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化学なんて大嫌い!という人のための 風変わりなヒント
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 第5号(2004.6.12発行)



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   化学なんて大嫌い!という人のための
              風変わりなヒント  第5号
                 2004年6月12日発行

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 <目次>
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 1.一風変わった化学の授業
     〜 気体について その1

 2.化学をつくった人たち
     〜 フリードリヒ・オストワルト

 3.あとがき
 ------------------------------------------

 ────────────────────────────────
  1.一風変わった化学の授業
           〜 気体について その1 〜
 ────────────────────────────────

  今回から「気体」について見ていきます。
 (1回分の予定でしたが、いくらか長くなるので今回(その1)と次回
 (その2)の2回に分けることにしました)


  それでは、はじめます。


  さて、はじめからこんなことを書くのも変かもしれませんが、「気体」
 ってとらえどころがないですよね。

  ほとんどの場合、無色なので見えませんし、においのないものも多い
 です。

  そこにあると思った直後には、もうその場所にはほとんど残っていな
 いというのが普通です(すぐに拡散してしまいますから)。


  風が吹いているときは空気の流れを感じることができますが、風のな
 いときは周りに空気があるということを忘れていたりします。

  要するに何かを通して間接的にしか「そこにある」という感じを持て
 ないのが「気体」というものなんですね。


  このイメージしにくい「気体」をどうしたらイメージしやすくなるの
 か、ということなんですが、

  気体の圧力とか体積、温度などについて考えることで、目に見えない
 気体を「今そこに見えているかのように」扱うことができます。



  また、「気体」のところでは「理想気体の状態方程式」を習います。

  この式は圧力と体積の関係、体積と温度の関係などというそれぞれの
 関係をひとつにまとめたものです。

  理想気体の状態方程式さえわかっていればいい、というような言い方
 をされる場合がありますが、そういうことが背景にあるからなんです。


  そしてここで言う理想気体というのは、ややこしいことを全て省略し
 た仮想的な気体のことです。

  どうして実際の気体(実在気体)で考えないのかというと、最初から
 実在気体で考えると、複雑すぎてかえってわかりにくくなるからです。

  ちなみに実際の気体を考える場合は「ファンデルワールス状態方程式」
 という式で考えます。

  気体というものを本当に厳密に考えるのならこれが必要になります。

  でも「気体」って何? ということを考えるだけならば、仮想的な
 「理想気体」で考えれば十分、というわけです。



  それから「気体の状態方程式」に限りませんが、数式にはどれも意味
 があるということは知っておいてください。

  逆に言えば、言葉で説明していたら長くて複雑になってしまうことに
 ついて、記号を使って簡単に示したのが物理や化学などで出てくる数式
 です(これは化学反応式についても同じです)。

  ですから、その意味を知ることでずっと楽に頭に入るようになります。



  というわけで、まずは気体の状態方程式に出てくる圧力(P)や体積
 (V)、温度(T)といったものは、いったい何を示しているのかにつ
 いて、空気をいれた風船を例にしながら見ていきます。


 1)圧力(P)

  風船の中に閉じ込められた気体の分子は、いろんな方向に飛び回って
 います。そして、どんなときでもそのうちの一部が風船の内側に当たっ
 ています。

  気体の圧力というのは、気体の分子が風船の内側に当たったときに、
 風船を内側から押している力を全て合わせたものになります。

  いつもたくさんの気体の分子が内側に当たっている状態なので、風船
 がふくらんでいることができるわけです(もちろん外側から押されてい
 るということもあってちょうどよい大きさでつりあっています)。


 2)体積(V)

  体積というのはなんとなく漠然としたものですが、ここでは気体分子
 が動き回れる大きさのことを言います。

  気体の入っている容器として、風船のように伸び縮みしやすいもので
 あれば体積は変わることができます。
  圧力鍋のようにしっかりしたものを考える場合は、体積は変わらない
 ことになります。


 3)温度(T)

  温度は、気体分子がどれだけ激しく動いているか、を表す指標になり
 ます。

  温度が高いほど風船の中の気体分子は、より活発に飛び回っていると
 いうことです。

  また、化学の計算で温度を表すときは、絶対温度(単位:K)を使う
 ことに注意してください。

  ※0℃は、絶対温度では273.15Kになります。

  ※※絶対温度の考えは、圧力が一定のもとで気体の温度が1℃変化す
  ると、約273分の1だけ体積が変化することからわかったものです。


  ですから本質的な温度の指標は絶対温度の方です。


  ふだん使っている摂氏(℃:セルシウス温度)という単位は生活する
 上での便宜上のものなんです。華氏(°F:ファーレンハイト温度)と
 いう単位を使っている国があることからもそれがわかりますね。

  ちなみに華氏と摂氏はこの式のような関係になっています。
    ℃[摂氏]=(°F[華氏]−32)×5/9
   →この式から30℃は86°Fに相当するということがわかります。


 4)モル数(n)

  モルが出てくるとややこしいような気がしますが、要するに風船の中
 に何個の気体分子が入っているか、です。

  小さな風船の中にも、たくさんの気体分子が入っているので、数える
 単位として「モル」を使うというだけのことです。

  ※「モル」がいまいちつかめていないなあ、という方は、バックナン
   バーの創刊準備号と創刊号を参考にしてみてください。
   もしかしたら何か気づくものがあるかもしれません。

  創刊準備号(モルについて その1)
  → http://www13.plala.or.jp/chem-hint/backnumber/000.html
  創刊号(モルについて その2)
  → http://www13.plala.or.jp/chem-hint/backnumber/001.html


 5)気体定数(R)

  圧力、体積などの関係をうまく関係づけるために使われる(調整用の)
 定数のことです。



  さて、ここまでで圧力や体積といった、気体の状態方程式を構成する
 部品を見てきました。

  次回はこれらの部品がどのようにつながって(関係して)気体の状態
 方程式になっているのかについて見ていきます。


 ----------------------
 ☆今回の小さなまとめ☆
 ----------------------

  「気体」という、とらえどころのないものを考えるときには、圧力や
 体積、温度などについて考えることで「今そこに見えているかのように」
 扱うことができるようになります。


  次回は 〜 気体について その2 〜 をお送りします。

  ※圧力と体積の関係、体積と圧力の関係、などといったそれぞれの関
   係を結びつけていくことで、気体というものがどんな性質のものな
   のか、わかってくるようになると思います。


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  2.化学をつくった人たち
       〜 フリードリヒ・オストワルト 〜
 ────────────────────────────────

  今回は、フリードリヒ・オストワルトを取り上げます。
  優れた研究者であると同時に、科学史や化学教育の分野などにも業績
 を残した人です。



  オストワルトは、1853年にラトビアのリガで生まれました。
  といっても両親はともにドイツ人です。

  リガの実業高等学校(5年課程)を7年かけて卒業した後、ドルパト
 大学に入学します。

  大学に入ってからは猛烈に勉強して化学と物理学を修めました。

  母校の助手を勤めながら学位を取り、リガの高等工業学校の教授にな
 ります。

  その後ライプツィヒ大学に招かれて、当時のドイツで唯一の物理化学
 教授になりました。

  後にライプツィヒ大学に設立された物理化学研究所の所長に就任する
 ことになります。



  オストワルトは、学生の頃から物理化学(化学を物理学の手法で解明
 していく学問)の研究に携わっていました。


  いくつかの塩を酸に溶解させることによって、酸の相対的な化学親和
 力を調べていたところ、アレニウスの電気伝導度に関する論文を知りま
 す。

  アレニウスの論文で示されている活量係数と、彼が求めた酸の親和力
 がよく一致していました。

  アレニウスの電離の概念(溶液中で電解質がイオンに電離していると
 する考え)を用いることで、酸の親和力をもう一度調べ直したオストワ
 ルトは、アレニウスに会うためスウェーデンを訪問し、お互いの研究成
 果について議論します。

  当時ほとんど評価されていなかったアレニウスの論文を高く評価した
 オストワルトは、アレニウスをヨーロッパ各地の著名な化学者に引き合
 わせました。

  オストワルトの励ましや各国の研究者との議論によって磨かれた電離
 説によって、後にアレニウスはノーベル化学賞を受賞することになりま
 す(これは前回のアレニウスの項でも触れました)。



  また、様々な化学平衡に関する研究が、後に触媒作用の研究につなが
 っていきます。
  ※ちなみに「触媒」という言葉を最初に用いたのはオストワルトだと
 言われています。


  触媒に関する研究の中で有名なのが、オストワルト法と呼ばれる硝酸
 の製造方法です。

  これはアンモニアと空気を白金触媒上で加熱することで、アンモニア
 を酸化して窒素酸化物にした後、それを水に溶かして硝酸を製造する方
 法です。

  後に確立されるアンモニアの製造法(ハーバー=ボッシュ法)と組み
 合わせることで、空中の窒素固定が工業的に可能となり、いろいろな窒
 素化合物の製造が容易になりました。



  このような触媒に関する研究と物理化学分野での研究により、190
 9年にノーベル化学賞を受賞します。

  また、ファント・ホッフ、アレニウスと共同で物理化学に関する雑誌
 を創刊し、研究を発表する場をつくります(こちらもファント・ホッフ
 の項で触れました)。


  また、科学史や化学教育の重要性を認識していた彼は、重要な古典的
 研究をまとめた「古典科学叢書」を編集したり、「化学の学校(岩波文
 庫で日本語訳が出ています)」で知られる一般向けの教科書を執筆した
 りしています。


  その他、晩年には色彩に関する研究も行っています。彼が考案した表
 色系がオストワルト表色系と呼ばれるものです。



  研究だけにとどまらず、様々なことを手がけたオストワルトですが、
 世の中であまり評価されていない優れた研究を見出すことにも情熱を注
 ぎました。

  アインシュタインの相対性理論について、それが発表された初期の頃
 から評価していた、というから驚きです。

 ※相対性理論は発表された当初、ほとんど評価されていませんでした。
  ちなみにアインシュタインは相対性理論ではノーベル賞をもらってい
  ません。受賞理由は、光電効果の法則の発見に対して、です。


  アレニウスやアインシュタインの場合を見るだけでも、他の人の優れ
 た業績を的確に見抜く才能のあった人だったと言えます。


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  3.あとがき
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  前々回から今回にかけて、ファント・ホッフ、アレニウス、オストワ
 ルトの順で紹介してきました。

  しっかりと友情で結ばれた3人が、それぞれの研究でノーベル賞を受
 賞しているということに興味をもったのが、取り上げようと思ったきっ
 かけです。

  友情で結ばれた化学者のなかで有名な人として、今回の3人の他には
 リービッヒとヴェーラーがいます。

  いずれこの2人についても取り上げたいなと思っています。



  ※参考文献はこちらにまとめてあります。興味がありましたらどうぞ。
   → http://www13.plala.or.jp/chem-hint/reference.html

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