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化学なんて大嫌い!という人のための
風変わりなヒント 第15号
2004年10月30日発行
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<目次>
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1.一風変わった化学の授業
〜 イオン化傾向について 〜
2.化学をつくった人たち
〜 ウィリアム・ラムゼー 〜
3.あとがき
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1.一風変わった化学の授業
〜 イオン化傾向について 〜
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今回はイオン化傾向についてです。
後に出てくる電池や電気分解のところで必要になる考え方です。
イオン化傾向と反応性
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イオン化傾向という言葉を聞くと、なんだか難しそうな感じがします。
でもこれは、ある金属が陽イオンになりやすいのかどうかを他と比べ
ているだけのことです。
まずイオン化傾向は、相対的なものであること(他のものとの比較の
上に成り立っていること)に注目して下さい。
そしてその上で、
イオン化傾向が大きい = 陽イオンになりやすい
= 電子を出しやすい(電子を失いやすい)
= 酸化されやすい
⇒ 反応しやすい
ということをセットにしておくといいと思います。
(イオン化傾向の小さいものについては上記をすべて逆にして考えて
下さい)
例)イオン化傾向の大きいカリウムやナトリウムは常温で水と激し
く反応するが、イオン化傾向の小さい金や白金は水と反応しな
い。
イオン化傾向と酸化・還元
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イオン化傾向と酸化・還元は一見すると別のことのように見えますが、
「電子のやりとり」に関わっている点から考えると、酸化・還元反応の
すぐ後に習う理由がわかります。
金属が陽イオンになる = 電子を出す(⇒酸化される)
金属が析出する = 陽イオンが電子を受け取る
(⇒還元される)
そしてこの2つの現象をうまく利用しているのが電池です。
(電池については次回を予定しています)
少しでも楽になれば
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たいていの場合、参考書などには16種類の元素が陽イオンになりや
すい順に並べられて書かれています(以下のように↓)。
K>Ca>Na>Mg>Al>Zn>Fe>Ni>Sn>Pb
>(H)>Cu>Hg>Ag>Pt>Au
(不等号で大きい側(左側のもの)ほど「陽イオンになりやすい」
=「イオン化傾向が大きい」という順に並んでいます)。
このような序列はどうやって決められているのかというと、標準電極
電位(E°)というものをもとにしています(このとき、水素(H)を
基準にしています)。
ただ、標準電極電位の値は上の16種類以外にも数多く示されていま
す。
どうしてこの16種類が選ばれたのかという疑問が生じたので調べて
みましたが、正直なところよくわかりませんでした。
たぶん、よく使われる(であろう)金属元素を選んできた、というこ
となのだと思います。
そしてもしそういうことならば、もう一歩進めて、
K>Na>Mg>Al>Zn>Fe>Pb>(H)
>Cu>Ag>Pt>Au
の12種類で十分なのではないか? というふうに思います。
※これなら周期表と関連付けて考えるのが少しだけ容易になるよう
な気もします。
(ただし16種類を語呂合せで覚えている場合には、新しいものを考え
なくてはいけなくなります)
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☆今回の小さなまとめ☆
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イオン化傾向は、ある金属が陽イオンになりやすいかどうかを相対的
に示す指標です。
反応性や酸化・還元のところと関連付けながら考えていくといいと思
います。
次回は 「電池について」を予定しています。
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2.化学をつくった人たち
〜 ウィリアム・ラムゼー 〜
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今回はイギリスの化学者、ラムゼーを取り上げます。
希ガスの発見で1904年度のノーベル化学賞を受賞した人です。
ラムゼーは1852年にグラスゴーで生まれました。
父親は技師、祖父はグラスゴー化学会の創設者でしたので、ある意味
で理科系の家に育ったわけですが、彼はグラスゴー大学の文科系課程で
古典を学ぶことを選びました。
しかしその後、市の分析課で働きながら科学全般について学んでいき
ます。
18歳のときにドイツに留学し、ブンゼンやフィッティヒの下で有機
化学の研究を行い、博士号を取得しました。
イギリスに戻ってきてからは、グラスゴー大学の講師、ブリストル大
学の化学教授を経てロンドン大学の化学教授に就任します。そして、引
退後も研究を続けていきました。
1902年には功績を称えられてナイトの称号を授けられています。
ラムゼーはドイツ留学時には有機化学を学んでいたこともあって、当
初はアルカロイドについての研究などを行っていましたが、徐々に無機
化学や理論化学の方に重点を移していきました。
そんな中で彼は、雑誌「ネイチャー」に掲載されたある論文に注目し
ます。
その論文は、空気から酸素を取り除いて得た窒素と、窒素化合物を分
解して(化学的に)作った窒素の密度に、微妙な差があることを示した
ものでした。
そこでラムゼーは、論文を発表した物理学者のレイリー卿と連絡をと
りながら、実験を開始します。
まず、空気から完全に酸素を除去した後、残った気体を加熱したマグ
ネシウムと反応させて徹底的に窒素を除去したところ、少量の気体が残
りました。
(得られた気体はもとの空気の体積の1%程度の量でした)。
この気体の性質を調べるために、様々な物質との反応を試みましたが、
どの物質ともまったく反応しませんでした。
またスペクトル分析(※)の結果、その気体は今までに知られている
どの元素とも異なることが判明し、新しい元素であることがわかります。
ラムゼーとレイリー卿は、この気体に反応性がまったくなかったこと
から、ギリシア語で「働かない(なまけもの)、不活性な」という意味
のアルゴンと名付けました(1894年のことです)。
しかしこの発見は当初、とても懐疑的な目で見られました。
アルゴンが新元素だとすると、周期表での位置が決まらないからです。
(当然のことながら1871年にメンデレーエフの発表した周期表に
は希ガスの場所はありません)
このような見方を変えたのが地球上でのヘリウムの発見です。
ある種のウラン鉱物を加熱すると不活性な気体が発生することを知っ
たラムゼーは、この気体を集めてスペクトル分析を行います。
その結果、太陽にしか存在していないと思われていたヘリウムのスペ
クトルと一致することがわかり、地球上にもヘリウムが存在することが
判明しました。
そして、ヘリウムもアルゴンと同様に不活性な気体であったことから、
アルゴンについて否定的な見方をしていた人たちも考えを改めるように
なります。
次にラムゼーは、この2つの不活性気体の原子量や密度などの測定と、
周期表の考え方をもとに、ヘリウムとアルゴンの間にはさまれる元素と
アルゴンより重い元素の存在を予測します。
ただ、それを実証するための実験は、非常に骨の折れる作業となりま
した。
まずアルゴンを大量に集め、その中から沸点の低い留分を慎重に集め
ることでネオンを得ました。
その次に液体空気を分留していき、最後の方に残った沸点の高い留分
をひとつひとつ確認していってクリプトンとキセノンを得ました。
※ちなみに空気中における希ガスの含有率(体積%)は、
ヘリウム :0.0005%
ネオン :0.0018%
アルゴン :0.9325%
クリプトン:0.0001%
キセノン :0.000009%
なので、ネオンやクリプトンなどを見出すのは相当大変だった
はずです。
以上でヘリウムからキセノンまでの5種類の元素が確認され、周期表
に新たな族(現在の18族)が付け加えられることになりました。
これらの希ガスの発見でラムゼーは1904年度のノーベル化学賞を
受賞します。そして同じ年の物理学賞にはレイリー卿が選ばれました。
希ガスの発見は、周期表に新たな元素が加わったということだけにと
どまりませんでした。
希ガスの特徴である、化学的な不活性さの原因を追求していくことで、
原子構造や化学結合についての本質が解明されていくことになります。
○ 簡単な用語紹介と補足
※ スペクトル分析(分光分析)
スペクトル分析には様々なものがあるが、ここでは試料に熱など
のエネルギーを加えたときに測定される輝線を分析する方法。原
子の種類によって得られる輝線の波長が異なることから元素の確
認ができる。
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3.あとがき
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今回までで14人の化学者を見てきました。
いろいろと調べてみて面白いな、と思ったのは、それぞれの化学者が
自分なりの方法で(自分の背景や強みなどを活かして)結果を出してい
ることです。
彼らのエピソードを全て書くことはできませんが、これまでに書いて
きた中で何かひとつでも心に感じるものがありましたら、とてもうれし
いです。
※参考文献はこちらにまとめてあります。興味がありましたらどうぞ。
→ http://www13.plala.or.jp/chem-hint/reference.html
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