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化学なんて大嫌い!という人のための 風変わりなヒント
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 第7号(2004.7.10発行)



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   化学なんて大嫌い!という人のための
              風変わりなヒント  第7号
                 2004年7月10日発行

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 <目次>
 ------------------------------------------
 1.一風変わった化学の授業
     〜 溶液と濃度について

 2.化学をつくった人たち
     〜 ハンフリー・デーヴィ

 3.あとがき
 ------------------------------------------

 ────────────────────────────────
  1.一風変わった化学の授業
          〜 溶液と濃度について 〜
 ────────────────────────────────

  今回は溶液と濃度についてです。
  小さな項目として2つ取り上げてみました。


 1)「似たものどうしがよく溶ける」ということ │
 ───────────────────────┘

  化学では、「似たものどうしがよく溶ける」といいます。

  例えば、水とエタノールはどんな割合で混ぜても均一な溶液になりま
 す。

  この理由として、水とエタノールのどちらにも-OHという構造(水
 酸基)があり、よく似ているから、というふうに言われます。

  もちろん間違ってはいないのですが、これでは多少説明不足という気
 がします。

  というのは、エタノールの代わりに同じ -OHという構造をもつ1−
 ブタノ−ルをもってくると、水とどんな割合でも混ざるというわけには
 いかなくなるためです(1−ブタノ−ルが一定以上の量になると2相に
 なります)。

  そして、1−ブタノ−ルよりも炭素数の多いアルコールになればなる
 ほど、水に溶けにくくなっていきます。


  アルコールの一部について、水に対する溶解度を示すと次のようにな
 ります。

                    水に対する溶解度
                    (g/水100g)
   ─────────────────────────
    水       :H-OH       − 
    エタノール   :C2H5-OH     ∞
    1−ブタノ−ル :C4H9-OH    7.4
    1−ヘキサノール:C6H13-OH    0.6
    1−ドデカノール:C12H25-OH   不溶
   ─────────────────────────

  炭素数が増えると、同じ -OHを持つものでも水に対する溶解度が
 小さくなっていくのがわかると思います。


  そこで「似たものどうしがよく溶ける」ということについて、もう少
 し踏み込んで考えてみると、

   ⇒ 似ている割合が多いほど、よく溶ける
     (似ている割合が少ないほど溶けにくい)

  というふうに表せます。

  場合によるかもしれませんが、こちらの方がいろいろなことへの応用
 がききます。

  頭の片隅に置いておくと後になって役立ちます。



 2)濃度について │
 ─────────┘

  濃度を表すものとして、いろいろな単位が出てきます。

  種類が多いのでかなり混乱しやすいと思いますが、何を基準にして濃
 度を表しているのかを押さえておくと、わかりやすいし間違えることも
 少なくなります。


  濃度でよく出てくるものとしては、以下の3つです。

    a)質量パーセント濃度(%)
    b)モル濃度(mol/l)
    c)質量モル濃度(mol/kg)

  それぞれ簡単に見ていきます。


 a)質量パーセント濃度(%)
 ──────────────

  ある溶液の濃度が何%か、というときに普通に使われるものです。
 
  「溶液」の質量に対して、溶質(溶けているもの)の質量がどれくら
 いの割合か、というのを表しています。

  20gの砂糖を200gの水に溶かしたら何%の溶液になるでしょう、
 という問題に引っかからなければ大丈夫です(答えは9.1%です)。


 b)モル濃度(mol/l)
 ───────────

  化学では頻繁に出てくる濃度の単位です。

  「溶液」1リットル中に何モルの物質が溶けているか、を表したもの
 です。

  「溶媒(例えば水)」1リットル中に何モルの物質が溶けているか、
 ではないことに十分注意してください。

  頭では、そんなの当たり前、と思っていても、実際に作ってみると間
 違いやすいものです。

  機会があったら一度適当な濃度(例えば0.1mol/lなど)の溶液を
 メスフラスコを使って作ってみることをおすすめします。

  学生の頃の私のように、1リットルの溶媒に溶質を溶かしてからメス
 フラスコに入れようとする(標線をオーバーしてしまう)というような
 経験をすると、この濃度の意味がよくわかります。

  また、モル濃度は慣れてしまえば計算にはとっても便利なものです。


 c)質量モル濃度(mol/kg)
 ─────────────

  こちらは、「溶媒」1kg中に何モルの物質が溶けているか、を表し
 たものです(「溶液」1kgではないことに注意してください)。

  モル濃度とあわせて教わることが多いので、混乱しやすいところです。

  でもこの濃度を使うのは、凝固点降下と沸点上昇のところぐらいです
 から、それほど使うことはないかもしれません。


  凝固点降下と沸点上昇の計算もモル濃度でやればいいのに、と思うか
 もしれませんが、

 ・温度変化によって系の体積が変わる → モル濃度も変化してしまう

  という理由で質量モル濃度を使うことになっています。


 ----------------------
 ☆今回の小さなまとめ☆
 ----------------------

 ・似ているところが多いほど、よく溶ける(似ているところが少なけれ
 ば溶けにくい)というのは、知っておくと応用範囲が広がります。

 ・濃度の単位については、何を基準にしたものなのか(溶液なのか溶媒
 なのか)を考えてみるといいと思います。


 ────────────────────────────────
  2.化学をつくった人たち
       〜 ハンフリー・デーヴィ 〜
 ────────────────────────────────

  今回はイギリスの化学者、ハンフリー・デーヴィを取り上げます。


  デーヴィは1778年、ペンザンスで木彫り職人の子として生まれま
 した。

  小さいときからオリジナルの物語をつくっては周りの人に話して聞か
 せるのが得意だったといいます。

  父親の死後、暮らしに困るようになってしまった家族を助けるために、
 薬剤師の徒弟となって働きはじめます。

  働きながら、薬品の扱い方はもちろんのこと、哲学や数学、化学を独
 学で学びました。


  熱心に勉強する姿が印象的だったことから、ブリストルにいたべドー
 ズという医者に見出されて、彼の設立した気体研究所で助手になります。

  気体研究所では、いろいろな気体が人間に及ぼす作用について、自分
 を実験台にしながら調べていきます。

  研究の過程で、笑気(一酸化ニ窒素:N2O ※1)に、麻酔作用があ
 ることに気付きました。

  それまで笑気は微量でも猛毒であると言われていましたが、研究の結
 果をもとにこれを否定します。

  一連の研究成果をまとめて「笑気の研究」として出版し、一躍有名に
 なりました。


  23歳のとき、ロンドンにある王立研究所の実験助手として招かれ、
 その次の年には教授に、さらにその2年後には所長にまで昇進します。

  王立研究所で行われていた一般向けの公開講演において、デーヴィの
 講演に対する評価が高まっていったからです。

  聴衆を惹きつけ、飽きさせない巧みな講演の才能や、実験のすばやさ、
 的確さなどが彼の持ち味でした。


  デーヴィといえば、いろいろな金属を単離したことで有名です。

  きっかけは、その頃知られるようになったヴォルタ電池に興味を持ち、
 電気に関する研究を始めたことでした。

  ヴォルタ電池を使って電気分解を行うことで、カリウム(K)、ナト
 リウム(Na)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリ
 ウム(Ba)、マグネシウム(Mg)を発見し、単離しました(※2)。

  一連の電気分解の研究により、当時敵国だったナポレオンのフランス
 から、優れた科学者に与えられる賞をもらっています。

  また、ホウ酸を電気分解してホウ素を単離しますが、ほんのわずかの
 差でその栄誉はゲーリュサックのものとなりました(これについては、
 ゲーリュサックの項で触れました)。


  酸に関する研究で、塩酸には酸素が含まれていないことをはっきりと
 示し、「酸には全て酸素が含まれている」という、当時の一般的な説を
 否定します。

  この結果を踏まえて、酸が酸としての性質を示すのは酸素が含まれて
 いるためではなく、水素が含まれているためであるということを指摘し
 ました。

  同時に、塩素が元素であることを確認しました。塩素の存在はすでに
 知られていましたが、デーヴィはそれが元素であることを初めて主張し、
 その性質を調べていきます。

 (塩酸や塩素に関する研究はゲーリュサックも行っていましたが、彼は
 塩酸や塩素がともに酸素を含む化合物であると長い間思っていました)。


  34歳のとき、それまでの様々な研究での功績が認められ、科学者と
 してはニュートン以来2人目となるナイトの称号を授けられます。
  (さらに後になって貴族に列せられました)。


  その後、ファラデーを伴って欧州各国の科学者と交流を深めるための
 旅行に出かけます。単なる旅行でなかったことは、携帯用の実験装置を
 持っていったことからもうかがうことができます。

  ゲーリュサックと競い合ったヨウ素に関する研究において、デーヴィ
 は他国にいるという不利な条件のもとで研究を行い、ヨウ素の性質を調
 べるとともにその化合物を合成したりしています。



  その他のデーヴィの功績としては、炭鉱用の安全灯を開発したり、地
 質学や農芸化学についての研究を行うなどして、当時の産業の発展に貢
 献しました。

  炭鉱用安全灯の開発では、まわりの人から特許をとるようにと勧めら
 れましたが、「科学で世の中に貢献できたことが喜びである」と言って
 丁重に断ったという話が残っています。


 ○ 簡単な用語紹介と補足

  ※1 笑気(一酸化ニ窒素)
     吸入すると顔が笑ったように痙攣するのでこの名前がついた。
     現在は酸素を体積比で25%以上混ぜて、吸入麻酔薬として
     用いられる。

  ※2 カリウムやナトリウムは水酸化物を溶融して電気分解すること
     により得ている。その他のアルカリ土類金属は、その塩と酸化
     水銀の混合物を電気分解し、得られたアマルガムから水銀を除
     去する方法によって分離した。


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  3.あとがき
 ────────────────────────────────

  ホウ素、塩素、ヨウ素に関する研究を見ていくと、デーヴィとゲーリ
 ュサックはお互いにライバルとして意識しあっていたように思います。

  もちろん当時のイギリスとナポレオン率いるフランスが断続的な戦争
 状態だったということも、少しは影響したかもしれません。

  ただそれよりも、「あいつには負けてなるものか」という意識の方が
 強かったのではないかと思います。

  競い合うことで物事が進歩、発展していくよい例だと思いました。



  ※参考文献はこちらにまとめてあります。興味がありましたらどうぞ。
   → http://www13.plala.or.jp/chem-hint/reference.html

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