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化学なんて大嫌い!という人のための
風変わりなヒント 第18号
2004年12月25日発行
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<目次>
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1.一風変わった化学の授業
〜 化学反応式について 〜
2.化学をつくった人たち
〜 フリードリッヒ・アウグスト・ケクレ 〜
3.あとがき
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1.一風変わった化学の授業
〜 化学反応式について 〜
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今回は化学反応式について見ていきます。
基本的なところの再確認をしていきたいと思います。
突然ですが、例えばこんな問題が出されたとします。
問(a)
亜鉛6.54gを希硫酸に溶解させたときに発生する水素の体積は、
標準状態で何リットルになるか求めなさい(気体はすべて理想気
体として考えること)。※亜鉛の原子量:65.4とする
さて、どんなことを考えて解いていきますか?
こういう問題は、化学反応式が書けないと解けませんね。
そして、考える順番としては、たぶんこのようになると思います。
1)亜鉛(Zn)や(希)硫酸(H2SO4)などの、それぞれの物質
の化学式を思い出す。
2)係数のきちんと合っている(正しい)化学反応式を書く。
3)質量や体積(気体の場合)を、「モル」を仲立ちにして考える。
では、順番に見ていきましょう。
1)それぞれの物質の化学式を思い出す
───────────────────
この項については「知っているかどうか」で終わってしまうのですが、
上の問題では亜鉛や(希)硫酸の化学式のほかに、この反応によってでき
てくる物質の化学式を考える必要があります。
これについては少し推理力を働かせるとよいかもしれません。
問題文を読むと、亜鉛(Zn)と(希)硫酸(H2SO4)が反応して水
素(H2)がでてくるらしい、ということがわかります。
そうすると、残っているZnとSO4から、ZnSO4ができそうな気
がしてきます。
実際そのとおりで、亜鉛と希硫酸の反応では硫酸亜鉛(ZnSO4)が
できます。
ここまでで、反応する物質である亜鉛、希硫酸と、生成する物質であ
る硫酸亜鉛、水素の化学式がわかりました。
2)化学反応式を書く
───────────
次に1)でわかった化学式を使って化学反応式をつくっていきます。
まず、矢印の左側に反応する物質(反応物:この場合亜鉛と希硫酸)
を書きます。
Zn + H2SO4 →
そして矢印の右側に、反応の結果できる物質(生成物)を書きます。
Zn + H2SO4 → ZnSO4 + H2 (*)
最後にそれぞれの係数を合わせることになります。
(具体的には、左右の原子の数がすべて釣り合うように調整するとい
うことです)。
(*)式において、矢印の左右で、Zn、H、S、Oの原子の数がす
べて釣り合うように係数をつけてみると、
1 Zn + 1 H2SO4 → 1 ZnSO4 + 1 H2
となります。
ただし係数の1は省略することになっているので、今回の場合、化学
反応式は(*)と同じになります。
3)「モル」を使って考える
──────────────
2)までの段階で化学反応式ができました。
(きちんと化学反応式が書けたら、問(a)のような問題は半分以上
できたと言っていいと思います)。
得られた化学反応式をもう一度書いてみます。
Zn + H2SO4 → ZnSO4 + H2
この化学反応式の意味するところは、
「亜鉛1モルと硫酸1モルが反応して、硫酸亜鉛1モルと水素1モル
ができる」
ということです。
そして、Zn、H2SO4、ZnSO4、H2のモル数の比が、
Zn:H2SO4:ZnSO4:H2 = 1:1:1:1
───────
↑係数の比と同じ
であるということも同時に示しています。
※モルについてあまりしっくりこないという場合は、原子や分子とい
う枠も取り払ってしまって、
「Zn:1個と、H2SO4:1個が反応して、ZnSO4:1個
と、H2:1個ができる」
というふうに考えてもいいと思います。
そうすると、化学反応式の係数が個数の比を表していることが納得
できると思います。
(大まかに言えば、モル数の比も個数の比と同じと言えます)。
このあとは、教科書に書かれているような方法になります。
Zn + H2SO4 → ZnSO4 + H2
質量 6.54g
↓
モル数 0.1mol ───────────────→ 0.1mol
[i] [ii]
体積 ↓
(標準状態) 2.24 L
[iii]
[i] 亜鉛6.54gが何モルなのかを求める(亜鉛の原子量:65.4)
[ii] Zn:H2=1:1から、水素のモル数を求める
[iii]標準状態(0℃、1atm)での体積を求める
☆理想気体ならば、1molの気体の標準状態での体積は、22.4
リットルになります。
そしてこの方法の背景には、下の図のような考えがあります。
┌─────────────────┐
│ 質量 ⇔ モル ⇔ 体積(気体)│
└──↑─────────↑────┘
└────×────┘
※質量と体積を直接変換することはできない
従って、常に「モル」を仲立ちにして(経由して)考えていくことが
重要です。
類似の問題に挑戦(?)
────────────
せっかくなので、同じような問題を考えてみました。
興味があったら解いてみて下さい。
答えのみ、あとがきの下の方に書いておきます。
問(b)
アルミニウム2.70gを希硫酸に溶解させたときに発生する水素の
体積は、標準状態で何リットルになるか求めなさい(気体はすべて
理想気体として考えること)。
※アルミニウムの原子量:27.0とする。
問(c)
銅(Cu)が希硝酸(HNO3)と反応すると、
硝酸銅(Cu(NO3)2)、水(H2O)、一酸化窒素(NO)が生
成する。
1)この反応の化学反応式を完成させなさい。
2)銅を0.300mol反応させたときに発生する一酸化窒素の質量と、
標準状態における体積(単位:リットル)を求めなさい。
(気体はすべて理想気体として考えること)。
※窒素の原子量:14.0、酸素の原子量:16.0とする
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☆今回の小さなまとめ☆
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係数を含めて化学反応式を正しく書くことは基本的なことですが、か
なり大事なことです。
化学はなんとなく苦手だな、と感じている場合にはもう一度確認して
みるといいと思います。
それができたら、次に「モル」を仲立ちにして質量や気体の体積を考
えるようにしてください。
次回は 「化学反応の速さを変える条件について」を予定しています。
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2.化学をつくった人たち
〜 フリードリッヒ・アウグスト・ケクレ 〜
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今回はドイツの有機化学者、ケクレを取り上げます。
ベンゼンの構造について、夢の中からヒントを得たことは有名です。
ケクレは、1829年にドイツのダルムシュタットで生まれました。
父親はヘッセン大公国の高等軍事参事官という要職についていた人でし
た。
彼は小さいときから頭がよく、とりわけ数学と図画が好きだったよう
です。
この数学と図画の才能を生かすため、父親の勧めもあってギーセン大
学で建築学を学び始めました。
ところがケクレは、当時ギーセン大学で教鞭をとっていたリービッヒ
の講義を聴いて感激し、化学の道に進むことを決意します。
しかし、父親をはじめ親戚からは強く反対されたため、1年がかりで
周りの人たちを説得してようやく化学を学ぶことができました。
22歳のときにパリに留学して学位をとり、スイスやロンドンで化学
者としての見聞を広めます。その後帰国してハイデルベルク大学で講師
となりました。
29歳のときにヘント大学の教授として招かれた後、ホフマンの後任
としてボン大学の教授に就任し、多くの学生の指導にあたることになり
ます。
ケクレの業績でもっとも有名なのは、ベンゼンの構造を解明したこと
ですが、その前にもうひとつ重要なことを解明しています。
それは、
・炭素の原子価が4であること
(⇒4本の結合する手を持っていること)
・炭素原子が連なって、鎖状に結合することができること
を見出したことです。
これにより有機化学の分野で、分子式だけでは区別できない異性体な
どについて、その構造を示すことで個別に考えることができるようにな
りました。
また、先に示した2つのことがわかっていないとベンゼンの構造にた
どり着くことはできません。
その意味でも大切な概念と言えます。
そしてケクレは、これらを踏まえた上で、当時構造がわからないまま
だったベンゼンの構造について考え始めます。
※ファラデーによってベンゼンが発見されてから、このときすでに4
0年が経っていました。
しかし、組成(分子式:C6H6)と、実験から示される反応性の両
方を満たす構造はいまだに示されていない状況でした。
様々な思索の結果、ケクレはベンゼンの構造について以下のように考
えて発表します。
・6個の炭素原子が互いに連結して六角形をなしている
・二重結合と単結合が1つおきに(交互に)存在している
(二重結合と単結合が3つずつ存在するということになる)
ただし、これには2種類の反論が出てきました。
それは、
1:ベンゼンが二重結合特有の性質(反応性)を示さない
2:構造から予想される異性体が存在しない(二置換体について)
というものです。
ケクレはこれらの反論に対して、
・ベンゼンの二重結合と単結合は、お互いにすばやく移り変わって
いる
という、「共鳴」の考えを導入して、ベンゼンの構造の正しさを主張
しました。
この考えは、後の時代に行われた測定結果から、特異な六角形の構造
とともにその正しさが認められています。
(ベンゼンの炭素−炭素間の距離は、通常の二重結合と単結合のちょう
ど中間の値でした)
ケクレは、当時までに知られていた知識を理解した上で、独創的な発
想を加えて新しい理論を構築しました。
有機化学においては化合物の構造が重要な役割を担うことを考えれば、
彼の功績は非常に大きいと言えます。
また、彼は熱心な教育者としても有名で、バイヤー、エミール・フィ
ッシャー、ファント・ホッフなどの、後にノーベル賞を受賞するような
化学者が彼の元で学んでいきました。
さて最後に、ケクレがベンゼンの構造を思いつくヒントになった夢の
話を簡単にしておきます。
疲れていたせいか、暖炉のそばで少しだけまどろんでしまったケ
クレは、夢を見ました。
その中で1匹の蛇が現れます。
しばらくするとその蛇は自分の尾をくわえて環をつくり、ぐるぐ
る回りはじめました。
その光景を見ているうちに何かがひらめいた彼はとっさに飛び起
きます。
そしてすぐにベンゼンの構造にたどりつく考えをまとめた、とい
われています。
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3.あとがき
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夢から何かのヒントを得るというのは、単なる偶然のようにも見えま
すが、夢に出てくるほどそれについて一生懸命考えていた、と言えると
思います。
ケクレの化学に対する情熱を表す話として、とても興味深いものがあ
ります。
※参考文献はこちらにまとめてあります。興味がありましたらどうぞ。
→ http://www13.plala.or.jp/chem-hint/reference.html
◇問題の答え │
───────┘
問(b)3.36リットル
問(c)1)3Cu+8HNO3
→ 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO
2)6.00g、4.48リットル
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◇◇ 化学なんて大嫌い!という人のための
風変わりなヒント ◇◇
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