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化学なんて大嫌い!という人のための 風変わりなヒント
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 第20号(2005.3.18発行)



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   化学なんて大嫌い!という人のための
              風変わりなヒント  第20号
                  2005年3月18日発行

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 <目次>
 -------------------------------------------
 1.一風変わった化学の授業
     〜 触媒と活性化エネルギーについて

 2.化学をつくった人たち
     〜 フランソワ・A・V・グリニャール

 3.あとがき
 -------------------------------------------

 ────────────────────────────────
  1.一風変わった化学の授業
          〜 触媒と活性化エネルギーについて 〜
 ────────────────────────────────

  前回の項の最後に少し触れましたが、今回は触媒と活性化エネルギー
 について書いていきます。


 活性化エネルギー
 ─────────

  活性化エネルギーというのは、反応が起きるために最低限必要なエネ
 ルギーのことです(その大きさは、越えなければならない山の高さによ
 く例えられます)。

  また逆に言うと、反応物どうしがぶつかったときに、その反応で必要
 な活性化エネルギー以上のエネルギーを持っていれば反応が進むという
 ことになります。


  単純な反応として、下のような例について考えながら進めていきます。

   例) A + B → AB ・・・(*)
     (反応物AとBが反応して生成物ABができる反応)


             【2】
   エネルギー    ↓活性化状態
    ↑       __   ____
    │      /  \      ↑(*)の反応の
    │     /    \     │ 活性化
    │ ___/      \ ___↓ エネルギー
    │ A+B        \   
    │(反応物)        \__ 
    │ 【1】          AB 【3】
    │             (生成物)
    └────────────────────────
    ※この図は本来ならば、なめらかな曲線を描くものです。
     テキスト表示なのでご容赦下さい。


  上の図において、最初のばらばらの状態【1】から、【2】の活性化
 状態と呼ばれるところを越えられるものだけが反応することになります。

  【2】の状態を少しでも越えてしまえば、あとは自動的に【3】の状
 態にたどり着くことができます。

  そして、この反応の場合の活性化エネルギーの大きさは、【1】の状
 態のエネルギーと【2】の状態のエネルギーの差になります。


  ※活性化状態のときには、AとBはくっついているとも、くっついて
   いないとも言えるような、そんな中間の状態にいます。

   しかしその状態はほんの一瞬のできごとなので、その状態をとらえ
   て観察することは困難な場合がほとんどです。



 触媒の役割
 ──────

  触媒を用いることにより、なかなか反応しない反応を、速く効率よく
 行うことができるようになります。

  これは、触媒が活性化エネルギーを下げてくれるからです。

  活性化エネルギーという、越えなければならない山の高さが低くなる
 ことで、より反応が進みやすくなります(つまり反応速度が上がること
 になります)。

  障害物の高さが低ければ越えやすくなるのと同じ考え方ですね。


  さて、触媒を使った反応で有名なのものとして、アンモニア合成法
 (ハーバー・ボッシュ法)があります。

  アンモニア合成の工業化には、反応を効率よく進める触媒が必要不可
 欠でした。

  最適な触媒を見つけるために、当時はありとあらゆる物質を試してみ
 たそうです。

  そして最終的には、鉄系触媒に酸化アルミニウムなどを加えたものが
 見出されました。


 ----------------------
 ☆今回の小さなまとめ☆
 ----------------------

  ・活性化エネルギー:反応するために越える必要があるエネルギーの
            こと。

  ・触媒:活性化エネルギーを下げて、反応しやすくするもの。触媒を
      用いることで反応が速く進むようになります。


 ────────────────────────────────
  2.化学をつくった人たち
       〜 フランソワ・A・V・グリニャール 〜
 ────────────────────────────────

  今回はフランスの有機化学者、グリニャールを取り上げます。
  大学で有機化学を学ぶ際には必ず出てくる、グリニャール反応で有名
 な人物です。



  グリニャールは、1871年にフランスの港町シェルブールで船の帆
 をつくる職人の子として生まれました。

  常に優秀な成績を修めていた彼は、認められてリヨン大学で数学を学
 びます。

  兵役のため一時学問の世界から離れていた時期もありましたが、除隊
 して戻ってきた後、数学で学士号を取得しました。

  しかしその時すでに数学に興味が持てなくなってきていた彼は、友人
 の勧めもあって、同じ大学にいたバルビエのもとで有機化学を学ぶこと
 にします。

  バルビエから与えられたテーマは、有機化合物とマグネシウムの反応
 についてでした。

  もともとそれほど化学が好きだったわけではないグリニャールでした
 が、研究を行ううちにその面白さに惹かれ、精力的に実験を行っていき
 ます。

  そして、エーテル中でハロゲン化アルキルをマグネシウムと反応させ
 ることで、ハロゲン化アルキルマグネシウムを容易に調製できることを
 発見しました。

  (このハロゲン化アルキルマグネシウムのことを「グリニャール試薬
 (※)」と言います。ときに1900年のことでした)

  彼はこの試薬を用いた様々な反応についての研究をまとめ、博士号を
 取得します。


  その後、ナンシー大学の教授やパリ大学の化学科主任などを歴任して
 いきます。

  そして1912年にはグリニャール反応の発見により、ノーベル化学
 賞を受賞しました。

  また、1919年にはバルビエの後任として母校リヨン大学の化学科
 教授に就任し、研究だけでなく化学教育にも取り組んでいきました。



  グリニャール反応の特徴は、その多様性にあります。

  グリニャール試薬は数多くの化合物と反応するので応用範囲が広く、
 様々な構造の有機化合物を合成することができました。

  特にそれまでほとんど例のなかった、炭素−炭素結合をつくることが
 できるという点が画期的だったと言えます。


  グリニャール試薬は一般に、「RMgX」と表されます。

    ・Rはアルキル基やアリール基、
    ・Mgはマグネシウム、
    ・Xはハロゲン(塩素:Cl、臭素:Br、ヨウ素:I)を表し
     ています。

  典型的な反応例としては、グリニャール試薬をアルデヒドやケトンと
 反応させることにより、(アルキル基を付加した形の)各種アルコール
 を合成することができます。

  <グリニャール反応の例>

      RMgX  + R’CHO  →  RCHR’
                         │
     グリニャール   アルデヒド      OH
       試薬              第2級アルコール


  ここではひとつしか例を挙げていませんが、その他にも数多くの反応
 を生じさせることができます。



  グリニャール反応がどれほど有機化学の分野に影響を与えたかについ
 ては、彼が生きている間だけで関連する論文が7000報を越えたとい
 う事実からもうかがい知ることができます。

  またこの反応の発見は、有機金属化学という新たな分野の発展のきっ
 かけにもなりました。

  有機化学の分野に与えた影響の大きさを考えれば、彼のノーベル賞受
 賞は、当然の結果だったと言えます。



 ○ 簡単な用語紹介と補足

  ※ グリニャール試薬の調製方法
   溶媒としてエーテルなどを使用し、削りくず状にしたマグネシウム
   にハロゲン化アルキルを滴下して調製する。使用する溶媒は完全に
   脱水したものを使用し、反応途中においても水が入らないように
   注意する必要がある。


 ────────────────────────────────
  3.あとがき
 ────────────────────────────────

  次回から少し趣向を変えてみたいと思っています。
  と言っても、内容を一新する、というわけではなく徐々に変えていく
 予定です。

  また今後は、月1〜2回の発行で不定期刊にさせて下さい。
  これからもよろしくお願い致します。



  ※参考文献はこちらにまとめてあります。興味がありましたらどうぞ。
   → http://www13.plala.or.jp/chem-hint/reference.html


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  ◇◇ 化学なんて大嫌い!という人のための          
                     風変わりなヒント ◇◇
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