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化学なんて大嫌い!という人のための 風変わりなヒント
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 第21号(2005.5.1発行)



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   化学なんて大嫌い!という人のための
              風変わりなヒント  第21号
                  2005年5月1日発行

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 <目次>
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 1.一風変わった化学の授業
     〜 同位体について

 2.化学をつくった人たち
     〜 フェルディナン・F・H・モアッサン

 3.あとがき(この頃思うこと)
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 ────────────────────────────────
  1.一風変わった化学の授業
          〜 同位体について 〜
 ────────────────────────────────

  今回は同位体についてです。
  化学を学ぶ際に最初の方に出てくるものなので、印象が薄くなりやす
 いところですが、知っておいて損はないものなので、今回取り上げてみ
 ました。


 「同位体」とは?
 ─────────

  原子番号が同じで、質量数が異なる原子どうしを、互いに同位体とい
 います。

  ここで、
   原子番号=陽子の数
  なので、
   質量数が異なる=中性子の数が異なる

 ということになり、「陽子数が同じで、中性子数の異なる原子どうし」
 が互いに同位体であるとも言えます。

  ※例えば炭素には、質量数12、13、14の3種類の同位体があり
   ます。炭素の原子番号(陽子数)は6なので、中性子数がそれぞれ
   6、7、8個あるということです。

  そして、同位体どうしは原子番号が同じなので化学的な性質はほとん
 ど同じです。

  同位体を分ける必要がある場合は、主に質量の差に基づく方法で分離
 します。

  ※ちなみに英語で「同位体」は、isotope(アイソトープ)で、
    iso=同じ、tope=場所 という意味がもとになっています。

  また、
   放射能をもつもの:放射性同位体(ラジオアイソトープ)
   そうでないもの :安定同位体
 と言います。

  ※炭素ではの3つの同位体のうち、質量数14のものだけが放射性同
   位体です。



 炭素の同位体について
 ───────────

  ここからは炭素の同位体について少し見ていきます。

  まず炭素の3種類の同位体の存在比は以下のようになっています。

    質量数12の炭素(安定同位体) :98.9%
    質量数13の炭素(安定同位体) : 1.1%
    質量数14の炭素(放射性同位体): 微量

  質量数13の炭素は、有機化合物の構造決定に重要な役割を果たす
 NMR(核磁気共鳴)測定を行うときに利用されています。


  また、放射性同位体である質量数14の炭素は、遺跡などから出土し
 た木片や炭化物の年代測定に使われます。

  その仕組みを以下に簡単に説明しておきます。

  放射性同位体は、ある一定の時間を経ると徐々に壊れていく性質があ
 り、その時間は放射性同位体の種類によってそれぞれ決まっています。

  質量数14の炭素では、壊れて元の半分の量になるまでの時間(これ
 を半減期と言います)が、約5730年であるということがわかってい
 ます。

  そこで、出土した木片に残っている質量数14の炭素の量を測定する
 ことにより、その木片がどれくらい前のものかが分かる仕組みです。

  ※測定した結果、質量数14の炭素の量が1/4になっていたとする
   と、5730年×2=11460年ほど前のものだということがわ
   かります。

   → 1/2の量になるのに5730年、その半分の1/4の量に
    なるのにさらに5730年かかるので、こうなります。


  ※考古学ではこの例に限らず、出土品の化学的な分析が必要不可欠に
   なりつつありますので、いろんな分析方法の簡単な原理については
   知っておいた方がよいかもしれません。


  質量数14の炭素については、この他にも様々な研究に利用されてい
 て、研究する上での重要な道具になっています(トレーサーとしての利
 用などがあります)。


 ────────────────────────────────
  2.化学をつくった人たち
       〜 フェルディナン・F・H・モアッサン 〜
 ────────────────────────────────

  今回はフランスの化学者モアッサンを取り上げます。
  フッ素の単離とその性質の研究、および電気炉の開発で1906年の
 ノーベル化学賞を受賞しています。


  モアッサンは1852年にパリで生まれました。
  父親は鉄道会社に勤めていて、母親は家計を助けるために洋裁の内職
 をしていたそうです。

  そんな家庭の事情もあったため、彼は18歳のとき、自活するために
 薬剤師のもとで徒弟として働くようになります。

  1872年の暮れからは、自然化学史博物館の中にあった実験室に通
 い、化学の勉強を本格的に始めました。
  (同時に生活を支えるために家庭教師なども行っていました)。

  その後独学で薬学関係の学校に進み、1880年に無機化学の分野で
 学位を取得します。

  そして1884年からフッ素に関する研究を開始し、2年後にフッ素
 の単離に成功しました。

  同じ年にパリ薬学専門学校の教授になった後、1900年にはパリ大
 学理学部の無機化学教授に就任しました。



  フッ素の単離については、それまでにも多くの著名な化学者が挑戦し
 てきました。

  デーヴィは、フッ化水素酸の電気分解と、フッ化物と塩素を反応させ
 る方法の2通りを試みましたが、どちらも成功しませんでした。

  デーヴィの弟子であったファラデーも、乾燥した溶融フッ化物の電気
 分解を行いましたが、フッ素を得ることはできませんでした。

  またフランスの化学者フレミは、溶融した無水のホタル石(CaF2)
 を電気分解する方法でフッ素を単離しようとしましたが、残念なことに
 発生したフッ素と思われる気体を集めることには失敗していました。


  モアッサンは、このような先駆者たちの実験を詳しく検証し、なぜフ
 ッ素が得られなかったのかを考えました。

  いろいろと考えた末に彼は、フッ素の反応性がとても高いからだろう
 と推測します。

  もしフッ素が単離できたとしても、容器やその他の物質とすぐに反応
 してしまうため、単体で得ることが難しいのではないか、と考えたわけ
 です。

  そこで装置の材質には銅を用いることにしました。

  これは、発生したフッ素が銅とすみやかに反応してフッ化銅の皮膜を
 つくるので、装置の内面が安定化されるからです。
 (同時にフッ素による容器の損傷も抑えてくれます)。

  そしてU字型の電解槽を用い、発生する気体が別々に出てくるように
 して、この中にフッ化カリウムを溶解させた無水フッ化水素酸を入れま
 した。

  白金−イリジウム電極を差し込んで、低温(−23℃)で電気分解を
 行ったところ、見事に気体のフッ素が得られ、単離に成功しました。
 (1886年のことでした)。


  彼のもうひとつの大きな業績として、1892年から開始した電気炉
 の考案・作製があります。

  この電気炉は、炭素電極を用いたアーク式電気炉(※)で、およそ
 3500℃まで加熱できるものでした。

  これにより、溶融しにくい酸化物や金属、炭化物、ホウ化物などの研
 究を行うことができるようになりました。

  彼はこの電気炉を使用して、マンガン、クロム、タングステン、チタ
 ン、ジルコニウムなどの金属のケイ化物、炭化物、ホウ化物などを初め
 てつくっています。

  そしてこれらの研究をきっかけに、電熱による高温化学の分野が切り
 開かれていくようになりました。



  モアッサンにはこれら以外にも様々な業績がありますが、主にフッ素
 に関わる研究と電気炉の開発が評価され、1906年のノーベル化学賞
 を受賞することになります。

  彼のすぐれた洞察力と、無機化学への大きな貢献を考えれば、当然す
 ぎる受賞だったと言えます。



 ○ 簡単な用語紹介と補足

  ※ アーク式電気炉
   二つの電極の間に電圧を与え、安定したアークを発生させて加熱す
   る電気炉。電極には炭素、タングステン、モリブデンなどが用いら
   れ、高温を得ることができる。


 ────────────────────────────────
  3.あとがき(この頃思うこと)
 ────────────────────────────────

  高校の授業で化学がわからなくなって嫌いになると、それ以降はどう
 しても化学と距離を置こうとしてしまいます。

  もちろん化学が嫌いでもいいのですが、できれば避けようとはしない
 でほしいと思います。

  どんな分野に進んだとしても、これだけ身の回りにいろんなものがあ
 ふれている時代では、化学に関わるものや出来事に必ず遭遇することに
 なります。

  高校の授業や受験勉強だけが化学ではないので、それとは少し違った
 ものをこのメルマガを通して感じてもらえればいいな、と思っています。



  ※参考文献はこちらにまとめてあります。興味がありましたらどうぞ。
   → http://www13.plala.or.jp/chem-hint/reference.html


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