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化学なんて大嫌い!という人のための 風変わりなヒント
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 第3号(2004.5.15発行)



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   化学なんて大嫌い!という人のための
              風変わりなヒント  第3号
                 2004年5月15日発行

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 <目次>
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 1.一風変わった化学の授業
       〜 化学結合について

 2.化学をつくった人たち
       〜 ヤコブ・ファント・ホッフ

 3.あとがき
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  1.一風変わった化学の授業
           〜 化学結合について 〜
 ────────────────────────────────

  今回は化学結合についてですが、すこし回り道をしながら進めていき
 ます。


  まず、ある物質(化合物)の化学的な性質はどのようにして決まって
 くるのかについて順を追って考えてみます。


  物質(化合物)の性質は、

  ・どんな原子(粒子)がどういう方法でくっついているか。
   →(化学結合:◇1)

  ・原子(粒子)がお互いにくっついてできる形はどんなものか。
   →(構造)

 の2つによって決まることがわかります。

  この2つのうち、どういう方法でくっつくのか(どのような化学結合
 をつくるか)については、結合をつくるそれぞれの原子(元素)の性質
 (◇2)によって決まってきます。

  さらに、原子(元素)の性質については、陽子の数と電子配置(◇3)
 によって決まってきます。

  ここまで考えると、原子を構成する陽子の数と電子配置が物質の化学
 的な性質を決めるすべてのもとになっていることがわかります。


  またここで、原子について、陽子の数(原子番号)と電子配置(価電
 子数など)に注目してわかりやすくまとめると周期表が得られます。

  周期表は、このような原子の構造があってはじめて成り立つものなの
 で、化学においてはとても重要なものですが、補助的なものです。

  周期表があればずっとわかりやすいのであって、周期表がないとまっ
 たく理解できないというわけではありません。

  周期表は「便利な道具」です。誤解を恐れずに言うなら、「はさみ」
 や「かなづち」などと同じ道具です。

  ですからなにも考えずに周期表を暗記するというのは、あまりおすす
 めしません。

  はさみやかなづちの使い方を学ぶのではなく、その形だけをそのまま
 覚えたところで役に立たないのと同じ理由からです。

  なにも考えずに暗記することでは、問題の解決にはつながらないと思
 います。



  話がそれましたのでもとに戻します。

  上の◇3まで考えを進めていき、今度は逆の方向に(◇3→◇2→◇1
 へと)考えていくことで、化学結合の本質をはっきりさせることができ
 ます。

  (◇3)陽子の数と電子配置が原子(元素)の性質(◇2)を決める。
       ↓
  (◇2)原子(元素)の性質が化学結合(◇1)を決める。


  また、化学結合については3種類(共有結合、イオン結合、金属結合
 (配位結合も含めるならば4種類))の特徴がそれぞれ説明されますが、
 そのもとになるものを知っているかどうかで同じ説明を読んでもわかり
 やすさは変わってきます。


  どんな化学結合も電子を仲立ちにして原子どうしが結びついていると
 いう状態には変わりありません。

  化学結合に関わっている電子が原子核にひきつけられる度合いには微
 妙な違いがあって、それをあえて分類すると3種類(あるいは4種類)
 に分けられるというだけのことです。

  電子が原子核にひきつけられる度合いは、それぞれの原子の構造(陽
 子数と電子配置)によって決まることを思い出してみてください。

  また化学結合は、最初に示した物質(化合物)の性質を考えるための
 ステップのひとつだったことについても考えてみてください。
 
  それだけでもこれからの理解のしやすさにずいぶん違いが出てきます。


  すべての物質の化学的な性質は、それを構成する原子の構造(陽子数
 と電子配置)がもとになっているということがわかると、化学のいろい
 ろな概念や考え方がすんなり頭に入ってくるようになります。


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 ☆今回の小さなまとめ☆
 ----------------------

  どんな化学結合も電子を仲立ちにして原子どうしが結びついていると
 いう状態です。
  そして、すべての性質のもとは原子の構造にあるということがわかる
 とずいぶん楽になります。


  次回は 〜 電気陰性度と分子の極性について 〜 をお送りします。


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  2.化学をつくった人たち
       〜 ヤコブ・ファント・ホッフ 〜
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  今回は、ヤコブ・ファント・ホッフを取り上げます。
  第1回のノーベル化学賞(1901年)を受賞した人です。


  ファント・ホッフは1852年にオランダで生まれました。
  化学に興味があった彼は、将来は化学者になろうと思っていたのです
 が、父親が反対したことから妥協して工業学校に入り、技師への道を進
 もうとします。

  しかし自分の夢をあきらめられなかった彼は、工業学校の3年間の課
 程を2年で終えて、残りの1年は大学で勉強することにします。

  大学では、数学と物理の基礎についても身につけることができました
 (これが後々の研究に役立つことになります)。

  その後、ケクレやヴュルツといった当時有名だった化学者の下で学ん
 だ後、オランダに戻ってきます。

  そしてそれまでに学んできたことや、知られている現象などを基にし
 て、22歳のときに立体化学に関する論文をオランダ語で書いて発表し
 ました。


 ※内容を簡単に言うと、炭素がつくる4本の結合は立体的なものである
  ということを示したものです。

  平面的なものではなく立体的なものであると考えることによって、そ
  の当時には理由がよくわからなかった事柄を十分に説明できます。

  また4つの結合はお互いに等価なので、立体的であるとするならば正
  四面体を構成するような構造になることも示しています。


  この論文はとても画期的なもので、その考え方は当時の化学を発展さ
 せたと同時に、現在の化学の基礎になるものでした。


  しかしこの論文を発表した当初はなんの反響もありませんでした。

  反響がないのはオランダ語で書いたからだろうと考えた彼は、フラン
 ス語に翻訳して出版してみました。
  それでも反響はありません。

  またオランダに戻ってから学位をとったものの、化学者としての職は
 なかなか見つからない状態でした。

  手を尽くしてようやく獣医学校の助手という地味なポストに就くこと
 ができただけでした。



  論文を発表してから3年ほどたった後、ドイツでこの論文が紹介され
 るとその反響はすさまじいものがあり、一躍有名になります。

  賞賛の声と、それと同じくらいの強力な批判の声が出ましたが、この
 論文に示された考え方によってその後に出てきた様々な事柄もうまく説
 明できることから、彼の評価は高まっていきます。

  ほどなくアムステルダム大学に招かれた彼は、後に物理化学と呼ばれ
 るようになる分野の研究を行っていきます。

  化学と熱力学を結びつける研究を行い、また浸透圧に関する研究を発
 表しました。この研究がノーベル化学賞の受賞につながります。

  浸透圧の研究からは、希薄溶液での物質のふるまいが気体のそれとよ
 く類似していること(同じ形の法則が成り立つこと)を見出します。

  これにより、気体にできないような物質についても希薄溶液にするこ
 とで分子量を求めることができるようになりました。



  また彼は、アレニウスやオストワルトと協力して物理化学に関する雑
 誌を創刊し、その基礎を築きました。

  ファント・ホッフ、アレニウス、オストワルトの3人は国境をこえた
 友情でお互いに励ましあいながら終生研究を続け、後にそれぞれの研究
 によってノーベル化学賞を受賞することになります。


 ────────────────────────────────
  3.あとがき
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  わからないからといって、むやみに暗記してしまうのは、できれば避
 けてほしいと思います。

  理由も考えずに暗記することで、その人に特有の感性や考え方が損な
 われてしまうことがあるからです。

  最初はつらいかもしれませんが、ひとつずつ考えながら進まれること
 をおすすめします(もちろん自分への自戒の念もこめて書いています)。



  ※参考文献はこちらにまとめてあります。興味がありましたらどうぞ。
   → http://www13.plala.or.jp/chem-hint/reference.html


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  ◇◇ 化学なんて大嫌い!という人のための          
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  ・発行者 後藤 幹裕
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