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化学なんて大嫌い!という人のための 風変わりなヒント
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 第17号(2004.12.12発行)



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   化学なんて大嫌い!という人のための
              風変わりなヒント  第17号
                 2004年12月12日発行

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 <目次>
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 1.一風変わった化学の授業
      〜 電気分解について

 2.化学をつくった人たち
      〜 ジョン・ドルトン

 3.あとがき
 ------------------------------------------

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  1.一風変わった化学の授業
          〜 電気分解について 〜
 ────────────────────────────────

  今回は電気分解についてです。
  前回の電池の場合と同様に「電子」や「電子の流れ」を考えながら見
 ていきます。



 電池と電気分解
 ────────

  電池は、電子の自然な流れを利用したものでした。

  電子を出しやすい金属から、電子を受け取りやすい金属への「電子の
 流れ」が電流という形になっています。

  このことは、イオン化傾向の違いから考えるとわかりやすいのではな
 いか、という話を前回はしました。


  これに対して電気分解は、外側から強制的に電流を流す(つまり電子
 の流れを外から与える)ことを行っています。

  でも、電子の流れによって何らかの化学反応が生じていることは電池
 と同じ、ということに注目してみて下さい。



 電気分解で起こること
 ───────────

  電気分解では、気体が発生したり、金属が析出したり、場合によって
 は電極の金属が溶解するなどといった様々な反応が起きるので、とても
 ややこしい感じがします。

  でも、よく考えればかなり単純なことしか起きていません。


  電気分解を行うと、その中で最も電子を出しやすいものが電子を出し、
 最も電子を受け取りやすいものが電子を受け取るということが起きます。

  実際に起きているのはそれだけのことなんです。
  (とっても単純だと思いませんか?)


  そして、電子を出しやすいものとしては、

   ・イオン化傾向の大きい金属
   ・電子を多めに持っているもの(なおかつ酸化されやすいもの)

 があります。


  また、電子を受け取りやすいものとしては、

   ・イオン化傾向の小さい金属のイオン(水素イオンを含む)

 があります。


  どんな場合でも、どれが電子を出しやすいものなのか、あるいは電子
 を受け取りやすいものなのかを考えていくとわかりやすくなります。

  このことさえ見抜ければ、必要以上に何かを覚えたり、混乱したりし
 なくて済むと思います。



 電気分解を利用しているもの
 ──────────────

  電気分解の原理を利用しているものとしては、純粋な銅や銀などを得
 るための電解精錬や、電気めっきなどがあります。

  「めっき」というと、「めっきが剥げる」などという使われ方がある
 こともあってあまりイメージがよくありませんが、実は大切な技術のひ
 とつです(ほとんどの場合、腐食防止や表面の美しさを整えるために行
 われます)。

  また、現在のめっきは技術が進歩したこともあって、そう簡単には剥
 がれないようになっています。


 ----------------------
 ☆今回の小さなまとめ☆
 ----------------------

  電気分解についても、「電子」をもとに考えるとよいと思います。

  その場合において、電子を出しやすいもの、電子を受け取りやすいも
 のが何かがわかれば混乱することも少なくなるはずです。


   次回は 「化学反応式について」を予定しています。


 ────────────────────────────────
  2.化学をつくった人たち
         〜 ジョン・ドルトン 〜
 ────────────────────────────────

  今回は原子論で知られるドルトンを取り上げます。
  華やかに目立った人ではありませんが、化学の歴史を考える場合には
 大変重要な人物のひとりです。



  ドルトンは1766年、イギリス北西部のカンバーランド州イーグル
 スフィールド村というところで、6人兄弟のうちの3番目に生まれまし
 た。

  父親は熱心なクウェーカー教徒でしたが、貧しい織物工であり、家計
 は苦しかったようです。

  少年時代は村にあるクウェーカー教徒の学校に通って勉強をします。
 しかしながら12歳にしてその学校の教職に就くほどの早熟ぶりでした。

  17歳のときにマンチェスターに移り、数学と自然哲学を教える職に
 就きます。

  そして33歳のときにそれを辞め、家庭教師などをしながら研究に専
 念する生活を送りました。


  ドルトンはほとんど独学で学び、大学に通うこともありませんでした
 が、マンチェスター文学哲学協会の会員、名誉幹事(後に会長に就任)
 となることで、自分の研究を発表する場を得ることになります。



  彼が研究の世界に踏み込んでいくきっかけをつくったのは、同じクウ
 ェーカー教徒であった盲目の哲学者、ジョン・ゴフと出会ったことかも
 しれません。

  ゴフの影響によって気象に興味を持ち、観測を行うようになります。
  ※これ以後亡くなる前日まで、毎日欠かさずに気象観測を行っていた
   ことは有名です。

  そしてこのことがきっかけで、大気の性質や気体についての関心が生
 じることとなりました。


  温度変化による気体の体積変化(ゲーリュサックとは独立に研究)、
 大気中の酸素濃度の分布、気体の拡散と分圧の法則(※1)などの研究
 成果を次々に発表していくことで、少しずつ気体というものの本質に踏
 み込んでいくことになります。

  一連の研究成果を通して考えると、気体の性質を説明しようとすれば、
 それが粒子でできていることを考えないわけにはいかなくなってきます。

  そしてドルトンは、気体だけでなく、あらゆる物質が粒子からできて
 いるのではないか、という原子論(※2)の考えにたどり着くこととな
 ります。


  原子論の考え方自体は、古代ギリシアの時代から存在していましたが、
 その当時は頭の中だけで考えられたものでした。

  しかしドルトンの頃には、ラヴォアジェをはじめとする多くの科学者
 たちの研究成果もあって、証拠となる材料も集まってきていました。


  ただ、いつの時代でもそうですが、新しい考え方というのは認められ
 るまでに時間がかかるもののようです。

  現在から振り返ってみれば自明のことですが、原子論だけではすべて
 の現象を説明することができないこともそれを助長していました。

  そんななかでもドルトンには自分なりの確信があったと思われます。
  (個人的には、少し頑固なくらいに自説の正しさを主張する姿勢に、
  彼の人間らしさを感じます)。 



  また、原子論とともに示された「原子量」の考え方は、画期的なもの
 であり、これなくしては後の化学の発展はなかったと言えます。
 (ただし、ドルトンの求めた原子量の値は、いろんな要因から不正確な
 ものではありました)。



  原子論や原子量の考え方によって後世の化学者に大きな影響を与えた
 ドルトンですが、私生活は大変静かなものであり、世間とは距離を置い
 ていたようなところがあります。

  ドルトンと同様に近代化学の発展に大きく貢献した、フランスのラヴ
 ォアジェとは好対照といっていいかもしれません。



 ○ 簡単な用語紹介と補足

  ※1 ドルトンの分圧の法則
    「混合気体において、その全圧は、それを構成する個々の気体の
   分圧の和に等しい」という法則

  ※2 原子論について
    古代ギリシアのデモクリトスによって示された原子論は、「自然
   界のすべての物質は、それ以上分割できない粒子(原子)からなる」
   というものだったが、思弁的なものにとどまっていた。
    ドルトンの原子論はこれとは少し異なり、元素と原子を関連づけ
   たことに意義がある。
    彼の主張をまとめると以下のようになる。
     a)物質を無限に分割することはできず、どんな元素もそれ以
       上分割不可能な原子という粒子から成り立っている。
     b)同一元素の原子は同一の質量、体積、化学的性質を有する。
       元素が異なれば、その原子も違った特性を示す(元素の数
       だけ原子の種類がある)。
     c)異なる元素の間の化学結合において、原子は簡単な一定の
       数ずつ結合して複合原子(現在でいう分子に近いもの)を
       形成する。
    またドルトンの原子論は、化学的原子論と呼ばれることもある。


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  3.あとがき
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  私は高校時代、原子論を発表したドルトンと、分圧の法則のところで
 出てくるドルトンは別人だと勝手に思っていました。

  なぜそう思っていたのかは、いまだによくわかりません。
  (同一人物だとわかったのは、かなり後になってからのことです)

  みなさんにもそんな思い違いをしていた経験はありますか?



  ※参考文献はこちらにまとめてあります。興味がありましたらどうぞ。
   → http://www13.plala.or.jp/chem-hint/reference.html

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