メールマガジン
化学なんて大嫌い!という人のための 風変わりなヒント
ホーム ≫ メールマガジン ≫ バックナンバー ≫ 第14号


ホーム

メールマガジン

 ・バックナンバー

  →第14号

 ・参考文献

化学の参考書

おすすめの本

リンク

お問い合わせ



 第14号(2004.10.16発行)



 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
 ○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o

   化学なんて大嫌い!という人のための
              風変わりなヒント  第14号
                 2004年10月16日発行

 ○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o
 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

 <目次>
 ------------------------------------------
 1.一風変わった化学の授業
     〜 酸化剤と還元剤について

 2.化学をつくった人たち
    〜 ドミトリー・イワノビッチ・メンデレーエフ

 3.あとがき
 ------------------------------------------

 ────────────────────────────────
  1.一風変わった化学の授業
          〜 酸化剤と還元剤について 〜
 ────────────────────────────────

  今回は酸化剤と還元剤についてです。
  前回の内容について少し振り返りながら見ていきましょう。



 前回のおさらい
 ────────

  酸化・還元反応において、ある化合物に注目したとき、

    ・酸化される = 電子を失う(相手に電子を与える)
           = 酸化数が増える

    ・還元される = 電子をもらう(相手から電子を受け取る)
           = 酸化数が減る

 というのが、広い意味での酸化と還元の定義でした。


  ここでは、電子を与えるのか、それとももらうのか、という「電子の
 やりとり」を思い浮かべながら考えることが大切になります。

  また、お互いの間で「電子のやりとり」をするので、酸化と還元は同
 時に起きていることにも注意してみてください。



 酸化剤、還元剤
 ────────

  さて、ここまでのことを踏まえて、酸化剤、還元剤とは何かを見てい
 きます。

  最初に酸化剤、還元剤の定義を書いておきます。

    酸化剤:「相手を」酸化するもの
    還元剤:「相手を」還元するもの


  ここで大切なのは、「相手をどう変化させるのか」という視点から見
 ていることです。

  相手を変化させた後「自分はどうなるのか」という視点を追加すると、

    酸化剤:「相手を」酸化する ⇒ 「自分は」還元される
    還元剤:「相手を」還元する ⇒ 「自分は」酸化される

 ということになります。


  そして、このあたりが混乱しやすいところです。
  (どちらがどうなることだったのか、というのがわからなくなる場合
  がよくあります)


  ポイントはどの化合物に注目するか(「自分」なのか「相手」なのか)
 と、電子の増減に注目することです。


  電子に注目しながら上の定義に少し書き加えてみるとこうなります。

    酸化剤:「相手を」酸化する 
       = 相手の電子をもらう(自分の持っている電子が増える) 
       ⇒(結果として)「自分は」還元される(=酸化数が減る)

    還元剤:「相手を」還元する
       = 相手に電子を与える(自分の持っている電子が減る)
       ⇒(結果として)「自分は」酸化される(=酸化数が増える)


  図で示すとこうなります。

   ┌───┐ 1)
   │酸化剤│ → 相手の化合物(=還元剤)
   └───┘   ──────
    │ ↑     │  │   1)酸化剤からの働きかけ
    │ └─────┘  │   2)電子の移動(電子をもらう)
    ↓    2)    ↓      ↓この結果として
    3)         4)  3)電子の増加=還元される
                           (酸化数減)  
                   4)電子の減少=酸化される
                           (酸化数増)

   ┌───┐ 1)
   │還元剤│ → 相手の化合物(=酸化剤)
   └───┘   ──────
    │ │     ↑  │   1)還元剤からの働きかけ
    │ └─────┘  │   2)電子の移動(電子を与える)
    ↓    2)    ↓      ↓この結果として
    3)         4)  3)電子の減少=酸化される
                           (酸化数増)  
                   4)電子の増加=還元される
                           (酸化数減)


  ここでは、酸化剤、還元剤に注目して2つの図を示しましたが、結局
 のところ同じことを示しているのに気付かれたでしょうか。

  反応全体として見た場合に電子の総数は変わらないことから、酸化・
 還元反応は同時に起こるということになります。

  つまり酸化・還元はお互いに裏表の関係にあると言えます。



 別の見方から
 ───────

  酸化剤、還元剤と酸化・還元反応について少し別の見方をしてみます。

  酸化剤は、自分自身が電子不足なので、「電子に余裕があるところか
 ら電子をもらいたい」と考えています。

  還元剤は、自分自身ではそれなりに電子が足りているので、「電子の
 足りないところに電子をあげたい」と考えています。


  この両者の考えが一致すると、電子を与えたり、もらったりするとい
 う関係が生じて酸化・還元反応が起きます。

  そして、与える電子の数の合計と、もらう電子の数の合計が等しくな
 ると、お互いが満足して反応が完了します。



 追記:酸化防止剤って何?
 ─────────────

  製品中の成分が酸化されることで品質が変わってしまうのを防ぐため
 に入れられている物質のことです。

  酸化防止剤自身が代わりに酸化されることで、他の成分が酸化される
 のを防ぎます。
 (従って、とても酸化されやすい物質ということになります)。

  食品にはL−アスコルビン酸(ビタミンC)が使われることが多いよ
 うです。


 ----------------------
 ☆今回の小さなまとめ☆
 ----------------------

  酸化剤、還元剤のところでも「電子の動き」についてまず考えるのが
 よいと思います。

  いきなり結論にたどり着こうとするのは混乱のもとなので、面倒でも
 最初はひとつずつ順を追って考えていくことをおすすめします。


   次回は 「イオン化傾向について」を予定しています。


 ────────────────────────────────
  2.化学をつくった人たち
      〜 ドミトリー・イワノビッチ・メンデレーエフ 〜
 ────────────────────────────────

  今回はロシアの化学者、メンデレーエフを取り上げます。
  元素の「周期表」でおなじみの人ですね。



  メンデレーエフは、1834年にシベリアのトボリスクで17人兄弟
 の末っ子として生まれました。

  父親は学校で校長の職にありましたが、彼が生まれた頃に失明してし
 まいます。そのため家計をまかなう責任はすべて母親が背負うこととな
 ってしまいました。


  貧しい環境の中でも一生懸命に勉強していたメンデレーエフを、なん
 とか中央の大学に入れたいと思った彼の母親は、彼を連れてシベリアか
 らサンクト・ペテルブルクまでの旅に出ることにします。


  当時のロシアでは、地方出身者は学業が遅れているとみなされていた
 ため、中央の大学に入ることは相当に難しい状況でした。

  しかし母親の奔走とメンデレーエフの熱意が通じ、どうにかサンクト・
 ペテルブルクの高等師範学校に入ることができました。

  彼はそこで教員の資格を取り、化学の専門過程を学んだ後、ペテルブ
 ルク大学で講師の職を得ます。


  25歳のときにロシア政府から海外留学の機会を与えられ、フランス
 とドイツで学ぶことができました。

  そしてドイツのハイデルベルク大学に留学していたときに開催された、
 カールスルーエ国際化学会議(※1)に出席し、原子量の重要性に気付
 きます。

  ロシアに帰国後は、しばらくしてからペテルブルク大学の化学教授の
 職に就くことができました。



  メンデレーエフが大学で教えはじめた頃、彼は化学を体系的に教える
 必要性を感じるようになります。

  しかし当時は適当な教科書がなかったため、自ら執筆することにしま
 した。

  その過程で、彼は元素の原子量と性質に密接な関係があるのではない
 か、ということに気付きます。

  それまでに知られていた63種類の元素について、原子量や性質など
 を書き込んだカードを作成し、様々な方法で並べ替えてみました。

  そして原子量の大きさの順に元素を並べていくと、性質が周期的に変
 化することに気付きます。

  これを表の形にまとめて発表したのがメンデレーエフの周期表の最初
 のものになります。

  ただし、このときの周期表には不確かな箇所がいくつかあったため、
 2年後にその改訂版を論文の形で発表しました(1871年のことです)。



  メンデレーエフの発表した周期表の特徴として、

   1)元素を原子量順に並べることを基準にしながら、それにとらわ
     れなかったこと(当時の原子量には間違っているものもいくつ
     か存在しました)

   2)未発見と思われる元素のところを空欄にして、いずれ発見され
     るものとして扱ったこと(無理に何かを当てはめようとはしま
     せんでした)

   3)元素の周期性から、化学的性質や物理的性質が予測できるとい
     うことを明確に示したこと

  が挙げられます。


  未発見と思われる元素については、エカ(※2)アルミニウム、エカ
 ケイ素、エカホウ素などという仮の名前を当てて、その原子量や典型的
 な性質を詳細に予測しました。

  そして後に発見されたこれらの元素の性質が、メンデレーエフの予測
 したものとほとんど同じであったことから、彼の周期表の正しさが裏付
 けられる結果となります。
                   現在の元素名
   ※ちなみに、エカアルミニウム⇒ ガリウム(Ga)
         エカケイ素   ⇒ ゲルマニウム(Ge)
         エカホウ素   ⇒ スカンジウム(Sc)
                    にそれぞれ対応しています。


  これ以降、周期表は急速に広まっていき、化学を理解する上で重要な
 位置を占めるようになりました。



  こうして一躍名声を得たメンデレーエフですが、周期表に関する研究
 だけを行っていたわけではありません。

  溶液の比重や燃焼熱に関する研究、石油の起源の解明、気象観測や飛
 行理論についてなどというように、化学者の枠を超えた様々な研究を行
 っていました。


  また、メンデレーエフは当時のロシア(帝政ロシア)では数少ない、
 自由主義的な思想の持ち主でした。

  政府の学生に対する抑圧的な政策を批判し、大学を辞めてしまったり
 しています(退官後は度量衡検定所の管理者をしながら研究を続けまし
 た)。


  研究以外のところでは、文学や絵画にも通じているなど、幅広い教養
 の持ち主だったと伝えられています。


 ○ 簡単な用語紹介と補足

   ※1 カールスルーエ国際化学会議
     ドイツのカールスルーエにおいて行われた最初の国際化学会議。
     当時の著名な化学者が一堂に会し、アボガドロの仮説を前提に
     した原子量と分子量の区別などについて話し合った。

   ※2 エカ
     サンスクリット語で「第一の」という意味の接頭語。
     メンデレーエフはこれを「〜のすぐ下(ひとつ下)にある」と
     いう意味で用いた。


 ────────────────────────────────
  3.あとがき
 ────────────────────────────────

  現在の周期表は「原子量順」ではなく「原子番号順」に並んでいます
 が、基本的なところはメンデレーエフのものをずっと引き継いでいます。

  少しナンセンスな仮定ですが、もし周期表がなかったらどうなるだろ
 うか、と考えると、かなり大変なことになりそうだという予想がつきま
 す。

  関係性のまったく見えない事柄を個別に押さえていかなければならな
 くなるので、化学を学ぶことは現在の何十倍も大変になるに違いありま
 せん。

  メンデレーエフに心から敬意を表したいと改めて思いました。



  ※参考文献はこちらにまとめてあります。興味がありましたらどうぞ。
   → http://www13.plala.or.jp/chem-hint/reference.html

 ────────────────────────────────
  クリックするだけで募金ができるサイトを紹介させてください。
  1クリックあたり1円を企業がクリックする人に代わって「熱帯雨林
 保全」や「難病のこども支援」などを行うNPO団体に募金してくれる
 サイトです。
  もしよかったらこちらから訪問してみてください。
 (ダイヤルアップ接続の方はテキストサイトの方がいいかもしれません)
  (FLASHサイト)→ http://www.dff.jp/index.php
  (テキストサイト) → http://www.dff.jp/index_t.php
 ────────────────────────────────

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  ◇◇ 化学なんて大嫌い!という人のための          
                     風変わりなヒント ◇◇
  ・発行者 後藤 幹裕
  ・配信システム まぐまぐ( http://www.mag2.com/ )
  ・登録の解除は、 http://www.mag2.com/m/0000129929.htm
   からお願いします。
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  よかったらあなたのお知り合いにぜひ転送してもらえればと思います。
  ただし転載を希望される場合は、ご一報ください。


 ←第13号へ

第15号へ→ 
バックナンバーの一覧へ


※ メルマガ作成時に使用した参考文献はこちらにまとめました。



ホームメールマガジン化学の参考書おすすめの本リンクお問い合わせブログ

このサイトへのリンクはご自由ににどうぞ。
ご感想など頂ければとてもうれしいです。
ただし、サイトの内容を転載される場合はこちらまでご連絡ください。
Copyright(c) 2004-2013 化学を楽しくするヒント