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化学なんて大嫌い!という人のための 風変わりなヒント
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 第2号(2004.5.1発行)



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   化学なんて大嫌い!という人のための
              風変わりなヒント  第2号
                 2004年5月1日発行

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 <目次>
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 1.一風変わった化学の授業
        〜 周期表について

 2.化学をつくった人たち
        〜 ウィリアム・パーキン

 3.あとがき
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  1.一風変わった化学の授業
           〜 周期表ついて 〜
 ────────────────────────────────

  周期表って覚えるものなのかな? と私は思います。

  語呂合わせなどを使ったいろいろな覚え方があります。
  確かに面白く覚えられそうですが、なんか違うなあ、と思うのです。



  そもそも周期表って何? というところから考えてみます。

  メンデレーエフが今の周期表のもとになるものを作ったというのは有
 名です(1869年のことです)。

  当時知られていた60種類くらいの元素について、原子量や性質を考
 えながら並べていくと、系統立てて整理できそうだということがわかり
 ました。

 (メンデレーエフは、元素ごとに元素記号といろいろな性質を書いたカ
 ードを作り、並べたり戻したりしながら、ああでもない、こうでもない
 と考えていたようです。そんな光景を想像するとなんだか親近感がわい
 てきます。・・・余談でした)


  まだ原子の構造などまったくわからなかった時代です。それなりに並
 べることはできるけれども、なぜそういう並び方をするのかはよくわか
 りませんでした(発見されていない元素もまだ多くありました)。


  もっと時代が後になってくると、原子の構造がわかってきて、電子と
 いうものの存在と、その配置の仕方に規則性があることがわかってきま
 す。

  その時点でやっとなぞが解けるわけです。



  原子番号(陽子数)の順で元素を並べると、

  ・外側の電子配置の同じものが周期的に現れてくる(縦の列に並ぶ)
  ・似たような性質を示す元素が周期的に現れてくる(縦の列に並ぶ)

  ということは、元素の性質は外側の電子配置によって多くの場合決ま
 ってくるということがわかります。


  ここまで進めていくと、イオン化エネルギーや電気陰性度など、周期
 表と一緒に説明される元素の性質についても、どうしてそうなるのかが
 わかりやすくなっていると思います。

  また、元素の性質や特徴について細かいことがいろいろと出てきたと
 きにも、周期表で電子配置や他の元素と見比べていくことで迷わずに進
 めると思います。


  「炭素には手が4本あります」という話をきいたときに、「同じ14
 族のケイ素も手が4本あるのかもしれない」(実際そのとおりです)と
 思えるようになれば、バッチリです。


  無理に覚える必要はないんだ、ということを感じてもらえればいいな
 と思っています。


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 ☆今回の小さなまとめ☆
 ----------------------

  周期表は元素の性質をわかりやすく把握するために作られた表です。
  無理して覚えるよりも、どうしてこのように並んでいるのかを考える
 方があとで楽になります。


  次回は 〜 化学結合について 〜 をお送りします。


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  2.化学をつくった人たち
       〜 ウィリアム・パーキン 〜
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  今回はウィリアム・パーキンを取り上げます。
  合成染料のモーヴを世の中に送り出した人として知られています。



  小さいころから化学に興味があったパーキンは、15歳でイギリス王
 立化学カレッジに入学し、2年後には実験助手に抜擢されていました。

  18歳のとき(1856年)に休暇を利用してマラリアの特効薬キニ
 ーネ(※1)の合成を自宅の実験室で試みることになります。

  コールタール(※2)から得られるトルイジンという物質と、キニー
 ネの分子式を比べながら、原子の数を合わせていく「加減法(※3)」
 と呼ばれる方法で合成するというものです。

  具体的には、まずトルイジンをアリルトルイジンに変えることで炭素
 と水素を補います。次にこのアリルトルイジンを酸化させて酸素を補え
 ばキニーネになるだろう、と考えました。


  この方法で実験してみると、キニーネとは似てもに似つかない赤褐色
 の物質ができてしまいます。

  明らかに失敗でしたが、そこであきらめずに、今度はトルイジンより
 も簡単なアニリンという物質から合成してみよう、と思って同じように
 試してみます。

  すると今度はさらにかけ離れた真っ黒な物質ができてしまいます。

  また失敗だ、と思って器具を洗浄していたところ、洗浄した溶液が紫
 色をしていることに気付きました。この液を布につけてみるときれいな
 紫色に染まります。

  ここでひらめくものがあったパーキンは、この紫色の物質を取り出し
 て染料工場で染色に使えるかどうか試してもらいます。
  結果は、絹には十分使える、綿には染める前にひと工夫することで大
 丈夫との返事でした。

  そこですぐにこの染料の特許を取り、工場を建てて製造することにし
 ます。

  うまく製造できるようになるまでにはいろいろな課題が出てきました
 が、それらをひとつずつクリアしていくことで、工業化に成功します。

  そしてこの染料は、アニリン・パープル、あるいはモーヴ(モーヴェ
 イン)などと呼ばれて瞬く間に広まっていきました。



  パーキンの成功を受けて、その後合成染料工業が飛躍的に発展してい
 きます。
  それまでの天然染料では出せないような様々な色の染料が安価で供給
 されるようになりました。

  また合成染料を得る際に得られた知識、知見を基にして、その後いろ
 いろな分野で合成化学工業が発展していくことになります。


  結果として、パーキンはキニーネを得ることはできなかったわけです
 が、ひとつの偶然から世の中が大きく変わっていく一例として、とても
 興味深い思いがします。



 ○ 簡単な用語紹介

  ※1 キニーネ
   キナ皮からとれるアルカロイドの一種。単離されたのは1820年、
   構造が判明したのは1908年、そして人工的に合成されたのはさ
   らに後の1944年になってからのこと。

  ※2 コールタール
   石炭を乾留して得られる油状物質。以前は石炭からコークスとガス
   成分を取った後の不要物として廃棄されていたが、この頃から化学
   合成用の原料として広く使われるようになった。

  ※3 加減法について 
   ひとつの分子式からは何種類もの異性体が考えられるので、単に原
   子の数をあわせれば合成できるというものではありません。従って
   この方法でキニーネを合成することはまず不可能なのですが、当時
   は有機化合物の構造に関する知見はほとんどなく、これが考えられ
   る最良の方法でした。


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  3.あとがき
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  化学はよくわからない、と思う人にはこういうパターンがあるのかも
 しれない、と思うようになってきました。

  1)どこかの時点でわからなくなる。
       ↓
  2)やみくもに覚える(暗記する)ことでなんとかしようとする。
       ↓
  3)無理に覚えるのでつまらないと思う。
       ↓
  4)だんだん苦痛になってくる。
       ↓
  5)化学を避けるようになる。
       ↓
  1)余計にわからなくなる →2)に戻って繰り返し。

  こんなパターンなのではないでしょうか。


  この悪循環をどうしたらよいかということなのですが、1)→2)の
 ところを断ち切るのがよいと思います。

  他のところは人間の自然な感情ですので、なんとかしようとすること
 自体に無理があるからです。

  そして、わからなくなったときは、どこでわからなくなったのかにつ
 いてさかのぼってみることをお勧めします。
  たいていは、単なる用語(モルなど)の意味だったりします。

  考え方や概念といったものがわからないときもあると思いますが、そ
 のときは、「なぜそうなるのか」「どうしてそうなるのか」というのを
 つきつめていく方が後で楽になります(最初は大変かもしれませんが)。



  ※参考文献はこちらにまとめてあります。興味がありましたらどうぞ。
   → http://www13.plala.or.jp/chem-hint/reference.html


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