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化学なんて大嫌い!という人のための 風変わりなヒント
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 第6号(2004.6.26発行)



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   化学なんて大嫌い!という人のための
              風変わりなヒント  第6号
                 2004年6月26日発行

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 <目次>
 ------------------------------------------
 1.一風変わった化学の授業
     〜 気体について その2

 2.化学をつくった人たち
     〜 ジョゼフ・ルイ・ゲーリュサック

 3.あとがき
 ------------------------------------------

 ────────────────────────────────
  1.一風変わった化学の授業
           〜 気体について その2 〜
 ────────────────────────────────

  前回は、気体のところで出てくる圧力や体積などが何を表しているの
 かについて見ていきました。

  今回はこれらの相互関係についてひとつずつ考えていき、気体の状態
 方程式にたどり着きたいと思います。



  気体の状態方程式にでてくる4つの変数(圧力、体積、モル数、温度)
 をそれぞれ適当に変化させて考えていたのでは、それぞれの関係がわか
 らなくなってしまいます。

  そこで4つの変数のうち、2つを固定して(一定であるとして)、残
 りの2つについての関係を順番に見ていく方法をとります。


  前回同様にふくらませた風船を例にして、以下のような場合を考えて
 みます。

   1)風船に力を加える
   2)風船をあたためる(冷やす):その1
   3)風船をあたためる(冷やす):その2
   4)風船に気体を追加する(気体を抜き取る):その1
   5)風船に気体を追加する(気体を抜き取る):その2


 順番に進めていきましょう。

 1)風船に力を加える │
 ───────────┘
  風船に対して、外から力を加えて風船の大きさを小さくしようとする
 場合です。外から加える力(圧力)が大きいほど風船の大きさ(体積)
 は小さくなります。

 (風船の中の気体の温度とモル数を一定にすれば、圧力と体積の関係に
 なります)。

 従って、
   圧力:大 ⇒ 体積:小
   圧力:小 ⇒ 体積:大

 というように、圧力と体積は反比例の関係になります。


 2)風船をあたためる(冷やす):その1 │
 ────────────────────┘
  風船をあたためたり、冷やしたりした場合で、外からの圧力と気体の
 モル数が変わらないとき(体積が自由に変化できる場合)。

 これはすぐに、
   温度:高 ⇒ 体積:大(ふくらむ)
   温度:低 ⇒ 体積:小(しぼむ)

 ということがわかるので、温度と体積は比例する関係といえます。


 3)風船をあたためる(冷やす):その2 │
 ────────────────────┘
  2)と同じように風船をあたためたり、冷やしたりした場合ですが、
 今度は体積が変わらないようにする場合です(体積と気体のモル数が一
 定)。

  こちらは直感ではわかりにくいですが、順を追って考えて行くとわか
 ります。

  a)まず、温度を上げると体積が大きくなろうとします。
  b)今回は体積を変えないのが条件なので、大きくなろうとする体積
   を押さえ込むことが必要になります。
  c)そのために外から圧力を加えて体積を一定にする必要があります。
  d)温度が高くなればなるほど、体積がより大きくなろうとするので、
   押さえ込んでおくのに必要な圧力も大きくなります。

 従って、
   温度:高 ⇒ 圧力:大
   温度:低 ⇒ 圧力:小

 ということがわかり、温度と圧力は比例する関係になります。


 4)風船に気体を追加する(気体を抜き取る):その1 │
 ──────────────────────────┘
  ふくらませた風船の中に気体を追加したり、中の気体の一部を抜き取
 ったりする場合です。まず温度と圧力が一定の場合(体積が自由に変化
 できる場合)を考えます。

  気体を追加したり抜き取ったりするということは、気体の分子の数を
 増やしたり減らしたりすることなので、モル数が変化することになりま
 す。

  それを踏まえて考えると、気体の分子がたくさん入っていれば、体積
 は大きくなる方向にあるということがわかります。

 というわけで、
   モル数:増 ⇒ 体積:大
   モル数:減 ⇒ 体積:小

 のようになり、モル数と体積は比例する関係にあることがわかります。


 5)風船に気体を追加する(気体を抜き取る):その2 │
 ──────────────────────────┘
  4)と同様にふくらませた風船の中に気体を追加したり、中の気体の
 一部を抜き取ったりする場合です。ここでは体積と温度を一定にした場
 合(圧力が変化できる場合)を考えます。

  結論から言うと、モル数が増えれば圧力も増加するのですが、こちら
 もすぐにはわかりにくいので、順に考えていきます。

  a)4)のところで考えたように、モル数が増えると体積が増える関
   係にあります。
  b)ここでは体積を一定に(変化しないように)するのが条件なので、
   大きくなろうとする体積を押さえこむ必要があります。
  c)そのために圧力を加えて体積を一定にします。
  d)従って、風船の中にある気体分子の数が増えるほど圧力も大きく
   なります。

 よって、
   モル数:増 ⇒ 圧力:大
   モル数:減 ⇒ 圧力:小

 ということになり、モル数と圧力は比例する関係にあることがわかります。



  さて、ここまで5つの場合分けを見てきました。

  改めてまとめてみると、こうなります。
  (圧力をP、体積をV、モル数をn、温度をTとして式にしてみます)

 1)圧力と体積の関係(温度とモル数は一定のとき)
    圧力と体積は反比例の関係 ⇒ PV=(一定)

 2)温度と体積の関係(圧力とモル数は一定のとき)
    温度と体積は比例の関係 ⇒ V/T=(一定)

 3)温度と圧力の関係(体積とモル数は一定のとき)
    温度と圧力は比例の関係 ⇒ P/T=(一定)

 4)モル数と体積の関係(圧力と温度は一定のとき)
    モル数と体積は比例の関係 ⇒ V/n=(一定)

 5)モル数と圧力の関係(体積と温度は一定)
    モル数と圧力は比例の関係 ⇒ P/n=(一定)


  そしてこれらの関係をうまく選ぶと気体の状態方程式ができます。

  例えば、圧力に注目して考えてみます。

  圧力に関係しているのは、上記の1)、3)、5)なので、

   PV=(一定)、P/T=(一定)、P/n=(一定)

 の3つの式を使います。

  圧力Pを基準にして、それぞれがうまく関係を保つように式を組み立
 てると、

   PV/(nT)=[一定]

 の式が得られます。

  ここで[一定]の部分をRとして、変形すれば、

   PV=nRT

 となり、気体の状態方程式のできあがりです。


 ----------------------
 ☆今回の小さなまとめ☆
 ----------------------

  気体の状態方程式に限りませんが、なんだかややこしそう、と思った
 ら、ひとつひとつ分解していって考えてみるのもいいかもしれません。

  次回は 溶液について を予定しています。


 ────────────────────────────────
  2.化学をつくった人たち
       〜 ジョゼフ・ルイ・ゲーリュサック 〜
 ────────────────────────────────

  今回はフランスの化学者、ゲーリュサックを取り上げます。


  ゲーリュサックは1778年にフランスのリモージュ地方にあるサン
 ・レオナールで生まれました。

  彼は中産階級の家に生まれたのですが、フランス革命の混乱で裁判官
 をしていた父親が逮捕されたことから、一家で生活に困るようになって
 しまいます。

  そんな状態のなか、16歳のときに科学を学ぶためパリに出てきて勉
 強をはじめ、設立されて間もないエコール・ポリテクニク(パリ理工科
 大学)の選抜試験に合格します。

  この学校は家柄ではなく能力によって全国から優秀な学生を選抜する
 方法をとっていて、授業料は不要でした(逆に手当てが支給されました)。

  エコール・ポリテクニクを卒業後、当時有名な化学者だったベルトレ
 に見出されて、研究を指導してもらうことになります。

  ベルトレの推薦もあって28歳の若さで学士院会員になった後、母校
 の教授や数々の要職を歴任していきます。



  ゲーリュサックといえば気体に関する研究で有名です。

  最初の気体に関する研究として、「気体の体積は、一定の圧力のもと
 では気体の種類によらず、温度に比例した同じ割合で膨張する」ことを
 発見し、気体の膨張係数を可能な限り厳密に求めます。

  しかしこの発見がすでにシャルルによって15年前に行われていた
 (シャルルはそれを発表していませんでした)ことを知ると、シャルル
 の業績をきちんと示し、合わせて公表しました。

  現在、この発見はシャルルの法則(あるいはシャルル−ゲーリュサッ
 クの法則)として知られています。


  次に、「気体が反応するときには、同温同圧のもとで、その体積にお
 いて簡単な整数比が成り立つ」という気体反応の法則を発表します。

  それまでに様々な人々が行ってきた実験結果と、自ら行った実験結果
 とを合わせて考察し、この法則にたどり着きました。

  ただ、この法則が本当に成り立つとすると、それまでに知られていた
 ドルトンの原子説と矛盾する場合が出てくることから、一時期、化学の
 世界で混乱が生じます。

  現在からみれば、気体反応の法則の発見がアボガドロの法則の発見に
 つながる重要な道筋だった、ということがわかっていますが、当時はい
 ろいろな人がそれぞれの説を主張していたので大変な時代でした。



  ゲーリュサックは気体に関する研究以外に、元素の単離やその性質の
 分析も行っています。

  イギリスのデーヴィが行った、電気分解による金属ナトリウムや金属
 カリウムの単離の報告を受けて、これらのアルカリ金属の量産方法(融
 解した水酸化物を赤熱した鉄と反応させる方法)を確立します。

  またテナールと共同でホウ酸を金属カリウムで還元し、はじめてホウ
 素を単離します。

  その頃、同じ方法でデーヴィもホウ素の単離に成功していました。

  しかしゲーリュサックの方がデーヴィよりわずかに早く(9日の差で)
 報告していたので、ホウ素発見の栄誉はゲーリュサックとテナールのも
 のとされています。

  その後、すでに発見されていたヨウ素が新しい元素であることを実験
 的に確認します。

  こちらもデーヴィと競うような形で研究が進められていましたが、ホ
 ウ素のときとは逆にデーヴィの方がわずかに早かったようです。

  ただし、デーヴィは研究をそれ以上進めなかったのに対し、ゲーリュ
 サックはヨウ素の性質を体系立てて調べ、1冊の本にまとめています。



  その他にもゲーリュサックはいろいろな業績を残していますので、い
 くつか述べておきます。

  物理学者のビオとともに気球に乗って海抜4000mまで上昇し、地
 磁気や大気の組成、温度などの測定を行っています。

  その後、今度は単独で海抜7000mまで上昇して同様の測定を行い
 ました(化学者というより冒険家のようですね)。

  産業への貢献としては、硫酸の工業的な製造のためのゲーリュサック
 塔と呼ばれる設備を考案し、使用する原料を大幅に削減することに成功
 しました。
 (ちなみに現在はもっと効率のよい接触式と呼ばれる方法で硫酸は製造
 されています)

  また、容量分析や適定法についての基礎を確立します。
  適定という用語やピペット、ビュレットといったものはゲーリュサッ
 クから始まったとされています。

  有機化合物の組成分析法についても、それまでの方法を独自に改良し
 た方法を用いました。

  後になって、ゲーリュサックのもとで学んだリービヒが、さらに簡便
 で有用な分析法を確立し、有機化学を発展させていくことになります。


 ────────────────────────────────
  3.あとがき
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  最近になって、枕元にメモ帳を置くようになりました。

  思いついたことをすぐ書けるようになったのはよいのですが、起きた
 直後に書いたメモのほとんどに、読めない字が並んでいます。

  きちんと目覚めてから読むと、思わず苦笑いです。



  ※参考文献はこちらにまとめてあります。興味がありましたらどうぞ。
   → http://www13.plala.or.jp/chem-hint/reference.html

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                     風変わりなヒント ◇◇
  ・発行者 後藤 幹裕
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