わるまでは、「,」「,,」「,,,」数を増やしていき(ただし、スペースの都合もあるので、「,,,,」の場合は、「,4」とすればよい、それ以上の場合も同じ)、イニングが変わったら、また一からスタートさせるのです。
そうしてみますと、5番打者の2球目のストライクのときに、二塁走者が三塁への盗塁に成功したことが分かります。
5番打者は3球目に一塁に出塁しました。
この5番打者の出塁ですが、まず/であることから、安打(ヒット)であることが分かります。さらに、5とあることから三塁手への打球であることが、そして5の下に波線があるところからバントであったことが分かります。つまり、この5番打者の出塁は、「三塁手へのバント安打」であったということがいえるわけです。
さて、この5番打者の安打によって、三塁走者が本塁へ生還(ホームイン)しました。つまり、1点が入ったわけです。
記録ではこのことを、漢数字(この場合は五)に○をつけて表しています。これは、5番打者の打撃による得点であることを示しています。
守備者は算用数字で表しましたが、打者・走者の場合には、その打順を漢数字(一、二、三…)で表すのです。
なお、この得点の記録は、漢数字を○でくくる場合と、()でくくる場合があります。前者を「打点」といいますが、この「打点」については、別講で説明をすることにしましょう。
一塁に出塁した5番打者は、次打者・6番の1球目・ボールのときに、二塁盗塁をくわだてて失敗しました。Aの欄に書かれている2−6T.Oは、この間の守備の動きを示したものです。A欄に記入するのは、「走者が二塁に進むか、二塁に達する前にアウトになった記録」を書くのでしたね。ボールが、捕手から二塁のベースカバーに入っている遊撃手にわたり、タッグ・アウトになったというわけですから、走者は、「二塁に達する前にアウト」になっているわけです。
なお、この場合にも必ずボールカウントとカンマで連携させるようにします。
6番打者の2球目、ライトゴロで一塁アウトになったのは、先ほど述べたとおりです。
7番打者は3球三振であったことも分かりますね。
3回の攻撃は、投手ゴロ・三振・三振で終わっています。
4回の攻撃、先頭の二番打者のカウント1−1から、投手前にバントをしました。投手はこれを一塁ベースカバーの二塁手に送って打者走者をアウトにしています。これが、1−4と表記されています。
このように、ベースカバーには、塁手以外の選手が入ることがよくありますから、記録する際には、よく注意することが大切です。
三番打者はカウント1−2から三振でツーアウト。
四番打者はワンストライクからの2球目を遊撃手への打球で一塁セーフとなりました。守備位置を半円で囲むのは、内野安打を示しています。
五番打者の初球・ストライクのとき、一塁走者が盗塁に失敗、2−6TOとなりました。
この場合、このアウトが第3アウトです。5番打者は打撃を完了していませんので、次イニングにも打席に入ることになります。イニング終了を表す2本斜線も、打撃完了しているもっとも後位の選手のボックスに引くことになっています(第3アウトとなった選手のボックスにではありません)。
5回の攻撃です。
先頭の5番打者は遊撃ゴロ。6番打者は初球を一塁フライで二死=ツーアウトです。
7番打者のボックスの横に、縦波線といっしょに、Hと書かれています。
前にご説明しましたように、Hは代打ですが、いつの時点で選手が交代したかを明らかにするため、交代したところに波線を引くことになっています。これは、代走者が出た場合、守備の交代があった場合も同じです。
さて、この7番打者の代打は、カウント1−1からの3球目、左翼手の頭上を越える安打を放ち、三塁に到達しました。安打を示す斜線がB欄まで引かれていることが分かると思いますが、これは、B欄が、「走者が三塁へ進」んだ記録を記入する欄であるという原則によっていることがわかると思います。
八番打者は、初球を捕手前へバント安打。2がキャッチャー、波線がバント、安打が斜線、これはよろしいでしょうか。
このバント安打で三塁走者が本塁に生還しました。
この生還は、八番打者の打撃によるものですから、漢数字の八に○、「打点」になっていることが分かります。
九番打者はカウント3−1から、三塁手へバントのファウルフライでした。
ファウルフライがF⌒であることは説明したとおり、バントが波線であったことはもう言うまでもないでしょう。
スコアカードは、ボックスさえきちんと記帳されていれば、あとは何とかなります。がんばりましょう!!→2時間目へ
<この時間のおさらい> @「ボックス」とは、「スコア」をつけるすべての“基本”。 A守備は「算用数字」、攻撃は「漢数字」。 B投球は、○と●と―。最後は書かない、ご注意を!! C一塁に達する前のアウトは全体を使って大きく書こう。 D忘れずに イニング終わりの 二本線 E走者の進塁 カンマで連携 この講で解説した内容はPDFファイルにまとめてあります。 |