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化学なんて大嫌い!という人のための 風変わりなヒント
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 第8号(2004.7.24発行)



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   化学なんて大嫌い!という人のための
              風変わりなヒント  第8号
                 2004年7月24日発行

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 <目次>
 ------------------------------------------
 1.一風変わった化学の授業
     〜 沸点上昇と凝固点降下

 2.化学をつくった人たち
     〜 マイケル・ファラデー(1)

 3.あとがき
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 ────────────────────────────────
  1.一風変わった化学の授業
           〜 沸点上昇と凝固点降下 〜
 ────────────────────────────────


  今回は沸点上昇と凝固点降下についてです。
  どうしてそういう現象が起こるのかを見ていきます。
  水と水溶液で考えてみるとイメージしやすいと思うので、それを例に
 して進めていきます。


 1)沸点上昇 │
 ───────┘

 ・蒸発するということ
 ───────────

  まず、水が蒸発するという現象からです。
  コップに水を入れて置いておくと時間が経つにつれて減っていきます。
  これは、水の分子が少しずつ液面から空気中に飛び出していくからで
 す。
  そして水の温度を上げると、より多くの分子が飛び出していくことに
 なります。


  ┃ ↑   ┃  ┃ ↑ ↑↑┃
  ┠─────┨  ┠─────┨ °:飛び出していく水分子
  ┃ °   ┃  ┃ ° °°┃
  ┃     ┃  ┃     ┃ ※温度が高い程多くの水分子が
  ┃  水  ┃  ┃  水  ┃  飛び出していくので、早く蒸
  ┗━━━━━┛  ┗━━━━━┛  発する。
  温度が低いとき  温度が高いとき


 ・沸騰
 ────

  ここでさらに水の温度を上げていくと、もっとたくさんの水分子が飛
 び出していきます。

  そして飛び出していく水分子によってできる圧力(蒸気圧)が、外気
 圧(地上なら約1気圧)と対抗できるようになったところで沸騰が起き
 ます。

 ※高い山の上のような外気圧の低いところでは、地上よりも少ない数の
 分子が飛び出すだけで外気圧に対抗できるので、より低い温度で沸騰す
 る(=沸点が低くなる)ことになります。


 ・沸点上昇
 ──────

  ここまでは水だけの場合でした。
  次は水溶液の場合です。

  水溶液には水のほかに溶質(溶けている物質)が存在しています。
  このため同じ温度のときでも、水だけの場合より飛び出していくこと
 ができる水分子の数が少なくなります。

  これは、飛び出していこうとする水分子が溶質の分子(あるいはイオ
 ンなどの粒子)に邪魔されるからです。


  ┃ ↑ ↑↑┃  ┃ ↑  ↑┃ °:飛び出して行くことのでき
  ┠─────┨  ┠─────┨   る水分子
  ┃ ° °°┃  ┃ ° ●°┃ ●:溶質の分子(粒子)
  ┃     ┃  ┃ ● ° ┃
  ┃  水  ┃  ┃水溶液 ●┃ ※溶液では実際に飛び出すこと
  ┗━━━━━┛  ┗━━━━━┛  のできる水分子の数が少なく
  ・どちらも同じ温度、外気圧の場合  なる(同じ温度で比較)


  上の図のような2つの場合において、同じ外気圧のもとで水と水溶液
 の温度を同じように上げていったとします。

  温度が上がっていって水が沸騰したときでも、水溶液では飛び出して
 いく水分子の数が足りないので、外気圧に対抗できない状態にとどまっ
 ています(沸騰するまでには到っていません)。

  溶液が沸騰するためにはもっとたくさんの水分子が飛び出していける
 ように温度を上げる必要が出てきます。

  温度をもう少し上げることで、十分な数の水分子が飛び出していける
 ようになるので、この時点でようやく溶液の方も沸騰することができま
 す。

  結果として、水の場合よりも沸点が高くなることになります。


  このようなことから、溶液中の溶質の量が増えると(溶液の濃度が高
 くなると)、邪魔なものが増えるのでより沸騰しにくくなり、沸点が上
 がるというわけです。


 ◇身近な例では、スープを考えるとわかりやすいと思います。
  スープが沸騰している場合は水が沸騰している場合より温度が高くな
  っています。
  そして濃いスープほど、沸騰しているときの温度は高くなっています。



 2)凝固点降下 │
 ────────┘

 ・凝固するということ
 ───────────

  凝固するというのは、液体から固体になることです。

  まず水だけのときを考えます。

  液体のときはある程度動くことができた水分子ですが、温度が下がっ
 てくると動きが鈍くなります。

  そして水分子どうしがきちんと整列し、自由には動けない状態になる
 と固体(氷)になります。

  温度が下がってくると、それぞれの水分子が動くことをやめて寄り集
 まってくる、というようなイメージで考えてみてもいいかもしれません。

  そして自分の居場所を確保した水分子が集まっていくことで、固体の
 割合が増えて(氷が大きくなって)いきます。


 ・凝固点降下
 ───────

  さて、次は水溶液の場合です。

  ここには溶質が存在しています。
  溶質の分子(あるいはイオンなどの粒子)があることで、水分子がき
 ちんと整列する妨げになります(下の図のようなイメージ)。

   。。。。。    。。。。。
   。。。。。   。。。(●)。。    。:水分子
   。。。。。  。。(●)。。。   (●):溶質分子(粒子)
   。。。。。    。。。(●)。。
   水(固体)     水溶液


  温度が下がっていっても、水分子がうまく整列できなければ(分子が
 いくらか動ける状態なので)液体の状態と変わらないことになります。

  そこでもっと温度を下げて、半ば強制的に分子が動かないような状態
 にしないと固体になりません。

  結果として、固体になりはじめる温度(凝固点)が水だけのときより
 も低くなる(凝固点が下がる)というわけです。


  このようなことから、溶液中の溶質の量が増えると(溶液の濃度が高
 くなると)、より凝固しにくくなるので凝固点がさらに下がることにな
 ります。


 ◇シャーベットを作ろうとしたときには、水よりも低い温度で凍るとい
  うことです(水よりも凍りにくいので同じ冷凍庫内でも氷ができるよ
  り時間がかかります)。


 ----------------------
 ☆今回の小さなまとめ☆
 ----------------------

  「沸点上昇」や「凝固点降下」などの現象は、一見すると理解しにく
 い現象のように思えますが、溶液中の分子のふるまいをひとつひとつ順
 番に見ていくことで、わかりやすくなると思います。
 
  身近なところにこれらの現象を使ったものがあることに気づくと、少
 し興味が持てるかもしれません。


  次回は「浸透圧について」を予定しています。


 ────────────────────────────────
  2.化学をつくった人たち
       〜 マイケル・ファラデー(1) 〜
 ────────────────────────────────

  今回と次回の2回にわたって、マイケル・ファラデーを取り上げます。

  彼は今の分類で言えば化学者でもあり、物理学者でもあるのですが、
 どちらに分類されるにしても、一度書いてみたかった人物なので取り上
 げてみました。



  ファラデーは、1791年にイギリスのロンドン近郊で、鍛冶屋の子
 として生まれました。

  家が貧しかったので、初級学校を終えた後、製本屋(※1)で徒弟と
 して働き始めます。


  周りを本に囲まれた製本屋という環境の中で、お客さんから依頼のあ
 った本を、仕事の合間に時間をつくっては読むようになります。

  特に化学や電気について興味を持って学び、自分で簡単な実験をして
 みるようにもなりました。

  また、わずかな給料の中から費用を捻出して科学に関する公開講座に
 出かけ、きちんとノートをとっては製本し、自分用の教科書を作ったり
 していました。



  そんな中、ファラデーが熱心に勉強する姿を見たお客さんのひとりか
 ら、王立研究所で行われるデーヴィの公開講演のチケットを譲ってもら
 います。

  当時の王立研究所での公開講演は、一般の人たち向けであったとはい
 え、聴衆のほとんどが上流階級の人たちでした。

  普通であれば、とても聴くことのできない講演を聴けることになった
 ファラデーはとても喜びます。


  そして期待をはるかに上回るデーヴィの講演に感激した彼は、どうし
 ても科学への情熱を抑えることができなくなりました。

  いろいろと考えた末に、講演のノートをきれいに製本し、それを進呈
 して助手にしてもらえるようデーヴィに頼みに行きます。


  科学に対する情熱を語るファラデーに対しデーヴィは、「せっかく身
 につけた製本職人としての技能をこれからも活かしていった方がいい」
 と諭して、いったんは断ります。

  しかしその直後に王立研究所の助手のポストが空いたことから、彼を
 呼び寄せることにしました。


  こうしてファラデーは科学への道を進んでいくことになります。



  ファラデーが助手に採用された年に、デーヴィはヨーロッパ旅行に行
 くことになります。彼も同行することになりましたが、直前になってデ
 ーヴィの従者が行けなくなったため、その役割も担わなくてはならなく
 なりました。

  デーヴィはファラデーを研究者として扱ってくれましたが、夫人の方
 はファラデーを従者としてしか扱わなかったため、彼は旅行の間、かな
 りつらい思いをすることになります。


  しかし、行く先々で当時の著名な科学者に会ったり、持っていった実
 験装置で研究したりするなど、約2年の旅行の間、様々なことを学んで
 いきました。
  そしてここで学んだことが後の研究の基礎となっていきます。



  イギリスに戻ってきてからは、外部からの研究依頼を含む、様々な研
 究を行っていきました。


  代表的なものを挙げてみるとこのようになります。

  ・特殊な鋼の研究
  ・各種の分析
   (粘土、天然の石灰石から食品まで、様々な物質の純度の測定など)
  ・ベンゼンの発見
  ・塩素化合物の合成
   (テトラクロロエチレンやヘキサクロロエタンなど)
  ・塩素や様々な気体の液化、臨界温度の存在の確認
  ・光学ガラスの改良
  ・金属コロイドの研究

  (・・・その他、まだまだありますがこのあたりにしておきます。)


  これらの研究の中にはうまくいったもの、うまくいかなかったものな
 ど様々ですが、3つほど取り上げて見ていきます。


 <ベンゼンの発見>

  ガス灯用のガスから分離してくる液体成分の分析依頼がきっかけです。

  得られたベンゼンのことをファラデーは「水素の二重炭素化物」と呼
 んでいました(ちなみにベンゼンの構造は、40年後、ケクレによって
 六角形の構造(いわゆる「かめの甲」の形)であると提示されます)。

  ベンゼンの発見は、有機合成化学につながる第一歩です。

  後にイギリスに来たドイツ人化学者ホフマンを経てパーキンの合成染
 料につながり、合成化学工業に発展していく、という流れになっていき
 ます。


 <塩素などの気体の液化>

  塩素の他に、ニ酸化硫黄、二酸化炭素、アンモニアなどの様々な気体
 を液化します。これにより固体、液体、気体が互いに移り変わることが
 できることを示しました。
  また、臨界温度の存在も確認しています。

  これらの結果は、後にデュワーによる空気や水素の液化を経て低温の
 科学に発展していきます。


 <光学ガラスの改良>

  光学ガラスの改良自体は結局のところうまくいきませんでした。

  しかし後になって、このときに作ったガラスを使うことでファラデー
 効果(※2)の発見につながります。

  この結果から、光と磁気に関係があるということが明らかになり、後
 に磁気光学として発展していくことになります。



  さて、ファラデーといえば電気分解や電磁気に関する研究が最も有名
 なのですが、それらの研究は上記のような様々な研究の合間に行われて
 いきました。


  次回は電気分解や電磁気に関する研究とファラデーの人柄などに触れ
 ていきたいと思います。



 ○ 簡単な用語紹介と補足

  ※1 製本屋
    ファラデーの時代の製本屋は、お客さんから預かった本にきれい
    な皮の表紙をつけたり、金文字で装飾したりしてオリジナルな
    (ある意味で世界に1冊だけの)本をつくる所でした。
    従って製本屋のお客さんは比較的裕福な人たちでした。

  ※2 ファラデー効果
    磁場内に置かれた物体中を通る平面偏光において、その偏光面が
    回転する現象。偏光面の回転する度合いは磁場の強さと偏光が物
    体中を通過した距離に比例する。


 ────────────────────────────────
  3.あとがき
 ────────────────────────────────

  ファラデーは、実験や研究についてのとても詳細な記録を残していま
 す。うまくいったことだけでなく、うまくいかなかったこと、思いつい
 たこと、考えたこと、その他ありとあらゆることを記録していました。


  結果や途中経過についていろいろと書いたりまとめたりすることで、
 何か見えてくるものがあるのかもしれませんね。



  ※参考文献はこちらにまとめてあります。興味がありましたらどうぞ。
   → http://www13.plala.or.jp/chem-hint/reference.html

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                     風変わりなヒント ◇◇
  ・発行者 後藤 幹裕
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